効力ある不倫の誓約書とは?書く時のポイントも含めて専門弁護士が解説

最終更新日: 2022年08月23日

効力ある不倫の誓約書とは?書く時のポイントも含めて専門弁護士が解説不倫相手の配偶者と直接会って慰謝料に関する誓約書にサインをするよう迫られ、サインをしてしまった。

このような事案が、不倫の慰謝料のご相談を頂いた際に、相当数あります。このようにひとたび誓約書にサインをすると必ず慰謝料を支払わなければならなくなるのでしょうか。

今回は、誓約書の効力の有無を判断するポイントをご紹介します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫の誓約書の効力を判断するポイント

そもそも、誓約書とは、一般的に、「書かれた約束事について守ります」と誓った書面です。つまり、誓約書は、その約束事についての合意に至るまでのプロセスが落とし込まれた結果として作成されるものです。

そのため、合意に至る経緯に無理がある場合、そのことを理由に誓約書の効力が無効となることがあります。

合意に至る経緯に無理がある場合、つまり誓約書の効力が無効となるポイントとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 不倫慰謝料の誓約書はどのような経緯で作成されたのか
  2. 不倫の慰謝料金額は法外ではないか
  3. 不倫の誓約書の体裁はどのようなものか

不倫慰謝料の誓約書はどのような経緯で作成されたのか

不倫の慰謝料を支払う誓約書などの書面を作成した経緯として、恫喝されたり、脅された、だまされたといった事情や、支払うことが不可能だと伝えたのに後日また話し合えばいいからとりあえずサインするよう言われた等の事実があれば効力を争う余地があります。

これらの事実を立証するために、録音があればなお良いですが、録音がなくとも証拠となりうるものを総合的に検討することで解決の糸口がつかめることがあります。

一方、不倫相手に慰謝料を請求する側の立場からは、不倫を行った不倫相手と直接顔を合わせることは苦痛でしょうから、できるだけ一回で話をつけたいという気持ちが強いと思われます。

しかし、強引に慰謝料支払の誓約書を作成すると、後日請求してもその効力を争われる可能性が出てきます。一度持ち帰って検討させることは後日の紛争を回避するために有用です。

誓約書などの書面の効力が有効か否かは最終的には裁判所の判断によって決まりますが、訴訟となれば解決まで長期化することは避けれられません。

したがって、誓約書を作成する場合には、相手方に無理矢理書かせるのではなく、冷静に話し合い、特に慰謝料が高額な場合には、一旦持ち帰って検討させるようにしましょう。

不倫の慰謝料金額は法外ではないか

誓約書に記載された不倫の慰謝料の金額が高額に過ぎる場合には、それだけでも公序良俗違反(民法90条)として無効になりえます。

また、高額過ぎる金額支払を記載せざるを得なくなった経緯として、上記のように強引な誓約書の作成を推認する事情となり得ます。

不倫の誓約書の体裁はどのようなものか

例えば、不倫の慰謝料として1000万円を支払うという記載のある誓約書が手帳を破いた紙片に手書きでなぐり書きされていた場合、どのような印象を受けるでしょうか。

支払うと記載した不倫相手が本当に1000万円を支払う意思で作成したのか疑問が生じます。本当に納得の上でサインしたものかどうかは、このような誓約書の体裁からも判断されるのです。

不倫の誓約書における求償問題

不倫の慰謝料は、法律上、不倫をした配偶者と不倫相手が連帯責任として支払うことになっています。

不倫で生じた慰謝料を不倫相手が支払った場合、不倫相手は、不貞配偶者に対して、責任割合に応じた金額を自身に対して支払うよう請求することができます。

例えば、不倫相手が100万円の慰謝料を支払ったのであれば、不倫をした配偶者に対してそのうち60万円や50万円を支払うよう請求できます。

これを求償といいます。この求償請求をする権利を求償権といいます。

不倫をされた配偶者との誓約書において、不倫相手が不倫をした配偶者に対して求償を行うことを避けるため、「夫婦が離婚しない場合には、不倫相手が不貞配偶者に対して求償する権利を放棄する」旨の条項が記載されている場合があります。

しかし、あくまで求償は不倫をした配偶者と不倫相手との間の問題ですから、不倫をされた配偶者に対して求償権を放棄すると約束したとしても、法的効力はないのです。

このような求償権の放棄に法的効力を持たせるためには、求償請求をする相手である不倫をした配偶者も誓約書にサインをさせる必要があります。

不倫の誓約書が離婚後に与える効力

夫婦間で作成された誓約書は、あくまで両者が夫婦であることを前提として作成されるのが通常ですから、離婚後に効力を有することはありません。つまり、離婚した時点で、誓約書の効力は無効となります。

もっとも、例外的に、夫婦間で作成された誓約書が離婚後にも効力を有することが前提となっている場合があります。

例えば、夫婦が離婚した場合でも慰謝料を支払う旨合意しているような場合には、離婚した時点で直ちに誓約書が無効となることはありません。

不倫の誓約書を作成したのに慰謝料の支払いがない場合

誓約書を作成したにもかかわらず、慰謝料が支払われない場合、どのようになるでしょうか。

誓約書記載通りの慰謝料の支払いを求める訴訟を提起し、相手方が勝訴した場合には、強制執行がされことになります。

仮に強制執行によって給与が差し押さえられた場合、勤務先に差押えに関する書類が届き、不倫が原因であることはバレないにしても、何かしら支払い請求がなされていることが勤務先にバレてしまいます。

したがって、まずは裁判となる前に、交渉によって誓約書の再交渉や慰謝料の減額等の示談を目指し、一度弁護士にご相談してみてはいかがでしょうか。

一方、不倫相手に慰謝料を請求する側としては、強制執行が功を奏しないこともあります。

強制執行の対象財産を探さなければならない上、強制執行自体も裁判所に提出する書類作成等専門家のアドバイス抜きでは容易ではありません。

また、そもそも不倫相手に十分な財産がない場合には、慰謝料は一部のみしか請求できません。

つまり、誓約書などの書面が有効と判断され、勝訴判決を得たとしても、必ずしも強制執行が可能かつ容易とは限らないのです。

したがって、慰謝料が高額であり不倫相手が実際に支払うことが困難な誓約書の書面を作成するよりも、支払金額は相場の範囲内だが現実的に支払える内容の誓約書を作成した方が、任意に不倫相手が支払をする可能性が高まると考えることもできます。

まとめ

以上のように、不倫を行い、慰謝料に関する誓約書にサインをしてしまった場合でも、書面作成の経緯に問題があったり、慰謝料の額が法外であったりすることを理由として、誓約書の効力が無効となる場合があります。

誓約書の効力を争うためには、作成経緯を早期に証拠化することが重要です。また、作成経緯や記載内容次第では、再度交渉をすることで、和解や慰謝料の減額等を行える可能性があります。

誓約書を交わしたのに慰謝料を払ってこない、高額な慰謝料の支払いを約する誓約書にサインをさせられてしまったという方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

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