名誉毀損の慰謝料はどう決まる?相場と請求の流れ・注意点を詳しく解説
最終更新日: 2024年11月24日
- 私は名誉を毀損された。加害者に慰謝料を請求したいが、金額はどれくらいが妥当なのだろう?
- 名誉毀損で相手側から告訴されてしまうかもしれない。示談で解決したいので、慰謝料の金額の目安を教えてほしい。
- 名誉毀損の慰謝料を決めるときは、弁護士に相談した方がよいだろうか?
名誉毀損をされた被害者も、名誉毀損をした加害者も、示談のときの慰謝料が気になるでしょう。
名誉毀損の慰謝料を決めるときは、名誉毀損の悪質性や被害の状況等を踏まえ、金額を算定する必要があります。
そこで今回は、慰謝料による解決を得意とする専門弁護士が、名誉毀損の慰謝料相場、慰謝料を請求する流れ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 名誉毀損の慰謝料相場は、被害者が個人か法人かで異なる
- 名誉毀損の被害者は慰謝料請求権に時効がある点を把握しておこう
- 慰謝料の算定方法がよくわからなければ、弁護士のアドバイスを受けよう
名誉毀損の慰謝料相場
名誉毀損の慰謝料の相場は、概ね次の通りです。
- 被害者が個人:10~50万円
- 被害者が法人:50~100万円
上記の金額の枠内で必ず決まるわけではありません。交渉の場では、加害者・被害者の合意した金額で慰謝料が決定されます。
名誉毀損の悪質性が高く、名誉の回復に時間がかかりそうなときには、個人の請求であっても100万円以上となることもあるでしょう。
名誉毀損による慰謝料の決め方
名誉毀損の慰謝料の金額は、基本的に被害者が決めて加害者に請求します。
被害者は名誉を毀損され、苛立ち、感情的になっているかもしれませんが、冷静に慰謝料の請求額を検討しましょう。
請求額
適正な慰謝料の金額を算定し、加害者に請求する必要があります。
被害者が感情的になっていると、加害者に高過ぎる慰謝料の請求を行うこともあるでしょう。
しかし、適正な金額を請求しなければ、加害者との交渉がうまくいかず、裁判で解決を図るときに、被害者の主張する請求額が認められない可能性もあります。
慰謝料の金額を算定するときに考慮される主な要素は次の3つです。
- 悪質性:悪質性が高いと判断できる(例:人種差別、障害のある方への差別、名誉毀損の投稿が執拗であった等)
- 名誉毀損の影響:重大な結果を招いたと判断できる(例:被害者が自死した、精神疾患を発症した等)
- 被害者の属性:一般人か有名人か(例:芸能人やスポーツ選手、政治家等の場合、イメージ低下は死活問題のため高額になる傾向)
上記の3要素をよく検討したうえで、加害者への請求額を決定しましょう。
交渉
名誉毀損の加害者が特定している場合は、基本的に加害者へ通知(内容証明郵便が好ましい)し、慰謝料請求を行います。
通知するときは、請求理由である加害者の名誉毀損を明記し、「〇年〇月〇日までに、指定口座へ慰謝料〇〇万円を支払ってください。期日までに支払いが確認できない場合は法的措置をとります」と簡潔に記載しましょう。
内容証明郵便を利用すれば、加害者に心理的なプレッシャーを与えられる他、慰謝料を請求をした証拠になります。
加害者は被害者の法的措置(訴訟提起)をおそれて、慰謝料の支払いに応じるか、交渉を申し出る可能性もあるでしょう。
裁判
加害者との交渉が難航し、慰謝料の取り決めができなかった場合は、裁判所に損害賠償(慰謝料)請求の訴えを提起します。
裁判所は名誉毀損の悪質性や影響、被害者の属性を総合的に考慮し、慰謝料を算定しています。2つのケースをみていきましょう。
【ケース1】SNS上で被害者の顔写真を無断で利用し、第三者を誹謗中傷する投稿が続けられた事案
被害者は自己の顔写真を無断で利用され、精神的苦痛を受けたとして、加害者へ名誉毀損による慰謝料を請求しました。
請求に対し裁判所は次のように判断しています。
- 加害者のなりすまし行為により、第三者に対して、被害者本人が他者を根拠なく侮辱や罵倒しているとの誤解を与える
- 加害者は被害者の社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した
- 加害者の投稿内容や目的には正当性がなく、被害回復措置を講じていない
- ただし、加害者がプロフィール画像等を、本件投稿から1か月程度で変更し被害の更なる拡大は防止されている
裁判所ではこれらの一切の事情を考慮し、加害者に慰謝料60万円の支払いを命じています。
【ケース2】週刊誌が、市長に関する根拠のない事実を記事として掲載した事案
被害者である現職の市長が、社会的評価を低下させられたとして、週刊誌側へ名誉毀損による慰謝料を請求しました。
請求に対し裁判所は次のように判断しています。
- 週刊誌の内容は一般の読者に対し、現職の市長が公共事業入札に関連する、何らかの不正や違法行為を行っているという、誤った印象を抱かせるものだ
- 守谷市役所への問合せやクレーム、守谷市内における反響が大きい
- 市長が汚職をしていた決定的な証拠はない
- 損害賠償義務が認められれば、市長の名誉が相当程度回復すると想定される
裁判所ではこれらの一切の事情を考慮し、週刊誌側に慰謝料150万円の支払いを命じています。
名誉毀損で慰謝料を請求する流れ
名誉を毀損された被害者は、慌てずに証拠の収集を行い、加害者を特定した後、慰謝料請求を行いましょう。
ネット上で匿名による投稿者から名誉毀損を受けたとしても、加害者の特定は可能です。
証拠収集
被害者であるあなたの名誉を毀損した投稿内容について確認しましょう。
名誉毀損に当たる投稿を発見したならば、裁判所に損害賠償請求を行うときの証拠として、記録・保存する必要があります。
スクリーンショットで名誉毀損の投稿、投稿のURL、メッセージ履歴、投稿日時等がわかるように保存します。
人物の特定
ネット上での名誉毀損の投稿は、投稿者が匿名であるケースがほとんどです。そのため、「発信者情報開示請求」「発信者情報開示命令」の利用を検討してみましょう。
発信者情報開示請求・命令を行えば、加害者の特定が可能です。裁判手続きを踏めば、最終的にプロバイダが加害者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等を開示します。
それぞれ次のような方法をとります。
- 発信者情報開示請求:サイト運営元に対する任意開示の請求、裁判所に仮処分申立てを行い、IPアドレスによるプロバイダを特定する。特定されたプロバイダに発信者情報開示請求訴訟を起こす(プロバイダ責任制限法第5条)
- 発信者情報開示命令:被害者がすぐに裁判所へ開示命令を申立て、裁判所がサイト運営元とプロバイダに開示命令をする方法(同法第8条)
名誉毀損の被害者であるあなたは、開示請求と開示命令いずれの方法も自由に選択できます。
ただし、開示命令であれば手続きが簡素化されているため、スピーディーに加害者の特定が図られることでしょう。
請求
加害者を特定できたら、慰謝料請求の通知を行いましょう。交渉がまとまったら「示談書(合意書)」を作成します。
示談書(合意書)には、加害者が被害者に謝罪する旨、慰謝料の金額や支払方法・支払期日、被害者が告訴をしない・告訴をした場合は取り下げる等、取り決めた条件を明記しましょう。示談書は2通作成し、双方が1通ずつ保管します。
ただし、慰謝料請求を無理に交渉からはじめる必要はありません。加害者は慰謝料の支払いを拒否する可能性が高いと判断できるなら、すぐに訴えの提起が可能です。
被害者は加害者による名誉毀損を理由として、被告(加害者)の住所地を管轄する裁判所に損害賠償請求訴訟の提起ができます。
名誉毀損で慰謝料を請求するときの注意点
加害者に慰謝料を請求すれば、必ず慰謝料を受け取れるわけではありません。
時効で慰謝料請求権が消滅していたり、請求自体が難しかったりするケースもあるので注意しましょう。
時効と期限を把握する
被害者の慰謝料請求権は、加害者や名誉毀損の事実を知ったときから3年で消滅します。
被害者の中には「3年も猶予があるから大丈夫」と考える人がいるかもしれません。
しかし、慰謝料の請求には、名誉毀損の投稿をした加害者の特定が欠かせません。ネット上で名誉毀損の投稿をした加害者の情報は、3〜6か月程度で消えてしまう可能性が高いです。
匿名で投稿した加害者を発信者情報開示請求・命令で特定したいのであれば、名誉毀損の投稿を発見後、迅速に対処する必要があります。
相手に支払い能力がないケースもある
加害者を特定できたとしても、加害者に預金はおろか、安定した収入が得られていない可能性があります。
これでは慰謝料を請求しても、加害者からの支払いは期待できません。
この場合には、裁判所に損害賠償請求の訴えを提起し、判決書等を得たうえで、強制執行(差押さえ)を申し立てる方法もあります。
しかし、裁判手続きに手間と時間がかかるうえに、裁判等の費用は基本的に被害者側が負担しなければいけません。
専門家へ依頼する
名誉毀損に関する慰謝料の交渉や裁判に実績豊富な弁護士と相談しましょう。
弁護士はネット上で匿名の加害者の特定方法、慰謝料請求額の目安やポイント、交渉不成立の場合の裁判手続き等のアドバイスを提供します。
また、弁護士を代理人に立てれば、加害者との交渉や示談書の作成、損害賠償請求訴訟の裁判手続き等も全て任せられます。
迅速に慰謝料請求を進めたいのであれば、法律の専門家である弁護士のサポートがおすすめです。
名誉毀損で慰謝料を請求されたときにすべきこと
名誉毀損であなたが慰謝料を請求される側になる場合は、冷静に請求内容を確認し、対応を検討する必要があります。
請求した側との交渉前に、法律の専門家である弁護士に相談しておいた方がよいでしょう。
成立しない要件の確認
ネットに投稿した内容が、名誉毀損に当たるのかどうかを慎重に確認しましょう。
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して、特定の個人・団体の名誉を毀損する罪です。あなたが相手方を正当に批判する内容の投稿であれば、名誉毀損には当たりません。
また、あなたが相手を誹謗中傷した投稿である場合でも、具体的な事実を掲載せず、相手を「バカ」「アホ」と投稿した内容であれば、名誉毀損ではなく侮辱行為に該当します(侮辱罪に問われる可能性がある)。
減額交渉
慰謝料を請求する側(被害者)が名誉棄損に激高し、100万円以上もの高額な慰謝料を請求する可能性があります。
あなたは請求額が適正か否かを冷静に判断しなければいけません。自分の資力で十分支払える金額なら応じても構いませんが、法外な金額の要求であれば減額交渉を行います。
あなたが名誉毀損を認めるときは、被害者に謝罪の意思を示しつつ、交渉を進めていきましょう。直接被害者と減額交渉をするのが難しいと感じたときは、弁護士に交渉役を依頼しても構いません。
弁護士なら法律の知識と経験を活かし、冷静に被害者側との減額交渉ができます。
弁護士への相談
加害者であるあなたが、名誉毀損の慰謝料問題を何とか穏便に解決したいときは、示談交渉に詳しい弁護士へ相談しましょう。
弁護士は、名誉毀損のトラブルをヒアリングした後、次のようなアドバイスを行います。
- 被害者側の慰謝料請求額は適正か
- 慰謝料に関する交渉のポイント
- 示談で解決する必要性
- 示談書(合意書)の記載事項の説明
- 慰謝料交渉が決裂した場合の法的リスク
弁護士に代理人を依頼すれば、慰謝料の交渉、損害賠償請求訴訟の被告となった場合の対応等、様々な役割を委任できます。
名誉毀損の慰謝料請求でお困りなら春田法律事務所までご相談を
今回は慰謝料による解決で豊富な実績を持つ専門弁護士が、名誉毀損の慰謝料請求を受けた場合の対応方法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、慰謝料に関する交渉を得意としています。被害者側も加害者側も、慰謝料に関する悩み・不安を、弁護士に打ち明け、今後の対応を話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。