婚前契約

契約例1

このページでは、婚姻生活中の取り決めについて、婚前契約の契約条項例をご紹介します。

1 タイトル

婚前契約書のタイトルは、「合意書」、「婚姻前契約書」、「夫婦財産契約書」、「念書」、「覚書」など色々なタイトルが考えられます。タイトルによって婚前契約書の法的効力に影響はありませんが、婚前契約書であることが明らかになるよう、ストレートに「婚前契約書」とするのが良いでしょう。

2 契約の目的

 婚前契約書の第1条には、その婚前契約書を交わす目的を規定すると良いでしょう。契約条項の解釈に見解の相違が生じた場合などに解釈の指針になり得ます。契約の目的には二人が婚前契約を交わそうと思った理由をそのまま記載すれば良いですが一例を示すと以下のような条項となります。

第1条 本契約書は、夫婦生活を一層充実したものとして婚姻関係を永続させることを目的とするとともに、万が一離婚するときには、争いが長期化することを避け、夫婦が速やかに各自の新しい人生に踏み出せるよう離婚時の条件を定めることを目的とするものである。

3 婚姻前の財産

婚姻前の各自の財産は、法律上は、婚前契約に特に規定しなければ、婚姻後も各自の特有財産となります。そのため、婚姻前の財産を共有財産としたい場合や、その一部については特有財産としたい場合には婚前契約にその旨を規定しておく必要があります。

⑴ 特有財産とする場合

婚姻前の各自の財産を特有財産とする場合も、確認的に規定しておくことは差し支えありません。また、婚姻前の財産から発生する利息や配当、賃料、また婚姻前の財産を売却・交換して得た金銭、物についても特有財産であることは規定しておいた方が良いでしょう。 なお、預金については婚姻後も残高に増減があります。ずっと婚姻前の残高以上をキープしていれば、婚姻前の預金がそのまま残っているとみることができますが、そうでなければ婚姻前の預金なのか婚姻後の預金なのか判別できなくなる恐れがあります。そのため、婚姻前の預金については入金のない預金口座に移しておくことをお勧めします。

第〇条(婚姻前の財産) 婚姻前の財産、その利息・配当・賃料などの果実、婚姻前の財産を売却・交換して新たに得た財産は全て各自の特有財産とする。

⑵ 共有財産とする場合

婚姻前の各自の財産を婚姻後に二人の共有財産とする場合には、婚前契約にその旨を規定することが必要です。

第〇条(婚姻前の財産) 婚姻前の全ての財産は、共有財産とする。

⑶ 一部を特有財産、一部を共有財産とする場合

例えば、特定の預金口座に入っている預金は特有財産にしたいけれど、その他は共有財産としてもいいという場合や、不動産については特有財産としたいけれどその他は共有財産としたいという場合が考えられます。このような場合には、以下のような条項となります。

第〇条(婚姻前の財産) 甲の下記婚姻前の財産については、甲の特有財産とする。その他の甲の婚姻前の財産は共有財産とする。
【金融機関・支店】  銀行 支店
【口座種別・口座番号】普通預金
【口座名義】

4 婚姻後の財産、所得

婚姻後に得た財産や所得は、婚前契約に特に規定しなければ、共有財産となります(もっとも、相続財産や贈与を受けた財産は特有財産です。)。そのため、婚姻後に得た財産や所得を各自の特有財産とする場合には、婚前契約にその旨を規定する必要があります。もっとも、同居して生活する以上、共有財産が一切ない状態は考えにくいため、このような別産制を採用する場合には、共有財産となるものについても婚前契約に規定しておくと良いでしょう。

第〇条(婚姻後の財産、所得) 婚姻後に自己の名義で得た財産、事業・労働から得た所得(退職金を含む。)、それを原資として得た財産、これらの財産から生じた配当・利息・賃料などの果実は、各自の特有財産とする。
第〇条(共有財産)
  1. 甲及び乙は、共同生活に必要な経費に充てるために、速やかに共有の銀行預金口座を開設し、双方合意した金額・方法によってこの共有口座に預金する。
  2. 家具、家電は共有財産とする。
  3. 前各項に定めるものの他、甲及び乙が書面による合意によって指定したものは共有財産とする。

5 婚姻費用(生活費)の負担

生活費の負担については、「夫が全てを負担する」、「夫婦で半分ずつ負担する」、「家賃や住宅ローンは夫が負担し、その他は妻が負担する」など、その負担方法は夫婦によって様々です。また、長い婚姻生活の中で、一方が失職する、収入が減るなど夫婦の経済状況が変動することは十分に考えられます。そのため、生活費の負担方法については、将来の変更がありうることを前提とした契約内容とすべきでしょう。

第〇条(婚姻費用の負担)
  1. 婚姻費用については、甲が住宅費用を負担し、乙がその他の費用を負担する。
  2. 前項の負担方法が困難又は不公平となったときは、書面による合意によって新たな負担方法を決定する。

6 家事育児の対価

家事育児という家庭内の仕事は無給ですが、裁判実務上、家庭外での労働と同様に評価すべきものとされています。そこで婚前契約においても、(多くは女性が)仕事を辞めて、家事育児に専念することになったときは、夫の給与の一定割合を家事育児の対価として妻に給付する内容を定めることが考えられます。そのような契約をすれば、妻としては家事育児に対して評価されていることを実感することができますし、また自身の「給与」を増やすために夫が仕事に邁進できるようサポートする動機になるかもしれません。なお、このような「給与」に課税はされません。

第〇条(家事育児の対価) 婚姻後に乙が家事専業となったときは、甲は、毎月の手取収入の20%(乙が出産したときは30%)を乙に支払う。

7 婚前契約の変更、取消し

民法上、婚姻後、夫婦間で交わした契約は取り消すことができるという条文があります(民法第754条)。もっとも、婚姻後契約は認められる余地があります。もっとも、容易に変更を許してしまっては婚前契約を交わした意味が乏しくなりかねませんので、変更方法について規定しておくのが良いでしょう。

第〇条(変更・取消し) 婚姻後の本契約内容の変更は、甲又は乙の少なくとも一方が弁護士に委任して、甲及び乙が署名捺印した変更契約書によってのみなすことができる。

8 各種言動について

夫婦生活における様々な行動については、その大半は法的拘束力がありませんが、婚前契約にはよく盛り込まれるものです。婚前契約書とは別途に誓約書として作成することも考えられます。他方、不貞行為やDVがあった場合の慰謝料についての規定には法的拘束力があります。

第〇条(各種言動)
  1. 甲及び乙は、家事育児を平等に負担し、協力し合うことを誓約する。
  2. 甲及び乙は、お互いの意見を尊重し合うことを誓約する。
  3. 甲又は乙が、不貞行為(性行為のほか、性交類似行為、キスを含む。)に及んだときは、他方に対して慰謝料200万円を支払う義務を負う。

春田法律事務所
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