離婚時の財産分与は専業主婦も対象か?共有資産と特有資産・行うべき対策まで解説
最終更新日: 2023年10月05日
- 夫婦で離婚を話し合っているのだが、財産分与はどうやって決めるのだろう?
- 財産分与の対象となる財産・対象とならない財産はあるのだろうか
- 専業主婦でも財産分与が可能なのか不安
婚姻中、夫婦が協力して築いた財産は、財産分与を行い離婚のときに清算・分配されます。
財産分与の割合をどうするかは、当事者の話し合いで自由に取り決めて構いません。
ただし、夫婦の一方が専業主婦(または専業主夫)ならば財産分与は必要なのか、財産分与とならない財産はあるのか、気になる点が多いことでしょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、専業主婦(主夫)でも財産分与の対象となるのか、支障なく財産分与を行うコツ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 夫婦共働きでも、一方が専業主婦(主夫)でも財産分与は可能
- 夫婦の収入にかかわらず、財産を半分に分けるのが一般的
- 結婚前から保有している財産は、財産分与の対象外
離婚時の財産分与は専業主婦も対象か
専業主婦(主夫)であっても離婚のときに財産分与の対象となります。
財産分与は通常、夫婦が共同で築いた財産を、それぞれの貢献度に応じ平等に分配する方法です(清算的財産分与)。
しかし、婚姻生活中の貢献度のみに従い財産を分与すると、夫婦の一方がわずかな財産しか得られないおそれもあります。
これでは離婚後、わずかな財産しか得られなかった専業主婦(主夫)は、経済的に困窮するかもしれません。
このようなリスクを考慮し、専業主婦(主夫)の生活の安定のため、財産をより多く分配する方法がとられます(扶養的財産分与)。
協議や調停を行うとき、基本的には夫婦それぞれの収入にかかわらず、同じ割合で財産を分ける取り決めがなされます。
専業主婦の離婚時に財産分与の対象となる「共有資産」
夫婦が婚姻中、一緒に形成した財産は「共有資産(共有財産)」として、財産分与の対象となります。
こちらでは、共有資産となる主な財産について解説します。
預貯金
婚姻後に得たお金であれば、銀行口座の名義人はどちらでも構いません。分割してそれぞれが受け取ります。
なお、預け先が金融機関ではなくとも、社内預金、タンス貯金、更にこっそり貯めている「へそくり」等も対象です。
不動産
不動産は財産分与の対象ですが、均等に分割するのが難しい財産です。
自宅や土地は夫婦の一方が取得し、もう一方には預貯金等をその分多めに分配するという方法が考えられます。
一方、不動産を均等に分けたいならば、不動産業者に査定してもらい、買い手に売却しそのお金を分割するのもよい方法です。
有価証券
国内外の株式はもちろん投資信託、仮想通貨も分与の対象です。
なお、財産分与時には有価証券の価格が日本円で計算されるため、離婚成立時点の法定通貨との相場に影響されます。
厚生年金
婚姻中、厚生年金や共済年金に加入していた場合、払い込んだ「年金保険料」を分け合う方法として、「年金分割」が行えます。
年金分割には次の2種類があります。
- 合意分割:当事者間の合意等で按分割合を定めたとき、婚姻期間等の保険料納付記録を当事者間で分割する方法
- 3号分割:離婚等をしたとき、被扶養者等からの請求で、第2号被保険者の厚生年金保険の保険料納付記録を、強制的に1/2で分割する方法
ただし、国民年金は年金分割の対象とならないので注意しましょう。
自動車
自動車は財産分与の対象ですが、不動産と同様、均等に分割するのが難しい財産です。
分与する場合、自動車が取得できない方へ預貯金等を多めに分配、または自動車販売店等で査定・売却しそのお金を分割する方法が考えられます。
専業主婦の離婚時に財産分与の対象とならない「特有資産」
離婚のために財産分与をする場合、財産の全てが分与対象となるわけではありません。
こちらでは、財産分与の対象外となってしまう財産(特有財産)を取り上げます。
独身時代からの預貯金
独身時代から保有している預貯金は、婚姻してからの財産とはいえないので財産分与の対象外です。
ただし、独身時代から使用していた預金口座を、婚姻後も継続して使用したケースでは、どのように分与するかが問題となるでしょう。
裁判所では、婚姻後に別の口座を利用せず、夫婦で約7年間同居し、預金が独身時代と渾然一体となった場合、同居期間中の収入で、独身時代の貯金の減少分が補填された、と判断しました。
そのため、独身時代の残高を控除し財産分与とするのは相当といえない、と判示しています。
独身時代から保有している有価証券
独身時代から持っていた有価証券も、財産分与の対象外です。
なお、婚姻前から保有していた預貯金で、婚姻後に有価証券を購入した場合も、基本的に財産分与の対象とはなりません。
独身時代から保有している物
独身時代から持っていた不動産や自家用車・動産は、基本的に財産分与の対象外です。
ただし、たとえば夫が独身時代にマイホームを購入したものの、婚姻後に住宅ローンの一部を妻に負担してもらった、というケースもあるでしょう。
この場合は、婚姻後に夫婦それぞれのローン返済額を調べ、その割合から共有財産となる金額を算定します。
相続財産
被相続人(親等)から相続した財産は相続人に引き継がれます。相続財産も夫婦が協力して築いた財産とはいえません。
相続財産は独身時代や婚姻中であっても、基本的に財産分与の対象外です。
ただし、配偶者の協力や貢献(例:自宅のリフォーム代を配偶者に負担してもらった等)で、価値が増加したり維持されたりした場合、配偶者の貢献度に応じ、財産分与の対象として扱われるケースもあります。
離婚の財産分与で専業主婦がすべきこと
離婚のときは専業主婦(主夫)も、財産分与を受ける権利があります。財産分与を決めるとき、円滑に取り決めができるよう、様々な準備が必要です。
パートナーとの話し合い
離婚を話し合うとき、子どもの親権をどちらにするかや、養育費等の取り決めは大切ですが、財産分与についてもしっかりと話し合いましょう。
財産分与の対象となる財産、ならない財産(特有財産)を確認し、お互いが納得できる財産分与割合を検討します。
公正証書作成
協議離婚に合意し財産分与をどのように分けるのか、せっかく取り決めをしても、支払う側が約束を破っては、今後トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
支障なく財産分与を進める場合は、離婚の取り決めを「公正証書」にした方が安心できます。
公正証書は公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書であり、高い証拠力を有します。
公正証書に、支払う側が財産分与をしなければ、「強制執行されてもかまわない」という文言を記載(強制執行認諾)すると、支払の不履行があったとき、裁判手続を経ずに強制執行が可能です。
支払う側には「公正証書の内容通りに財産分与を支払わないと、強制執行されてしまう。」という心理的プレッシャーを与えられます。
ただし、裁判手続を経ずに強制執行が可能なのは、金銭による財産分与をはじめとした金銭債務です。
不動産引渡のような義務の履行では、公正証書による強制執行は認められません。
この場合、金銭以外の財産分与で問題が起きたら、家庭裁判所の調停での合意や、裁判を経ての強制執行で対応します。
弁護士への相談
財産分与は夫婦の話し合いで決定できますが、婚姻期間中に得た財産や借金も対象となります。しかし、夫婦双方の納得できる財産分与割合は、なかなか決められないかもしれません。
そのようなときは離婚問題の解決に実績のある弁護士へ相談してみましょう。
弁護士は、夫婦の事情に応じた財産分与の方法を助言し、夫婦間で揉めた場合の交渉・調整を行います。
経験豊富な弁護士は、まず法律事務所のホームページを確認して選びましょう。次の点に注目します。
- 「離婚問題相談実績〇〇件」と、具体的な数字が明示されている
- 離婚問題や財産分与に関する話題が、豊富に紹介されている
- 協議離婚、調停離婚、裁判離婚の手順や費用を明確に記載している
これらの掲載があれば、離婚問題を得意とする法律事務所といえるでしょう。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、専業主婦(主夫)にも財産分与の権利があること、財産分与になるもの・ならないもの、財産分与を支障なく進めるためのポイント等について詳しく解説しました。
まずは夫婦間でどのくらいの財産を所有しているか、入念にチェックしてみましょう。
財産分与で悩んだなら、なるべく早く弁護士に相談し、そのアドバイスを聞いてみてみましょう。