会社名義の財産は分与対象?法的ケースと注意事項を専門家が解説
最終更新日: 2023年11月14日
- 配偶者の経営する会社の財産は分与の対象になるのか
- 会社の財産と個人の財産が綺麗に整理できておらず分与に困っている
- 会社名義の財産の分与を進める場合、どのような点に注意すべきなのか
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚するときまたは離婚後に分配することです。
夫婦の一方が会社経営者である場合、会社名義の財産は分与対象となるのか疑問に思う人もいるでしょう。
会社名義の財産が関連する場合の財産分与の進め方で、気を付けるべき点はあるのか事前に把握しておきたいものです。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、会社名義の財産が分与対象となるケース、財産分与を進める上での注意点等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 会社名義の財産は、会社経営者の財産とは別物のものとして扱われるので、原則として財産分与の対象外
- ただし、会社名義の財産であっても、実質的に経営者個人の財産とみなされる場合は財産分与の対象となる
- 財産分与を進めるときは、経営者である離婚相手の財産の全貌が見えないので、財産隠しが行われていないかを慎重に確認する
会社名義の財産は分与対象となるのか?
財産分与では、夫婦が婚姻中に協力して得た財産が分与対象となります。分与割合は夫婦それぞれ1/2ずつと決めるのが一般的です。
会社名義の財産が分与対象となる場合、経営者と離婚する配偶者は莫大な財産を得る可能性があります。
原則ならない
会社名義の財産は、原則として財産分与の対象外です。
なぜなら、会社名義の財産である場合、会社経営者の財産とは別物として扱われるからです。つまり、夫婦にとって会社の財産は第三者名義の財産となります。
ただし、会社名義の財産であっても全てが対象外となるわけではありません。ケースによっては夫婦の共有財産として、財産分与が認められる可能性もあります。
対象となる場合
たとえ会社名義の財産とされていた場合でも、実質的に経営者個人の財産とみなされるときは、財産分与の対象となります。
実質的に経営者個人の財産とみなされるのは、次のようなケースです。
- 経営者である配偶者が、個人所有とできた財産を、あえて会社の財産にしていた
- 会社名義の財産と個人名義の財産が混同されている
- 経営者である夫婦の一方が、離婚により個人名義の財産が分与対象となるのをおそれ、名義を会社名義に変更していた
上記のケースの他に、財産分与を進めるときに会社名義の財産も考慮しないと、夫婦間の公平性が害される場合は、分与対象とされることがあります。
会社名義でも財産分与の対象となるケース
実質的に経営者個人の財産とみなされる場合、会社名義の財産も分与対象になります。
ただし、裁判所で財産分与を計算する場合に、個人名義の財産だけでも夫婦の一方に十分な分与がなされるときは、会社名義の財産は考慮されない可能性もあります。
実質的に個人財産の場合
婚姻中に立ち上げた自社の株式を配偶者が保有しているときは、実質的には個人名義の財産になるので財産分与の対象です。
また、配偶者が経営する会社に対し、その配偶者自身が貸付金を有しているときは、その金額も個人名義の財産となり、分与対象となります。
そのため、財産分与を受け取る側は、経営者である夫婦の一方に対し、会社の株式や貸付金の有無・金額等が確認できる資料の提出を要求しましょう。
財産が混同している場合
特に小規模会社・家族経営の会社の場合は、次のような状態となっているケースが多いです。
- 経営者本人の個人口座と会社名義の口座との間で、預貯金が行き来している
- 経営者本人が、個人名義の資産と会社名義の資産を明確に区別せず使用している 等
このような場合は、個人名義と会社名義の口座や資産が混同しており、財産分与の対象となる可能性があります。
個人名義の財産を会社名義に変更
経営者が元々は個人名義の財産で所有していたものの、離婚による財産分与で財産を失うのが嫌で、慌てて会社名義の財産に変更したケースがあげられます。
財産分与をしたくないために会社名義の財産に変更したときは、その財産は分与対象となります。
このような方法をとると、相手は不信感を募らせ、財産分与で揉める可能性があるので注意しましょう。
会社名義の資産の財産分与を進める上での注意点
会社名義の財産を含め、財産分与の取り決めをする場合は、慎重な財産調査が必要です。
こちらでは、注意すべき点を3つ取り上げましょう。
会社名義の財産は複雑
会社を経営している配偶者のみならず、自分もこれまで経営に参加してきた場合は、会社名義の財産のうち、どのようなものが分与可能かある程度把握できます。
しかし、たとえば経営者である夫が事業を進めており、自分は専業主婦として支えてきたのであれば、会社名義の財産が分与対象となるかどうか、わからない場合がほとんどです。
公平な財産分与を行いたいのであれば、法律の専門家である弁護士に依頼し、財産分与の算定をしてもらった方がよいです。
財産隠しが行われている可能性
夫婦関係がギクシャクしてから、経営者である夫婦の一方が知らないうちに、夫婦の共有財産を会社名義の財産に変更する等、巧妙に財産分与の対象とバレないような措置を講じている場合があります。
そのため、自分が離婚を切り出す前に、不可解なお金の流れ等をチェックしておきましょう。
たとえば、事実上夫婦が共有して利用していた配偶者名義の口座を確認しましょう。一回または複数回にわたり使途のよくわからない出金がある場合は、財産隠しを行っている疑いが強いです。
出金した配偶者に、その使途についてしっかりと問いただしましょう。
離婚手続きの複雑化
財産分与の他に、慰謝料や養育費等も複雑化する可能性があります。離婚交渉は、夫婦の地位や経済状態も考慮して進めていく必要があるからです。
離婚の取り決めを行うときは、夫婦の一方が会社経営者であるという事情も考慮します。
- 経営者である夫婦の一方が複数の不動産を所有しているので、そのうちの1つを財産分与の対象とするか?
- 基本的に母親が親権者として選ばれるものの、現在の子どもの生活水準・教育水準を維持するために、会社経営者である父親を親権者にした方がよいか?
- 慰謝料の目安は100万円〜300万円だが、経営者である夫婦の一方が離婚原因をつくった場合、それを上回る慰謝料を請求できるか?
以上のような問題は、夫婦だけで協議するよりも、弁護士の助言を受けながら進めていった方がよいでしょう。
会社名義の財産分与で困ったらすべきこと
個人名義の財産の把握はもちろん、会社名義の財産が分与対象となるかどうかは、素人では容易に判断できません。
そのため、夫婦で財産分与について取り決めを行う前に、離婚問題に詳しい弁護士と相談しましょう。
弁護士は夫婦の事情をヒアリングしたうえで、会社名義の財産を分与対象と判断するために収集する証拠書類や、離婚手続きの流れ、話し合いがこじれた場合の対応もアドバイスします。
弁護士を代理人とすれば、経営者である夫婦の一方との交渉が任せられるので、離婚前に別居をしていても、離婚手続きはスムーズに進めていけます。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、会社名義の財産も含めた財産分与はなかなか難しい点等について詳しく解説しました。
会社名義の財産が分与対象になるかどうかの判断は、やはり法律の専門家である弁護士に任せた方が確実です。
財産分与で悩むときは、早く弁護士と相談し、今後の対応の仕方を話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。