立ち退き紛争を解決するルールとは?借地借家法の重要論点について専門弁護士が解説します!

2022年02月09日

立ち退き紛争を解決するルールとは?借地借家法の重要論点について専門弁護士が解説します!
「建物が老朽化したので建替えをしたい。正当事由があるのに、賃借人から立退料を請求されている」
「大家の都合で退去を求められているが、提示されている立退料に納得がいかない」

立ち退き紛争が生じる場合、賃貸人の主張する理由に正当事由があるのかどうか、賃貸人から提示された立退料の金額が妥当なのか、多くの事案においてこのような点が主要な争いとなることが多いものと思われます。

ここでは、借地借家法が、立ち退き紛争をどのようなルールに基づいて解決しようとしているのかを紐解くとともに、なぜ立ち退き紛争を解決するために弁護士が必要となってくるのか、その理由について説明していきます。

それでは、早速、まいりましょう。

この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 卒業
金沢市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

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弁護士が教える借地借家法の立ち退き手続

まずは立ち退き紛争が、どのように始まり、交渉が進んでいくのか、簡単に見ていきます。

また、紛争である以上、時に、裁判手続に移行することもあります。立ち退きの裁判が具体的にどのように進んでいくのかについても、以下で簡単に説明します。

  • 立ち退き紛争のきっかけ
  • 借地借家法が想定している立ち退き手続
  • 立ち退き紛争の裁判手続

立ち退き紛争のきっかけ

立ち退き紛争は、賃貸人が、賃借人に退去通知を送ることから始まります。この退去通知には、多くの場合、次回の更新をしない旨が記載されていることが通常で、契約期間満了前までに退去するよう求められます。

賃借人において、賃貸人の退去通知に異議がない場合、スムーズに立ち退きが実現できますが、全ての賃借人において上手くいくわけではありません。 容易に立ち退きができない賃借人においては、当然、生活や、転居先の補償が必要となりますが、その点のケアが不十分であれば、感情的な対立を生じさせ、紛争となります。

借地借家法が想定している立ち退き手続

借地借家法において想定している立ち退き手続として、同法26条1項があります。

「建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。」

このように更新拒絶等の通知には、契約終了の1年前から6カ月前までという通知タイミングの制限がかかっているので、早すぎてもいけませんし、遅すぎてもいけません。

また、更新しない旨の通知をしただけで、賃貸借契約を終了できるわけではありません。
借地借家法第28条によると、「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知・・・は、・・・正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」と定められています。

通知タイミングを守って更新拒絶等の通知をしても、正当事由がなければ、賃貸人から一方的に契約を終了させて、賃借人を退去させることはできないのです。

立ち退き紛争の裁判手続

上述したとおり、適法な手続きをとって更新拒絶等の通知をしたにもかかわらず、賃借人が退去に応じない場合、訴訟手続によって退去を請求する方法もあります。

裁判所の命ずる判決は、最も重い紛争解決基準です。
立ち退きの判決が出ても不法占拠を継続される場合がありますが、判決さえ得ていれば、明渡断行の強制執行によって、強制的に排除を行うことができます(ただし、強制執行にかかる執行官の費用、引っ越し業者の費用などは、賃貸人がまず負担しなければなりません。)。

判決は、否が応でも、命じられた内容を強制させることのできる強力な効力を持っていますから、どうしても退去に応じない賃借人に対しては唯一の手段といえます。

他方、訴訟手続は、判決という非常に重い命令を出す以上、慎重に審理をしなければならず、時間がかかります。
また、訴訟の結果、賃貸人の更新拒絶等について正当事由が認められない場合には、賃貸人の訴えは棄却されます。この場合、賃借人は、引き続き、賃貸物件に居住し続けることができます。

立ち退きが認められるための借地借家法28条正当事由を弁護士が解説

賃貸人の立ち退き請求に正当事由がなければ、立ち退きが認められないのですが、どのような場合に正当事由が認められるのかは、条文を読んでも判然としません。

そこで、以下では、具体的な立ち退きの理由とともに、正当事由が認められるのはどのような場合なのかを説明していきます。

  • 老朽化が立ち退きの正当事由になるか
  • 賃貸人の都合が正当事由になるか
  • 賃借人の違反行為が正当事由になるか

老朽化が立ち退きの正当事由になるか

借地借家法第28条には正当事由の考慮要素として「建物の現況」と記載があります。ここでいう「建物の現況」とは、建物自体の物理的状況、すなわち、建替えの必要性が生ずるに至っていることを示します。

具体的には、建物が物理的に老朽化している状況にあるか、社会的・経済的効用を失っている状況にあるかどうか、などによって判断されています。

では、建物が老朽化している場合、立退料なしで賃借人を退去させることはできるのでしょうか。
実際の裁判例を見てみますと、ほとんどの事例において立退料の提示がなければ、正当事由を肯定しておらず、「取壊し・建替え」の必要性のみで正当事由があるとした例はあまりみられません。

そのため、建物の老朽化を理由とする立ち退き事案においては、具体的に老朽化している事情に加え、相応の立退料の提示をすることで、初めて正当事由を満たすものと考えるべきでしょう。

賃貸人の都合が正当事由になるか

賃貸人の都合について、借地借家法第28条は「建物の賃貸人・・・が建物の使用を必要とする事情」を正当事由の考慮要素の一つとして挙げています。このことから、賃貸人の都合もまた、正当事由となりうるとも考えられます。

しかしながら、実際の裁判例において、賃貸人側の居住の必要性が、賃借人の居住の必要性を上回っていることが明らかと言えなければ、正当事由は認められていないようです。
賃貸人側の必要性が「明らかに」上回っていることが必要なので、どちらも甲乙つけ難いという程度であれば、賃貸人側の都合だけで正当事由を肯定することは困難でしょう。

もっとも、賃貸人の必要性と賃借人の必要性が同等というケースでも、立退料の提示額次第では、正当事由を肯定しています。

賃借人の違反行為が正当事由になるか

賃借人に賃料の不払いや、用法違反といった債務不履行が認められる場合、更新拒絶等の正当事由として考慮されます。
ただし、賃貸借契約を解除する場合には、信頼関係が破壊されたと認められる事情が必要であると考えられていることから、賃料の支払いが遅れ気味などの軽微な違反行為があるというだけで正当事由が認められるものではありません。

ただ、更新拒絶等の手続では、少なくとも6か月の猶予期間は与えられることから、即時退去となる債務不履行解除において求められる重大な違反を備える必要まではないでしょう。

借地借家法ではどのように立退料を決めている?弁護士による立ち退き費用の計算方法

これまでの説明において述べたとおり、正当事由を肯定してもらうためには、賃貸人が建物を必要とする理由はもちろんのこと、多くの事案において立退料が必要となります。それでは、具体的に、どの程度の立退料を準備すれば、正当事由が認められ、立ち退きが実現するのでしょうか。立退料の算定のルールについてみていきましょう。

算定のルール
  1. 借地借家法に立退料請求権を付与する規定はない
  2. 立退料の計算方法
  3. 立退料の増額要素

借地借家法に立退料請求権を付与する規定はない

実は、借地借家法において、立退料とは「賃貸人が・・・賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出」をした場合に正当事由の一事情として考慮する(借地借家法28条)としか定めておりません。

ほかに賃借人に対して、立退料を請求する権利を付与した条文はありませんから、立退料は、賃借人に保障された請求権ではないことがわかります。

結局のところ、賃貸人において立退料を支払う意思が全くないのであれば、賃借人がこれを受け取る見込みもなくなってしまうのです。もっとも、立退料の提示がなければ正当事由が認められない場合、賃借人としては立退料の提示がない以上、退去を強制されることもありません。

立退料の計算方法

立退料の計算方法は、居住用なのか、事業用なのかによって、大きく変わってきます。事業用物件の場合、様々な算定要素が絡み、事案ごとの算定となるため、ここでは一般的な居住用建物の計算方法をご紹介します。

まず、多くの事案において、賃借人が引越しをするにあたって最低限かかってくる費用が補償されます。たとえば、以下のような費用が考えられます。

  • 引っ越し業者に支払う費用
  • 新たに賃貸借契約をする際に必要な契約金・礼金など

また、上記の費用だけでは、引越しに伴い生じる損失を十分に賄うことはできません。

賃借人としては、予期せぬタイミングで退去を強いられることから、同じ賃料で同様の物件を新たに借りることも容易でなく、従前の賃料よりも増額した条件で賃貸借契約を結ばざるを得なくなることでしょう。

そのため、一定期間の差額賃料を補償する事例も多いです。差額賃料を補償する期間は、事案によって様々ですが、1~3年間となります。

さらに、賃貸人の都合で住居を退去しなければならない賃借人の負担は相当なものです。それにもかかわらず、損失が補填されるだけで経済的メリットが何もないのであれば、誰も立ち退きに協力しないでしょう。
そこで、立ち退き交渉では、賃借人に早く退去してもらうために、賃貸人からの任意の上乗せとして、協力金や、迷惑料名目の金銭が支払われることもあるのです。

以上を合計すると、一般的な1LDKの居住用物件の場合、100~150万円程度の立退料が計算されることが多いといえます。

立退料の増額要素

事案によっては、上記の立退料の算定基準のほかに、大きく立退料が増額されたり、賃借人に良い条件が付加されたりすることもあります。

たとえば、都心の人気エリアの立ち退き紛争の場合、賃貸人側において私的な再開発による土地の有効活用を意図している可能性があります。

賃貸人において大きな利益を見込んでいるのであれば、再開発による利益の一部を立退料に反映させることも可能です。
場合によっては、一人暮らし用のマンションであっても、数百万円の立退料が支払われることもあるのです。

賃貸人に十分なキャッシュがないため金銭的な補償額が伸びてこない場合であっても、原状回復費用の負担を免除する、あるいは、フリーレントの期間を設定させることで、実質的に経済的利益を得ることで、上乗せを図ることもあります。

借地借家法だけでは解決できない?立ち退き交渉において弁護士が必要な理由

これまで借地借家法の定める立ち退き紛争の解決ルールについて説明してきました。しかしながら、紛争状態におかれた当事者同士が、実際にルールを適切に運用することは、容易なことではありません。

そこで、なぜ立ち退き交渉において弁護士が必要となるのか、賃貸人側・賃借人側の双方の立場から詳しく説明していきます。

  • 賃貸人側で弁護士が必要な理由
  • 賃借人側で弁護士が必要な理由

賃貸人側で弁護士が必要な理由

借地借家法の正当事由の考え方が非常に難解であることや、裁判所の正当事由の見方が一般人に分かりにくいことから、多くの賃貸人において、法律の解釈を誤解したまま交渉を開始してしまうケースが見受けられます。

要するに、正当事由の説明が不十分にもかかわらず、立退料を全く提示しないか、あるいは立退料を提示しても非常に少ない金額を賃借人に提示して、一方的な退去を迫ってしまうのです。

しかし、賃借人にとって、賃貸借契約の終了を迫られることは、自身の生活の拠点を失うことであり、人生の一大事であります。そのような重要な事項であるにもかかわらず、賃貸人の誤った法律の解釈によって住居を追われるようなことになれば、トラブルが発生してもおかしくありません。

そのため、賃貸人が立ち退き交渉で失敗しないためには、法的に正確な見通しをもって、適切な手続きを履践しながら、進めていくことが肝要です。
とはいえ、法律に詳しくない一般の方が、正確な見通しをもって立ち退き交渉を開始することは困難ですから、予め、立ち退き交渉に精通した弁護士と相談しておく必要があるわけです。

また、賃貸人に法律的な知識があったとしても、一方的に退去を迫るだけでは、交渉がこじれてしまいます。立ち退き交渉を始める以上、少しでも早く賃借人に退去してもらうことが、結果的には賃貸人の利益となります。しかし、交渉がこじれてしまえば、立ち退きが完了する時期も大きくずれ込んでしまい、結果的に大きな損失となります。

このことから、立ち退きの交渉に慣れている専門弁護士を上手に使い、賃借人と真摯に向き合いながら、最小限の費用と時間で立ち退きに協力してもらえる解決策を導き出すことが非常に有効なのです。

賃借人側で弁護士が必要な理由

賃貸人側で弁護士が必要な理由のところで述べたように、賃貸人において正当事由を誤解していることが、賃借人の交渉においてもネックになってきます。

実際の紛争例をみても、賃貸人としては、老朽化や、家族の介護など、正当事由に少しでも引っかかりがありそうな事情があれば、立退料の提示は一切不要と考え、話し合いが進まないことも多いです。

しかし、これまで説明してきたとおり、立退料の提示なく、賃貸人の正当事由が認められるためのハードルは極めて高く、ほとんどの事案において立退料の提示が要求されているのが裁判実務であります。

このような裁判所における正当事由の解釈指針について、一般の賃借人が、立ち退き交渉の中で、賃貸人に説明することは困難でしょう。まして、賃貸人をして、十分な立退料の提示が必要であることを納得いただくのは至難の業といえます。

そこで、専門弁護士において、いかに立退料の提示なくして、正当事由を充足することが困難であるのかを説得的に説明する必要があるのです。
紛争がこじれてしまった立ち退き事案では、賃貸人の考え方が変わらない限り、話し合いは平行線のまま進まないので、特に弁護士の存在が重要といえます。

まとめ

借地借家法が定める立ち退き紛争の解決ルールについて、紛争の流れ、正当事由の解釈、立退料の算定方法を説明しつつ、見ていきました。

しかしながら、紛争当事者の立場になると、法律の解釈を自身の都合の良いように捉えたりして、誤解が生まれます。また、感情が入り込み、交渉がこじれてしまうということもあります。

立ち退き交渉は、正当事由の解釈が難解であるなど、交渉が頓挫しやすいポイントがいくつもある難しい交渉です。そのため、弁護士などの専門家の力を借りることが必要な場面も多いので、立ち退き交渉に行き詰まったときは、一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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この記事を監修したのは

篠田 匡志
弁護士篠田 匡志
第一東京弁護士会 所属
経歴
立教大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 卒業
金沢市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

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