カップル別、婚前契約に盛り込むべき事項

最終更新日: 2022年03月15日

婚前契約というと、資産家が離婚から財産を守るために作る契約というのが典型的なイメージかと思います。そのため、婚前契約というと、初めから離婚を想定しているようで何か暗い、ネガティブなイメージを持たれがちです。

しかし、婚前契約には、結婚生活において多くの夫婦が直面する問題について、結婚前に話し合い、取り決めをしておくことで、無用な喧嘩を回避し、円満な結婚生活を持続させる効果があります。

また、残念ながら離婚することになった場合にも、慰謝料や財産分与などの離婚条件の話し合いで、長い年月と高額な弁護士費用というコストを払うことになって、限りある貴重な人生を浪費する事態を防ぐ効果があります。

一口に婚前契約といっても、カップルの仕事、資産、年齢、結婚観などによってその内容は一様ではありません。そこで、今回は、カップルのタイプ別に、婚前契約書にどのような事柄を盛り込むとよいかご説明します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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結婚後は、女性が専業主婦になるカップルが婚前契約に取り決めをしておくと良い事項

結婚を機に、あるいは結婚して暫くして女性が仕事を辞めて家庭に入るというカップルは多いと思います。

その後、妻が主として担当することになる家事・育児も夫の仕事と同等の重要性、負担と考えるのが現代の考え方ですが、妻は自分の収入がない(または少ない)ことから、夫の収入に頼って結婚生活を送ることになります。そのため、お金の管理、使用については喧嘩の種になりがちです。

そこで、以下のように、まず夫の収入は共有財産であることの確認した上で、その管理方法、使用方法について婚前契約書に取り決めをしておくことが考えられます。

夫の所得は共有財産であることの確認

法律上は、婚姻後に得た財産、収入は、それを得た者の特有財産(固有財産)となります。そこで、まずは、夫の所得は夫婦の共有財産であることを定めます。

夫の所得は誰が管理するのか

夫が管理する場合には、毎月妻に渡す生活費の金額(又は夫の給与の○○%といた割合)を定めます。また、生活費として残った金額については妻が自由に使用できる特有財産と定めることもあります。

夫が管理するとはいえ、夫がどれくらい稼いでいるのかは妻としても知る権利はあるといえますので、給与明細や預金通帳は開示しなければならないと定めるのも良いでしょう。

他方、妻が管理する場合には、夫の毎月のお小遣いの金額(又は給与の○○%といた割合)を定めるとともに、妻が自分のために自由に使える金額、割合も定めておくことが考えられます。

また、管理している方が自由に散財してしまっては、他方の生活が脅かされますので、○○万円以上の支出をする場合には、他方の書面による同意を要すると定めておくと良いでしょう。

離婚後の妻の生活保障

女性が、結婚後、仕事を辞めて家庭に入った場合、万が一離婚することになると突如として、社会復帰を強いられることになります。家事・育児に専念して夫を支えてきたにもかかわらず、離婚によって、無収入の状態で社会に放り出されるというのは、あまりに酷だという考えもあるかと思います。

そこで、離婚した場合には、半年など女性が職について生活が安定するまでの一定期間は、男性が女性に対して生活費として毎月○○万円を支払うといった定めを置くことが考えられます。

また、夫の浮気やDVが離婚の原因であるにもかかわらず、離婚によって妻の収入が途絶える事態、あるいは、収入が途絶えるのが不安で離婚することができないといった事態は避けたいところです。

このように浮気やDVなど離婚原因が夫にあることが明白な場合には、もちろん慰謝料は支払われるのですが、それに加えて夫に妻の一定期間の生活保障を課すこともよいでしょう。

結婚後も共に仕事を続けるカップルが婚前契約に取り決めをしてと良い事項

女性の社会進出が進んだ現代においては、結婚後も女性が仕事を続けるケースは多くあります。この場合、夫と妻いずれも所得がありますので、この所得をどのように扱うのか結婚前に話し合いをしておくと良いでしょう。

また、結婚後も仕事を続けるとはいえ、妊娠・出産の際には女性の所得は無くなる(または下がる)ことになりますので、その期間の生活費の分担方法などの取り決めを考えられます。

そこで、これらの事項について、以下のように婚前契約書に定めておきましょう。

夫婦の所得を共有財産とするか、特有財産とするか

夫婦ともに所得がある場合、まずは、各自の所得は各自の特有財産とするのか、あるいは共有財産とするのかを取り決めをしておきましょう。特有財産か共有財産かによって、その管理、使用方法が違ってきますし、万が一離婚することになった場合には財産分与の対象に関わってきます。

夫婦の所得を合算して共有財産とする場合には、それによって購入したものについても共有財産となります。

他方、各自の特有財産とする場合には、共同で生活する以上、共有の財産が一つもない生活というのは考えにくいですから、何が共有財産であるのか明確にしておきます。例えば、共有口座に入っているお金とそれによって購入したものは共有財産とすると取り決めをします。

夫と妻の所得の管理方法

各自が自分の所得は自分で管理するという方法が考えられます。

この場合、共同生活をする以上、家賃、水道光熱費、日用品など共同で使用、利用する物の費用負担をどのようにするのか決めておきましょう。例えば、家賃や住宅ローンは夫が負担し、その他は妻が負担するというシンプルな分担方法が考えられます。

また、生活費を入れるための預金口座を作成し、そこに各自が二人で決めた金額、方法で預け入れ、そこから生活費を支出するという方法もあります。

一方、各自の所得を共有口座に全て入れて合算して管理する方法が考えられます。この場合、そのお金はどちらかが管理するのか、共同で管理するのかも定めておく必要があります。

一方が管理する場合には、毎月各自が自由に使用できる金額をどれくらいにするか、管理している者が勝手に散財しないよう、一定金額以上を使用する場合には他方の書面による同意が必要とするなどの定めをしておくと良いでしょう。

共同で管理する場合には、他方の書面による同意なく使用できる金額の上限を定めておくと良いでしょう。

妻が妊娠・出産した際の生活費の負担

妻が妊娠・出産のために仕事を離れた場合、妻の所得はゼロになるか、相当低くなります。この場合、それまでと同じように妻も生活費を負担するとなると、妻は貯蓄を切り崩してその期間を過ごすことになりますので、その間の生活費は夫が負担すると定めるのが良いでしょう。

具体的な負担方法ですが、夫が妻に毎月○○万円又は夫の給与の○○%を渡すという定め方が考えられますし、その期間については、夫の所得を夫婦の共有とし、二人が自由に(もちろん、一定の上限は決めて)使えるようにするという定め方も考えられます。

最後に

以上、結婚後も女性が仕事を続けるのか、家庭に入るのかに分けて婚前契約についてご説明しましたが、現実には、パートナーが経営者であるカップル、資産家であるカップル、熟年カップルなど様々な種類のカップルがあり、それぞれに婚前契約書で是非とも定めておいた方が良い事項があります。

ご自身にあった婚前契約書を作成したいという場合には、婚前契約に詳しい弁護士に是非ご相談ください。

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