寺院の単立化

寺院の単立化

1 包括被包括関係

包括宗教団体との方針の不一致や人事に関する不満などから宗派離脱(包括被包括関係解消)し、単立宗教法人となるケースがあります。

宗教法人法の前身である宗教団体法では、単位宗教団体は宗派に「所属」するとされ、支配服従の関係がありましたが、宗教法人法では「包括」するとの文言に改められ、法律上は、対等・平等の関係とされました。

このように対等・平等という建前上、被包括宗教法人が寺院規則の相互規定による「合意」によって包括宗教団体の宗制に服するという仕組みになっており(宗教法人法12条1項12号)、反対にそのような関係を解消したいときには自由に解消できるようになっています。

2 単立化の手続

⑴ 手続の概要

単立化の手続きは宗教法人法26条に規定があります。その手続きは以下のとおりです。

  • ①寺院規則に記載の包括被包括関係解消のための寺院内部の手続を履践する。
  • ②寺院規則変更の認証申請の少なくとも2か月前までに(2か月前までに公告を終了)、信者その他の利害関係人に、寺院規則の変更案の要旨を示してその旨を公告する。
  • ③公告と同時に包括宗教団体に対して包括被包括関係廃止の通知をする。
  • ④所轄庁に規則変更の認証申請
  • ⑤登記変更
 
⑵ 公告(上記②)

公告に対して異議が述べられたとしても、公告期間が経過すれば認証申請はできます。

もっとも、認容されるかどうかはさておき、檀信徒などから行政に審査請求をされたり、認証の取消訴訟を提起される可能性がありますし、将来の円滑な寺院運営のためには、異議を述べた利害関係人と協議を尽くすべきでしょう。

なお、公告方法について、例えば寺院の掲示板に10日間掲示すると寺院規則に規定されている場合、3月1日に掲示を開始したときは、3月11日が公告期間満了日となりますので、掲示を取り外すのは3月12日以降となります。

公告手続を履践したことは規則変更の認証申請の際に添付資料となります。そのため、利害関係人のうち3名以上の者に公告を確認した旨の文書に署名捺印をもらうとともに、当該確認者が公告開始時と終了時に公告を見ている状況を写真撮影しておくと良いでしょう。

⑶ 包括宗教団体によるチェック(上記③)

包括宗教団体は、被包括関係廃止に係る規則変更手続に上記①~③の手続に違反があると認めた時は、それを所轄庁及び文部科学大臣に通知することができます(宗教法人法26条4項)。

この通知に対して所轄庁は回答をする義務はありませんが、包括宗教団体からの通知を踏まえて慎重に審査することになります。

寺院規則には、宗派離脱のためには管長など包括宗教団体の承認を要すると規定されていることがあります。

しかし、かかる規定は単位宗教法人の信教の自由を制約することになりますので、宗教法人法26条1項後段は、かかる規定による必要はないと規定してています。そのため、かかる規定は無効と解されています。

⑷ 所轄庁による認証(上記④)、登記(上記⑤)

所轄庁は、「その変更しようとする事項がこの法律その他の法令の規定に適合していること」を審査します(宗教法人法28条1項1号)。

所轄庁は、責任役員会決議や総代の同意など寺院規則所定の内部手続(上記①)について、提出資料からその履践を確認しますが、責任役員が適法に選任されているかどうかまで調査する義務は原則としてありません。例外的に、例えば、包括宗教団体や利害関係人から、事前に明白な形での事実提供があった場合には調査する義務があるとされています(S53.9.14庁文宗12)。

所轄庁からの認証書の交付をもって寺院規則変更の効力が発生し、包括被包括関係解消の効力が発生します(宗教法人法30条)。そして、2週間以内に変更登記の申請をし(同法53条)、登記完了後は登記事項証明書を所轄庁へ提出します(同法9条)。

3 包括宗教団体による妨害

宗教法人法78条
1 宗教団体は、その包括する宗教法人と当該宗教団体との被包括関係の廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として、第二十六条第三項(第三十六条において準用する場合を含む。)の規定による通知前に又はその通知後二年間においては、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の役員又は規則で定めるその他の機関の地位にある者を解任し、これらの者の権限に制限を加え、その他これらの者に対し不利益の取扱をしてはならない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。

宗派から離脱することを妨害しようと包括宗教団体が単位宗教法人の代表役員を罷免したり除名したりする例があります。しかし、このような行為は宗教法人法78条1項、2項により無効となります。

冒頭に説明しましたとおり、宗教法人法においては包括宗教団体と単位宗教法人は対等・平等の関係にあり、包括・被包括関係に入るのも出るのも単位宗教法人の自由だからです。

なお、同規定で保障される離脱の自由は信仰上の理由に基づくものに限定されません(大阪高裁S57.7.27判タ479号105頁)。

もっとも、被包括関係解消の手続きは適正に行われていることが前提です。寺院規則所定の手続きに違反して被包括関係解消の手続きをしていた場合に、それを理由に懲戒処分をすることは法78条1項には違反しないとされています(最高裁H12.9.7)。

「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として」と規定されていますが、これに該当するかどうかの判断基準は必ずしも明確ではあります。

この点について、文部科学大臣の裁決があります(平成16年9月24日)。

同裁決は、被包括関係の廃止を防ぐことを目的とした処分であるかどうかについては、被包括関係の廃止の企てがなかったのであれば当該処分がされなかったような場合には、被包括関係の廃止を防ぐことを目的として処分がされたものと解するのが相当としています。

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