自首の相談は弁護士へ。同行メリット・費用・流れを徹底解説
最終更新日: 2025年11月25日
罪を犯してしまい、その事実を抱えて日々を過ごす中で「自首」という選択肢が頭をよぎる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「自首すればどうなるのか」「逮捕されてしまうのではないか」「誰に相談すれば良いのか」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せないのが現状ではないでしょうか。
この記事では、そのような深い悩みを抱える方に向けて、自首の法的な意味から、単なる「出頭」との違い、そして自首がもたらすメリットとデメリットを詳しく解説します。特に、自首を検討する上で不可欠となる「弁護士に相談し、同行を依頼すること」の重要性に焦点を当て、弁護士が提供する具体的なサポート内容、その費用体系、そして実際に自首に至るまでの手続きの流れを網羅的にご紹介します。
犯罪の事実を抱え、自首を考えているあなたへ
あなたは今、過去に犯してしまった過ち、あるいは関与してしまった罪の事実に深く後悔し、誰にも打ち明けられない苦しみを抱えているかもしれません。夜中にふと目が覚め、「いつ警察が来るのだろうか」「逮捕されるとしたら、明日にでも?」といった終わりのない恐怖と、誰にも相談できない孤独感があなたを蝕んでいるのではないでしょうか。その罪悪感は、あなたの日常生活に重くのしかかり、心身ともに疲弊させていることでしょう。
しかし、その重荷から解放される道は存在します。それは「自首」という、決して簡単ではない、しかし前向きな一歩です。自首は、過去の行為と真摯に向き合い、自らの意思でその責任を果たすことを決意する、勇気ある行動に他なりません。それは単に「罰を受けること」ではなく、見えない不安から解放され、新たな人生を再スタートさせるための積極的な選択となり得るのです。
この記事は、あなたがその勇気ある一歩を踏み出すために必要な、具体的かつ正確な情報を提供します。あなたの心に寄り添い、法律的な側面だけでなく、精神的な側面からもサポートするための道筋を示すことで、あなたが抱える不安を少しでも和らげ、未来へと進むための力を得られるよう、私たちはここにすべての情報をまとめました。
そもそも自首とは?「出頭」との違いと成立要件
犯罪行為に及んでしまった後、「自首」という言葉が頭をよぎる方は少なくないでしょう。しかし、「警察署に行けば自首になる」と漠然と考えていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。法律上の「自首」と、単に警察に出向く「出頭」には明確な違いがあり、その違いを正確に理解していなければ、刑の減軽といった自首本来のメリットを享受できないことにも繋がりかねません。この章では、自首の法的な定義から、出頭との違い、そして自首が成立するために不可欠な具体的な要件までを詳しく解説していきます。正しい知識を身につけ、ご自身の状況を客観的に判断するための一助としてください。
自首の定義と「出頭」との違い
「自首」とは、刑法第42条1項に規定されているように、「罪を犯した者が、捜査機関に発覚する前に、自ら進んで自己の犯罪事実を申告し、その処分を求める意思表示」を指します。重要なのは「捜査機関に発覚する前」という点と、「自ら進んで申告する」という点です。
これに対し、「出頭」は、すでに捜査機関が事件を把握しており、犯人も特定されている状態、あるいは警察からの呼び出しを受けて警察署に出向く行為を指します。例えば、警察があなたの自宅を訪れた後で警察署に行く場合や、指名手配された後に警察署に行くケースは「出頭」であり、法律上の「自首」とは区別されます。
簡単に言うと、まだ誰が犯人か警察が特定できていない段階で、自ら名乗り出るのが「自首」です。すでに警察が事件を認知し、あなたを被疑者として捜査している段階で警察署に行くのは「出頭」となるため、自首による刑の減軽といったメリットは原則として得られません。
自首が成立するための3つの要件
法律上の「自首」として認められ、刑の減軽という効果を得るためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1. 捜査機関に犯罪事実が発覚する前であること: ここでいう「発覚」とは、単に「犯罪があった」という事実が知られているだけでなく、「誰が犯人であるか」という点まで特定されている状態を指します。例えば、被害届が出ていても、まだ犯人が誰か特定されていなければ、自首は成立し得るということです。警察がまだ犯人を特定していない段階で、自ら犯人として名乗り出ることがこの要件を満たします。
2. 自発的な申告であること: 警察に追及されたり、逮捕を避けたい一心で仕方なく申告したりするのではなく、あくまで自分自身の意思に基づき、罪を告白する行為でなければなりません。他者からの強制や誘導ではなく、自らの反省や贖罪の意思に基づく行動であることが求められます。
3. 犯罪事実の申告であること: どの犯罪を犯したのかを、具体的に、かつ明確に申告する必要があります。曖昧な表現や、一部の事実を隠蔽しようとする姿勢が見られる場合、自首と認められない可能性があります。例えば、「何か悪いことをしました」というだけでは不十分で、「〇月〇日、〇〇で、〇〇という行為をしました」というように、詳細な内容を伝えることが重要です。
自首をするメリットとデメリット
自首は、罪を犯してしまった方が自らの意思で警察などの捜査機関に申し出る行為です。この決断は、感情に流されることなく、法的なメリットとデメリットを冷静に比較検討することが非常に重要になります。自首をすることで刑が軽くなる可能性があるという大きなメリットがある一方で、これまで発覚していなかった犯罪が明るみに出てしまい、確実に刑事手続きが開始されるという無視できないデメリットも存在します。この章では、自首の両側面を客観的に解説し、後悔のない判断を下すための材料を提供します。
自首がもたらす5つの大きなメリット
自首には、単に「刑が軽くなる可能性がある」というだけでなく、様々な側面から被疑者にとって有利に働く要素があります。具体的には、「逮捕・勾留の回避」「不起訴処分の可能性」「示談交渉への好影響」「精神的な不安からの解放」といった多角的な利点が存在します。この後のセクションで、これらの5つのメリットについて詳しく解説していきます。これにより、自首の価値をより深く理解し、自身の状況と照らし合わせて検討するための一助となれば幸いです。
メリット1:刑が軽くなる可能性がある
自首の最大のメリットは、刑が軽くなる可能性がある点です。刑法第42条1項には「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と規定されています。これは「任意的減軽」と呼ばれ、必ずしも刑が減軽されるわけではありませんが、裁判官の裁量によって刑が軽くなることが期待できるものです。
自首は、犯人が自身の罪を深く反省し、真摯に向き合っている姿勢を示す行為として評価されます。その結果、実刑判決が執行猶予付きの判決になったり、懲役期間が短くなったりする具体的な効果が見込めます。例えば、懲役3年が求刑される可能性があった事案で、自首によって懲役1年6ヶ月・執行猶予3年といった判決に変わることもあります。
メリット2:逮捕・勾留を回避しやすくなる
自首は、身体拘束を回避する上で非常に有力な手段となります。警察が被疑者を逮捕するためには「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があることが要件とされています。しかし、自ら警察に出頭して罪を認め、捜査に協力する姿勢を示しているという事実は、これらの「おそれ」がないと判断される有力な材料となります。
弁護士が警察と事前に調整し、被疑者が定職に就いていることや身元引受人がいることなどを適切に伝えることで、逮捕されることなく「在宅事件」として捜査を進めてもらえる可能性が高まります。在宅事件となれば、社会生活を維持しながら捜査に協力できるため、仕事を失ったり、学校に通えなくなったりするリスクを大幅に低減できます。これにより、日常の生活リズムを大きく崩すことなく、手続きに対応することが可能になります。
メリット3:不起訴処分を獲得できる可能性が高まる
自首は、不起訴処分の獲得に繋がる可能性を大きく高めます。検察官が処分を決定する際、自首という事実は被疑者の深い反省を示すものとして非常に重視されます。犯罪の性質や被害の程度、示談の成立状況などにもよりますが、真摯な反省と自発的な申告は、検察官の判断に大きな影響を与えます。
特に、被害が比較的軽微な事件や、被害者との間で示談が成立している場合には、自首したことが決め手となり「起訴猶予」という不起訴処分になる可能性が高まります。起訴猶予は、犯罪の嫌疑は十分あるものの、諸般の事情を考慮して検察官の裁量で起訴を見送る処分です。不起訴処分になれば、刑事裁判が開かれることはなく、前科がつくこともありません。これは被疑者にとって最大の利益となる結果であり、自首が持つ大きな価値の一つと言えるでしょう。
メリット4:被害者との示談が有利に進むことがある
自首は、被害者との示談交渉においても有利に働くことがあります。自ら罪を認め、真摯に反省する姿勢を示すことで、被害者の処罰感情が和らぎ、示談交渉に応じてもらいやすくなるケースが少なくありません。被害者感情は事件の解決において非常に重要な要素であり、その改善は最終的な処分にも大きな影響を与えます。
弁護士を通じて「自首して罪を償う意思がある」というメッセージを伝えることで、加害者本人からの接触を拒んでいた被害者も、交渉のテーブルについてくれる可能性が高まります。弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ建設的な話し合いを進めやすくなります。示談が成立すれば、不起訴処分の獲得や刑の減軽に直結するため、このメリットは非常に大きく、早期の解決に繋がる重要な要素となります。
メリット5:「いつ逮捕されるか」という精神的な不安から解放される
自首がもたらすメリットは、法的な側面だけではありません。罪を犯してしまった方が最も苦しむのは、「いつ警察が来るのだろうか」「いつ逮捕されるのだろうか」という、終わりの見えない精神的な恐怖と重圧です。この不安は、不眠や食欲不振、集中力の低下といった形で日常生活に深刻な支障をきたし、心身ともに疲弊させてしまいます。
自首は、こうした重圧から自らを解放するための、勇気ある積極的な一歩です。自ら罪と向き合い、警察に申し出ることで、罪を隠し続けることによって生じていた精神的な苦痛から解き放たれることができます。法的な解決を目指すだけでなく、心の平穏を取り戻し、人生を再スタートさせるための重要な区切りとなるのです。自首は、法的メリットと同時に、精神的な安定という大きな価値をあなたにもたらします。
知っておくべき自首のデメリット・注意点
自首には多くのメリットがある一方で、冷静に知っておくべきデメリットと注意点も存在します。最大のデメリットは、自首をすることで、警察がまだ把握していなかった犯罪が明るみに出てしまい、確実に刑事手続きが開始されてしまう点です。この捜査の結果、有罪判決を受け、前科がつくリスクがあることは明確に理解しておく必要があります。自首は、罪を償うためのプロセスであり、その覚悟が求められます。
また、自首の要件を満たさず、単なる出頭として扱われるケースがある点も注意が必要です。例えば、すでに捜査機関が犯人を特定していた場合など、法律上の「自首」と認められず、刑の減軽というメリットを享受できないこともあります。このようなリスクがあるからこそ、安易な自己判断で行動を起こすことは危険です。自首を検討する際は、必ず事前に弁護士に相談し、自身の状況において自首が最適かどうか、法的な観点から慎重な判断を仰ぐことが不可欠です。
なぜ自首は弁護士に相談すべき?同行を依頼する6つのメリット
自首という選択は、今後の人生を左右する重要な決断です。しかし、そのメリットを最大限に活かし、同時に予期せぬリスクを最小限に抑えるためには、刑事事件の専門家である弁護士のサポートが不可欠になります。前の章で解説した自首がもたらす恩恵と潜在的な注意点を踏まえると、確実な刑の減軽、逮捕回避、不起訴処分の獲得といった有利な結果を得るためには、弁護士の知識と経験が何よりも重要です。この章では、弁護士に相談し、自首への同行を依頼することによって得られる具体的な6つのメリットについて、詳しく解説していきます。
1. 精神的な支えとなり、自首する勇気が持てる
一人で警察署へ向かい、自身の罪を告白するという行為は、計り知れない恐怖と不安を伴います。警察という組織に対する漠然とした恐れや、自分の言葉が正しく伝わるかという心配、そして何よりも、これからどうなってしまうのかという不透明さが、心を大きく圧迫するでしょう。この重圧の中で、自首へ踏み出すことは並大抵のことではありません。
しかし、法律の専門家である弁護士が物理的に隣にいてくれるという事実は、その不安を大きく軽減し、自首へ踏み出す最後の一押しとなります。弁護士は単に法的な手続きをサポートするだけでなく、依頼者の精神状態に寄り添い、警察官とのやり取りにおいても冷静かつ的確な対応を促します。弁護士は、あなたの最も心強い味方であり、この困難な局面における揺るぎない精神的な支えとなってくれるでしょう。
2. 逮捕・勾留を回避するための的確な弁護活動が期待できる
自首を検討している方にとって、逮捕や勾留といった身体拘束は最も避けたい事態の一つです。弁護士は、自首に同行する前に警察と事前に連絡を取り、依頼者が逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを説得的に主張するための準備を徹底します。
具体的には、依頼者に定職があることや、家族などの身元引受人が確保されていることなどを記載した意見書を事前に作成し、警察に提出します。これにより、逮捕の必要性がないことを明確に示し、逮捕されずに捜査を進める「在宅事件」としての取り扱いを求めることが可能になります。万が一、警察が逮捕に踏み切ってしまった場合でも、弁護士は迅速に勾留請求をしないよう検察官に働きかけたり、勾留決定に対する準抗告を行うなど、早期の身柄解放に向けたあらゆる手段を講じます。弁護士の存在は、身体拘束のリスクを大幅に低減し、社会生活への影響を最小限に抑えるために不可欠なのです。
3. 不利な供述を防ぎ、威圧的な取調べを抑制できる
警察による取調べは、被疑者にとって非常に精神的な負担が大きく、動揺やプレッシャーから、意図せず自分に不利な内容や事実と異なる供述をしてしまう危険性が常に伴います。一旦作成された供述調書は、後の裁判で重要な証拠として扱われるため、その内容は極めて慎重に作成されなければなりません。
弁護士は、自首に臨む前に依頼者と綿密な打ち合わせを行い、事件の経緯や事実関係を正確に把握した上で、取調べで話すべき内容とそうでない内容を整理し、黙秘権の適切な行使方法などについて具体的なアドバイスを提供します。これにより、依頼者が不利益を被る供述をしてしまうリスクを大幅に減らすことができます。また、弁護士が自首に同行し、弁護人として依頼者の側に付いていることを捜査官に示すだけで、威圧的・誘導的な取調べを牽制し、適正な手続きが守られるよう監視する効果も期待できます。
4. 被害者との示談交渉をスムーズに進めてくれる
被害者がいる犯罪においては、示談の成否が刑事処分の結果に大きく影響します。しかし、加害者本人が直接被害者に接触しようとすると、被害者の感情を逆なでし、さらなるトラブルに発展したり、事態を悪化させてしまうリスクが非常に高いです。被害者感情はデリケートであり、多くの場合、加害者からの直接の連絡を拒否する傾向にあります。
ここで弁護士が代理人として間に入ることで、状況は大きく変わります。第三者であり法律の専門家である弁護士を通じてであれば、被害者も冷静に交渉に応じてくれる可能性が高まります。弁護士は、適切な示談金の相場を熟知しており、依頼者の経済状況も考慮しながら、被害者の心情にも配慮した建設的な交渉を進めることができます。さらに、示談が成立した際には、後々のトラブルを防ぐための法的に有効な示談書を作成することも可能です。このように、弁護士は円満かつ確実な示談解決に導き、不起訴処分や刑の減軽といった有利な結果に繋げるための重要な役割を担います。
5. 家族や会社への影響を最小限に抑えるための対策が打てる
逮捕や勾留による長期の身柄拘束は、被疑者本人のみならず、その家族や職場にも甚大な影響を及ぼします。会社からの解雇や、長期間の不在による職務の喪失、さらには家族との関係悪化など、社会生活へのダメージは計り知れません。こうしたリスクを回避し、あるいは最小限に抑えることは、弁護士の重要な役割の一つです。
弁護士が介入することで、逮捕・勾留を避け「在宅事件」として捜査を進められたり、万が一逮捕されても早期の身柄解放を勝ち取ったりすることが可能になります。これにより、日常生活を維持しながら捜査に対応できるため、会社や家族に知られることなく刑事手続きを進められる可能性が高まります。また、弁護士は、職場への報告の要否やそのタイミング、家族への説明の仕方といった、刑事事件に伴う付随的な問題についても専門的な観点から最適なアドバイスを提供します。依頼者が社会生活上の不利益を被らないよう、あらゆる側面からサポートします。
6. 今後の見通しが立ち、安心して手続きに臨める
自首した後、警察での取調べから始まり、検察庁への送致、起訴・不起訴の決定、そしてもし起訴された場合の刑事裁判と、刑事手続きは複雑かつ長期にわたります。一般の方がこれらの法的なプロセスを正確に理解し、最終的にどのような処分が下されるのかを予測することは非常に困難です。この「先の見えない」状態こそが、依頼者の大きな不安の原因となります。
刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することで、今後の手続きの全体像と具体的な見通しについて、詳細かつ分かりやすい説明を受けることができます。各段階でどのようなことが起こり、何を準備すべきか、どのような結果が期待できるのかを事前に知ることで、漠然とした不安が軽減され、落ち着いて一つ一つの手続きに対応していくことができるようになります。弁護士は、法的な知識だけでなく、過去の経験に基づいた実践的なアドバイスを提供し、依頼者が安心して刑事手続きに臨めるよう、全面的にサポートしてくれる存在なのです。
弁護士に自首の相談・同行を依頼する際の流れと費用
弁護士への依頼を具体的に検討されている方にとって、手続きの流れや費用は最も気になる点ではないでしょうか。「弁護士に依頼するメリットは理解できたものの、実際にどう行動すれば良いのか、そしてどれくらいの費用がかかるのかが分からない」という疑問を解消するため、このセクションでは、弁護士への相談から実際に自首に同行してもらうまでの具体的なステップと、弁護士費用の内訳や一般的な相場について詳しく解説します。この情報が、弁護士への相談という次の一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
【ステップ別】弁護士への相談から自首同行までの流れ
弁護士に相談し、実際に自首を実行するまでのプロセスは、多くの方にとって未知の領域であり、漠然とした不安を感じやすいものです。しかし、その全体像をあらかじめ把握しておくことで、心理的な負担を軽減し、一つ一つのステップに落ち着いて対応できるようになります。
このセクションでは、法律事務所への問い合わせから始まり、弁護士との面談、自首に向けた準備、弁護士同行による自首、そして自首後の弁護活動まで、一連の流れを時系列で詳しく解説します。具体的なイメージを持つことで、安心して第一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。
Step1. 法律事務所へ問い合わせ・無料相談
弁護士にアプローチする最初のステップは、法律事務所への問い合わせから始まります。まずはインターネット検索などで「刑事事件に強い弁護士」を探し、電話や公式ウェブサイトの問い合わせフォームから連絡を入れるのが一般的です。刑事事件はスピードが命となることも多いため、24時間対応や土日祝日も受け付けている事務所を選ぶと良いでしょう。
多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っています。この制度を積極的に活用し、いくつかの事務所に連絡を取って弁護士と話してみることをおすすめします。相談の際には、ご自身の状況や事件の概要を正直に話すことが、的確なアドバイスを得るために非常に重要です。守秘義務がありますので、安心してご自身の状況を伝えてください。
Step2. 弁護士との面談・依頼
無料相談などを経て、信頼できると感じる弁護士が見つかったら、実際に法律事務所を訪問して弁護士と直接面談します。この面談では、弁護士の人柄や相性、コミュニケーションの取り方などを確認し、今後長期にわたって協力していくパートナーとしてふさわしいかを見極めることが大切です。納得できたら、弁護活動の正式な依頼として委任契約を結ぶことになります。
面談時には、弁護士から今後の弁護活動の方針、刑事手続きの具体的な見通し、そして弁護士費用の詳細な見積もりについて説明を受けます。契約内容や費用体系について不明な点があれば、遠慮せずに納得がいくまで質問し、全てをクリアにしてから契約を締結するようにしましょう。
Step3. 自首に向けた準備(証拠収集・書類作成)
弁護士との委任契約を締結したら、自首を実行するための具体的な準備段階に入ります。この期間に、弁護士は依頼者にとって最も有利な状況で自首を進められるよう、様々な対策を講じます。
具体的には、まず依頼者の反省の意を明確に示すための反省文作成のサポートを行います。また、被害者がいる事件では、被害弁償の準備や、示談交渉の準備を進めることもあります。さらに、弁護士は逮捕を回避するための重要な要素である身元引受人の確保についてもアドバイスし、必要に応じて身元引受書を作成します。
警察署への提出書類として、犯罪事実を具体的に記載した「自首申告書」や、弁護士が弁護人として付いていることを示す「弁護人選任届」なども弁護士が作成します。加えて、警察の取調べで話すべき内容を依頼者と共に整理し、場合によっては模擬取調べを行うことで、本番で冷静に対応できるようシミュレーションを重ねます。
Step4. 弁護士が警察署へ同行し自首
準備が整い、いよいよ自首を実行する当日。弁護士は、事前に事件を管轄する警察署(例えば、犯行現場を管轄する警察署など)に連絡を取り、出頭の日時を調整するのが一般的です。これにより、警察側もスムーズな受け入れ体制を整えることができ、依頼者も不必要な待ち時間や混乱を避けることができます。
当日は弁護士が警察署まで付き添い、受付で自首の意思を明確に伝えます。弁護士は、事前に作成した自首申告書や、逮捕の必要性がないことなどを主張する意見書を警察官に提出します。弁護士がその場にいることで、本人は精神的な支えを得られ、落ち着いて事実を説明できるようになります。また、警察官による威圧的な取調べが抑制される効果も期待できます。
Step5. 自首後の弁護活動
自首は刑事手続きの終わりではなく、始まりです。自首が受理された後も、弁護士は依頼者の代理人として、その後の刑事手続き全般にわたって強力な弁護活動を継続します。警察での取調べ、検察庁での取調べなど、各段階において依頼者が不当な扱いを受けないよう、また不利な供述をしないよう、具体的なアドバイスを提供し続けます。
具体的には、取調べへの臨み方や黙秘権行使のタイミングに関する助言、不当な取調べが行われていないかの監視、そして被害者がいる事件では示談交渉の本格化などが挙げられます。検察官に対しては、事件の背景や依頼者の反省状況などを詳細に記載した意見書を提出し、不起訴処分、特に起訴猶予を獲得できるよう働きかけます。万が一、起訴されてしまった場合でも、弁護士は引き続き刑事裁判の弁護人として活動し、執行猶予付き判決や減刑など、依頼者にとって最も有利な判決を得るために尽力します。
弁護士に自首の相談・同行を依頼する際の流れと費用
弁護士への依頼を具体的に検討されている方にとって、手続きの流れと費用は最も気になる点ではないでしょうか。「弁護士に依頼するメリットは分かったけれど、実際にどう動けばいいのか、いくらかかるのかが分からない」という疑問を解消するため、この章では弁護士に自首の相談・同行を依頼する際の具体的な流れと費用の内訳、相場について詳しく解説しますす。この情報が、弁護士への相談という次の一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
自首同行にかかる弁護士費用の内訳と相場
弁護士費用は、法律事務所の方針や事件の複雑さ、解決までの期間によって大きく異なります。しかし、一般的に弁護士費用は「相談料」「着手金」「成功報酬」「日当・実費」という4つの項目で構成されています。それぞれの費用がどのような意味を持つのか、そして一般的な相場はどのくらいなのかを理解することで、弁護士への依頼をより具体的に検討できるようになります。
相談料
相談料とは、弁護士に法律相談をする際に発生する費用のことです。刑事事件に関する相談の場合、一般的な相場としては「30分5,000円〜1万円(税別)」程度が多いです。しかし、近年では初回相談を無料としている法律事務所が非常に増えています。経済的な不安から相談をためらってしまう方もいるかもしれませんが、多くの事務所で費用を気にせずにまずは現在の状況を話せる機会が設けられているため、積極的に活用することをおすすめします。
着手金
着手金とは、弁護活動を正式に依頼する際に弁護士に支払う費用であり、事件の結果にかかわらず原則として返還されません。自首同行を含む刑事事件の私選弁護人としての着手金は、事案の軽重や複雑さによって変動しますが、一般的には「30万円〜50万円(税別)」程度が相場とされています。殺人や強盗のような重大な事件や、捜査が広範囲にわたる複雑な事件の場合には、これよりも高額になる可能性もあります。
成功報酬
成功報酬とは、弁護士が担当した事件が良い結果で終了した場合に、その成果に応じて支払う費用のことです。具体的にどのような結果を「成功」とみなすかは、弁護士との委任契約時に取り決めることになります。例えば、「不起訴処分を獲得した」「略式罰金で済んだ」「執行猶予付き判決を獲得した」「保釈が認められた」などが成功の定義となり得ます。成功報酬の相場も「30万円〜50万円(税別)」程度が一般的ですが、獲得した成果の大きさによって変動することがあります。
費用を抑えたい場合に利用できる制度
経済的な理由で弁護士費用を支払うことが困難な場合でも、自首に関する弁護活動を諦める必要はありません。日本には、そうした方を支援するための公的な制度が用意されています。代表的なのが、日本司法支援センター(法テラス)が実施している「民事法律扶助制度」です。この制度は、経済的に余裕がない方が弁護士や司法書士に法律問題を相談したり、依頼したりする際の費用を援助することを目的としています。
民事法律扶助制度を利用するには、収入や保有資産が一定の基準以下であるなどの条件を満たす必要があります。審査に通れば、弁護士費用の中でも特に大きな割合を占める着手金や実費などを法テラスが一時的に立て替えてくれます。立て替えてもらった費用は、原則として月々分割で法テラスに返済していくことになりますが、生活状況によっては返済が猶予されたり、免除されたりする場合もあります。ただし、法テラスの契約弁護士でなければこの制度を利用できない点や、相談内容によっては対象外となるケースもあるため、まずは法テラスまたは法テラスと提携している弁護士事務所に問い合わせてみることが大切です。
自首した後の刑事手続きはどう進む?
自首が受理された後も、刑事手続きは続きます。警察での取調べから始まり、検察庁への送致、検察官による起訴・不起訴の決定、そしてもし起訴された場合には刑事裁判へと進んでいきます。これらの手続きの全体像を事前に把握しておくことは、先の見えない不安を軽減し、各段階で冷静に対応するために非常に重要です。この章では、自首後の刑事手続きの流れを時系列で具体的に解説していきます。
警察署での取調べ
自首をすると、まず警察署で事件の詳細について警察官から事情聴取を受けることになります。ここでは、なぜ事件を起こしたのかという動機、具体的な犯行の経緯、どのような方法で犯行に及んだのかなど、多岐にわたる質問がなされます。
聴取された内容は「供述調書」という形で書面にまとめられます。この供述調書は、その後の刑事手続き、特に裁判において極めて重要な証拠となります。そのため、内容を十分に確認することが不可欠です。もし事実と異なる点や誤解を招く表現があれば、必ず訂正を求めてください。内容に納得できない場合は、署名や押印を拒否する権利がありますので、安易にサインせず、自身の供述が正確に反映されているか慎重に確認することが大切です。
事件の送致(検察庁へ)
警察での捜査が一段落すると、警察は収集した証拠品や作成した供述調書など、事件に関する全ての記録を検察庁の検察官に引き継ぎます。この手続きを「送致(送検)」と呼びます。逮捕されていない「在宅事件」の場合でも、原則として全ての事件が検察官に送致されることになります。
この送致によって、事件を起訴するかどうかの最終的な判断を下す権限が、警察から検察官へと移ります。つまり、検察官が今後の刑事手続きの方向性を決定する重要な局面を迎えることになります。
検察官による処分決定(起訴・不起訴)
事件の送致を受けた検察官は、警察の捜査内容を精査するだけでなく、必要に応じて自らも被疑者を取り調べて事件についてさらに詳しく確認します。その上で、被疑者を刑事裁判にかける「起訴」とするか、裁判にかけずに事件を終了させる「不起訴」とするかを決定します。
不起訴処分にはいくつかの種類がありますが、自首した事件で目指すのは主に「起訴猶予」です。これは、犯罪の嫌疑は十分にあると判断されたものの、被疑者が自首して深く反省していることや、被害者との間で示談が成立していることなど、様々な事情を総合的に考慮した結果、検察官の裁量によって起訴が見送られる処分です。
不起訴処分となれば、刑事裁判は開かれず、前科もつくことなく事件は終了します。自首は、この起訴猶予を勝ち取る上で非常に有利な材料となり得るのです。
起訴された場合の刑事裁判
もし検察官によって起訴された場合、事件は公開の刑事裁判へと進みます。裁判では、裁判官によって被疑者の有罪・無罪が審理され、有罪と判断されればどのような刑罰を科すかが決定されます。日本の刑事裁判は有罪率が極めて高く(99.9%以上)、一度起訴されてしまうと、その多くは有罪判決へと至るのが実情です。
そのため、起訴された場合は、いかに刑を軽くするか、例えば執行猶予付き判決を獲得したり、懲役期間を短縮したりすることが弁護活動の中心となります。自首したという事実は、裁判官にとっても被疑者が深く反省していることの証拠となり、量刑を判断する上で有利な情状として考慮される重要な要素となります。
自首に関するよくある質問
このセクションでは、自首に関して多くの方が疑問に感じる点について、Q&A形式で具体的な回答を提示します。これまでに解説した自首の定義やメリット・デメリット、弁護士の役割などを踏まえつつ、より実践的な質問にお答えすることで、不安や疑問を解消し、次の行動への一助となれば幸いです。
Q. 弁護士なしで一人で自首しても大丈夫?
法的には弁護士なしで一人で自首することも可能ですが、これは全く推奨できません。ご自身の精神的な負担が非常に大きいだけでなく、多くのリスクが伴います。例えば、警察官による取調べにおいて、精神的に動揺したりプレッシャーを感じたりすることで、意図せずご自身に不利な供述をしてしまい、それが供述調書として記録されてしまう可能性があります。
また、本当は逮捕の必要がないと判断されるような事案であっても、適切に説明できなければ、警察から「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があると判断され、その場で逮捕されてしまうリスクもゼロではありません。このようなリスクを回避し、自首のメリット(逮捕回避、刑の減軽、不起訴処分の可能性など)を最大限に活かすためには、事前に弁護士に相談し、同行を依頼することが極めて重要です。
Q. 証拠がなくても自首はできますか?
はい、証拠がなくても自首は可能です。自首の成立要件は、あくまで「犯罪事実が捜査機関に発覚する前に、自ら犯罪事実を申告し、その処分を求める意思表示をすること」であり、物的な証拠を提出することは必須ではありません。
たとえ犯行を裏付ける客観的な証拠が何もない場合でも、ご自身の記憶に基づいて正直に犯行内容を供述すれば、法律上の自首は成立します。ただし、客観的な証拠を提示できれば、供述の信用性が高まり、警察の捜査がスムーズに進むという側面も確かにあることはご理解ください。
Q. 自首したら会社や家族にバレますか?
自首した場合でも、会社や家族に知られてしまう可能性はあります。特に、逮捕・勾留されて長期間身柄を拘束されてしまうと、会社を休む必要が生じるため、知られてしまうリスクが高まります。また、警察は事件の捜査や連絡のため、身元引受人としてご家族に連絡するケースも一般的です。
しかし、弁護士に依頼して適切な弁護活動を行えば、そのリスクを大幅に下げることができます。弁護士が警察と事前に交渉し、逮捕の必要性がないことを説得的に主張することで、「在宅事件」として扱われ、逮捕を回避できる可能性が高まります。在宅事件となれば、普段通りの生活を送りながら捜査に協力できるため、会社や家族に知られることなく刑事手続きを進められる可能性が高まるでしょう。
Q. 匿名で弁護士に相談することは可能ですか?
最初の電話やメールでの問い合わせ、または法律相談の段階であれば、多くの法律事務所で匿名やニックネームでの相談が可能です。弁護士には厳格な守秘義務が課せられていますので、ご相談内容が外部に漏れることは決してありません。安心してご連絡ください。
ただし、実際に弁護活動を依頼し、弁護士との間で委任契約を結ぶ段階になりますと、本人確認が必要となるため、ご自身の本名を明かす必要があります。まずは匿名での相談から始めて、信頼できる弁護士を見つけることをおすすめします。
Q. すぐに自首すべきか、示談を優先すべきか迷っています
この判断は非常に専門的であり、ご自身の自己判断は危険です。すぐに弁護士に相談してください。被害者がいる犯罪において、自首を優先すべきか、それとも示談交渉を優先すべきか、あるいは両者を同時に進めるべきかという判断は、事件の種類、被害者の方の感情、すでに捜査がどの程度進んでいるかなど、非常に多くの要素を総合的に考慮して決定すべき高度な戦術的判断となります。
刑事事件の経験豊富な弁護士であれば、ご自身の状況を的確に分析し、事件を依頼者にとって最も有利な結果に導くための最適な選択肢や戦略を提案してくれます。判断に迷う状況だからこそ、専門家である弁護士の知見を借りることが重要です。
まとめ:罪の意識に悩んだら、一人で抱え込まずにまずは弁護士に相談を
これまでお伝えしてきた通り、自首は罪を犯してしまった方が、自らの意思でその罪と向き合い、人生を再スタートさせるための重要な一歩となります。自首によって刑が軽くなる可能性があるだけでなく、逮捕や勾留を回避しやすくなったり、不起訴処分を獲得できる可能性が高まったりと、多くのメリットが期待できます。しかし、これらのメリットを最大限に活かすためには、刑事事件に精通した弁護士のサポートが不可欠です。
「いつ逮捕されるのだろう」という終わりの見えない不安や、誰にも相談できない孤独感に苛まれている方も少なくないでしょう。そうした精神的な苦痛から解放され、前向きに問題解決に取り組むためにも、まずはその胸の内を弁護士に話してみることから始めてください。弁護士は、あなたの状況を客観的に分析し、今後の手続きの見通しを明確にすることで、漠然とした不安を具体的な対処法へと変えてくれるでしょう。
自首は、過去と決別し、未来へ進むための勇気ある行動です。そして、その勇気を支え、最適な道筋を示すのが弁護士です。多くの法律事務所では無料相談を実施していますので、費用を心配することなく、まずは一歩を踏み出して相談してみてください。弁護士は、あなたの最も心強い味方となって、新たな人生を歩むためのサポートをしてくれます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




