不倫をされたら公正証書をつくるべき?弁護士が解説

最終更新日: 2024年02月27日

不倫相手や配偶者に公正証書をつくらせるべき?弁護士が解説

  • 公正証書にはどのようなメリットがある?
  • 不倫相手に公正証書をつくらせるべき?
  • 配偶者とも公正証書をつくるべき?

配偶者の不倫が発覚して不倫相手と示談する場合、公正証書を作成するべきか悩むことがあります。また、不倫をした配偶者と夫婦関係を続けていく場合に、公正証書をつくって不倫をしないことなどの約束をさせたいと考える方もおられます。

公正証書というと公的な書面で、安心感があるという感覚はとてもよくわかります。しかし、実際には費用をかけて作成することにほとんど意味がないケースも多くあります。

そこで今回は不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が不倫問題における公正証書について解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫されたときは公正証書?

配偶者に不倫された場合に、配偶者や不倫相手と公正証書を作成した方がいいと見聞きすることがあります。日常生活で公正証書に触れる機会はほとんどないと思いますので、公的な書面というイメージしかお持ちでないかもしれません。

そこで、まずは、公正証書とは何か、またそのメリットや作成の流れについてもご説明します。

公正証書とは?

公正証書とは公証人が法律に従って作成する公文書です。公証人は、主として元裁判官、元検察官などの長い法律実務の経験を有している者が法務大臣から任命されて就く公職です。

全国約300か所に公証役場はあり、インターネットにて検索をしますといずれかの公証役場が近所に見つかります。

公正証書のメリット

契約書は私人間でも作成することができるのですが、敢えて公正証書を作成するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。以下見て行きましょう。

契約を交わしたことを証明できる

まず、契約を交わしたことの証明が容易になります。

私人間で契約を交わした場合、そのような契約をした覚えはない、偽造だなどと反論されることがあり、その場合には間違いなく契約を交わしたことを裁判で証明することが必要となります。

しかし、公正証書の場合、公証人が公的身分証によって本人確認をしたうえで、公証人の目の前で公正証書に署名捺印がなされますので、契約をしたことについて反論することはほぼ不可能です。

強制執行ができる

次に、強制執行が可能になるメリットがあります。この点が公正証書を作成する最大のメリットです。

慰謝料を支払う示談書を私人間で交わしたのに、慰謝料の支払いが滞った場合、まずは裁判をして相手に対して慰謝料を支払うことを命じる判決を得る必要があります。その上で、判決に基づき、財産や給与を差し押さえる強制執行手続をとります。

一方、公正証書を作成していた場合に慰謝料の支払いが滞れば、その公正証書に基づき、財産や給与を差し押さえる強制執行手続が可能です。つまり、裁判のプロセスをスキップ、省略できるのです。

ただし、後にもご説明しますが、いかなる内容であってもこのような効力が与えられるわけではありません。

支払いがなされる可能性が上がる

3点目は上記の2点目と関係しますが、支払いを怠れば強制執行をされてしまいますので、公正証書を作成した場合には、支払いが滞る可能性が低下します。

このような支払いが滞ることへの抑止力になる点も大きなメリットです。

保管してもらえる

最後に、作成された公正証書は公証役場にて20年間保管してもらえます。万が一、作成した公正証書を紛失したとしても、再発行してもらうことが可能であり、他人による書き換えの心配もありません。

公正証書を作成する流れ

このような大きなメリットのある公正証書ですが、どのように作成するのか、その流れも確認しておきましょう。

公正証書を作成する場合、全国いずれの公証役場でも構いませんので、電話をして公正証書を作成したい旨を伝えましょう。自分から連絡をしても良いですし、不倫相手から連絡をしても構いません。

すると、まずは作成したい公正証書の案文をFAX又はEメールにて送るよう指示を受けます。作り方が分からない場合には、口頭でどのような内容にしたいのか伝えれば、公証人において案文を作成してもらえることもあります。

そして公正証書の案文について当事者双方の了承が得られたら、公正証書を作成する日時の予約をとります。

予約をした日時には運転免許証などの公的身分証と実印など公証人が指示した物を持参します。そして、公証人の面前で、事前に確認をしていた公正証書の内容の読み聞かせがあり、当事者双方が署名捺印をして、公正証書が完成します。

公正証書は不貞行為の相手とつくるべき?

公正証書については概ねお分かりいただけたかと思います。では、不倫相手と示談書を作成する場合に、公正証書にするべきなのでしょうか。

不倫相手との示談書について公正証書にすべき場合もあれば、公正証書にしてもあまり意味がない場合もありますので、以下確認しておきましょう。

慰謝料を支払うならつくる

先ほど説明しましたとおり、公正証書の最大のメリットは、強制執行を可能にする点にありました。そのため、不倫相手が約束した慰謝料の支払いを怠る可能性が心配であれば、公正証書にするべきです。

分割払いの場合は公正証書にした方が良いですし、一括払いの場合もその支払期日が数か月後の場合には公正証書にした方が良いです。

支払期日が数日後や2,3週間後の場合には公正証書にすることはあまり意味がありません。公正証書の作成には2、3週間を要することが通常ですから、公正証書を作成するまでに支払期日が到来してしまう可能性が高いからです。

不倫解消の誓約だけなら不要

一方、慰謝料の支払いについては不倫相手に求めず、配偶者との不倫解消や接触禁止だけを約束させるのであれば、たとえ違約金を定めていたとしても公正証書にする意味はあまりありません。

まず、このような不倫解消や接触禁止があったとしても、違約金の支払いについて、公正証書に基づいて強制執行をすることはできません。違反の事実について裁判で証明し、判決を得る必要があります。

このように公正証書の最大のメリットである強制執行を可能にする効力を付与されませんので、契約をしたことの証明や保管のメリットだけが残ります。

しかし、契約をしたことは公正証書によらなくても、署名捺印をするところを動画撮影することで足りますし、保管については紛失しないよう管理すれば足りますので、結局、このような内容だけであれば、敢えて費用をかけて公正証書を作成するメリットはありません。

公正証書で浮気防止できる?

次に夫婦間の話を見て行きましょう。不倫をした配偶者と離婚せずに、夫婦関係を継続していく場合、再び不倫をしないかと不安に思う方は多いでしょう。

そこで、配偶者と再び不倫をしたときのペナルティや離婚条件について契約書を作成して公正証書にすることが考えられます。

このような契約書は夫婦間契約といって、よく作成されるものです。例えば、以下のような内容を盛り込みます。

  • 携帯電話のGPSを常に共有すること
  • 二度と不倫をしないことの誓約
  • 再び不倫をしたときは離婚すること
  • 離婚する際は財産分与を放棄すること
  • 離婚する際は慰謝料500万円を支払うこと

このような夫婦間契約ですが、こちらについても公正証書にするメリットはありません。

慰謝料の支払いが入っているのだから強制執行ができるのではないかと思われるかもしれません。しかし、先ほどの不倫相手の慰謝料は既に発生していますが、こちらの慰謝料は将来不倫があった場合に発生するもので未だ発生していません。

そのため、夫婦間契約に定められている慰謝料については、仮に公正証書にしたとしても、将来不倫があった場合に、裁判で不倫の事実を証明し、判決を得ることが必要になります。

よって、夫婦間契約については強制執行を可能にする効力が付与されませんので、敢えて費用をかけてまで公正証書にするメリットはありません。

不倫の公正証書を強制執行!

ここまで公正証書は強制執行が可能になるから作成すると繰り返しご説明しました。最後に、公正証書に基づき強制執行をする流れについて確認しておきましょう。

  1. 公正証書の正本を準備する
  2. 送達証明書の申請
  3. 執行文の付与
  4. 強制執行の申立て

公正証書の正本を準備する

強制執行をするためには公正証書の正本が手元に必要です。謄本しか持っていない場合には、公証役場に申請をして正本を交付してもらいましょう。

送達証明書の申請

また、公正証書が不倫相手に届いていることの証明である送達証明書を公証役場に申請し、交付してもらいます。

執行文の付与

そして、お持ちの公正証書の正本に、公証役場から執行文の付与を受けます。執行文とは、「債権者は、債務者に対し、この公正証書によって強制執行をすることができる。」という一文です。

強制執行の申立て

以上の準備が整いましたら、強制執行をする対象財産や給与債権を特定し、強制執行の申立書を裁判所に提出をします。

対象財産の特定や申立書の作成は専門的ですから、弁護士に依頼をしましょう。

まとめ

以上、不倫問題における公正証書について解説しました。

不倫相手との公正証書を作成したい、不倫相手が約束した慰謝料を支払わない、配偶者と夫婦間契約をつくりたい。このようなご要望があるときは、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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