墓地の名義貸し

墓地の名義貸し

1 株式会社も墓地を経営できるか

墓地埋葬法は墓地の経営主体について規定していません。そのため、株式会社などの営利企業が墓地経営することは許されるのではないかとも思えます。

墓地を経営するためには、行政の許可が必要です(墓地埋葬法第10条1項)。

そして、営利企業が墓地経営をすることは、墓地の永続性、非営利性という観点で問題があるとして、行政は、墓地の経営主体として、「市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい場合であっても宗教法人、公益法人等に限る」としています(S43.
4.5環衛第8058号)。

各地の条例でも墓地の経営主体をこれらに限定していますので、株式会社が墓地の経営許可を申請しても許可を受けられないということになります。

2 墓地の名義貸しとは

前記のように営利企業は墓地の経営許可を受けられません。しかし、大規模墓地・納骨堂を作り区画を販売することによって大きな利益を得ることを狙って営利企業が寺院の名義を借りて実質的に墓地経営をしようとする事例が見られます。

これを墓地の名義貸しといいます。

墓地の名義貸しは多様な形態がありますので一義的な定義はありませんが、概ね、宗教法人の名を借りて石材店や建設業者などの営利企業が墓地の販売収益の獲得を目的として、宗教法人に経済的便益を与え、その代わりに実質的に墓地経営の実権を握ることをいいます。

墓地にはその永続性、非営利性が求められることから、前記のとおり、経営主体が限定されています。名義貸しは、このような経営主体限定を潜脱するものですから、行政指針は墓地経営許可の条件として名義貸しが行われていないことを挙げています(H12.12.6生衛発1764)。

なお、最近は宗教法人が倒産する事例もしばしば見られますので、永続性という点で、営利企業よりも宗教法人の方が優越するとは一概には言えないかもしれません。

そして、名義貸しが発覚したときは、墓地の経営許可は取り消される可能性があります(墓地埋葬法第19条)。

3 名義貸しのリスク

寺院としては、土地の仕入れ、墓地の建設費用の全てを事業会社が負担してくれること、しかも名義貸料として多額の収入を得ることができることから、収支計画について十分な検討をすることなく、事業に参加してしまうかもしれません。

しかし、名義貸しには、以下のようなリスクがあります。

    1. ①墓地経営許可の申請、墓地造成工事契約など全ては寺院名義で行いますから、法的責任は寺院が負います。そのため、工事の途中で事業会社が倒産したような場合には、支払責任を寺院が負うことになります。
    2. ②事業会社は寺院の責任役員として参画することが通常のため、営利を追求する寺院運営を強いられる可能性があります。
    3. ③永代使用料、墓地管理料のほとんどは事業会社に入ることになり、墓地の規模、管理方法によっては、墓地区画完売後に収支が赤字に転落する可能性があります。

 

以上に加えて、名義貸しは墓地経営を都道府県知事の許可制とした墓地埋葬法第10条を潜脱する行為ですから、墓地埋葬法20条第2号によって、名義を借用した寺院は6か月以下の懲役刑又は2万円以下の罰金刑に処せられ、名義を貸した者もその共犯をして処罰されるおそれすらあります。

このようにいわゆる「名義貸し」には様々なリスクがあります。もっとも、事業会社が関わることの一切が否定されるべきとまではいうべきではないでしょう。寺院が事業計画に、運営ついて主体的、主導的に関わることが重要です。

4 墓地の名義貸しの裁判例

名義貸しによって受けた墓地経営許可を取り消された処分について、経営許可取消処分の取り消しを求めた訴訟で、裁判所は以下のように論じて、名義貸しは経営許可取消事由に該当すると判断しました(さいたま地裁H17.6.22)。

「墓地の経営許可における名義貸し行為は,名義を貸した者が形式上経営の許可を受けることによって,名義を借り受けた者が何ら行政上の手続を経ることなく実質的に墓地を経営することになるのであるから,無許可で墓地経営を行うことを助長し,隠ぺいする行為であって,上記のような法の趣旨を潜脱するものというべきである。

また,実質的にみても,名義貸し行為が行われると,名義を借りた者が実質的な経営者として墓地の永代使用権の販売等により利益を得ることになる一方,墓地利用者とのトラブル等の最終的な責任は何ら資金力のない名義を貸した者が負うことにもなり,最終的には墓地利用者の利益を害するおそれもある。

とすれば,そのような名義貸し行為によって何ら法的手続を経ないで墓地の経営を行うことは,特段の事情がない限り,それ自体墓地の永続性及び健全な経営の確保を著しく害するおそれのあるものというべきである。」

寺院法務の墓地の法的知識へ戻る

春田法律事務所オフィスご案内