立退料の相場とは?5つのケースを判例とともに弁護士が解説

立退料の相場とは?5つのケースを判例とともに弁護士が解説

立ち退きにかかる費用の補償が実際にどこまでなされるのか、賃借人にとって気になるところであると思います。立退料はどのように決まっているのか、判例をもとに詳しく解説をしていきます。

立退料の相場の決め方と一般的な内訳

立退料の相場はどのように決まっている?

立退料の相場はどのように決まっているのでしょうか。これは事案によっても異なり、明確には決まってるわけではありません。

判例上考慮される算定要素としては、

  1. 引っ越し費用
  2. 新規契約金
  3. 代替店舗確保に要する費用
  4. 賃料差額2~3年分
  5. 借家権価格
  6. 一定期間の賃料補償
  7. 営業補償額
  8. 再開発利益の分配額
  9. 慰謝料など

 

など多数の要素がみられます。

しかし、上記1~9の全ての要素が認められるわけではなく、事案によっては認められない算定要素もあります。
ただ、比較的多くの判例において、下記の算定式が使われていると言われています。

【立ち退き料=(新規賃料―現行賃料)×1~3年+引っ越し費用+新規契約金】

引っ越し費用と新規契約金は、どのような立ち退き事案においても発生する費用であることから、ほぼ必ず認められている費用です。
これに対し、家賃差額については、突然の引っ越しによる負担増に対応するものと考えられています。

 

立退料の内訳について

  • 新規契約金(敷金・礼金)
  • 引っ越し費用
  • 迷惑料・慰謝料
  • テナントの場合、営業補償

新規契約金(敷金・礼金)

賃借人は自らの希望で引っ越しをしている訳ではないので、本来従前の場所に住み続けていれば払う必要のなかった敷金や礼金などの初期費用は、立退料の請求内訳に含めることもあります。また、一般的に、現在の賃料の6~10カ月分を保証するということもあるようですが、法的な取り決めはないです。

 

引っ越し費用

こちらも、前述の初期費用と請求理由が概ね同一です。本来引っ越しの予定のなかった賃借人にとって、予定外の支出となります。

 

迷惑料・慰謝料

未成年のお子さんがいる家庭の場合、通っている学校や最寄り駅等を変えずに引っ越しをする必要もあります。同じ条件の通学距離に引っ越すことは難しく、天候を余儀なくされる場合もあります。また、通勤時間が変わってしまう可能性もあり、新たな土地で生活する為の心理的ストレスがかかることが考えられます。また、引っ越しをする準備等の時間の確保も必要になり、身体的なストレスも考えられます。

 

テナントの場合、営業補償

テナントでお店を経営している場合、お店を移転する事で、そこでの固定客が離れてしまう可能性もあります。例えば大通りに面していてある程度集客が認められる店舗であった場合、同じ条件での物件を見つけることが困難であることあります。また、お店を移転することに際し、休業をする必要がある為、本来営業を続けていれば見込めた収入を保証する必要もあります。

 

ケース1 店舗の立退料の相場

店舗の立退料の相場とは一体いくらであり、判例はどのようなものがあるのでしょうか。ご説明していきます。

 

相場は?

店舗の立ち退きでは、移転先での改装工事費用が必要となってくるので、その分だけ立退料は高額になります。また、移転によって固定客を失うことの損失も補填する場合があります。

店舗の規模によりますが、400~500万円程度の立退料が多いと思われます。まれに、数千万円の立退料が認められている事案も見られます。

店舗の立退料に関しては、以下のURL内に具体的な記載がございます。ご覧ください。

関連記事:店舗の立退料を徹底解説!相場や判例など賃貸人・賃借人の両面から専門弁護士が紹介

 

判例1

店舗の立ち退きに関して以下の判例が参考になります。

東京地方裁判所判決(H9.11.7判タ981号278頁)は、倉庫、車庫、事務所、社宅を兼ねた建物について、当該建物の借地権価格(1662万円)及び賃借人に生じる営業損害(386万円)を合計した2048万円の立ち退き料を認めました。

東京地方裁判所判決(H14.10.3判例秘書)は、借地権を1億円で譲り受けたこと、新規出店の内装工事費を要することなどを理由として、5000万円の立ち退き料を認めました。

最近の判例に、東京地方裁判所判決(H30.3.7判例秘書)があります。ラーメン屋の立ち退きを求めた事例で、賃貸人において当該建物を使用する必要性が高いことを前提として、賃借人の営業補償(特に得意先損失補償として700万円程度)に加え、移転費用等の補償が必要であるとして1500万円の立ち退き料を認めています。

(3)判例2

東京地方裁判所判決(H17.7.20判例秘書)は、テナントである美容院の立ち退きについて、立ち退き料70万円の提供によって正当事由が認められるとしました。

なお、この事案の立ち退き料が低額なのは、賃借人側に家賃の滞納があったことから、賃貸借契約が継続困難であるとして、賃貸人有利に判断したものと考えられます。

 

ケース2 事務所(オフィス)の立退料の相場

事務所の立退料の相場とは一体いくらであり、判例はどのようなものがあるのでしょうか。
以下ご説明していきます。

 

相場は?

事務所の立ち退きについては、概ね店舗の立ち退きにおいて述べたものと同じ算定方式が当てはまるものと思われます。
ただ、事務所の場合は、移転先の内装をそのまま利用することが可能であることから、内装工事や、改装費用は認められにくい傾向にあります。

とはいえ、自宅兼事務所として利用している賃借人も多いので、居住用建物の立ち退きの要素も含めて、立退料を算定することもあります。

 

判例

東京地方裁判所判決(H1.7.10判時1356号16頁)では、建物の老朽化および土地の有効利用に伴う事務所及び工場の賃貸借契約の更新拒絶をした事案について、6000万円の立ち退き料の提供をもって正当事由を認めています。

また、賃貸人の使用の必要性が、入居者の使用の必要性に比べて、かなり劣っている事例においても、「地域の実情」と「高額の立退料提供」を補完要素として正当事由を肯定しています。

東京高等裁判所判決(H2.5.14高民集43巻2号82頁)によれば、周辺では建物の中高層化が進んでいること(地域の実情)、建物が老朽化していて、継続使用のためには大規模な補強工事が必要であることを理由として、2億8000万円の高額な立ち退き料の提供と引き換えに正当事由を認めています。

 

ケース3 賃貸マンション、アパート建て替え(取り壊し)の立退料の相場について

賃貸マンション、アパートの立退料の相場とは一体いくらであり、判例はどのようなものがあるのでしょうか。
以下ご説明していきます。

相場は?

住居の立ち退きは、前記の算定基準、「立ち退き料=(新規賃料―現行賃料)×1~3年+移転費用+新規契約金)」によって立ち退き料が算定されることが多く、固定部分である新規契約金、引っ越し費用に加え、賃料差額を考慮します。

賃貸人の正当事由が相当程度認められる事案であることを前提に、 家賃差額がそれほど高額にならなければ、相場としては、100~200万円となることが通常です。

ただし、入居者の建物利用の必要性が高い場合など、大家の正当事由が劣後する場合には、迷惑料など、交渉によって更なる上乗せを見込むことが可能となり、500万円を超える立ち退き料が認められることもあります。

 

判例

住居の立ち退き料については、大家と入居者それぞれの建物使用の必要性、建替えの必要性を考慮して、立ち退き料を算出することが通常です。

たとえば、大阪地方裁判所判決(S59.11.12判タ546号176頁)は、 賃貸人側の居住の必要性が、賃借人のそれを上回るとして、立ち退き料100万円の提供をもって正当事由が認められるとしました。

他方、 賃貸人と賃借人の双方の使用の必要性がほぼ同等であった東京地方裁判所判決(H1.11.28判時1363号101頁)においては、500万円の立ち退き料の支払いによって正当事由を認めています。

建替えの必要性に関する判例 として、東京地方裁判所判決(H3.11.26判時1443号128頁)は、建物の老朽化が著しく、倒壊の危険がある場合には、立ち退き料の提供なくして正当事由が認めています。

これに対し、 老朽化しているものの、緊急性が認められない場合の建て替えであった大阪地方裁判所判決(S59.7.20判タ537号169頁)においては、150万円の立ち退き料の支払いによって、正当事由が認められるとしています。

ケース4 借地上の持ち家である一軒家(一戸建て)の立退料の相場について

一戸建ての立退料の相場とは一体いくらであり、判例はどのようなものがあるのでしょうか。
以下ご説明していきます。

相場は?

借地の持ち家の立ち退き事案において、算定基準は判例によって明確にされているわけではありません。

一般的には、

  1. 引っ越し費用
  2. 借地権の補償
  3. 賃料差額
  4. 建物の買い取り

などが主な要素になると考えられています。

ただし、借地上の持ち家の立ち退き事案では、一概にいくら認められるかという目安を提示することは極めて困難なので、事案ごとに適正な立ち退き料を算定する必要 があります。

 

判例

借地上の持ち家の立ち退き事案については、借地人において土地不動産を使用する必要性が、賃借人のそれを上回っていると認められる場合、立ち退き料の提供を必要とせず、正当事由を認めています。

たとえば、借地人が、当該持ち家を使っていないこと、借地契約を締結して数十年経過したことなどが考慮されています。 

借地の賃貸人・借地人双方の必要性が同程度である場合、必要度の比較では、正当事由を決することができないことから、立ち退き料の提供によって正当事由を補完することが多いです。

借地上の持ち家の立ち退きに関する判例としては以下のようなものがあります。

東京地方裁判所判決(H1.7.4判時1356号100頁)は、建物朽廃により消滅する可能性のある借地権の保全等を理由とする解約について700万円の立ち退き料を認めました。

東京地方裁判所判決(H17.5.30判例秘書)は、賃貸人の借地利用の必要性が高く、借地人の借地利用の必要性が格段に高いとはいえないという事実関係を前提に、借地権価格1500万円を参考とし、700万円の立ち退き料を認めました(なお、700万円の立ち退き料は、賃貸人が申し出た金額であり、これがそのまま考慮されたようです。)。

東京地方裁判所判決(H17.7.12判例秘書)は、かつて従業員寮として利用していた借地について借地権価格の3分の1程度の金額である2850万円の立ち退き料を認めました。

まとめ

今回ご紹介したように、事案によって立退料は大幅に増減することが分かります。

交渉次第で、高額な立退料を支払ってもらえる可能性もあります。ただ、賃借人側の一方的な要求のみでは、交渉が決裂してしまいます。

専門家弁護士に交渉を依頼しなければ、どうしても解決できない事案もあります。まずは、ご相談ください。

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