初犯の大麻所持の刑期について
最終更新日: 2021年07月08日
はじめに
大麻取締法違反事件は覚せい剤取締法違反事件など他の薬物事件と比較して、被疑者(被告人)の年齢層は若く、未成年や20代が圧倒的に大きな割合を占めています。
身体に害がないという噂や海外の映画、ミュージシャンの影響を受けて、興味本位で使用し、その結果、逮捕、起訴されてしまう若者が多いようです。
今回は大麻所持の刑期等について弁護士がご説明します。
大麻の単純所持は懲役刑のみで、罰金刑はない
大麻取締法は、大麻の単純所持の法定刑について、5年以下の懲役刑を定めているだけで、それよりも軽い罰金刑の定めはありません。
他方、営利目的の所持については200万円以下の罰金という規定がありますが、罰金刑だけが科されることはなく、7年以下の懲役刑とダブルで科されることになります。
大麻の所持量によって量刑は異なる
過去の大麻所持事件の量刑傾向を確認しますと、大麻の所持量によって懲役刑の長さが異なるようです。
もちろん、被告人の性格や犯行経緯、犯行後の事情など各事件に特有の要素はあるでしょうが、所持量が大きな量刑の要素になっているものと思われます。
大麻の所持量が3グラム以下の場合は懲役6月、所持量が3グラムを超えると懲役8月、所持量が10グラムを超えると懲役1年が目安のようです。
大麻所持で実刑になる場合
初犯の大麻所持の場合、ほとんどのケースで執行猶予判決となります。ただし、営利目的での所持の場合には、初犯であってもほとんどのケースで実刑判決となりますし、大麻を栽培していて大量の大麻を所持していたときも実刑判決となる可能性があります。
他方、詳しくは、次の項目でご説明しますが、過去にも違法薬物で有罪判決を受けた前科がある場合には実刑判決となる可能性が高まります。
前回の裁判から何年経てば執行猶予がつくのか
過去にも違法薬物で有罪判決を受けた前科がある場合、それから何年くらいが経過すれば執行猶予がつくのでしょうか。
執行猶予中の再犯のケース
法律上、執行猶予中の再犯であっても、
- 今回の判決が1年以下の懲役刑となる場合で、かつ
- 情状に特に酌量すべきものがあるときは、再度の執行猶予判決が可能となっています(刑法第25条2項)。
大麻の単純所持のケースでは1年以下の懲役刑を言い渡される可能性が十分ありますから多くの事件で1はクリアできそうです。
問題は2で情状に「特に」酌量すべき点が必要です。単に反省している、家族が情状証人として出廷しているというだけでは不十分です。
少なくとも、入院治療を受けていること、ダルクなど更生支援施設への入所など、再犯防止のための本気の取り組みが必要となります。再度の執行猶予を得られるかどうかは担当する弁護士の力量が大きく影響するでしょう。
執行猶予期間が経過している場合
この点については、法律上は特に定めはありません。
もっとも、前刑の判決言い渡しから7,8年が経過しているケースでは執行猶予判決となる可能性が出てくると言われています。このようなギリギリのケースでは弁護士の弁護活動の内容が判決に大きく影響するでしょう。
逆に6年ほど経過したにとどまるケースでは執行猶予判決を得ることは相当難しいと考えた方が良いでしょう。
他方、前刑の判決言い渡しから10年以上が経過していると執行猶予が付く可能性が高くなります。
前刑の執行を終えた後の再犯
前刑の執行終了から7、8年が経過しているケースでは執行猶予判決となる可能性が出てくると言われています。そして、前刑の執行終了から10年以上が経過していると執行猶予が付く可能性が高くなります。
最後に
以上、大麻所持の刑期等についてご説明しました。
大麻取締法違反は、覚せい剤取締法違反など他の薬物犯罪と比較すると刑は軽いといえますが、再犯となるとやはり実刑判決のリスクがあります。
大麻は他の規制薬物よりも安易に手を出し、継続的に使用されやすい傾向がありますが、やはりいずれは検挙、逮捕、起訴され多大な不利益を被ることになります。
大麻所持の容疑で被疑者となったときは、刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。