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リフォームまたは建築工事で工事遅延が起きてしまったら?損害賠償請求の可否や金額を専門の弁護士がご説明します

リフォームまたは建築工事で工事遅延が起きてしまったら?損害賠償請求の可否や金額を専門の弁護士がご説明します

2019年08月19日

リフォームまたは建築工事で工事遅延が起きてしまったら?損害賠償請求の可否や金額を専門の弁護士がご説明します。

リフォームまたは建築工事(以下、「リフォーム・建築工事」と表記します)を依頼するとき、いつまでに工事を完了して物件を引き渡すのか、施主及び施工業者(請負人)の間でその取り決め(引渡期日の決定)をすることがほとんどです。

しかし、工事がいつも順調に進むとは限りません。

工事の途中で問題が発生して、施工業者が引渡期日に物件を引き渡せないという事案はしばしば見受けられます(特に最近では、職人の人手不足が深刻となっているため、資材を確保し、工程に十分な余裕があっても、職人の日程が合わないなどの理由によって工期が遅れることが極めて多くなっています。)。このように、引渡期日に物件が引き渡されなかったとき、施主は、施工業者に対して、工期遅延による損賠賠償請求をすることができます。

では、工期遅延による損害賠償請求とはどのようなもので、実際にどのように請求していくものなのでしょうか。以下、具体的にご説明いたします。

この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
金沢市にて総合法律事務所勤務
春田法律事務所入所

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建築工事の工期遅延による損害賠償金について

建築工事の工期遅延による損害賠償金についてまず、そもそも「損害」とは何でしょうか。

いま問題となっているのは(たとえば「建築工事請負契約」という名称の)契約です。契約を結ぶからには、当然、なにか目的があるはずです。

そして、契約が守られず、結果として目的が達成できなかったのならば、その埋め合わせをしてほしい、と考えるのはもっともだと思います。これはそのまま民法上の大原則でもあります。実際に規定を見てみましょう。

民法415条1項は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき…債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」と定めています。

先ほど述べたこととほぼ同趣旨の規定です。

この「債務者」とは、契約の当事者のうち、契約上の義務を果たさないこと(債務不履行)が問題になっている当事者のことです。

いま、リフォーム・建築工事を工期までに完了させ、物件を引渡期日までに引き渡す義務が履行されないことを問題としていますから、ここでいう「債務者」とは施工業者のことを指します。
また、施工業者において建物完成が間に合わず、工期が遅れ、物件を引渡期日までに引き渡せないことが、「その債務の本旨に従った履行をしない」ことに該当します。

以上のように見ていくと、工期遅延による「損害」とは、物件の引渡しが遅れたことによって、契約の目的を達成できなくなったことによる不利益や、新たに負担せざるを得なくなった費用などが考えられます。

  1. 損害賠償金の計算方法について
  2. 契約書約款の定めはどのようになっているのか
  3. 違約金の金額には要注意!

損害賠償金の計算方法について

工期が遅れるにしたがって増加していく「損害」の場合、原則として、1日に発生する損害額を明らかにした上で、遅延日数を乗じて計算することになります。

たとえば、物件の引渡しが2か月半遅れたために、引渡期日以降も、家賃月額10万円で仮住まいをしなければならなかった場合には、

10(万円/月)÷30(日割り)×75(遅延日数)=25万円

が「損害」となります(また、この仮住まいのため、引っ越し作業を要した場合には、その引っ越し費用も「損害」に含まれると考えてよいでしょう。)。

また、当該物件を商売のために使用していたため、工期遅延を理由に休業期間を延ばさなければならなくなったという場合には、その間に得られたであろう営業利益も「損害」に当たります。

さらに、施主が契約の目的を達成するために、別の業者に当該物件のリフォーム・建築工事を依頼して工期に間に合わせる方法をとった場合、当該別の建築業者から見積もりをもらって、その見積書・請求書記載の金額を「損害」として計上することも考えられます。

契約書約款の定めはどのようになっているのか

以上が民法上の大原則ですが、現実には、契約書あるいは約款などで、遅延日数に応じて、請負代金額から出来高部分に係る請負代金相当額を控除した金額に対し、一定の年率で計算した額を違約金として請求できるとする規定を置くことがほとんどです。これは、専門的には「損害賠償額の予定」と呼ばれています。

民法にも、「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」との規定があります(民法420条1項)。

この規定は何のために存在するのでしょうか。先の、施主が別の業者に依頼した例を使って考えてみましょう。

施主が別の業者に依頼した結果、遅れていたリフォーム・建築工事が完了したので、施主がもともとの施工業者に対し、「別の業者に依頼したために余分にかかった500万円を支払ってくれ」と損害賠償請求をしたとします。

これに対して、施工業者が、「あの工事の完成に、500万円もかからないはずだ。到底受け入れられない」と争った場合、500万円という「損害」の金銭的評価が妥当であるのか、つまり損害賠償額の立証というものをめぐって、当事者間で争いが生じることになります。

この争いが法廷にまで持ち込まれるとなると、それこそ多くの訴訟費用や時間がかかって大変です。

こうした余計な手間を省くため、「損害賠償額」も契約によってあらかじめ定めてしまおう、という趣旨の規定が「損害賠償額の予定」なのです。

このような規定が契約書や約款にあることで、約定の期日に債務が履行されなかったことさえ証明すれば、約定の違約金を請求することができます。

違約金の金額には要注意!

しかし、現実の「損害賠償額の予定」は、施主にとって酷な規定かもしれません。

まず、「損害賠償額の予定」も契約の一部であって、その合意内容は当事者を拘束するため、施主が実際の損害額は約定の違約金よりも高いことを証明したとしても、追加請求することができなくなります(実際の損害額が低い場合もしかり)。

また、実際の運用においては、遅延日数1日につき、請負代金額のわずか10,000分の4に相当する額を違約金とする規定が多いように思われます。

さらに、請負代金額から出来高部分相当額を控除するため、実際に算出される金額は相当低額になります(事案によりますが、1日数千円程度にしかならない場合がほとんどです。)。

このような金額が、実際に施主に生じる損害を十分に填補できるものでないことは、容易に予想できるでしょう。

さらに、一般の方が、新築や、リフォーム工事を契約する多くの場合において、あらかじめ、契約書や約款などの中に、このような規定が置かれていることを看過して、契約を締結する場合がほとんどであると思われます。

このように、工期遅延によって施主には多大な損害の発生が予想されるものの、請負契約において損害賠償の予定を定めているために、工期遅延による損害賠償請求をしたとしても、低い金額しか認められないことが多いのです。

ただし、損害賠償の予定をしていても「出来高部分相当額」に相当する金額を減少させて違約金の増額を狙うことはできます。「出来高部分相当額」とは施工業者が一方的に見積もりした金額が一次的に提示されるため、施主としては当該見積もりの内容と、実際の施工内容を入念に検討して、提示された「出来高部分相当額」が本当に正しいのか検証する必要があります。

建築工事の遅延はどんな場合に起こるのか、遅延を証明するには?

建築工事の遅延はどんな場合に起こるのか、遅延を証明するには?リフォーム・建築工事の遅延は、先に述べた人手不足の他、工事時期(天候や暦、繁忙期の影響)、資材不足、施工ミス、また不可抗力の天災・事故などの、さまざまな理由によって生じます。

工期遅延を理由とする損害賠償請求をするには、施工業者の債務不履行を主張立証する必要がありますが、それはさほど難しいことではありません。

特定の引渡期日を定めていたこと、そしてその引渡期日を経過したことさえ明らかにできれば十分といえます。

建築工事遅延でやむを得ない理由がある場合、損害賠償請求はできないのか?

建築工事遅延でやむを得ない理由がある場合、損害賠償請求はできないのか?たとえば、大規模な地震を理由に工期遅延が発生した場合でも、施工業者はなお損害賠償をしなければならないのでしょうか。常識的には、いくら契約に反したとはいえ、こうした場合に施工業者には非はないため、損害賠償責任を免じることが妥当と考えられます。民法にも同趣旨の規定があります。

先に紹介した民法415条1項の続きに、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」と規定されています。

「この限りでない」とは、「損害の賠償を請求すること」ができない、ということです。大規模な地震が「債務者」、つまり施工業者の「責めに帰することができない事由」であることは、自明のことでしょう。

遅延の原因が施工業者側にあったケース、施主側にあったケースをそれぞれ具体例を交えご説明します。

  1. 遅延の原因が施工業者側にあったケース
  2. 遅延の原因が施主側にあったケース

ケース1 遅延の原因が施工業者側にあったケース

不可抗力の天災などが原因ではない場合、先に述べたとおり、工期遅延による損害賠償は、特定の引渡期日を定めていたこと、そしてその引渡期日を経過したことさえ明らかにできれば、比較的容易に認められます。

これに対して、施工業者から、「工期遅延はやむをえないものであった」との主張を受けることがあります。

最近では、職人の確保ができなかった、といった理由によって、工期を遅延せざるをえなくなったという弁解が多いと思われます。このような弁解は妥当なのでしょうか。

先に、損害賠償責任を免じる趣旨の規定を紹介した際、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」、という文言があったことにお気づきでしょうか。

これは要するに、債務者が損害賠償責任を免じられるかどうかは、約定の期日までに債務者が義務を履行できなかった原因が、「その契約ならば、債務者として当然想定しておくべき事情であったといえるかどうか」に、かかっているということです。

「建築請負工事契約」においては、人手が足りなかったから「工期遅延はやむをえないもの」であったと考えることは、通常はできないように思われます。

この場合、施工業者は職人の確保におけるリスクも想定して工程を考え、そのうえで引渡期日を合意すべきであるからです。人手の確保は施主にはあずかり知らぬことであるため、この事情のみをもって引渡期日を守らないことが許されるはずがありません。

また、裁判実務において「工期遅延はやむをえないもの」であったことを証明する責任は、工期遅延をした側、つまり施工業者にあります。

施工業者において、事前に職人を確保していたにもかかわらず、当日、職人の都合で来れなくなったため工期が遅延することになったとの事情があったとしても、そのような事情を証拠によって証明することは、相当困難です。

ケース2 遅延の原因が施主側にあったケース

その反面、施主の指示によって当初の見積もりになかった追加工事が発生した、あるいは施主が求めた特殊な資材を仕入れるために工事を止めざるを得なかったなど、工期遅延の原因が施主にあったという事情が認められる場合、施工業者において当然想定すべき事情であったとはいえないため、工期遅延による損害賠償責任を免じられるという結論になりやすいといえます。

建物引渡し後にも建築工事の遅延損害金を請求できるのか

建物引渡し後にも建築工事の遅延損害金を請求できるのかここまでは、工期が遅れ、引渡期日に物件の引渡しがされなかった場合を考えてきました。では、必ずしもリフォーム・建築工事は完了していないものの、引渡期日に物件の引渡しはされた、という場合においても、なお損害賠償請求は可能なのでしょうか。

そもそも請負契約においては、請負人(施工業者)による「仕事の完成」が目的とされています(民法632条)。

この「仕事」の内容は問題となる契約によってさまざまですが、「建築工事請負契約」ならば、工事の完成から、物件の引渡しまでが「仕事」と考えてよいでしょう。

そのため、施主としては、工事はいまだ完成しておらず、予定されていた物件全体を取得できていないため、工期遅延による損害賠償請求ができてもよさそうです。

他方で、施工業者から、一応の工程を終了し、物件の引渡しまでした(「一応の引渡し」がされた)から、工期遅延はない、という主張がされる場合もあります。

工事が完成していないとはいえ、物件は契約上の引渡期日にきちんと引き渡しており、施主のほうでもその利用を開始しているのであるから、工期遅延による損害は観念できず、損害賠償義務はない、という考え方に基づく主張です。

この点、裁判実務上も、一応の引渡しがされたと言えれば、「仕事の完成」があったものと認め、その後の遅延損害金の請求を否定する傾向にあります。
そうであれば、裁判実務における「一応の引渡し」をどのようにして認定するのかが、非常に重要になります。
仕事の完成を証明する典型例としては、工事完了確認書や、工事引渡書が挙げられます。

ただ、そのような書面がない場合であっても、東京高判昭和36年12月20日高民集14巻10号730頁、判例時報295号28頁は、工事が最後の工程を一応終えたか否かを仕事の完成の基準としており、参考になります。この判例は、工事が中断され予定された最後の工程まで終えていない場合は工事の未完成であって、他方で、「工事が予定された最後の工程まで一応終了し、ただそれが不完全なため補修を加えなければ完全なものとはならないという場合には仕事は完成した」との解釈を示しています。
簡潔にまとめますと、未了の工事が工事全体における主要なものであるかどうか、施主による物件の利用開始があったかどうかなどが、「仕事の完成」の判断基準としています。

実際の事例でも、物件の鍵を受け取っていたり、家具を搬入して居住を開始しているなどの事情が認められたりしますと、一応の引渡しがあったと認められることが多いと思われます(もっとも、引渡しがあったかどうかは、法律的な判断が必要となる問題であるため、最終的な結論を出すのはそれほど簡単なことではありません。)。

この場合、未了の工事については、工事の完了(民法562条、559条)、あるいは請負代金額の減額(民法562条、563条、559条)を求めうるにすぎないということになります。

まとめ

まとめ以上、工期遅延による損害賠償についてご説明しましたが、建築、リフォームのトラブルが発生した際、頻繁に発生する問題であり、当事者においても非常に関心の高い問題です。

比較的簡単に請求が可能である分、契約書において施工業者の責任を限定する規定が盛り込まれているなどの理由で、工期遅延による損害額は低額となりがちです。

そのため、裁判前交渉の段階では、工期遅延により実際に施主が被った損害とは程遠い金額しか提示されないことも珍しくありません。

工期遅延による損害は算定が容易であり、非常に大きな金額を算出することも可能ではありますが、実際にその金額を請求するかどうかは、一層、慎重に見極める必要があります。

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この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
金沢市にて総合法律事務所勤務
春田法律事務所入所

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