【弁護士監修】親権停止とは?認められるケースと申し立て手続きの流れ
最終更新日: 2026年04月21日
「親の虐待やネグレクトから子どもを今すぐ救い出したい」
「でも、親子の縁を完全に切ってしまうのはためらわれる」
このような切実な状況において、子どもの安全を確保するための重要な法的手段が「親権停止」です。
2012年の民法改正で導入されたこの制度は、親権を無期限に奪う「親権喪失」とは異なり、最長2年という期限付きで親権を制限します。
子どもの利益を最優先に守りながら、その間に親の状況改善を促し、将来的な家族の再構築を目指す柔軟な措置として注目されています。
しかし、いざ申し立てを行うとなると、「どのようなケースなら認められるのか?」「手続きには何が必要なのか?」といった疑問や不安も多いはずです。
本記事では、弁護士監修のもと、親権停止が認められる具体的な要件や、親権喪失との違い、申し立てから審判までの流れ、かかる費用について分かりやすく解説します。
大切なお子さんの権利と未来を守るために、今できる最善の選択肢を一緒に確認していきましょう。
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親権停止とは?子どもの利益を守るための一時的な措置
親権停止とは、親が子どもに対して虐待や育児放棄(ネグレクト)などを行っており、親権を行使させることが子どもの利益を著しく害する場合に、家庭裁判所の審判によって一時的に親権を制限する制度です。
2012年の民法改正によって新設され、親子の関係を完全に断ち切るのではなく、一時的な避難や状況改善を促すための柔軟な措置として機能しています。
親権停止が認められるための要件
親権停止が認められるためには、「父または母による親権の行使が困難または不適当であること」および「それにより子の利益を害すること」という要件を満たす必要があります。
具体的には、身体的・精神的虐待、ネグレクト、不当な財産管理などが該当します。
ただし、親権喪失のように「著しく困難または不適当」という非常に厳格な基準までは求められず、原因が比較的短期間で解消される見込みがある場合に適用されます。
親権停止と親権喪失の違い
親権喪失は、親権を無期限に奪う強力な措置です。そのため、親権喪失が認められるハードルは非常に高く設定されています。
一方、親権停止は「最長2年」という期限付きの措置であり、親子の再統合(関係修復)を前提としている点が最大の違いです。
親権喪失を申し立てるほどではないが、一時的に子どもを親から引き離す必要がある場合に親権停止が活用されます。
親権停止の期間は最長2年間
親権停止の期間は、原因となっている状況が改善されるまでに要する期間などを考慮して、家庭裁判所が「最長2年」の範囲内で定めます。
数ヶ月で済むケースもあれば、上限である2年が設定されるケースもあります。
この期間中に、親は生活環境の改善や治療などを行い、再び子どもと暮らせる環境を整えることが求められます。
親権停止が認められる具体的なケース
身体的・精神的な虐待
親から子どもへの暴力(身体的虐待)や、日常的な暴言、子どもの前で配偶者に暴力を振るう面前DV(精神的虐待)がある場合、子どもの心身の安全を守るために親権停止が認められる可能性が高くなります。
しつけの範囲を超えた暴力は決して許容されません。
ネグレクト(育児放棄)
十分な食事を与えない、不衛生な環境で生活させる、病気になっても病院に連れて行かない、長期間子どもを放置して外出するなどのネグレクト(育児放棄)も、親権停止の対象となります。
子どもの生命や健康に直結する危険な状態であると判断された場合に適用されます。
子どもの財産の不当な処分
親権には、子どもの財産を管理する「財産管理権」が含まれます。
しかし、親が子どもの名義の預貯金や相続した財産をギャンブルや自身の遊興費のために勝手に使い込んでしまうなど、不当に処分している場合は、子どもの財産を守るために親権停止(または管理権喪失)が認められることがあります。
その他の親権行使が不適切な場合(重度の精神疾患、服役など)
親が重度の精神疾患や薬物依存、アルコール依存症などで正常な判断ができず育児が不可能な場合や、長期の服役によって物理的に親権を行使できない場合にも、子どもの利益を守る観点から親権停止が検討されます。
親権停止の申し立て手続きの流れ【4ステップで解説】
ステップ1:申し立ての準備(申立人・必要書類の確認)
親権停止の申し立てができるのは、子ども本人、子どもの親族(祖父母など)、未成年後見人、児童相談所長、検察官などに限られます。
申し立てには、申立書に加えて、子どもと親の戸籍謄本、親権停止の理由を裏付ける証拠(医師の診断書、児童相談所の記録、写真やLINEの履歴など)を準備する必要があります。
ステップ2:家庭裁判所への審判申し立て
必要書類が揃ったら、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「親権停止の審判」を申し立てます。
申し立ての際には、収入印紙や郵便切手などの実費を納付します。
ステップ3:家庭裁判所による調査・審理
申し立てが受理されると、家庭裁判所の裁判官や家庭裁判所調査官による調査・審理が始まります。
親や子ども本人、親族からの事情聴取が行われ、必要に応じて児童相談所などの関係機関とも連携しながら、親権を停止すべきかどうかが慎重に判断されます。
子どもの年齢が15歳以上の場合は、必ず子ども本人の意見を聞かなければなりません。
ステップ4:家庭裁判所による審判
調査・審理の結果を踏まえ、家庭裁判所が親権停止の可否と、停止する場合の期間を決定(審判)します。
審判に不服がある場合は、2週間以内に「即時抗告」という不服申し立てを行うことができます。
【緊急の場合】審判前の保全処分で子どもの安全を確保
審判が下されるまでには数ヶ月の時間がかかることが一般的です。
その間にも子どもに危険が及ぶ可能性がある緊急性の高いケースでは、親権停止の申し立てと同時に「審判前の保全処分」を申し立てることで、一時的に親の親権行使を止め、別の監護者を指定して子どもを保護することができます。
親権停止の申し立てにかかる費用
家庭裁判所に支払う実費
家庭裁判所に申し立てを行う際、子ども1人につき800円の収入印紙が必要です。
また、裁判所からの書類送付などに使用される連絡用の郵便切手代(数千円程度、裁判所によって異なる)を納める必要があります。
弁護士に依頼する場合の費用相場
弁護士に手続きを依頼する場合、着手金として20万円〜30万円程度、無事に親権停止が認められた際の報酬金として20万円〜40万円程度が相場となります。
状況の複雑さや、保全処分を同時に行うかどうかによって費用相場は変動します。
弁護士費用を抑える方法(法テラスの利用など)
経済的に余裕がない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。
収入や資産が一定の基準を下回っていれば、無料法律相談や弁護士費用の立て替え払い制度を利用でき、月々数千円からの分割払いが可能になります。
親権停止が認められたらどうなる?その後の流れと影響
停止された親権はどうなる?(身上監護権・財産管理権)
親権停止の審判が確定すると、指定された期間中、親は「身上監護権(子どもを育て教育する権利義務)」と「財産管理権(子どもの財産を管理する権利義務)」の双方を失います。子どもに関する重要な決定を行ったり、子どもの財産を動かしたりすることは一切できなくなります。
子どもの監護者は誰になる?(もう一方の親または未成年後見人)
両親が婚姻中で一方の親の親権のみが停止された場合は、もう一方の親が単独で親権を行使します。
シングルマザー・シングルファザーなどで親権者が1人しかおらず、その親権が停止された場合は、家庭裁判所によって新たに「未成年後見人」が選任され、未成年後見人が親の代わりに子どもの監護・教育や財産管理を行います。
戸籍への影響と親子関係
親権停止は戸籍の身分事項欄に記載されます。
ただし、親権が停止されたからといって、親子関係そのものが消滅するわけではありません。
法律上の親子関係は継続するため、親の扶養義務や子どもからの相続権などはそのまま残ります。
親権停止期間が終了した後の対応
家庭裁判所が定めた期間(最長2年)が経過すると、特別な手続きをすることなく自動的に親権は復活します。
ただし、期間満了時になっても状況が改善されておらず、再び親権を行使させることが子どもの利益を害すると判断される場合は、再度親権停止の申し立てを行ったり、より重い親権喪失の申し立てに切り替えたりする必要があります。
親権停止の申し立てで悩んだら弁護士に相談を
弁護士に相談する3つのメリット
1つ目は、親権停止の要件を満たしているかの正確な見立てができることです。
2つ目は、裁判所に状況を適切に伝えるための有力な証拠集めや書類作成を任せられること。
3つ目は、緊急を要する場合に保全処分の手続きを迅速に行い、子どもの安全を最優先で確保できることです。
弁護士選びのポイント
親権停止は家庭裁判所での専門的な手続きとなるため、離婚問題や少年事件、児童虐待問題など、家族法や子どもに関わる法務に精通した弁護士を選ぶことが重要です。また、親身になって話を聞いてくれるか、リスクや費用について明確に説明してくれるかも判断のポイントになります。
親権停止に関するよくある質問
Q. 申し立てが却下されることはありますか?
A. はい、あります。
証拠が不十分であったり、親権を停止するほど子どもの利益が害されていないと裁判所が判断した場合は、申し立てが却下されます。
確実に認められるためには、客観的で強力な証拠の準備が不可欠です。
Q. 自分で申し立てはできますか?
A. 法律上はご自身で申し立てることも可能ですが、親権停止は非常に重大な手続きであり、法的な主張の組み立てや証拠の選別が難しいため、専門家である弁護士に依頼することを強くお勧めします。
Q. 停止期間中に面会交流はできますか?
A. 親権が停止されていても、親子関係が切れるわけではないため面会交流自体は可能です。
ただし、面会交流が子どもの心身に悪影響を及ぼす(虐待のトラウマを刺激するなど)と判断される場合は、面会が制限・禁止されることが一般的です。
まとめ
親権停止は、虐待やネグレクトなどから子どもを守り、一時的に親から引き離すための重要な法的措置です。
最長2年という期間の中で親の環境改善を促し、将来的な家族の再構築を目指す側面を持っています。
しかし、申し立てには明確な証拠と複雑な法的手続きが必要となります。
子どもの安全や将来を最優先に考え、親権の問題でお悩みの場合は、無理に一人で解決しようとせず、速やかに児童相談所や弁護士などの専門機関に相談することをお勧めします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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