【実務対応】個人情報保護法ガイドラインと具体的な管理・運用

2025年12月25日

【実務対応】個人情報保護法ガイドラインと具体的な管理・運用

個人情報保護法は、企業規模を問わずすべての個人情報取扱事業者に適用されます。
ただし、法律の条文だけでは「何をどうすれば適法なのか」が抽象的に見えづらい点があります。

この“実務上の指針”を具体的に示すのが、個人情報保護法ガイドライン(通則編・分野別編)です。
ガイドラインの理解が不足すると、

  • 安全管理措置の不備
  • 報告・通知の遅延
  • プライバシーポリシーの不適正表示

といったコンプライアンス違反のリスクを招きます。

本コラムでは、ガイドラインを踏まえた安全管理措置と、漏えい等が発生した際の対応ポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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個人情報保護法の基本構造と対象範囲

「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」の違い

個人情報

生存する個人に関する情報で、氏名等により特定の個人を識別できるもの(単体で識別可能でなくても、他の情報と容易に照合できれば含む)。

個人データ

個人情報データベース等を構成する個人情報。安全管理措置漏えい等報告義務といった実務上の重要な義務は、主にこの個人データに対して適用されます。

保有個人データ

開示、訂正、利用停止等の個人の請求権の対象となる個人データ(6ヶ月以内に消去されるデータも2022年改正で対象に含まれました)。

罰則強化と全事業者への適用拡大

2022年改正により、法令違反があった場合の罰則が大幅に強化されています。

法人に対する罰則

個人情報保護委員会からの命令に違反した場合、最大1億円以下の罰金が科される可能性があります。

中小企業への適用

改正により、これまで適用対象外となる可能性のあった小規模事業者(中小企業)も、すべての義務の対象となりました。規模の大小にかかわらず、罰則適用リスクは存在します。

実践!安全管理措置の「四つの柱」と具体的な方法

安全管理措置は、個人情報保護法ガイドラインで「組織的」「人的」「物理的」「技術的」の四つの観点から講じることが求められています。

措置の種類

概要と実務的な対策

1. 組織的安全管理措置

体制の整備。 個人情報保護に関する責任者(個人情報保護管理者)の設置、個人データの取扱いに係る社内規程の策定、漏えい事案発生時の報告・連絡体制の整備。

2. 人的安全管理措置

従業員の監督。 従業員との間に秘密保持契約を締結することや、個人情報の取扱いに関する定期的な教育・研修の実施。

3. 物理的安全管理措置

入退室・機器の管理。 個人データを取扱う区域(サーバー室、オフィスなど)の入退室管理、個人データが記録された電子媒体や書類の盗難防止、廃棄時の適切なデータ消去。

4. 技術的安全管理措置

システム上の防御。 個人データへのアクセス制御(必要最小限の者に限定)、不正アクセス対策(ファイアウォール、不正侵入検知)、マルウェア 感染への対処法の導入と更新。

コンプライアンスの顔:「プライバシーポリシー 作成法」

プライバシーポリシーは、企業が個人情報をどのように取り扱うかを宣言するものであり、実務において最初に確認される「企業の顔」です。

プライバシーポリシーに盛り込むべき「公表事項」

個人情報保護法では、以下の事項を公表することが義務付けられています。

個人情報取扱事業者の名称・住所

企業の所在地と代表者名。

個人情報(データ)の利用目的

何のために情報を利用するのかを具体的に記載。

開示請求等に応じる手続

本人からの開示・訂正・利用停止請求などの受付方法と窓口。

安全管理のために講じた措置の概要

組織的、人的、物理的、技術的措置について、その概要を記載することが望まれます。

記載事項の「粒度」と「具体的」な表現

プライバシーポリシーは、抽象的すぎず、かつ網羅的であることが重要です。例えば、「利用目的」は「当社の営業活動全般」ではなく、「新製品・サービスに関する情報提供のため」「アンケート調査・分析のため」など、具体的な利用シーンを明記することが求められます。

よくある質問(FAQ)

Q:個人情報保護法ガイドラインは、必ずしもすべてに準拠しなければならないのですか?

ガイドラインは、個人情報保護委員会が定めた法令の解釈や運用に関する指針であり、法律が定める「必要かつ適切な措置」の具体的な内容を示すものです。原則として、ガイドラインに準拠しない対応は、法令違反と見なされるリスクが非常に高まります。特に安全管理措置については、ガイドラインの別添に示された項目を参考に、リスクに応じて必要な措置を講じる必要があります。

Q:従業員による個人データの持ち出しは、どの安全管理措置で防げますか?

主に人的安全管理措置物理的安全管理措置、そして技術的安全管理措置の組み合わせで防ぎます。

人的

従業員との秘密保持契約、個人データ持出しに関する社内規定の整備。

物理的

持ち出し可能な媒体(USBメモリ等)の制限、キャビネットの施錠管理。

技術的

持ち出しデータへの暗号化、アクセスログの監視、DLP(データ漏洩防止)ツールの導入。

Q:利用停止請求を受けた場合、対応を拒否できるケースはありますか?

はい、あります。開示や利用停止の請求権は強化されましたが、請求に応じることで「本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」や、「事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」などは、拒否が認められています。拒否する場合は、その理由を本人に遅滞なく通知する必要があります。

まとめ:ガイドライン遵守がリスクマネジメントの基本

個人情報保護法の実務対応は、ガイドラインに示された組織的、人的、物理的、技術的な措置を講じることに尽きます。これらの措置を怠ると、漏えい事故が発生した際に、強化された罰則が適用されるリスクが高まります。

特に、中小企業も含めたすべての事業者は、プライバシーポリシーの適切性、そして従業員教育の徹底を通じて、継続的に個人情報管理体制を維持していくことが求められます。

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