立ち退きの裁判の流れを専門弁護士が徹底解説!

最終更新日: 2024年01月28日

立ち退き料の交渉・裁判の流れを専門弁護士が徹底解説!役立つ判例も紹介

・賃借人に立ち退きをして欲しい
・立ち退きの交渉や裁判の流れを知りたい
・立ち退きを求められたがどうすれば良いのか

建物を建て替えたい、自分で使いたいなどの理由で大家が賃借人に立ち退きを求めたいという場合があります。

賃借人の立場からすれば家賃の滞納その他の契約違反もなく借りてきたのに突然立ち退きを求められて困惑するでしょう。

今回は不動産の立ち退き問題について交渉や裁判の流れを専門弁護士が解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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立ち退きの交渉から裁判までの流れ

立ち退きの交渉の始まり

立ち退き問題は、賃貸人や不動産管理会社から賃借人のもとに書面が届くことで始まります。

通常、その内容は老朽化したから建物を立て替えるなど立ち退きを求める理由とともに、今度の賃貸借契約の更新はしないのでいつまでに退去して欲しいということが記載されています。借地借家法上、賃貸借契約を更新しない場合、賃貸人は、契約終了の1年前から6か月前までの間に契約更新拒絶の通知をする必要があるとされているのです。

もっとも、このような借地借家法のルールを無視して、例えば「来月末までに退去してください」などの通知がなされることもあり、法律知識の無い賃借人が退去しないといけないものと勘違いして退去してしまうというケースも少なくありません。

立ち退きは拒否できるのか

このように突然、立ち退きを求められることになった賃借人としては、立ち退かなければならないのではと不安に思うでしょう。

しかし、ほとんどの場合は賃借人が立ち退きに同意しない限りは立ち退かずに済みます。借地借家法は、賃借人を厚く保護しているので賃貸人の都合で簡単に追い出すことはできないのです。

借地借家法は、賃貸借契約の更新拒絶をするためには正当事由が必要と定めています。そして、この正当事由は賃貸人と賃借人の物件使用の必要性、従前の賃貸借の経緯、物件の現況、立ち退き料の提供などの事情を考慮して判断されます。

立ち退きの交渉においては、賃貸人の更新拒絶にそれなりの事情があり、かつ立ち退き料の金額について賃貸人と賃借人で折り合いがついた場合にのみ賃借人は立ち退きに応じることになると考えておけば良いのです。

立ち退き料の交渉

賃貸人と賃借人の立ち退きの交渉では、専ら、立ち退き料の金額が争点となるでしょう。

立ち退き料の計算方法は法律には定められていません。引っ越し費用、移転先の物件の契約金(仲介手数料、礼金)、現在の家賃と移転先の家賃との差額、事業用物件であれば休業補償などを考慮して立ち退き料の金額を交渉していくことになります。

一般的な住宅であれば100万円から200万円ほどが立ち退き料の相場となりますが交渉次第でそれ以上もそれ以下もあり得ます。店舗など事業用物件の場合は、ビジネスの内容や経営状態によって立ち退き料の金額は大きく異なり、1000万円を超えるケースも少なくありません。

立ち退き交渉の終了

立ち退き料や立ち退きの時期について賃貸人と賃借人で折り合いがついた場合は、立ち退きに関する合意書を作成します。

合意書の内容としては、立ち退き料の一部をまず前金として支払うこと立ち退き期限までに立ち退きをしたことを確認したら残金を支払うことを定めます。原状回復の免除や立ち退き料と別途に敷金の返還をするのかについても忘れずに定めます。

他方、立ち退きの条件について合意に至らなかった場合は、賃貸人は賃借人を相手に明渡請求訴訟という裁判を起こすかどうかを検討します。正当事由を裁判所が認めてくれる可能性が乏しいと判断した場合や、立ち退きの計画を見直して賃借人が自主的に退去するのを待つという判断をした場合には、裁判には至らずこの時点で立ち退き問題はいったん終了となります。

立ち退きの裁判(訴訟)

次は、交渉では立ち退き問題が決着せず、賃貸人が賃借人に対して裁判、つまり明渡請求訴訟を起こした場合について説明します。

立ち退きの裁判の流れと期間

立ち退きの裁判の争点は、賃貸借契約の更新拒絶に求められている正当事由の存否です。この点について賃貸人と賃借人の双方が主張、立証をしていくことになります。1か月に1回のペースで裁判期日がスケジュールされ、概ね交互に準備書面や証拠を提出していく形で裁判は進んでいきます。

裁判の期間ですが、少なくとも半年はかかりますし、通常であれば1年から1年半ほどの期間を要します。

立ち退きの裁判の終結

双方の主張、証拠提出がひと通り終わったところで、裁判所はそれまでになされた主張、立証によって正当事由が認められるのかどうか大体の心証を形成します。そして、この段階で裁判官の調整のもと和解の協議がなされるのが通常です。

もちろん、賃借人が絶対に立ち退きをには応じないという姿勢であれば和解の余地はありませんので、そのまま判決に進むことになります。しかし、そうでなければ立ち退き料の金額などの条件について調整、交渉がなされます。そして、双方が合意に至ったときは、裁判上の和解という形で解決となり裁判も終結します。

一方、和解に至らなかったときは賃貸人、賃借人の当事者尋問や必要な証人尋問が実施され、その後、裁判所が判決を下します。正当事由を認めた場合には、通常は、幾らの立ち退き料の支払いと引き換えに物件を明け渡せという判決になります。正当事由を認めなかった場合、つまり賃貸人が敗訴した場合には原告の請求を棄却するという判決となります。

まとめ

以上、立ち退きの交渉や裁判について概要を解説しました。

特に幾らの立ち退き料で交渉をするべきなのかについては、大家側も賃借人側も的確な判断が難しいことでしょう。立ち退き問題でお困りの場合は、まずは立ち退き問題の専門弁護士にご相談ください。

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