器物損壊罪の被害者になったらすべきこと

器物損壊罪の被害者になったらすべきこと

2020年06月09日

1 器物損壊されても犯人不明なら泣き寝入りに

自身の物を破損されてしまった場合、被害者としては、その損害を回復するために、その修理費用や買替費用を加害者に対して請求したいところです。

当然ですが、そのような損害賠償請求をする相手は加害者ですから、犯人が不明なら被害者は損害賠償請求をすることができません。泣き寝入りになってしまうのです。

したがって、器物損壊事件の被害者になったときは、まずは、犯人を特定する必要があります。

そして、犯人特定のためには、被害者自身の力だけでは限界がありますので、捜査機関に被害届を出し、捜査機関による捜査を求めましょう。

2 器物損壊罪の被害届の出し方、書き方

被害者が被害届を出すときは、被害発生現場の最寄りの警察署に行き、受付で器物損壊事件の被害届を出したい旨を伝えます。すると、担当部署の警察官が応対してくれます。

担当者から被害を確認した状況等の聴取を受けますので、それに一つ一つ答えます。物の財産的価値がわかるように、購入金額などがわかるのであれば、それも伝えましょう。

以上の聴取内容を踏まえ、担当者が作成した被害届にサインする又は担当者の指示に従って、直筆で被害届を記入して被害届を提出します。

3 器物損壊罪の証拠がないと警察は動かない、捜査しない?

被害申告があったときは、警察は被害届を受理しなければならないことになっています(犯罪捜査規範61条1項)。もっとも、被害届を受理したとしても、捜査機関は捜査をする義務を負いません。

証拠が乏しいケース、犯罪ではない疑いが強いケースなどでは捜査がなされないこともあります。そのようなケースでは、被害申告があった際に、担当警察官からその旨を説明され、被害届の提出を断念してもらう方向に説得されることも多いでしょう。

そのような場合は刑事告訴を検討します。

4 器物損壊罪の告訴状を出して刑事告訴を

捜査をすれば証拠が得られる可能性が十分あるのに警察が被害届を受理してくれない、あるいは被害届は受理してくれたものの、捜査をしてもらえないということがあります。

時間が経過するにつれて証拠を得ることが困難になっていきますので、最終的な被害回復も困難になります。

そこで、このような場合には、刑事告訴を検討します。

被害届は単に犯罪被害の申告に過ぎませんが、告訴は、犯人の処罰を求める意思表示が含まれます。

そして、告訴が被害届と異なる重要な点は、告訴があった事件については、警察は捜査をする義務を負う点です(犯罪捜査規範67条)。そのため、告訴があったときは、警察は必要な捜査をして、検察庁へ事件を送致することになります。

この告訴についても警察は受理する義務があるのですが(犯罪捜査規範63条1項)、捜査義務が発生するため、被害届以上に、容易に受理してもらえないケースが多くあります。

そのため、告訴をする際には、弁護士に依頼し、充実した告訴状を作成して、告訴手続についても弁護士にお願いすると良いでしょう。

5 器物損壊罪の被害届は時効までに出せばいい?

器物損壊罪の時効は3年です。では、3年が経過するまでに被害届を出せばよいかというとそうではありません。

親告罪の告訴は被害者が犯人をしった日から6か月を経過するとこれをすることができなくなります。器物損壊罪は親告罪ですから、被害届、告訴は遅くとも6か月以内に出さなければなりません。

また、犯罪を証明するための証拠は時間が経過するにつれて収集、保全が困難になります。

そのため被害を知ったにもかかわらず、被害届を出さずに放置し、数か月後、半年後などに被害届を出そうとしても、警察が被害届を受理してくれる可能性は乏しいでしょう。

よって、被害届は被害を知ったら直ぐに出しましょう。

6 器物損壊罪の加害者を民事で訴える(損害賠償請求)

被害届を出して、犯人が特定された場合、加害者(被疑者)の方から示談交渉を申し入れられることがあります。

そのような場合は、示談金として損害賠償金の支払いを受けることができます。

他方、加害者(被疑者)から示談交渉の申し入れがない場合や、十分な示談金の提案がない場合には、刑事事件とは別に民事訴訟を検討します。

民事訴訟で損害賠償請求をすれば、加害者に対して強制的に損害賠償をさせることができます。

7 器物損壊の損害賠償金の中心は財産的被害の損害額

器物損壊事件では、物を破損させることで、物自体が滅失してしまったり、修理が必要になったりします。

そのため、被害者は、物の時価相当額や修理費用を損害額として加害者に対して損害賠償金を請求することになります。

示談交渉においては、迷惑料としてプラスアルファの金銭の支払いを求めることも多くありますが、民事訴訟ではそのような迷惑料の請求をすることができません。

また、民事訴訟をする場合には弁護士費用などの費用もかかりますので、示談交渉において少なくとも財産的損害額の賠償金を提示されている場合には、その提示額で示談とした方が良いでしょう。

8 器物損壊事件における精神的苦痛の慰謝料請求、慰謝料の相場は?

大切な物を破損されてしまった、犯行を見て怖い思いをしたなど、器物損壊事件で精神的苦痛を被ったことを理由に慰謝料請求をしたいと考える被害者もいます。

もっとも、物を破損させられた場合、通常は、その物の財産的損害の賠償を受けたことをもって、損害は全て補填されたと考えることになります。よって、原則として、慰謝料請求は認められません。

もっとも、器物損壊罪にはペットなど動物に怪我をさせられた場合を含みます。また、例えば、糞を付けられたり、精液をかけられたという場合も器物損壊罪に該当します。

これらのようなケースでは精神的苦痛に対する慰謝料が認められる可能性は十分あるでしょう。もっとも、その場合も慰謝料相場としては、10万円から30万円ほどにとどまるでしょう。

9 器物損壊事件で弁護士費用の請求もできるか

被害者が加害者に対して賠償を求めることのできる損害は、加害行為と(相当)因果関係のある損害です。

では、器物損壊事件で加害者に対して民事訴訟を起こす場合、被害者は、自身が依頼して支出した弁護士費用についても請求することはできるのでしょうか。

民事訴訟を効果的に進めるためには、専門知識のある弁護士に依頼した方がもちろん良いのですが、弁護士に依頼をしなくても、被害者本人で訴状を作成して、訴訟を提起することはできます。

このように弁護士に依頼することは必然ではないことから、支出した弁護士費用の全額については、(相当)因果関係は認められません。基本的には、裁判所が判決で認容した損害賠償金額の1割相当額だけが弁護士費用として損害賠償の対象となります。

以上、器物損壊事件の被害者になった場合の対応についてご説明しました。器物損壊事件の被疑者となったときは、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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