難病を理由に離婚は可能?別れる方法や難しいケースを弁護士が解説

最終更新日: 2023年02月25日

  • 配偶者が難病を患ってしまった
  • 難病を理由に離婚できるのか?
  • 相手の難病を理由に離婚する方法や難しいケースを知りたい

配偶者が難病を患ってしまった場合、看病する方が肉体的・精神的に疲弊することも珍しくありません。結果的に夫婦の仲にも亀裂が生じてしまい、離婚を考える方も出てくる可能性もあるでしょう。

そこで本記事では、男女関係や離婚問題に詳しい弁護士が、難病を理由に離婚はできるのか、難病が精神病だった場合に離婚を請求するときの手順、難しいケースについて詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 精神病以外の病気や軽度なうつ病などの場合は、法定離婚事由として認められない可能性がある
  • 難病を理由とした離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
  • 難病を原因とした離婚請求が難しいケースは、「精神病以外の病気や症状が軽度なとき」「配偶者が意思表示できないとき」「配偶者に親族がいないとき」などがある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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難病になった配偶者とは離婚できる?

難病になった配偶者と離婚することはできるのでしょうか。ここでは、難病になった配偶者と離婚するときの手続きについて、下記の4つを解説します。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 審判離婚
  • 裁判離婚

協議離婚

協議離婚とは夫婦間で協議を行い、離婚を決める手段です。夫婦で話し合いを行い、合意を得られれば離婚が成立します。

たとえば、うつ病を患った夫を看病する妻が離婚を切り出した場合、夫が合意すれば離婚が可能です。協議離婚では離婚の理由に決まりがなく、双方の合意により離婚することができます。

離婚時には、財産分与や慰謝料、養育費など金銭面についても夫婦で話し合い、条件を決めます。公正証書に記すなどして明確にしておく必要があるでしょう。

調停離婚

協議で離婚の話し合いがまとまらなかった場合、離婚調停により離婚の成立を目指します。調停委員が夫婦の間に入り、それぞれの意見を聴き取りながら進めていく方法です。

調停が成立したのち、調停調書という文書が作成されます。調停調書は、裁判の判決と同様の効力を持ちます。

審判離婚

調停が不成立となった場合は、裁判所が審判を下して離婚を成立させることもあります。審判に異議があるとき、2週間以内であれば申立てが可能です。申立てがあると離婚の審判は効力がなくなるため、審判離婚が採用されるケースは多くありません。

裁判離婚

調停離婚・審判離婚が成立せず、夫婦のどちらかが裁判所に提起した場合には離婚裁判が行われます。

離婚裁判で離婚が認められるためには、法定離婚事由があると判断されなければなりません。難病を理由に離婚を考えた場合、民法770条1項4・5号に定義されている下記の条文が関係すると考えられます。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

出典:民法 | e-GOV法令検索

配偶者の病気が強度の精神病に該当する場合は、治療・看病したことや離婚後の生活・治療代などを考慮し、裁判所が判断を下します。状況によっては離婚が認められないケースもあるでしょう。

難病が精神病だった場合に離婚請求するとき

配偶者の精神疾患が原因で、離婚を考える方もいるでしょう。ここでは、配偶者の難病が精神病だった場合に離婚請求するときの満たすべき条件について、下記の4つを解説します。

  • 精神病の症状
  • 精神病の程度
  • 介護の経過
  • 離婚後の見通し

精神病の症状

配偶者の症状が回復が難しい精神病であると認められる必要があります。また、現在の精神病の症状も明確にしなければなりません。

離婚原因として認められる精神病としては、うつ病・統合失調症・偏執病・痴呆などが挙げられます。たとえば、重度のうつ病や身体障害などの場合は離婚が認められる可能性があります。

一方、アルコール中毒や薬物中毒などは離婚の原因として認められない可能性があるでしょう。ただし、精神病に当てはまらないケースでも、その他の法定離婚事由に該当すると判断されれば、離婚が認められることも考えられます。

夫婦関係や症状は人によって異なるため、個別のケースごとに裁判所の判断は異なります。自分で判断がつかないときには、一度弁護士に相談してみましょう。

精神病の程度

配偶者にうつ病や統合失調症などの精神疾患があったとしても、程度によって離婚できるかどうか判断が変わってきます。精神病が離婚原因だと判断されるためには、相手の精神病が重度で、夫婦関係が破綻している状態でなければなりません。

たとえば、夫が重度のうつ病を患っている場合、どちらかが夫婦関係を継続する意思を示したり、お互いが助け合いながら生活を送ったりすると離婚は難しくなるでしょう。精神病の程度は、夫婦関係が破綻しているのか判断する基準になります。

配偶者の症状が重度であり、全ての対処方法を取ったうえで夫婦関係を継続できない状態になってはじめて、離婚が認められる可能性が出てきます。

重度の精神病であっても、回復が見込める状態であったり、夫婦関係が破綻していなかったりすると離婚できないことを把握しておきましょう。

介護の経過

回復しがたい精神病が離婚事由として認められるためには、これまでの介護の経緯も重要です。配偶者の精神疾患が疑われるときは、夫婦で病院に行き、診察を受ける必要があります。さらに診察後に必要な治療を受け、回復に向けて尽力しなければなりません。

これまで、必要な治療を受けるために配偶者と通院する、自宅での生活を補助するなど、扶助を懸命に行ってきたが、もうこれ以上の継続が難しいといえる状態になったときに、離婚が認められる可能性が出てきます。

相手への献身的なサポートの有無は、離婚が認められる判断要素の1つです。離婚を検討している場合は、これまでに行ってきた配偶者へのサポートを振り返ってみましょう。

離婚後の見通し

裁判所で離婚が認められるためには、離婚した後に、精神病の配偶者が生活できるのかという点も考慮されます。離婚後に配偶者の生活基盤があることを立証できるよう、計画を立てておく必要があります。

たとえば、配偶者が離婚後に入所できる施設を手配する、一定額の生活費を送金する、相手の両親と話し合い、実家で療養できるように手配するなどが判断の要素に挙げられます。離婚する場合は、精神病の配偶者が離婚後に日常生活を送るために必要な手段を取り、準備・手配しておくとよいでしょう。

難病を原因とした離婚請求が難しいケースとは

配偶者の難病が理由だとしても、離婚請求が難しいケースも少なくありません。ここでは、難病を原因とした離婚請求が難しいケースについて、下記の3つを解説します。

  • 精神病以外の病気や症状が軽度なとき
  • 配偶者が意思表示できないとき
  • 配偶者に親族がいないとき

精神病以外の病気や症状が軽度なとき

精神病以外の病気や軽度なうつ病などの場合は、法定離婚事由として認められない可能性があります。

法定離婚事由として認められるケースは「強度の精神病かつ治る見込みがない」と立証できる場合に限られるためです。また、精神病以外のときも、離婚の理由にはならないでしょう。

たとえば、軽度のうつ病で夫婦関係が破綻していない場合、法定離婚事由に該当しないため、離婚の理由にはなりません。もしも離婚を進めたい場合は、理由を問わない協議離婚で話し合いを行う手段を取ります。

協議離婚を含めた複数の方法を検討しながら、夫婦間で離婚について話し合いましょう。

配偶者が意思表示できないとき

配偶者の難病が重度で、一人では離婚の意思決定ができないこともあるでしょう。意思能力のない配偶者と離婚する場合は、成年後見人をつけなければなりません。意思能力がない方は離婚や訴訟を起こすことができません。

成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に申立てをします。成年後見人は、親族などが選任されることが多いでしょう。選任後は、配偶者の代理人として協議や裁判に臨みます。

配偶者に親族がいないとき

離婚後に病気を患っている配偶者の面倒を見る親族などがいない場合、離婚を認めてもらえない可能性があります。そのため、離婚後にサポートする体制・環境を整えることが重要です。

難病にかかり苦しんでいる配偶者が、離婚後の生活を送れるよう生活基盤を作っておく必要があります。具体的には、病院や施設に入所する、離婚後も一定期間、生活費を援助するなどの方法を検討しましょう。

まとめ

本記事では、男女関係や離婚問題に詳しい弁護士が、難病を理由に離婚はできるのか、難病が精神病だった場合に離婚を請求するときの手順、難しいケースについて詳しく解説しました。

難病は、人によって症状や程度もさまざまであることから、自分の状況ではどうなるのか判別つかないこともあるでしょう。難病で離婚を決意したときには、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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