リフォーム工事の工期遅延~損賠賠償請求の可否~

リフォーム工事の工期遅延~損賠賠償請求の可否~

2019年08月19日

1 はじめに

建築またはリフォーム工事を依頼した際、いつまでに工事を完了して物件を発注者に引き渡すのか、そのような取り決めをすること(引渡期日の決定)がほとんどです。しかし、施工がいつも順調に行くとは限りません。

施工の途中で、何らかの問題が生じて、引渡期日までに工事が終わらない事案もしばしば見受けられます(最近では、現場に入る職人が非常に貴重な存在となっているため、十分な余裕を持っていても、職人の日程が合わないなどの理由で工期が遅れることが極めて多くなっています。
)。

このように、引渡期日までに工事目的物を引き渡すことができないとき、発注者は、施工業者に対して工期遅延を理由として、損害賠償請求をすることができます。

では、具体的に工期遅延の損害賠償とはどのようなもので、実際にどのように請求していくものなのか、以下、具体的にご説明します。

2 リフォーム工事の工期の遅れを証明するには

工期遅延を理由とする損害賠償を請求するには、施工業者の債務不履行を主張立証する必要がありますが、それはさほど難しいことではありません。
特定の引渡期日を定めていたこと、その引渡期日を徒過したことさえ明らかにできれば十分といえます。

3 工事の遅延による損賠賠償金

(1)工期遅延の損害、損害の計算方法

工期遅延による「損害」とは、引渡しが遅れたことで発注者が負担せざるをえなくなった費用のことです。
原則として、1日に発生する損害額を明らかにした上で、遅延日数を乗じて計算することになります。

そして、工期遅延によって発生する損害は、たとえば、工事中に物件を出ていかなければならないために他で賃借した仮住まい物件に対する家賃、早期に物件を利用することができていたら得られた営業利益などが考えられます。

また、他に即動ける別業者を入れて工期に間に合わせる方法をとる場合、当該別業者から見積もりをとって、その見積書・請求書記載の金額を計上する場合もありえます。

1日の損害額として考えるとそれほど大きな金額にならないようにも思えますが、工事物件が都内のタワーマンションや、大型ショッピングセンターなどであるとすると、1日の工期の遅れがとてつもない金額になることもあります。

(2)契約書、約款による違約金の定め

しかし、実際には、契約書あるいは約款などで、遅延日数に応じて、請負代金額から出来高部分に係る請負代金相当額を控除した金額に対し、一定の年率で計算した額を違約金として請求できるとする規定を置くことがほとんどです。このような規定を法律上「損害賠償の予定」と呼んでいます。

このような規定が契約書や約款にあることで、期日に債務を履行しなかったことを証明すれば約定の違約金を請求することができる一方、実際の損害額が約定の違約金よりも高い、あるいは安いと証明したとしても、追加請求あるいは減額請求することができなくなりますので、注意が必要です。

(3)違約金の金額には要注意!

実際の運用においては、遅延日数1日につきわずか10,000分の4に相当する額を違約金とする規定が多いように思われます。

請負代金額から出来高部分相当額を控除するため、実際に算出される金額は相当低額になります(事案によりますが、1日数千円程度にしかならない場合がほとんどです。
)。

このような金額が、実際に発注者に生じる損害を十分に填補できるものでないことは、容易に予想できるでしょう。しかしながら、予め、契約書や約款などにこのような規定が置かれていることを看過して、契約を締結する場合がほとんどであると思われますので、工期遅延に係る損害賠償請求をしたとしても、低い金額しか認められないことが多いのです。

ただし、損害賠償の予定をしていても「出来高部分相当額」に相当する金額を減少させて違約金の増額を狙うことはできます。

「出来高部分相当額」とは施工者が一方的に見積もりした金額が一次的に提示されるため、発注者としては当該見積もりの内容と、実際の施工内容を入念に検討して、提示された「出来高部分相当額」が本当に正しいのか検証する必要があります。

4 工期を遅延したことにやむを得ない理由がある場合

(1) 職人を確保できなかったことは工期遅延の理由にはならない

上述したとおり、工期遅延の損害賠償は、特定の引渡期日を定めていたこと、その引渡期日を徒過したことさえ明らかにできれば、比較的容易に認められます。

これに対して、工期遅延がやむをえないものであったとの主張を受けることがあります。最近では、職人や作業員の確保ができなかった、といった理由によって、工期を遅延せざるをえなくなったという弁解が多いと思われます。

職人や作業員の確保の問題は、施工者側の問題であり、発注者にはあずかり知らぬ事項ですので、これだけの事情をもって工期遅延が正当化されるものではありません。

(2) 工期遅延の原因が発注者側にある場合

しかし、発注者側の指示によって当初の見積もりになかった追加工事が発生した、あるいは発注者側で求めた特殊な資材を仕入れるために工事を止めざるを得なかったなど、工期遅延の原因が発注者によるという事情がある場合、施工者において責めに帰すことはできませんので、工期遅延に係る損害賠償義務を負わないという結論になりやすいといえます。

(3) 引き渡しは終わっているから工期遅延はないという主張に要注意

さらに、発注者としては未完成の工事について、工期遅延の損害賠償請求を行ったところ、施工者から一応の引渡しは完了しているから工期の遅延はないという争われ方をする場合もあります。

要するに、まだ工事を予定しているものの、一応、物件を引き渡して、発注者の方でも物件の利用を開始しているのであるから、工期遅延の損害は発生していないので、工期遅延に係る支払義務などないという考え方に基づくものです。

この点、裁判実務上は、「引渡し=工事の完了」とまでは捉えていないようであり、当初見積もりした工事項目中、未了の工事が多少残っていたとしても、物件の利用を開始しているなどした場合、一応、引渡しがあったものとしています。

実際の事例でも、物件の鍵を受け取っていたり、家具を搬入して居住を開始しているなどの事情が認められますと、一応の引渡しがあったと認められることが多いと思われます(もっとも、引渡しがあったかどうかは、法律的な判断が必要となる事項ですので、最終的な結論を出すのはそれほど簡単なことではありません。)。この場合、未施工の工事については、減額、あるいは履行の完了を求めうるにすぎないということになります。

5 最後に

以上、工期遅延に対する損害賠償についてご説明しましたが、建築、リフォームのトラブルが発生した際、頻繁に発生する問題であり、当事者においても非常に関心の高い問題です。

比較的簡単に請求が可能である分、工事請負契約書において施工者の責任を限定する規定が盛り込まれているなどの理由で、工期遅延の損害額は低額となりがちです。

そのため、裁判前交渉の段階では、工期遅延により実際に発注者が被った損害とは程遠い金額しか提示されないことも珍しくありません。

工期遅延による損害は算定が容易であり、非常に大きな金額を算出することも可能ではありますが、実際にその金額を請求するかどうかは、一層、慎重に見極める必要があります。

この記事を書いたのは

弁護士篠田 匡志
東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
金沢市にて総合法律事務所勤務
春田法律事務所入所

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