いじめの加害者に内容証明を送付する際のポイントについて、専門弁護士が徹底解説します!

2023年02月07日

いじめの加害者に内容証明を送付する際のポイントについて、専門弁護士が徹底解説します!

  • 「いじめを受けたので、加害者に対して内容証明を送り、制裁を加えたい」
  • 「いじめの問題をきちんと学校にも認識してもらうため、学校に内容証明を送りたいが、どのような記載にすればよいかわからない」

いじめによって深刻な被害を受けた場合、被害者は、加害者に対する責任追及手段を検討します。法的手続に進む場合も当然あるでしょう。
その際に、弁護士が始めに採る手段として「内容証明の送付」があります。

ただし、弁護士も何となく始めに内容証明を送っているのではなく、きちんとした戦略意図をもって、相手方にこれを送付していますので、内容証明郵便という手段を使う以上、その機能を正確に理解しておく必要があります。

そこで、専門弁護士が、いじめの加害者に対して内容証明を送付する際のポイントについて、詳しく解説していきます。

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●内容証明郵便は、手段であって目的ではありません。いじめを無くすために最適な手段として内容証明が必要なのか、よく検討するべきです。
●いじめの加害者に内容証明を送る際、いじめを止めたいのか、損害賠償をしたいのか、きちんと意図をもって文章を作成しましょう。
●内容証明を送ると、受け取った相手との関係性が大きく変わることになります。このことに十分に注意してから、内容証明を送るべきです。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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いじめの加害者へ内容証明を送付する理由

加害者に対して請求をかけたいとき、何となく内容証明という方法を選んでいるかもしれませんが、弁護士としては、明確な意図があって内容証明という方法を選択しています。まずは、いじめの加害者に対して、内容証明を送付する理由について、目的別にみていきます。

  • いじめを止めさせたい
  • いじめに対して損害賠償請求をしたい
  • 法的手続の準備をしたい

いじめを止めさせたい

いじめ問題を解決するために法律事務所に相談される方は、とても酷いいじめに遭った方ばかりです。

まずは、加害者によるいじめを止めさせて、生活の平穏を取り戻すことが重要です。そのための解決策の一つとして、加害者に対して、いじめを直ちに止めるよう、内容証明郵便を使って、警告を出す方法が考えられます。

内容証明郵便という書面が届くと、受け取った側としては、非常に強いプレッシャーを受けます。特に、それが法律事務所や、弁護士からということであれば、受け取った者の感じるプレッシャーは相当なものでしょう。

加害者としては、軽い気持ちでいじめを継続していたかもしれませんが、内容証明を受け取って、自身が大それたことをしてしまったと痛感し、いじめをぴたりと止めることが多いです。

いじめに対して損害賠償請求をしたい

内容証明郵便は、損害賠償の請求書としての機能もあります。むしろ、弁護士が内容証明郵便を発送する際、請求書としてこれを用いることが一般的です。

通知書の内容としては、請求の理由、請求金額、金額の算定根拠、支払方法などを具体的に記載します。

また、上記内容に加え、支払期限を定め、その期限までに入金がないと法的手続に移行する旨を記載することもあるので、内容証明通知により請求を受け取った相手方としては、相当なプレッシャーになるはずです。

このことは、いじめの加害者の場合も例外ではありません。通知された請求金額を目の当たりにして、自分のしたいじめの対価を知ることになるのです。具体的な金額を提示し、しかも期限までにそれに応じなければ法的手続が待っているかもしれないとの文章は、受け手にとって、相当強いメッセージであるといえます。

法的手続の準備をしたい

内容証明郵便による通知には、消滅時効を一時的に止める機能もあります(民法150条1項)。これを催告による時効の完成猶予と言います。

具体的には、内容証明郵便による通知を発送した日から6カ月間の間は消滅時効の完成を阻止することができると解釈されています(大判大正2年3月20日民録19巻137頁)。

いじめの時効が完成間際に請求に踏み切った場合、交渉中に時効が完成してしまうことを防ぐため、まずは時効の完成猶予を阻止すべく、内容証明郵便を加害者に送る必要があります。

催告による時効の完成猶予の効力が生じれば、仮に交渉中に時効期間が経過したとしても、催告した日から6カ月間は猶予が与えられます。

ただ、催告による時効の完成猶予期間中にさらに催告をして、完成猶予期間を延長することは認められていません(民法150条2項)。

そのため、時効の完成猶予のために催告をしたにもかかわらず、6カ月以内に交渉がまとまらない場合には、時効中断事由となる訴訟提起をしたり(民法147条1項1号)、協議を行う旨の合意書面(民法151条)を作成するなどの対応が必要となります。

内容証明を送る相手方はいじめの加害者に限るのか

内容証明を送る相手方は加害者に限るのでしょうか。実は、内容証明を送る相手方といっても、考えなしに加害者に送ってよいものではありません。内容証明の送付先となる相手方についても、しっかりと検討する必要があります。

  • 加害者を相手方とする場合
  • 学校を相手方とする場合

加害者を相手方とする場合

いじめをした加害者を相手方とするのが通常ですが、実際には、いじめの加害者といっても未成年者であることが多いです。

たとえば、いじめの加害者が小学生であった場合、このような子に内容証明郵便による通知書を送ることには、誰もが強い違和感を感じることと思います。そもそも、民法上は、未成年者に対して、原則として義務を負担させないため、小学生に内容証明を送る意味もありません。

そこで、未成年者の違法行為によって生じる責任については、親権者法定代理人である両親がその責任を負うとされているので(民法714条)、加害者本人を相手方とするのではなく、加害者の両親を相手方として内容証明郵便による通知書を送るべきでしょう。

学校を相手方とする場合

未成年の加害者両親から、十分な対応がなされれば問題はありませんが、時に、いじめによって受けた損害が、一般的な家庭では到底賄えないような金額になる事案もあります。

このような事案においては、加害者側のみならず、いじめを看過した学校にも責任が認められるなら、学校に対しても損害賠償請求を行うことが考えられます。

もっとも、内容証明を送付する先は、よく検討しなければなりません。「学校」はあくまで児童生徒の教育を行うための施設であり、責任の主体となるのは、その学校を建てた運営者であります。

国公立であれば国または地方公共団体が相手方となり、私立であれば学校法人が相手方となるので、それぞれ学校の運営主体が指定している住所に内容証明を送ることになります。

いじめを受けた被害者が内容証明を送る際に気を付けるべきポイント

被害者の最終目的は、いじめを無くすことにあると思います。内容証明を送るということは、いじめを無くすという目的のための手段であって、目的であってはなりません。

内容証明を送ることによって、いじめがかえって激化したり、解決困難になっては意味がないので、内容証明を送る前に気を付けなければならないポイントもいくつかあります。

  • 内容証明の記載内容に注意する
  • いじめ加害者との関係性に注意する
  • 学校生活の環境変化に注意する

内容証明の記載内容に注意する

言うまでもないことですが、内容証明に記載する文言はとても重要です。内容証明郵便に記載して相手方に通知した内容は、一言一句が保存され、証拠として残りますので、訴訟になれば裁判官も確認することになりますし、通知を受けた相手もこれを利用することができます。

そのため、内容証明に記載すべき内容は、間違いのない事実としておくことが望ましく、特に、過剰な言い回しは避けるべきです。

一般の方が、冷静さを書いたまま、感情の赴くままに文書を作成してしまうと、侮辱的表現であったり、脅迫的言辞が含まれてしまうこともありますので、このような記載は絶対に避けなければなりません。

いじめ加害者との関係性に注意する

内容証明郵便による通知は、法的紛争を前提とした場合でない限り、通常、相手方に送ることはありません。相手方の立場からすると、内容証明郵便を受領した場合、被害者側が攻撃を仕掛けてきたと思うはずです。

そのため、内容証明の送付後は、被害者側と加害者側の関係性が、いわゆる紛争状態に移行することになります。
紛争状態に移行するということは、当然、学校における、被害児童生徒と加害児童生徒の関係性も大きく変わることとなります。加害児童生徒が、被害児童生徒を敵視するようになり、陰湿ないじめがかえって増加する可能性もあります。

内容証明郵便を送るのであれば、必ず、加害者との関係性が大きく変わりうることを前提にしなければなりません。「クラスが別になった」「学校が別になった」という状況であれば良いですが、内容証明郵便を送ったことで状況が悪化しては元も子もありません。

学校生活の環境変化に注意する

学校の責任を追及するため、学校側に内容証明を送る場合も、加害者に対してする場合と同様、注意しなければならない点があります。

学校が内容証明を受け取ると、学校組織の内部で調査などが開始されます。いじめの事実関係について、児童生徒の聞き取り調査が開始されることもあるでしょう。クラス全体にいじめの事実が周知されることもありますので、被害児童生徒としては、学校生活に大きな影響を受けることになります。

また、学校の責任を追及する損害賠償通知については、当然、学校側にとって気持ちの良いものではないです。請求をしてきた被害児童生徒の側を敵対視することはないでしょうが、事実上、被害者側と学校とのコミュニケーションは取りづらくなるでしょう。

特に、いじめを防止するには、学校による協力は不可欠と思いますので、学校を敵に回してしまうと、今後のいじめ防止策の構築が難しくなってしまいます。学校に損害賠償請求をする内容証明を送るのは、基本的には、卒業後など、学校との関係が切れた後にすべきです。

まとめ

弁護士が内容証明を送る際、目的意識をもって、意図した効果が最大限に発揮されるように考えて、文章を作成しています。

内容証明郵便が持つ強いメッセージ性がある反面、これを受け取った側に与える影響も非常に大きいため、発送前に考慮しなければならない事項は非常に多いです。送付した場合のメリット、デメリットを比較して、場合によっては、内容証明ではなく、他の手段を検討すべきこともあるでしょう。

内容証明をどのような用途で使うにせよ、内容証明というのは手段であって、目的ではありません。最終的には、いじめを止めるという目的に合致した最適な手段が内容証明であれば、是非とも使用すべきですし、そうでなければ内容証明以外の方法を選択すべきです。

子どもたちをいじめの苦しみから解放する最適な手段を選択するためにも、内容証明を送るべきかどうか困ったときは、まずは専門の弁護士に相談してください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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