離婚慰謝料を徹底解説!請求できる・できない条件と対策も紹介

最終更新日: 2024年12月30日

離婚慰謝料を徹底解説!請求できる・できない条件と対策も紹介

  • パートナーと離婚するが慰謝料を請求したい。どのくらい請求できるのだろうか?
  • 裁判離婚で慰謝料を請求できる条件があるなら教えてほしい。
  • パートナーから慰謝料を請求されそうなので弁護士に相談した方がよいだろうか?

夫婦が離婚するときの慰謝料は、話し合いで自由に決められます(協議離婚)。離婚条件や慰謝料の金額面について話し合いがまとまらないときは、離婚裁判で解決が可能です。

ただし、裁判で離婚や慰謝料請求が認められるのは、一定の条件に該当する場合です。

そこで今回は、離婚・慰謝料問題の解決に豊富な実績を持つ専門弁護士が、裁判で離婚慰謝料を請求できる条件、離婚慰謝料を請求する流れ等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 離婚慰謝料は、ある程度相場が決まっている
  • 裁判で離婚慰謝料を請求するためには、相手の不貞行為やDVをした等の証拠が必要
  • 離婚慰謝料を請求する前に、まず夫婦で協議する必要がある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

離婚における慰謝料とは

離婚の原因がパートナーにある場合、慰謝料を請求できます。パートナーと離婚について話し合うときは、財産分与や子の養育費とは分けて、慰謝料の金額を決めるのが一般的です。

賠償金

慰謝料とは、離婚による精神的な苦痛を慰める目的で、離婚の原因をつくった相手から支払われる賠償金です。逆に自身が離婚の原因をつくった場合は、相手に慰謝料を支払うことになるでしょう。

互いの価値観・性格の不一致が理由で離婚する場合、夫婦のどちらかが悪いとはいえないので、慰謝料の請求は認められません。

相場

夫婦が離婚について話し合う協議離婚の場合は、慰謝料の金額を自由に決められます。離婚の原因がどちらかにあっても、夫婦の合意で慰謝料を支払わないと決めることも可能です。

裁判離婚で慰謝料の金額を裁判所が判断する場合は、次のような相場となります。

  • 一般的な相場:100~300万円
  • 非常に悪質な行為が離婚原因、または原因が複数ある場合:300万円~

パートナーの不貞行為(不倫)が長期間だった(20年以上)、不貞行為の他にドメスティック・バイオレンス(DV)も行われていた場合、500万円以上の慰謝料請求が認められることもあります。

離婚慰謝料を請求できる条件

裁判で離婚問題の解決を図る場合、離婚慰謝料も決定できます。

ただし、無条件に離婚慰謝料が決められるわけではなく、パートナーに問題行動があった場合に慰謝料請求が可能です。

不貞行為

パートナーの不倫が原因で離婚する場合、離婚慰謝料の請求が可能です。

離婚慰謝料を主張する側が、次の証拠を示せれば裁判に有利になります。

  • パートナーと不倫相手が性行為をしている画像や動画、音声
  • パートナーと不倫相手が性行為をしていると推認できる画像や動画
  • パートナーの妊娠・出産・中絶に関する証明書等

性行為をしていると推認できる画像や動画とは、パートナーと不倫相手が2人でラブホテルに出入りしている状況を撮影したもの等です。

どの証拠も入手は困難でしょう。特に、妊娠・出産・中絶に関する証明書は、すでにパートナーが破棄・隠匿している可能性もあります。

パートナーと不倫相手との性行為、不倫現場を撮影できるか否かが重要です。

独力で証拠をつかめないときは、探偵に不倫調査の依頼を検討してみましょう。

悪意の遺棄

パートナーが自分や家族に対し「悪意の遺棄」を行った場合、離婚慰謝料の請求が可能です。

悪意の遺棄とは、パートナーが自分や家族に無断で別居した(夫婦の同居義務違反)・家事や育児を全くしない(協力義務違反)・生活費の分担を拒否した(扶助義務違反)等の行為が該当します。

同居義務や協力義務・扶助義務に違反したとしても、法律で罰せられるわけではありませんが、離婚慰謝料という形でパートナーに金銭的な賠償を請求可能です。

次のような書類等が、悪意の遺棄の証拠となりえます。

  • 夫婦の共有財産としている預金口座の履歴:パートナーからの入金がない証拠となる
  • パートナーが自宅の他に賃貸借契約を締結した契約書:無断で別居した証拠となる

DV

パートナーからドメスティック・バイオレンス(DV)を受けた場合、離婚慰謝料の請求が可能です。

離婚慰謝料を主張するときは、次の証拠を揃えておきましょう。

  • パートナーがDVを行っている画像や動画・音声・医師の診断書
  • DVによる治療のため医療機関を利用したときの領収書等

医師の診断書等の記録は、保護命令を申し立てるときにも重要な証拠資料となります。

保護命令とは、暴力を振るうパートナーに対し、裁判所が接近禁止を命じる手続きの1つです。

モラハラ

パートナーが暴力を振るわなくても言葉や態度による精神的な嫌がらせ行為(精神的DV)をしたのであれば、離婚慰謝料の請求が可能です。

次のような行為がモラハラに該当します。

  • 相手を侮辱する言葉・無視する態度
  • 生活費を渡さない
  • 子に配偶者の悪口を吹き込む
  • メールや手紙等で誹謗中傷する
  • 電話で罵る等

モラハラの証拠としては、パートナーが相手を侮辱している音声の録音や、誹謗中傷するメール・手紙等があげられます。

離婚慰謝料を請求できない条件

離婚は可能でも慰謝料を請求できないケースもあります。

たとえば、パートナーに不貞行為の事実があっても、すでに婚姻関係が破綻していたときや、夫婦間での思想・信念の違いで離婚するとき等です。

婚姻関係の破綻

パートナーが不貞行為(不倫)を行う前から、夫婦関係(婚姻関係)が破綻していた場合、慰謝料請求は認められません。

パートナーが配偶者の同意を得て別居後に新たな恋人をつくった場合も、慰謝料は認めらないため、財産分与・子の養育費等の取り決めが焦点となるでしょう。ただし、夫婦関係が破綻していても、DVやモラハラを行ってよいわけではありません。

夫婦関係が破綻していても、DVやモラハラの事実が認められれば、慰謝料を請求できます。また、夫婦関係の破綻後でも、パートナーが生活費を入れないことで自分や家族が困窮するときは、慰謝料請求が認められる可能性があります。

宗教の対立

夫婦間で信仰する宗教が異なるという理由で離婚する場合、慰謝料請求は認められません。

どちらかの責任で離婚することになったわけではないからです。ただし、パートナーの宗教団体への献金額があまりに多く、生活が困窮したため夫婦関係が崩壊した場合は、慰謝料請求が認められる場合もあるでしょう。

宗教の対立による裁判離婚の場合、次のような理由がなければ、離婚が認められない可能性があります。

  • パートナーが宗教にのめり込んでしまい、生活費を入れないばかりか仕事も辞めた
  • 相談もないまま、パートナーが宗教に多額の資金をつぎこんだ
  • 反対しているのに、パートナーが子に宗教を押し付け、家庭内が混乱している
  • パートナーが宗教的な理由を主張し、一般的な夫婦関係が築けていない等

価値観の違い

夫婦間でのライフスタイルの違い等が理由で離婚する場合も、慰謝料請求は認められません。

夫婦間の価値観の違いとは、次のようなケースです。

  • 夫婦の一方は夫婦別姓に賛成だが、他方は反対である
  • 夫婦の一方は子をつくりたいが、他方は反対である
  • 夫婦の一方はたまに別居したいが、他方は反対である
  • 夫婦の一方の趣味に他方が全くついていけない等

価値観の違いという理由だけでは、離婚慰謝料の請求は不可能なだけでなく、裁判でも離婚が認められない可能性は高いです。

離婚慰謝料を決める要素

裁判所が離婚慰謝料を決めるときは、主に次の要素を考慮に入れます。

  • 不倫期間:10年以上であれば不倫慰謝料は高額化する傾向にある
  • 不倫回数:不倫相手の性行為の回数が頻繁か否か
  • 婚姻生活の状況:婚姻関係は円満だったか、それとも不倫当時から破綻していたか
  • 婚姻期間:婚姻関係の長さによって不倫で破壊された精神的苦痛が考慮される
  • 夫婦に子がいるか:子を連れて生活する負担もある程度考慮
  • 悪質性:パートナーが何度も不倫し、反省していない等
  • 夫婦の年収:不倫したパートナーの年収が高く、相手の年収が低い場合、不倫慰謝料は高額化する傾向にある

離婚慰謝料を請求する流れ

離婚慰謝料をどのように取り決めるかは夫婦次第です。

しかし、交渉でうまくいかないからといって、いきなり離婚訴訟は提起できません。法律に従い、離婚に関する交渉・手続きを進める必要があります。

電話・内容証明郵便

夫婦がすでに別居している場合、電話やメール、通知(内容証明郵便)で離婚慰謝料を請求しましょう。

電話やメールで請求しても、パートナーから無視・拒否されるおそれがあります。その場合は「内容証明郵便」を利用した通知が効果的です。

内容証明郵便で慰謝料請求を行えば、パートナーに心理的なプレッシャーを与えられ、離婚慰謝料を請求したという証明にもなります。

内容証明郵便をみて慌てたパートナーが、交渉を申し込んでくる可能性もあるでしょう。

交渉

まずは夫婦間で慰謝料を含め、離婚条件を協議しましょう(協議離婚)。

夫婦が納得するのであれば、離婚慰謝料は自由に決められます。離婚慰謝料を授受しない合意も有効です。

離婚の合意はできても、慰謝料がまとまらない場合は、市区町村役場に離婚届を提出したうえで、慰謝料の話し合いを続けてもよいでしょう。

離婚の協議がまとまったときは、合意した条件・慰謝料の金額と支払方法・支払期限を明記した「離婚協議書」を2通作成します。

双方が1通ずつ取得し、大切に保管しましょう。離婚協議書があれば取り決めた内容を忘れてしまうリスクも回避できます。

離婚調停

離婚の協議がまとまらなかった場合は、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」をしましょう。

調停では、裁判所が選任した調停委員が、夫婦それぞれの言い分を聴き、離婚条件や慰謝料に関する意見対立を調整し、解決案を提示します。

調停により夫婦が離婚条件に合意すれば、調停調書を作成します。

ただし、無理に調停で和解する必要はありません。和解できなければ、調停不成立となり、離婚訴訟による解決方法へ進みます。

離婚裁判

調停不成立の場合、原則として、夫婦のいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に離婚訴訟を提起できます。

ただし、訴訟提起の前に離婚調停を行わなければいけません(調停前置主義)。

離婚訴訟では、たとえパートナーが離婚を拒否し、あるいは離婚条件に納得しなくても、勝訴すれば、離婚が可能です。

パートナーは裁判所の判決に従い、離婚手続きや慰謝料の支払いを行う必要があります。

ただし、パートナー側が判決に納得できない場合、判決書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に控訴し、高等裁判所で再び訴訟になる可能性があります。

離婚慰謝料を請求されたときの対策

自身が離婚慰謝料の請求を受けた側であれば、請求の通知を受けても決して慌てずに、内容を確認しましょう。

確認後は弁護士に相談し、どのように問題解決を図りたいか、冷静に話し合っていきます。

内容確認

相手から送付された通知が内容証明郵便の場合は、注意が必要です。内容証明郵便が届いたからといって、離婚や慰謝料請求が強制されるわけではありません。

ただし、内容証明郵便は離婚や慰謝料請求を確かに行ったという証明となります。

裁判所で離婚・慰謝料問題を解決する場合、内容証明郵便の控え・配達証明書は重要な証拠となるでしょう。

そのため、内容を確認し、相手の主張に反論の余地があるかどうかを落ち着いて検討する必要があります。

通知を無視すると、相手は調停や裁判手続きを進める可能性が高いです。自分が原因で夫婦関係が破綻した場合、調停や裁判で不利な立場となるでしょう。

弁護士への相談

離婚慰謝料を請求した相手との交渉に不安があるときは、まず弁護士に相談しましょう。

弁護士は離婚の原因や依頼者の希望等をヒアリングし、次のアドバイスを行います。

  • 慰謝料を支払う義務があるか
  • 慰謝料請求の通知に反論したい点
  • 適正な慰謝料(和解)の金額の算定
  • 交渉がうまくいかなかった場合のリスクや対応

弁護士と相談する中で「交渉役を任せたい」と思うときは、そのまま委任契約に進んでもよいです。

委任後は弁護士が代理人として動き、相手との交渉を開始します。

減額交渉

離婚慰謝料を請求する側は、離婚原因をつくった相手に怒り、法外な慰謝料を求めてくるかもしれません。

当事者が直接話し合うと感情的になり、交渉の合意がますます難しくなります。

弁護士に交渉を依頼すれば、ケースに応じた慰謝料の目安を把握しているので、適正な慰謝料の金額を相手へ提示し、減額の交渉を行います。

弁護士は交渉の専門家で理性的な対話ができるため、離婚慰謝料を請求する側が減額交渉に同意する可能性も高くなるでしょう。

離婚慰謝料にお困りなら春田法律事務所にご相談ください

今回は離婚・慰謝料問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、離婚慰謝料を請求するポイント・注意点等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は、離婚・慰謝料問題の解決に実績豊富な法律事務所です。まずは気軽に相談し、弁護士へ離婚・慰謝料に関する不安や悩みを打ち明けてみましょう。

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