いじめは立派な犯罪行為です!警察にいじめを相談する際のポイントを弁護士が解説します。
2023年03月10日
「子どもがいじめを受けたので、警察に相談したい。警察に相談するメリットは?」
「いじめを警察に相談したが、全く動いてくれない」
いじめは、時に、犯罪行為に該当することがあり、警察に相談しなければならない事案もあると思います。軽い気持ちでしたいじめであったとしても、警察が動けば事件になり、関係者を巻き込んだ大きな騒動に発展していきます。
しかし、一方で、警察は、いじめについて子ども同士がしたことだとして介入することを避けるきらいもあり、肝心な時に動いてくれないことも多いです。
そこで、警察にいじめを相談する際のポイントについて、いじめ問題に詳しい弁護士が解説してまいります。
- 警察がいじめ事件に介入することで、大きく事件解決に前進することがあります。
- 警察は全てのいじめ事件を受理できるわけではないので、いじめの重大性を強くアピールすることが必要です。
この記事を監修したのは

- 弁護士篠田 匡志
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 立教大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 卒業
金沢市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所
いじめを警察に相談するメリット
警察が動くことにより、当然、加害者に対しては大きなプレッシャーを与えることができます。これはいじめ事案においても例外ではありません。いじめを警察に相談するメリットについて、見ていきましょう。
- いじめは多くの場合犯罪に該当
- 刑事罰に問える
- 示談の申し入れを期待できる
いじめは多くの場合犯罪に該当
「いじめ」という言葉にまとめられると、あまり事態の重大性が伝わりにくくなってしまいますが、その実態は、暴行、傷害、恐喝、名誉棄損、器物破損といった、刑法に規定された犯罪行為に該当することが大半です。
本来、刑法に規定されて禁止されている行為であるにもかかわらず、「いじめ」という概念に落とし込まれることで、どこか気軽に人を傷つけてしまうことができてしまうのが、いじめの恐ろしいところです。
しかしながら、刑法に規定された行為に該当するということは、国家が刑事罰を科すことのできる違法行為であり、警察が捜査する対象となりえます。
刑事罰に問える
刑事罰とは、懲役刑や、罰金刑のことです。いじめという行為が刑法に抵触した場合、加害者は刑事責任を負わなければなりません。
ただ、いじめは未成年者の間で行われることが多いため、少年事件として責任を問うことが通常かと思われます。少年事件の場合、少年院送致、保護観察といった処分が想定されており、いわゆる懲役刑や、罰金刑が適用されることはありません。
また、刑事事件は結論に至るまでに逮捕、勾留、捜索差押えといった強制捜査も予定されています。強制捜査自体は刑罰ではないものの、国家権力により身体の自由を制限されたり、住居の平穏を害されるという重大な不利益が生じるので、それ自体の影響も計り知れません。
示談の申し入れを期待できる
いじめについて警察が動く場合、いじめの加害者としても、自身が刑罰を受けるのではないかという状況に置かれます。この状況から逃れるため、被害者と示談するという発想に至る加害者も少なくありません。
そこで、いじめについて警察が動き出した案件においては、加害者側から示談の申し入れを期待することができます。示談では、加害者からの謝罪はもちろん、示談金の提示があるのが通常ですので、被害者としては、最短ルートでの解決を見込むことができます。
いじめで警察を動かすためのポイント
いじめ問題について、常に警察が介入するわけではありません。特に、警察としては、いじめは学校の問題、子ども同士の問題ととらえ、当事者間での解決を勧めてくることが往々にしてあります。
しかしながら、いじめ問題であっても、警察を動かしやすくするポイントはいくつかあります。
- 被害届を提出する
- 証拠を集める
- 弁護士に相談する
被害届を提出する
闇雲に警察の窓口に行き、いじめを訴えたところで、すぐに警察が動くわけではありません。まずは、正式に被害届を出すという手続が必要です。
警察は、日々、多数の事件を同時に処理しています。人的資源も有限ですから、残念ながら、全ての事件を受け付けているわけではなく、受理する事件を相当厳選しているのが実情です。
特に、いじめのように子ども同士で起こる諍いにあっては、学校内部の問題であるなどと言われ、そもそも事件性が否定され、被害届すら受理されない事態になることも非常に多いのです。
そのため、被害届を出すにあたっては、ぜひとも警察には動いていただく必要がある重大事件であることを、簡潔かつ説得的に記載することが極めて重要なのです。
証拠を集める
被害者が被害届を出すにあたり、警察から「証拠はありますか」と聞かれることがあります。警察は、加害者の犯罪を証明するための証拠を集めるために捜査をするので、被害者が申告する被害を裏付ける証拠の有無は非常に重要となってきます。
そこで、被害届を提出するにあたっては、裏付けとなる証拠も同時に添付すると、警察が事件性を認識しやすくなり、事件として受理される可能性を大きく高めることができます。
弁護士に相談する
警察が被害届を受け付けてくれない場合、警察が事件化すべきでないと判断した理由があるはずです。それを改善することができれば、当初、全く動こうとしなかった警察の判断を覆すことも不可能ではありません。
しかし、なぜ警察が被害届を受理しなかったのかを分析するのは、一般の方では困難ですから、専門の弁護士に相談して、改善点を見つけることをお勧めします。
警察が動こうとしない多くの理由としては、被害届の書き方が警察に受け入れられない場合、証拠が不十分であるという場合が多いと思います。不足している部分を補って、再度、被害届を提出することによって、結論が変わることもあります。
いじめ事件で警察が入った後の流れ
次に、警察がいじめについて被害届を受理して介入した場合、どのような流れになるのか説明していきます。
- 警察の捜査
- 検察の捜査
- 裁判所の手続
警察の捜査
警察は、被害届を受理して捜査を開始すると、まずは加害者・被害者など関係者からの聞き取りを行うことが多いと思います。もっとも、証拠が不十分な状況で加害者を呼んでしまっても、有効な聴取にならない可能性があるので、加害者の呼び出しを後回しにすることもあります。
また、警察は、関係者の供述に対する裏付け捜査も入念に行います。いじめ被害者の供述が間違いないのか、防犯カメラ、ライン履歴などの物証との整合性を確認します。そのほかにも、いじめの目撃者や、担任教諭などからも話を聞き、関係者供述との矛盾がないかどうかを確認することも重要です。
検察の捜査
警察の捜査が完了すると、いわゆる「書類送検」という手続が行われ、捜査資料の一式が検察庁に送られます。
検察庁は、捜査資料を精査した上で、いじめの加害者を起訴するかどうかを決定する役割があります。検察庁において、起訴する決定をした場合、刑事裁判を開始して懲役刑を決定する手続に移ることになります。
検察庁でも補充捜査を行いますので、いじめの加害者・被害者の取調べを行うことが通常です。
裁判所の手続
いじめ加害者が成人の場合には、刑事裁判手続を行い、懲役刑を科すかどうかを決定することになります。
ただ、いじめは、多くの場合、未成年者間において行われますので、裁判所の手続は、ほとんど少年事件として処理されています。少年事件は家庭裁判所において行われ、最終的には、少年審判として何らかの結論が出ることになります。
少年審判手続では、少年鑑別所において加害者少年を留置し、当該少年の身上に対する調査を行うこともあります。また、家庭裁判所の調査官が加害者少年と面談をして、更生に向けたアドバイスも予定されています。
最終的に、少年審判では、少年院送致、保護観察といった処分が加害者少年に言い渡されることになります。いずれにしても、家庭裁判所は、少年の行った行為、家庭環境、更生の見込みなどをふまえて、最適な処遇を決定し、二度といじめなどしないように矯正教育を行います。
まとめ
いじめは、犯罪行為であり、警察が介入すれば、加害者と被害者との関係に大きな影響を与えます。被害者にとっては、いじめ問題の解決を大きく前進させることにつながります。
しかしながら、いじめが子どもの間における問題という前提であるせいか、警察の介入は非常に消極的なのも事実です。それでも、悪質ないじめ事案であれば、警察が介入することもためらうべきではありませんので、警察による捜査の必要性を強く訴求しなければなりません。
いじめについて警察に介入してもらいたいのに、警察がなかなか動いてくれない場合、訴求方法次第で結論が変わることもあります。いじめ問題で困ったとき、一度、専門弁護士にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。