離婚で相続権はどうなる?元配偶者・子どもへの影響と対策を解説

最終更新日: 2024年11月01日

離婚で相続権はどうなる?元配偶者・子どもへの影響と対策を解説

  • 離婚後に相続が発生したとき、元配偶者の遺産は承継できるのだろうか?
  • 離婚後も、子どもには元配偶者の遺産を相続させたい
  • 離婚後の相続手続きをスムーズに進める方法が知りたい

ようやく離婚が成立し、あなたは人生の再スタートを切ります。

しかし、元配偶者が亡くなった場合、相続手続きについて不安を感じる方もいるでしょう。

そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、離婚で相続権はなくなるのか否か、離婚後も安心して相続手続きを進められる方法等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 夫婦が離婚すれば婚姻関係は解消しているので、元配偶者の相続人にはなれない
  • 子どもは親権者である親の他に、親権のない親の財産も相続できる
  • 離婚した親は自分の死後、相続トラブルが起きないよう、慎重に遺言書を作成した方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚で相続権はなくなるのか

離婚した元配偶者が亡くなった場合、相続が発生し、基本的に法定相続人の間で遺産を分配します。

亡くなった元配偶者(被相続人)と生前どのような関係にあったかで、法定相続人になれるか・なれないかが決まります。

配偶者

以前夫婦であったとしても、あなたに元配偶者の相続権は認められません。

離婚が成立すれば婚姻関係は解消されるので、法律上、元配偶者とは他人になってしまいます。

離婚後に子どもが未成年であるため、生活費や養育費の面で、あなたと元配偶者が互いに協力し合ってきたとしても、他人である以上、法定相続人にはなれません。

子ども

子どもは親権者である親か、親権のない親であるかに関係なく、離婚した両親の法定相続人になれます。

なぜなら、両親が離婚したとしても、親子関係は解消されないからです。そのため、元配偶者が亡くなった場合でも、元配偶者の法定相続人として有利な立場となります。

たとえば、元配偶者に再婚相手と再婚相手との間にできた子がいても、相続権を主張できます。また、元配偶者に再婚相手や子がおらず、再婚前の子どもがいる場合、その子どもが法定相続人です。

たとえ元配偶者の親・兄弟姉妹が存命であったとしても、再婚前の子どもがいる以上、親・兄弟姉妹は法定相続人になれません。

元配偶者が亡くなった場合

元配偶者が亡くなった場合、遺産を法定相続分で分けるとすれば、次のような割合になります。

(1)元配偶者に再婚相手と再婚相手との子もいて、再婚前の子がいる場合

  • 再婚相手1/2、再婚相手の子1/4、再婚前の子1/4
  • 元配偶者の遺産総額が1,000万円の場合:再婚前の子は250万円分の遺産を受け取れる

(2)元配偶者に再婚相手(子なし)、再婚前の子がいる場合

  • 再婚相手1/2、再婚前の子1/2
  • 元配偶者の遺産総額が1,000万円の場合:再婚前の子は500万円分の遺産を受け取れる

(3)元配偶者の再婚前の子、親・兄弟姉妹がいる場合

  • 再婚前の子2/2、親・兄弟姉妹0
  • 元配偶者の遺産総額が1,000万円の場合:再婚前の子は遺産全部を受け取れる

元配偶者(被相続人)が亡くなると、再婚相手や再婚後の子ども等、法定相続人となる人達が、再婚前の子がいた事実を見落とし、相続手続き(遺産分割協議)を進める可能性があります。

しかし、再婚前の子が相続権を主張すれば、再婚前の子抜きで決めた遺産分割は無効となり、全部のやり直しが必要です。

離婚後の相続権に関わる遺留分侵害額請求とは

元配偶者は自分が亡くなった後、再婚相手・子、再婚前の子が相続で揉めないよう、「遺言書」を作成する場合もあるでしょう。

しかし、遺言書が再婚前の子に不利な内容となっている場合、再婚前の子は「遺留分侵害額請求」を行使できます。

遺留分侵害額請求とは

遺留分とは、遺言者である元配偶者の遺した遺言書がどのような内容であろうと、相続人に最低限保証される相続の権利を指します。

しかし、遺言者は遺言で相続人の遺留分を考慮せず、自由に遺産分割方法を指定して構いません。

つまり、再婚前の子の遺産を大幅に制限する内容や、全く遺産を引き継がせないという内容の遺言書も有効です。逆に、再婚前の子を過剰に優遇する内容も無効とはなりません。

しかし、遺留分を十分に受け取れなかった相続人は、自己の遺留分まで受け取った相続人に対し、遺留分をお金で返してもらうよう請求できます。

それが「遺留分侵害額請求」という措置です。

対象

遺留分侵害額請求ができるのは、元配偶者の再婚前の子、再婚相手と子、親(祖父母)です。一方、元配偶者の兄弟姉妹に遺留分は認められません。

請求可能な遺留分の総額は全遺産の1/2が上限となります(相続人が親または祖父母だけなら1/3が上限)。

相続人の数によって、遺留分の割合(上限)は次のように変化します。

(1)元配偶者に再婚相手(子なし)、再婚前の子がいる場合

  • 再婚前の子は全遺産の1/4を請求可能
  • 元配偶者の遺産総額が1,000万円の場合:再婚前の子は最高250万円を請求できる

たとえば、250万円分の遺留分を有しているのに、遺言により100万円しか受け取れなかった場合、残りの150万円を他の相続人に請求可能です。

(2)元配偶者に再婚相手、再婚相手の子、再婚前の子がいる場合

  • 再婚前の子は全遺産の1/8を請求可能
  • 元配偶者の遺産総額が1,000万円の場合:再婚前の子は最高125万円を請求できる

たとえば、125万円分の遺留分を有しているのに、遺言により70万円しか受け取れなかった場合、残りの55万円を他の相続人に請求可能です。

手続き方法

遺留分侵害額請求をする場合、まず侵害された側と侵害した相続人とが協議し、返還額や返済期限を決めましょう。ただし、協議がなかなかまとまらない場合、裁判所に申し立て解決を図る必要があります。

  1. 侵害した相続人に連絡を取り協議
  2. 侵害した相続人が応じない場合、内容証明郵便を送り、遺留分侵害額請求権について行使する旨を伝える
  3. 侵害した相続人が対話に応じたら、協議開始
  4. 内容証明郵便を送付しても応答なし、または協議が不調に終わったなら、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てる
  5. 調停不成立の場合、地方裁判所または簡易裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起する

交渉の初期段階で内容証明郵便を送付するのは、遺留分侵害額請求を有効期限内に行使したという証拠を残すためです。なお、侵害した相続人にプレッシャーを与える効果もあります。

交渉で返済の合意に達した場合、遺留分返還の合意書を作成しましょう。書面化しておくと、互いに取り決めた内容を忘れずにすみます。

協議が不調に終われば調停・裁判で解決を図ります。

なお、調停を行うときは、請求する相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てをしなければいけません。
調停委員の調停やアドバイスのもとで、当事者の合意を目指します。

調停を申し立てるには、主に次の書類が必要です。

  • 調停申立書
  • 被相続人の戸籍謄本(出生時~死亡時まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書写し、遺言書の検認調書謄本の写しのどちらか
  • 遺産に関する証明書:預貯金通帳の写しまたは残高証明書、固定資産評価証明書等
  • その他:収入印紙1,200円分・郵便切手

期限

遺留分侵害額請求は、原則として遺言者が亡くなってから1年以内に請求しなければいけません。もしも遺留分を侵害された事実にまったく気付かなければ、侵害されていた事実を知った日から1年以内に請求可能です。

ただし、遺留分が侵害された事実を知らないまま、10年が経過すると時効になってしまいます。

まずは遺言書の内容をよく確認し、自分の遺留分が侵害されていないかを判断しましょう。遺留分が侵害されていた場合は、速やかに遺留分侵害額請求を進めていきます。

離婚後の相続手続きをスムーズにするためにすべきこと

元配偶者は、再婚相手と子、再婚前の子とが相続で揉めないよう、遺産分割についてよく検討する必要があります。

遺言書の作成時、各相続人から不満が出ない対策を講じたり、弁護士へ相談したりして、円滑に相続手続きが進むよう配慮しましょう。

遺言書

遺言書には漏れなく自分の遺産を相続する人達を明記します。

各相続人から不満が出ないように誰へ何を引き継がせるのか、慎重に検討します。たとえば次のような事情がある場合、各相続人の希望に沿った譲渡を行いましょう。

  • 再婚相手:住み慣れた土地・建物を引き継ぎたい→自宅・土地を譲渡
  • 再婚後の子:すでに独立し現金が欲しい→金融資産(預金等)の半分を譲渡
  • 再婚前の子:なるべく平等に分けてもらいたい→金融資産(預金等)の半分を譲渡

再婚前の子と生前になるべく連絡を取っておき、どのような遺産を引き継ぎたいか、希望を聞いておいた方がよいです。遺言が各相続人の遺留分を侵害しない内容ならば、相続人の間で揉めだす事態は避けられます。

相続廃除

再婚前の子が問題行動ばかりを起こしていて、将来の相続時に他の相続人とのトラブルが予想されるときは、その子を相続から除外する「相続排除」を検討しましょう。

相続廃除を行えば、再婚前の子の相続権を剥奪できます。

家庭裁判所へ申し立て、審判を経れば相続廃除が認められます。しかし、次のような問題行動の事実がなければ、申立ては認められない可能性が高いです。

  • 重大な罪を犯した
  • 親である自分に、暴言や脅迫を行った
  • 親である自分に、暴力を振るった 等

再婚前の子は、離婚により親と離れ離れとなった辛い経験があったとしても、上記のような人物であれば、家庭裁判所は廃除もやむを得ないと判断するでしょう。

専門弁護士への相談

離婚した元配偶者の遺産相続に関して、悩みや不安があるなら、離婚・相続問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

弁護士は元配偶者(被相続人)にも、子ども等(相続人)にも、次のような有益なアドバイスを提供します。

  • 元配偶者には遺言書作成時、相続トラブルを避けるためのコツについて助言
  • 再婚相手や再婚前の子をはじめとした相続人には、スムーズな遺産分割方法を助言
  • 相続手続きで問題が起きた場合、弁護士が交渉や調停・裁判をサポートする有効性を説明

トラブルが起きる前に弁護士をたてた方がよいと感じたら、サポートを依頼し、他の相続人との交渉役を任せても構いません。

離婚後の相続権なら春田法律事務所に相談を

今回は離婚成立に尽力してきた専門弁護士が、元配偶者の遺産は承継できるのかどうか、相続トラブルへの対処法等を詳しく解説しました。

春田法律事務所では、初回相談を無料で受け付けています。まずは離婚や相続問題を気軽に相談し、悩みや不安を打ち明けてみましょう。

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