宗教法人に弁護士は必要?大阪の専門弁護士が解説
最終更新日: 2022年07月13日
- 宗教法人が弁護士に相談するケースはある?
- 宗教法人が法的トラブルに巻き込まれることはある?
- 宗教法人が相談するべきは弁護士?
これまで、宗教法人の方が弁護士に相談することはあまり多くはなかったかもしれませんので、上記のような疑問を持たれるかもしれません。
しかし、宗教法人も一般の企業と同様に多くの関係者との関わりがあり、そのような関係者との間で法的トラブルに巻き込まれることがあります。とりわけ近年は信者の価値観は変化してきており、かつては考えられなかった法的トラブルが発生しています。
そこで今回は、宗教法人を専門とする弁護士が、宗教法人からよくある法律相談や実際に訴訟に発展した事例、宗教法人が相談するべき弁護士について解説します。
宗教法人から弁護士に大阪でよくあるご相談
まずは、大阪における宗教法人事情についてみた後、宗教法人からよくあるご相談の一例をご紹介します。
- 大阪の宗教法人統計
- 包括・被包括関係の廃止に関する相談
- 役員の解任に関する相談
- 信者に関する相談
- お墓に関する相談
- 収益事業に関する相談
- 職員の労務問題に関する相談
大阪の宗教法人統計
政府による令和3年度の宗教統計調査によれば、宗教法人は全国で18万147法人存在し、そのうち大阪府には5949法人があり、その数は全国第9位です。神社は732法人と全国22位、教会は1802法人と全国第1位、寺院は3295法人と全国第2位です。
このように教会も寺院も非常に多いのが大阪府の特徴です。
包括・被包括関係の廃止に関する相談
近年、包括宗教団体との包括・被包括関係を廃止して単立化したいというご相談が増えています。より自由に宗教法人を運営していきたいという傾向が強まってきているようです。
包括・被包括関係の廃止に関する宗教法人法の手続きを適正に踏むことのほか、包括宗教団体からの妨害が入った場合にはそれに対する対応も必要となります。
役員の解任に関する相談
宗教法人の経営方針に反対する責任役員を解任したい、代表役員を解任された。このような宗教法人の役員に関するご相談はしばしばあります。
宗教法人の選任や解任に関しては有効な選任・解任事由や適正な手続き、解任や地位確認のための法的手続の検討が必要となります。
信者に関する相談
信者がSNSで宗教法人を誹謗中傷している、お布施を拒否された、会計帳簿の閲覧を求められたなど、かつては無かったような信者とのトラブルが増えています。
対応を誤ると炎上したり、裁判に発展することもありますので法的見解を踏まえた慎重な対応が必要となります。
お墓に関する相談
突然檀家から離檀を申し入れられた、放置されている無縁墓を撤去して合祀したい、墓地の管理料が滞納されているなどのご相談は多くあります。
お墓に関する法的論点については未だ判例が確立されていないものが多くあります。そのため、法的見解を踏まえ慎重な対応をしなければ高額な慰謝料などの損害賠償を求められる恐れがあります。
収益事業に関する相談
駐車場経営やマンション経営などの不動産賃貸業をしたいがどのようにして始めればいいのかわからない、行政から認証が得られるか不安だといった宗教法人の収益事業に関するご相談はよくあります。
宗教法人の収益事業はその目的から大きく逸脱しない限りで認められています。宗教法人法の手続きを踏むことのほか、行政から認証を得られるかどうかの十分な検討も必要となります。
職員の労務問題に関する相談
職員に退職してもらったら訴えられた、高額な残業代を請求された、パワハラと言われているなどの労務問題は宗教法人でも増えてきました。
企業ほど労務管理をしてこなかった宗教法人は多く、他方で宗教法人においても従業員の権利意識は高まっていることから労務トラブルが増えています。
労務問題は対応を誤ると宗教法人の評判を毀損したり、より高額な賠償につながることがありますので、慎重な対応が必要となります。
宗教法人が訴訟になった事例を大阪の弁護士が紹介
次に、宗教法人が訴えられて裁判になった事例についてご紹介します。いずれも早期に弁護士に相談をしていれば避けられた裁判と思われます。
- 退職について訴えられた事例
- 無縁墓を整理したところ訴えられた事例
- 納骨堂の経営を不許可とされた事例
退職について訴えられた事例
僧侶として雇用していた娘婿が娘と離婚することになったので退職させたところ、従業員であることの地位確認と給与や賞与などの支払いを求めて提訴した事例です(大阪地裁R3.4.27)。
寺院は退職の合意があったと反論しましたが裁判所はそれを認めず、数百万円の未払い給与などの支払いを命じる判決を出しました。
住職は娘婿ということもあり強引に退職に追い込んでしまったようです。
退職のアクションをとる前に弁護士に相談をしていれば、穏便に退職の合意を得ることができ、このような訴訟は回避できたと思われます。
無縁墓を整理したところ訴えられた事例
墓参者の形跡が見られたにもかかわらず無縁改葬をしたところ、遺族から高額な慰謝料を求めて提訴され、裁判所は慰謝料200万円のほか原状回復費用や弁護士費用の支払いを命じる判決を出しました(高松高裁H26.2.27)。
無縁改葬の手続きは墓地埋葬法に規定されています。しかし、その手続きをとっただけでは遺族との関係で法的問題が生じないということではありません。
本当に縁故者がいないのか十分な調査を尽くし、それを証拠化すること、万が一遺族が現れた場合に遺骨の引渡ができるよう数年間は遺骨を保管することなど慎重な対応が必要となります。
納骨堂の経営を不許可とされた事例
宗旨宗派不問で全国から大量に納骨を募集する納骨堂を建立し経営を開始したところ、行政から経営不許可処分を受けてその取消を求めて提訴しましたが、裁判所は、商業主義的な経営方法などが国民の宗教感情に反するとして不許可処分を適法と判断しました(高松高裁H26.3.20)。
宗旨宗派の納骨堂が多数あり、行政から経営許可を受けていますが、このように経営方法次第では不許可処分となることもあるため注意が必要です。
多額の建設費をかけて建立した納骨堂の経営ができなくなれば倒産の可能性が高まりますし、何より納骨を依頼した依頼者に多大な迷惑が生じます。そのため、納骨堂を建てる際には経営許可を受けられるか否かについても慎重な検討が必要となります。
宗教法人に強い弁護士を大阪で選ぶ方法
宗教法人からよくある法律相談や訴訟になった事例についてご紹介しました。最後に、宗教法人が相談すべき弁護士についてご説明します。
- 宗教法人を専門とする弁護士
- 高い専門性をもつ弁護士
- 豊富な実績のある弁護士
宗教法人を専門とする弁護士
まずは、宗教法人を専門としている弁護士であることが条件として挙げられます。
宗教法人を専門とする弁護士は少数で、多くの弁護士は専門外だからという理由で法律相談を受けてくれません。インターネットで検索しますといくつかの専門の法律事務所、弁護士が見つかりますのでまずはそのような弁護士に相談してみましょう。
高い専門性をもつ弁護士
宗教法人を専門としていてもその専門性の程度は様々です。そのため、実際に相談をしてみて相談内容について法律や裁判例を深く知っているか、的確で明確な助言をしてくれるかについて見極めましょう。
豊富な実績のある弁護士
3点目として、実際に多くの宗教法人に対する助言や案件を担当した実績があることです。単に知識として知っているだけでは不十分で、最善の対応をするためには実際の案件を通じて蓄積された経験が必要となります。
まとめ
以上、宗教法人からよくある法律相談や実際に訴訟に発展した事例、宗教法人が相談するべき弁護士について解説しました。
近時宗教法人が法律相談すべきケースは増えています。何かあったときには手遅れになる前に速やかに弁護士に相談をすることが重要です。直ぐに相談できる体制をつくる、トラブルの置きにくい経営をするために顧問弁護士を置くことも検討されて良いでしょう。
既にトラブルになってしまった場合には、手遅れになる前に弁護士に相談しましょう。また、トラブルの目を摘んでおくために顧問弁護士を用意するのも効果的です。
宗教法人の法務に強い弁護士をお探しの場合は、是非当事務所にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。