「自宅で不倫」が発覚したら|慰謝料が増額されやすいとされる理由と、精神的苦痛を適切に主張する方法
最終更新日: 2025年12月17日
「夫のスマホを見たら、私が里帰り中に自宅に女性を招き入れていた…」
「寝室から、見知らぬ長い髪の毛が出てきた」
不倫(不貞行為)の中でも、生活の場である自宅に第三者を招き入れたケースは、被害者の方の精神的負担が大きくなりやすい類型です。
夫婦が日常生活を営む自宅で不貞行為が行われた事実は、単なる裏切りにとどまらず、安心できる場所が損なわれたと感じてしまう方も少なくありません。
そして実務上も、「自宅での不倫」は、行為の態様(状況)として悪質性が考慮され、慰謝料の増額要素として評価されることがあります。
この記事では、なぜ自宅での不倫が増額要素になり得るのか、その理由と、増額を目指す際に重要となる証拠の考え方について解説します。
結論:「自宅での不倫」は増額要素として主張しやすい
一般的に不倫慰謝料の相場は概ね100万〜300万円程度とされることが多いですが、場所が「自宅」であった場合、上限に近い金額が認められる、または増額が検討される可能性が出てきます。
裁判所は慰謝料額を検討する際、「期間・回数」とあわせて、行為の態様(どのような状況で行われたか)を考慮します。
自宅に招き入れる行為は、次の点で精神的苦痛が大きいと主張しやすい傾向があります。
平穏な生活空間が損なわれたことによる精神的苦痛
ホテルや相手方宅での不倫と異なり、被害者の生活空間そのものに不貞行為が入り込んだ形になります。
「家に帰るのがつらい」「寝室を使うことに抵抗がある」など、日常生活に直接影響が生じた事情は、精神的苦痛の程度を示す材料になり得ます。
慰謝料が増額されやすいとされる主なポイント
単に「自宅だった」という点に加え、次のような事情がある場合、悪質性や精神的苦痛の程度をより具体的に主張できる可能性があります。
配偶者の「不在時」を狙った事情(計画性がうかがわれる場合)
里帰り出産中、入院中、単身赴任中など、配偶者が不在のタイミングを選んで招き入れていた場合、
「発覚を避ける意図が強い」「配偶者への配慮が欠ける」といった事情として評価されることがあります。
特に妊娠・出産期など、心身の負担が大きい時期であれば、その点も精神的苦痛の裏付けとして整理できます。
子どもへの影響が懸念される事情(同居の場合)
子どもが在宅中であった、子ども部屋付近に出入りしていた等の事情がある場合、
家庭環境への影響や不安の大きさを説明する材料になります(ただし評価のされ方は事案により異なります)。
被害者の私物・生活空間を使用した事情
食器や寝具、衣類など、被害者の生活用品が使用されていた事情がある場合、
精神的苦痛や嫌悪感の程度を具体化する事情として主張に用いられることがあります。
引っ越し費用や買い替え費用は請求できる?
「気持ちの面で、この家に住み続けるのが難しい」
「寝具や家具を買い替えたい」
このように感じるのは自然なことです。
もっとも、裁判(判決)で引っ越し費用や買い替え費用そのものが損害として認められるかは、因果関係や必要性の立証の観点からハードルがあるのが実情です。
一方で、示談交渉では、慰謝料額の調整要素として「環境を整えるための費用相当分」を含めて話し合うことはあり得ます。
たとえば、慰謝料に一定額を上乗せする条件で合意し、実質的な負担軽減を図る進め方が検討されます。
「自宅での不倫」を裏付ける証拠の考え方
自宅での不倫はホテルの領収書等が出にくい反面、自宅だからこそ残り得る資料があります。代表例は次のとおりです。
・インターホンの録画履歴(出入りの記録)
・ドライブレコーダー映像(自宅付近でのやり取りや出入りが映る場合)
・GPS等の位置情報(同時刻に自宅に滞在していた事情)
・遺留品・ゴミ等(髪の毛、化粧品関連、吸い殻、ゴミ箱の内容など)※保管・撮影で記録化
・近隣の目撃証言(出入りの目撃など)
なお、証拠集めの方法によっては、プライバシーや違法収集の問題が出ることもあるため、進め方は慎重に検討する必要があります。
まとめ:強い精神的苦痛は、具体的事情として整理して主張する
自宅を不倫の場にされたと感じたときのショックや屈辱感は、簡単に言葉にしにくいものです。
だからこそ、慰謝料を検討する際には「ただ不倫があった」だけでなく、生活への影響や精神的苦痛がどのように生じたかを具体的事情として整理して主張することが重要です。
自宅での不倫が疑われる場合は、証拠の整理や、増額要素の組み立て方によって結果が変わることがあります。
負担が大きい状況だと思いますので、早めに弁護士へ相談し、無理のない形で対応方針を決めていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 相手が「家には入ったが、お茶をしただけで肉体関係はない」と言っています。
争点になります。もっとも、配偶者の不在時に異性を自宅へ招き入れ、長時間滞在していた等の事情がある場合、状況証拠として不貞行為が推認される可能性があります。滞在時間ややり取りの記録など、客観資料の整理が重要です。
Q. 不倫相手を「住居侵入罪」で訴えることはできますか?
事案により判断が分かれます。配偶者が招き入れている場合は同意の有無が問題になり、刑事事件として成立するかは慎重な検討が必要です。ただし、民事上の違法性の主張や、弁護士からの警告が交渉上の材料となるケースはあります。
Q. 自宅での不倫が一度だけでも増額されますか?
回数が少なくても、場所が自宅であることや生活への影響が大きいことが評価要素となり得ます。回数だけでなく「態様の特殊性」や精神的苦痛の具体性を整理して主張します。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




