納骨堂は全て課税対象?
最終更新日: 2021年07月08日
はじめに
お寺の境内地や境内建物、墓地が非課税であることは一般によく知られています。
ところが、某県のあるお寺が都内につくった納骨堂に、東京都が固定資産税、都市計画税を課したところ、訴訟に発展しました。裁判所は、当該納骨堂への固定資産税と都市計画税の賦課は適法であると判断しました(東京地判H28.5.24 判タ1434.201)。
このように納骨堂は課税対象であるという判断が出たのですが、あくまで当該事案の納骨堂は課税対象と判断されただけであって、およそ納骨堂であれば全て課税されるということではありません。
では、どのような納骨堂が課税されるのでしょうか。
宗教法人で非課税となるもの
固定資産税が非課税となるのは以下のものです(地方税法第348条2項3号、4号)。これらについては都市計画税も課されません(地方税法第702条の2第2項)。
- 宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地
- 墓地
このように「墓地」は明確に非課税対象として規定されている一方、納骨堂は規定されていません。墓地と納骨堂は墓地埋葬法において、異なるものとして定義されているように(墓地埋葬法第2条5項、6項)、「墓地」に納骨堂を含めて解釈することは困難です。
よって、納骨堂が非課税対象となるかどうかは、納骨堂が上記1、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当するかどうかによることになります。
非課税となる境内建物及び境内地とは
このように、納骨堂が非課税となるかどうかは、「宗教法人が専らその本来の用に供する」「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当するかどうかによります。
「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」とは、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという宗教法人の主たる目的を実現するのに必要な、本来的に欠くことのできない建物、工作物及び土地をいいます(宗教法人法第2条、第3条)。
もっとも、このような境内建物及び境内地が全て非課税となるわけではありません。あくまで、「宗教法人が専らその本来の用に供する」ものでなければなりません。
宗教法人は主たる目的である宗教的活動の他にも、公益事業、その他の事業を行うことができます。そのため、非課税とする対象を主たる目的である宗教的活動のために利用する固定資産に限定するために、「宗教法人が専らその本来の用に供する」という限定がつきました。
よって、「宗教法人が専らその本来の用に供する」とは、境内建物及び境内地を、専ら、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという主たる目的を実現するために使用している状態と解釈されます。
以上を踏まえれば、檀信徒のみを対象とした納骨堂は、「宗教法人が専らその本来の用に供する」「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当します。
問題となるのは、宗旨宗派不問の納骨堂です。
課税対象となった納骨堂
冒頭にご紹介した判例で課税対象とされた、すなわち「宗教法人が専らその本来の用に供する」「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」には該当しないと判断された納骨堂は概ね以下のようなものでした。
- (宗旨宗派を問わず、檀家となることも求めず、納骨堂の使用権を取得できる
- 一定の施設使用料を支払うことで、他の宗旨宗派の僧侶が納骨堂の施設を利用して法要を行うことが認められ、実際、法要の約15%が他の宗旨宗派によるものであった。
- 寺院も宗旨宗派を問わないことを周知して、使用者を広く募集している。
とりわけ2は、他の宗旨宗派の法要を許しており、実際に例外的とはいえない割合の法要が実施されていたことを踏まえますと、いかに寺院が全ての焼骨について寺院の典礼方式によって永代供養をしていたとはいえ、専ら、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するという主たる目的を実現するために使用していると評価するのは困難でしょう。
あくまでこの事案で問題となった納骨堂については課税対象と判断されたに過ぎず、宗旨宗派不問であれば課税対象となるというわけではありません。檀信徒に限らず広く使用者を募る場合には、あまりに対象が広がり過ぎないよう、またその運営方法も布教目的から逸脱しないよう留意すべきです。
なお、前記のとおり「墓地」は、非課税対象として明記されており、かつ、「宗教法人が専らその本来の用に供する」のような限定もありません。そのため、宗旨宗派不問で、かつ他の宗旨宗派の僧侶による典礼を許したとしても、非課税対象となってしまうことには疑問がないこともありませんが。
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