親権の停止・喪失

最終更新日: 2023年06月13日

親権の喪失について

民法は834条は、親権喪失の審判について定め、親権を喪失させることができる場合について規定しています。

親権喪失の審判を申し立てることができる要件は、「父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」です。834条はその典型例として、「虐待」や「悪意の遺棄」を挙げています。

親権喪失の審判を申し立てることができる者として、「子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官」が規定されています。このように子ども自身も親権者喪失の審判の申立権者として規定されています。この他、児童福祉法によって、

児童相談センター長も申立権者に定められています。

一方で民法834条はただし書において、「2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない」とし、親権喪失の原因が認められる場合であっても、それが2年以内に解消する場合には、親権の喪失の場面を制限しています。

これは、短期間のうちに原因が消滅すると見込まれる事案の場合には(例えば、精神病など疾患による子の放置など、適切な治療を受けることで原因が解消される見込みがある場合等)、親権停止の審判など他に代替措置もあるため、親権を喪失させる重大な制限を加えるべきではないからです。

親権の停止について

民法は親権喪失に続き、834条の2第1項において、親権停止の審判について定めています。親権停止は親権喪失と異なり、同2項において、期間を2年以内とするよう限定されています。

これは、親権を喪失させるまでに至らない比較的程度の軽い事案や一定期間の制限で足りる場合に、親権を制限するための制度と言われています。

親権停止の審判を申し立てることができる要件は、「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることによりこの利益を害するとき」です。親権喪失との違いは「困難又は不適当」の程度が著しいかどうかです。

親権停止の審判を申し立てることができる者は、親権停止の場合と同じく、「子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官」が規定されています。子ども自身も自分で親権者停止の審判の申立権者として規定されています。この他、児童福祉法によって、児童相談センター長も申立権者に定められています。

親権停止が認められる期間は、「2年を超えない範囲内」です。裁判所は、「その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」判断します。

管理権喪失の審判

民法はさらに835条において、管理権喪失の審判についても規定しています。

「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは」、管理権喪失が認められます。管理権とは、親権のうち、財産管理権のみを喪失させる手続きです。

財産管理権の行使が不適切なために、子の財産を喪失させるような場合には、管理権の喪失が認められます。例えば、子の財産を父または母が自己の借金返済に充てるような場合などです。

手続きの進め方-職務執行者の選任

審判の進め方

親権者喪失等の場合の手続きの進め方としては、2通り考えられます。

一つは、

  1. 親権喪失・停止・管理権喪失審判の申立て
  2. 保全処分(親権者の職務執行停止と職務代行者の選任)
  3. 代行者による権限行使

です。

もう一つは、

  1. 親権喪失・停止・管理権喪失審判の申立て
  2. 未成年後見人の選任
  3. 後見人による権限行使

です。

審判の取消し

親権喪失・停止、管理権喪失の審判については、取消しについても民法836条に定められています。親権喪失・停止、管理権喪失の原因が消滅した場合には、本人またはその親族の請求によって、家庭裁判所はその審判を取り消すことができるとされています。

適切に行使できるような状態になった場合には、父または母が再び親権等の行使ができるようになるということです。

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