仮代表役員

仮代表役員

1 はじめに

寺院と住職(代表役員)の財産、収支が明確に区分されていないケースがしばしば見られます。

そのような寺院では、本来とるべき手続きを経ることなく、寺院の利益より住職(代表役員)個人の利益が優先された取引が行われがちです。

寺院の永続的な存続のためには、檀信徒からも税務署からも信頼を得られるよう法人と個人をしっかりと区分した寺院運営が必須です。

2 仮代表役員

代表役員は、寺院と「利益が相反する事項」については代表権がなく、仮代表役員を選任しなければならないと規定されています(宗教法人法21条1項)。

選任方法については寺院規則に定められています。

代表役員は、寺院の代表者として寺院の利益に沿って行動することが求められています。
ところが、代表役員と寺院の利害が衝突する状況が生じ得ます。このような場合に、寺院の利益に沿った行動を担保するために仮代表役員の設置が求められるのです。

利益相反事項については、代表役員は、対外的に代表権がないだけでなく、対内的にも責任役員会において議決権はありません。

3 選任方法

仮代表役員の資格と選任方法は、寺院規則に定められています(宗教法人法12条1項5号)。

責任役員及び総代の合議で選定すると規定されているケースや、包括宗教法人の特定の地位にある人を充てると規定しているケースなどがあります。

選定する人物として、親族や縁故者など代表役員の意向が反映される人物は適切ではないでしょう。

仮代表役員は、当該利益相反事項の処理が終われば、任務が終了すれば、当然に退任となります。

仮代表役員は登記事項ではありませんが、役員名簿にはその就任時と退任時に記載をしましょう。

4 利益相反事項とは

利益相反事項とは、代表役員の利益と寺院の利益が実質的に対立する事項をいいます。

例えば、寺院と代表役員個人の間で売買をしたり、寺院から代表役員が貸付を受けたり、個人的な用途の借り入れのために寺院の財産を担保に供する行為などが典型的な利益相反事項です。

他方、代表役員が寺院に財産を無償譲渡したり、無利息で貸し付けたりする行為は、寺院の利益を損ないませんので、利益が相反する事項には該当しません。

5 仮代表役員を選任しなかった場合の取引の効力

宗教法人法、寺院規則に違反して、仮代表役員を選任せずに行った利益相反取引については、代表役員には当該取引をする権限がありませんので、無効となります。

そのため、事後的に責任役員会から追認を得ない限り、代表役員個人が賠償責任を負うこととなります。

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