婚前契約書の法的効力

婚前契約書の法的効力

2019年07月12日

最近、夫婦生活を円満に送るため、結婚前に「婚前契約書」を作成するカップルが増えています。このような婚前契約書には、どこまでの法的効力が認められるのでしょうか?

せっかく作成しても無効になっては意味がありませんので、法的に有効な婚前契約書の作成方法についての正しい知識を持っておく必要があります。

そこで、以下、法的に真面目な婚前契約を作成する場合の留意点をご説明します。

婚前契約書にも法的効力が認められる

婚前契約書も契約書である以上、原則として、法的効力、つまり法的な拘束力は認められます。もっとも、どんな取り決めでも契約書に書けば法的効力が認められるわけではありません。

法的効力があるとは、約束に違反した場合に、裁判を起こしてその約束の履行を強制できることをいいます。
法的効力が認められる事項は専ら以下のようなお金や財産に関するものです。

①婚姻前と婚姻後の財産について夫婦のどちらかの特有財産とするか、共有財産とするか
②財産の使用収益と管理の方法
③同居中や別居後の婚姻費用の分担方法
④夫婦それぞれの債務の負担
⑤離婚の際の慰謝料、財産分与、養育費

法的効力が認められない事項

では、どのような事項は法的効力が認められないのでしょうか? 

例えば、週に1回は掃除機をかける、土日は子供の面倒を見る、毎日1度はキスをするなどの家事や育児の分担、夫婦円満のための取り決めなどをしたとしても、法的にそれを強制することはできません。恐らく、そのことは皆さん、何となく「そうだろうな」とはお分かりになると思います。

法的効力はなくても契約書に書いた方が、相手にちゃんと約束を守ってもらえる気がするので、婚前契約書に盛り込みたいと考える方もいらっしゃると思います。

この点については、婚前契約が普及しているアメリカでも見解が一致しておらず、このような法的効力のない事項は盛り込むべきではないという見解もあれば盛り込むことを許容する見解もあります。盛り込むべきではないという見解の根拠としては、法的効力の無い事項が多々含まれていますと、婚前契約書自体が真面目に作成されたもの、つまりお互いを法的に拘束する意思で作成された法的書面であると裁判官に思ってもらえないリスクがありるということを挙げています。

このように法的効力のない事項は婚前契約書とは別途に誓約書を作成することでも良いでしょう。

婚前契約はいつまでにしないといけないか

夫婦間でした契約は、いつでも取り消すことができるとされています(民法第754条)。それとの関係で、夫婦財産契約は、婚姻届を提出する前に交わす必要があります(民法第755条)。

したがって、婚前契約は、婚姻届を提出する前に交わす必要があります。もっとも、また別のコラムにてご説明しますが、婚姻後に婚前契約の内容を変更できる余地があります。

婚前契約書が無効になったり、取り消されたりする場合

法律上、婚前契約に規定してはいけない事項や規定しなければならない事項といった規定はありませんので、原則として、自由にその内容を決めることができます。もっとも、全く制限がないわけではありません。具体的には以下の例などが挙げられます。

公序良俗に反する場合

まず、契約内容が公序良俗に反する場合です。公序良俗に反する内容とは、常識から逸脱した内容だと考えれば良いですが、例えば以下のようなものが典型です。

①離婚しやすくする内容
例えば、「慰謝料200万円の支払いを受けた場合、他方は、離婚に応じなければならない」など、夫婦が離婚しやすくするような規定は無効です。

②法外な慰謝料
婚前契約書で慰謝料を定めることは可能ですが、その金額が法外に高額であれば、無効になる可能性があります。例えば、「不倫した場合には慰謝料1億円を支払わなければならない」などの規定は無効となる可能性が高いです。

法律に反する内容

法律にはこれに反した契約は無効となる規定があります(強行規定といいます。)。このような規定に違反する取り決めは無効です。たとえば以下のようなものが典型です。

①子の親権者を決める内容
「離婚するときは、子の親権者は夫とする」と取り決めをしても無効です。親権者は、子の福祉の観点から、父と母のいずれが養育に適しているか判断されるものですから、このように事前に取り決めをしても無効となります。

②扶養義務を否定する内容
夫婦には相互に扶助する義務がありますので、夫婦の扶助義務を一切否定する取り決めは無効となる可能性が高いです。同様に子に対しても扶助義務がありますので、養育費を一切支払わないという取り決めをしても無効となります。

相手を脅したり騙したりした場合や錯誤にもとづく場合

契約は、契約当事者双方の自由で有効な意思に基づいて行われる必要があります。相手を脅したり、騙したりして契約をさせすと、契約の取消原因となります。

また契約の際に相手に重大な錯誤があった場合にも、無効を主張される可能性があります。

サインをさせてしまえばこっちのものと考えられがちでありますが、このように婚前契約が取り消されたり無効になったりすることがあります。

そのため、婚前契約を交わす場合には、お互いに十分に契約内容を理解し、納得した上でサインすることが重要です。双方に弁護士がついていれば、このように取消や無効となる可能性は低くなるでしょう。

以上、婚前契約の法的効力についてご説明しました。婚前契約書に規定して有効な内容、無効な内容の判断は専門的な知識、経験が必要となります。迷われたときには、お気軽に弁護士までご相談下さい。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

関連記事

    • 婚前契約書の例(ひな形)
    • 1 はじめに 婚前契約の内容はカップルの要望によって様々です。 今回は婚前契約の各種条項のうち、婚姻生活中の取り決めにつ...
    • 婚前契約の取消し、解除
    • 1 はじめに 婚前契約はカップル間で交わされるという特性から、その作成プロセスが外部からは不明確です。 そのため、他方か...

婚前契約の記事一覧へ戻る

春田法律事務所オフィスご案内