痴漢や盗撮の冤罪をかけられたら逮捕、起訴されてしまうのか?
最終更新日: 2021年07月08日
はじめに
痴漢行為や盗撮行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反となる犯罪行為です。犯罪行為としての重さは比較的には軽い部類に入りますが、その冤罪をかけられた場合には、逮捕、起訴などの重大な不利益を被るおそれがあります。
そこで、今回は、痴漢や盗撮の冤罪をかけられた場合に逮捕、起訴されてしまうのか、また冤罪をかけられた場合にはどのような対処法をとるべきかについてご説明いたします。
冤罪をかけられたら逮捕されてしまうのか
私人逮捕と警察による逮捕
被害者や目撃者に取り押さえられたという場合、その時点で私人による現行犯逮捕をされたということになります。その後に警察官に引き渡された場合にも逮捕の効力がそのまま続きますが、警察が逮捕の要件がないと判断すれば釈放されることになります。
他方、被害者や目撃者に取り押さえられたり、掴まれたりしてない状態で警察に引き渡された場合、警察署に任意同行の後に逮捕されることがあります。
逮捕の要件
逮捕の要件は、
- 犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ
- 逃亡や証拠隠滅の可能性があることです。
特に冤罪の場合には1が問題となります。
痴漢事件の場合
痴漢事件では、近時は冤罪が社会問題となっていることから、犯行を否認しているケースでは、警察も逮捕すべきかどうか慎重に判断することが多くなっていますが、被害者や目撃者の供述の供述がもっともらしいというだけで逮捕するケースも未だに多くみられます。
(2)2の逃亡や証拠隠滅の可能性については、会社員で家族と同居しており前科もないといった到底逃亡や証拠隠滅の可能性が考えられないようなケースでも逮捕されることはよくあります。もっとも、逃亡や証拠隠滅の可能性が乏しければ、10日間の勾留はされずに釈放される可能性は十分あります。
盗撮事件の場合
他方、盗撮事件は、スマートフォン(携帯電話)やカメラに盗撮の動画や写真のデータが保存されていた場合には、冤罪ということは考えにくいでしょう。
そのため、盗撮事件の冤罪とは、例えば、階段で手にスマートフォンを持った状態で屈んだところを盗撮しているものと疑われたというケースや、電車で座席に座ってスマートフォンを操作していたところ、向い側の座席に座っている女性のスカート内を盗撮していると疑われたといったケースが考えられます。
客観的な盗撮の写真や動画のデータが残っていない事件では、盗撮行為をしていると強く疑われるような防犯カメラの映像などがない限りは、逮捕される可能性は低いでしょう。
後日逮捕されることはあるのか
現場から逃げた場合
痴漢や盗撮の疑いをかけられて、現場から走って逃げた場合に後日逮捕されるのかというご相談はよくあります。
一度逃亡している点では、逮捕の要件である逃亡の可能性があると判断されやすくなりますので、後日、警察が逮捕状をもってやって来る可能性はあるでしょう。
ですから、このような場合には、弁護士と一緒に警察署に出頭して、冤罪であることを主張していくことが逮捕回避につながります。
一旦釈放された場合
他方、痴漢や盗撮を疑われ、当日は警察署で取り調べを受けて釈放された場合に、後日逮捕されることはあるのでしょうか。
このようなケースでは、嫌疑が不十分なために釈放されたというケースと、嫌疑はあるけれども逮捕の必要性がないから釈放されたというケースがあります。
前者の場合は、嫌疑が不十分である以上後日逮捕はありません。また後者のケースは、痴漢の嫌疑はあるけれども証拠隠滅や逃亡の可能性が乏しいという判断で釈放されていますから、こちらについても後日逮捕されることはありません。
起訴、不起訴処分までの流れ
逮捕された場合
逮捕された場合、48時間以内に警察から検察庁へ事件送致され、その後24時間以内に検察官が裁判官に勾留を請求するかしないかの判断をします。勾留請求がなされると裁判官は勾留の要件があるか検討し、その要件があると判断すると10日間の勾留が決定します。
このように長期間勾留されることになりますと、会社や学校などの社会生活に重大な支障が生じることから、冤罪であっても否認をし続けることが心理的に難しくなってきます。
ですから、とりわけ冤罪事件では、弁護士には一刻も早く勾留を解く弁護活動が求められます。
そして、無事釈放された後は、その後の警察や検察の捜査への対応方法について被疑者と弁護士が十分に打合せをして、不起訴処分を目指すこととなります。
逮捕されなかった場合
冤罪の疑いをかけられたけれども逮捕はされなかった場合には、前記のとおり、嫌疑が不十分だから逮捕されなかったケースと、逃亡や証拠隠滅の可能性が低いから逮捕されなかったケースがあります。
とはいえ、捜査機関がいずれの理由で逮捕しなかったのかは明言しないことが通常ですから、弁護士としてもいずれのケースであるのか正確に判断することは容易ではありません。
そのため、いずれにしても弁護活動としては、被疑者から事件当時の状況を詳細に伺って、その後の取り調べなどの捜査にどのように対応していくのか方針を策定し、不起訴処分を目指していくこととなります。
なお、嫌疑不十分の場合には、一度は被害届が出たものの、その後被害届が取下げになって、検察庁へ事件送致されないケースもあります。
痴漢、盗撮の冤罪をかけられた場合の対処法
前記のとおり、現場から逃げると逮捕される可能性が高まります。
ですから、現場から逃げるという対処法は誤りです。予定がある場合には、その場で会社など関係先に電話をして事情を説明するとともに、直ぐに対応可能な弁護士をインターネットで検索し、警察署へ来てもらうことをお勧めします。
なお、駅員室に行ったら有罪が確定するという誤解をなさっている方がおられますが、有罪おとなるのは裁判で有罪判決を受けた場合ですから、駅員室に行っただけでは有罪も無罪も決まりません。
また、逮捕されて早く釈放してもらうために、また起訴されて裁判になることを避けるために、冤罪にもかかわらず安易に犯行を認めることはお勧めしません。
近時は否認をしていても弁護士が検察官や裁判官に説得活動をすることで釈放される可能性は高まっているからです。
確かに否認をしていても、結局は起訴され、有罪判決が出る可能性の高いケースはありますから、そのようなケースでは犯行を認めて示談を成立させることで不起訴処分を目指すのも一つの方針です。ですがそのようなケースでなければ、否認のまま不起訴処分となる見込みについて弁護士とよく協議をして方針を策定する必要があります。
最後に
以上、痴漢や盗撮の冤罪をかけられた場合に逮捕、起訴されてしまうのか、また冤罪をかけられた場合の対処法についてご説明いたしました。冤罪をかけられた場合には、逮捕されないため、起訴されないためにできる限り早い段階で刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。