不倫相手を退職・懲戒解雇させたいと考えたとき|職場への通知は合法?弁護士が解説する「社会的制裁」の現実と方法

最終更新日: 2025年12月17日

「家庭を壊しておきながら、何事もなかったかのように会社に通っている姿を見るのがつらい」

「慰謝料だけでなく、社会的にも責任を取ってほしい」

社内不倫の被害に遭われた方から、このようなお気持ちを伺うことは少なくありません。

強い怒りや悔しさを感じるのは、決して不自然なことではありません。

ただし、感情のままに相手の勤務先へ連絡したり、不倫の事実を広めたりすると、結果としてご自身が不利な立場に立たされてしまう可能性があります。

対応を誤ると、思わぬ法的トラブルに発展するおそれがあるため注意が必要です。

この記事では、不倫相手を「懲戒解雇」に至らせることの現実的なハードルと、法律の範囲内で退職という結果に結びつく可能性がある交渉方法について、弁護士の視点から解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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不倫だけで「懲戒解雇」になるケースは多くない

まず押さえておきたいのは、日本の法律上、不倫を理由に直ちに解雇されるケースは多くないという点です。

たとえ被害者側が会社に強く要望したとしても、簡単に解雇が認められるわけではありません。

会社員の私生活は一定程度保護されている

不倫は原則として私生活上の行為とされ、業務との直接的な関連がない限り、会社側も懲戒処分には慎重にならざるを得ません。

不当解雇として訴えられるリスクを考慮し、不倫の事実のみを理由に懲戒解雇を行わない企業が大半です。

公務員の場合は判断が異なることがある

相手が公務員(教員、警察官、自衛官、市区町村職員など)の場合は、状況が異なる可能性があります。

公務員には法律上「信用失墜行為の禁止」が課されており、不倫がこれに該当すると判断されると、戒告・減給・停職などの懲戒処分を受ける可能性が比較的高くなります。

そのため、公務員である場合、職場に知られるリスクは交渉上の重要な要素となり得ます。

自分で職場に伝える行為が招くリスク

「解雇されないなら、せめて職場に事実を伝えたい」と考える方もいらっしゃいます。

しかし、ご自身で会社に連絡する行為は慎重に考える必要があります。たとえ内容が事実であっても、社会的評価を下げる情報を第三者に伝える行為は、名誉毀損やプライバシー侵害に該当する可能性があります。

想定される主なリスク

逆に損害賠償を請求される可能性

刑事上の問題に発展する可能性

相手が態度を硬化させ、示談交渉が難航する可能性

結果として、本来望んでいた解決から遠ざかってしまうことも少なくありません。

合法的に「退職」という結果を目指す交渉方法

強制的に解雇させることは困難でも、話し合いの結果として自主退職に至るケースはあります。

弁護士が介入することで、次のような交渉が検討されます。

退職を条件とした示談条件の調整

慰謝料を一括で支払うことが難しい相手に対し、「慰謝料を一定程度減額する代わりに退職する」という条件を提示することがあります。

金銭面と職場環境の両面を考慮した結果、退職を選択するケースも見受けられます。

 職場に知られるリスクを踏まえた交渉

弁護士から内容証明郵便を送付し、示談に応じない場合、法的手続きを進める中で勤務先と連絡を取る可能性があることを伝えることがあります。これは脅迫ではなく、正当な権利行使の範囲内での説明です。

そのうえで、退職と引き換えに職場への通知を行わないという合意(口外禁止条項)を結ぶケースもあります。

職場への通知が正当と評価される可能性がある例

原則として職場への通知は慎重であるべきですが、次のような事情がある場合、弁護士を通じた限定的な通知が認められる可能性があります。

・社内不倫が業務に支障を生じさせている場合

・上司と部下の関係など、地位を利用した関係が疑われる場合

・他に連絡手段がなく、勤務先を通じる必要がある場合

いずれも、個別事情の精査が不可欠です。

まとめ:感情だけで動かず、適切な手段を選ぶ

不倫相手に対して強い責任を求めたいと感じるのは自然なことです。

しかし、行動を誤ると、ご自身が不利な状況に置かれてしまう可能性があります。

「退職という結果を目指したい」

「公務員として相応の処分が検討されるべきだと考えている」

このような場合は、まず弁護士にご相談ください。

法律の枠内で、現実的な解決につながる方法をご提案することが可能です。

よくある質問(FAQ)

Q.不倫相手に退職を約束する書面を書かせることはできますか?

合意があれば可能です。ただし職業選択の自由との関係から、強制と評価されないよう、弁護士の関与のもとで慎重に作成する必要があります。

Q. 相手が公務員の場合、職場に伝えると身元は特定されますか?

内容や方法によって異なります。弁護士が代理人として対応することで、プライバシーに配慮した形で通知することが可能です。

Q. 社内メールなどを無断で確認するのは問題がありますか?

不正アクセス禁止法に抵触するおそれがあります。取得済みの証拠が使用できるかどうかも含め、事前に弁護士へご相談ください。

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