離婚時の財産分与の対象になるものとは?分配割合や進め方を解説

最終更新日: 2024年09月19日

離婚時の財産分与の対象になるものとは?分配割合や進め方を解説

離婚は、夫婦の関係を解消するだけでなく、財産や子供のことなど、様々な法的問題を解決する必要が生じます。中でも、財産分与は、夫婦が築き上げてきた財産をどのように分配するかを決める重要な手続きです。

この記事では、離婚時の財産分与について、対象となる財産の種類、分配割合、進め方などを詳しく解説します。これから離婚を考えている方、財産分与について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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財産分与とは

財産分与とは、夫婦が婚姻生活中に協力して 築いた財産を、離婚するときや、離婚してから、それぞれの貢献度に応じて分配することです。

法律では、「婚姻中に夫婦で協力して得た財産は、離婚の際に、それぞれの貢献度に応じて分ける」と定められています(民法762条1項)。 これは、結婚生活は夫婦共同で行うものであり、家事や育児、経済活動など、それぞれの役割分担によって財産が形成されるという考え方に基づいています。

また、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」(民法762条1項)との規定があり、離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に財産分与の調停または審判の申立てが可能です。

なお、離婚前の場合は、離婚協議や離婚調停の中で財産分与について話し合いをすることができます。

対象となる財産の種類

対象となる財産の種類

財産分与の対象となる財産は、原則として「婚姻中に夫婦で協力して得た財産」です。これを「共有財産」と呼びます。

共有財産と特有財産の違い

共有財産に対して、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に相続や贈与によって取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象にはなりません。

共有財産の例

共有財産には、例として次のようなものが挙げられます。

不動産:婚姻中に購入した家や土地、賃貸収入を得ているアパートなど

預貯金:夫婦名義の口座や、どちらか一方の名義であっても婚姻中に貯蓄されたお金

車両:夫婦が共同で使用している自動車やバイクなど

家具家電:テレビ、冷蔵庫、洗濯機、家具など、日常生活で使用していたもの

貴金属/宝石:結婚指輪や婚約指輪、ネックレス、ピアスなど

保険:生命保険、学資保険などの解約返戻金

年金:厚生年金、国民年金などの将来受け取れる年金(年金分割の対象)

株式/投資信託:夫婦で購入した株式や投資信託

住宅ローンなどマイナスの財産

住宅ローンなどマイナスの財産

夫婦・家族間では、負債というマイナス財産も含めて共有します。

マイナス財産には、たとえば住宅ローン・車のローンなどの借入金や、未払金・保証債務などがあります。これらの負債が共有になっていれば、双方が債務を履行する責任を負います。ただし、結婚生活に関連のない独身時代の借金は、対象外です。

まずは、債務がどの程度の規模なのか、また、夫や妻に債務を履行する能力があるかを確認する必要があります。

分与の方法

財産分与の方法には、主に以下の3つの方法があります。

清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦の共有財産をすべて洗い出し、それぞれの貢献度に応じて分ける方法です。一般的には、財産の半分ずつを分ける「2分の1ルール」が適用されます。

慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、離婚によって精神的な苦痛を受けた配偶者に対して、財産の一部を慰謝料として分ける方法です。例えば、一方の不貞行為が原因で離婚に至った場合などに、慰謝料として財産分与が行われることがあります。

扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚後、経済的に困窮する可能性のある配偶者に対して、生活を維持するために財産の一部を分ける方法です。例えば、子育てや病気などにより、経済的に自立することが難しい配偶者に対して行われることがあります。

離婚時の財産分与の割合は、原則として「2分の1」

離婚時の財産分与の割合は、原則として「2分の1」

離婚の際に、夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを決める財産分与ですが、原則として、夫婦の貢献度にかかわらず、2分の1ずつ分けることになります。

なぜ2分の1なのか?

結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産は、どちらか一人のものではなく、夫婦共同のものとみなされるためです。家事や育児に専念していた方も、間接的に財産の形成に貢献したと評価されます。

2分の1から変更になるケース

原則は2分の1ですが、例えば以下のケースなど、特別な事情がある場合は、この割合が変更になることがあります。

・資産形成に一方の特別な努力や能力が大きく貢献していた場合

・一方が財産を浪費したり、故意に減らしたりした場合

財産分与の割合を決める際のポイント

割合を決める際は、分与対象となる財産を全て洗い出し、その評価額を正確に把握することが重要です。また上記のような特別な事情があるかどうかを検討し、それぞれの夫婦の貢献度を客観的に評価する必要があります。

財産分与は、法律的な知識が必要となる複雑な問題です。自分だけで判断せず、弁護士に相談することをおすすめします。

財産分与の進め方

財産分与については、進め方の理解が必要です。ここでは、財産分与の進め方を以下の2点から解説します。

・協議(話し合い)を行う

・離婚協議書を作成する

協議(話し合い)を行う

はじめに財産分与の対象の財産をリストアップして、そのリストをもとに協議を行います。

不動産・車などは、離婚時点の時価が財産分与の算定の基準になります。ただし、ローンが残っている場合は計算方法が複雑になるため、専門業者・金融機関の査定を必要とします。

財産分与の割合は1:1が基本ですが、夫婦で話し合いのうえ互いに納得すれば別の割合を設定できます。

財産分与の計算は複雑であり、慰謝料的な要素・扶養的な要素を持つ場合もあり、離婚後もトラブルが発生することが懸念されます。そのため、協議の段階で、弁護士などの専門家に介入を依頼することがおすすめです。

離婚協議書を作成する

次に、話し合って合意した内容を離婚協議書にまとめます。

離婚協議書とは、夫婦が協議離婚をするときにあらかじめ話し合って決めた内容を明記するものです。離婚協議書には、財産分与の他、慰謝料・子どもの親権・養育費などについても記載します。

なお、離婚協議書に法的な強制力を付与するためには、公正証書にする必要があります。離婚協議書を公正証書にすることで、強制執行が可能になるからです。

たとえば、万が一決められた約束が守られず、慰謝料や養育費などの支払いがされないときに、相手の口座を差し押さえることができます。

財産分与における注意点

離婚後2年以内

離婚が確定した日から2年以内に財産分与の請求を行う必要があります。この期間を過ぎると、原則として請求できなくなります。

隠し財産

相手が故意に財産を隠している場合、その財産も分与の対象となる可能性があります。必要であれば、弁護士などの専門家の協力のもと、隠し財産を調査することができます。

まとめ

財産分与は、離婚後の生活の基盤を築くために非常に重要であるとともに、法律の知識が必要となる複雑な問題です。特に、ローンや借金がある場合は、自分だけで判断せず、弁護士に相談することを強くおすすめします。

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