痴漢で起訴されるまでの弁護活動

最終更新日: 2022年08月23日

今回は、電車内における痴漢行為の疑いをかけられた。このような場合の刑事事件の流れ,弁護活動についてご説明します。

逮捕

被害者の方に声をかけられ,現行犯の場合は,そのまま刑事事件の被疑者として逮捕されることが多いです。

逮捕された場合には,逮捕の時点から48時間以内に検察に送致され,検察は送致を受けてから24時間以内に,裁判所に対して,被疑者の勾留を請求するか否か決めます。

逮捕段階においては,被疑者は,原則として弁護人以外と面会することはできません。

そして,勾留請求を回避,却下させるためには,この逮捕段階でいかに充実した弁護活動を行うか否かが決定的に重要となりますから,逮捕されたらできるだけ早く弁護士と接見するべきです。

勾留

社会生活上の影響

逮捕後,検察官の勾留請求を受けて,裁判所が勾留を決定した場合には,検察官の勾留請求日から10日の間,被疑者は勾留されることになります。

逮捕されて3日間程度であれば,病欠等の理由で仕事や学校を休むという言い訳がありえるため社会生活へ及ぼす影響は限定的ですが,10日間となると影響があまりに大きいため,社会生活への影響を限定するためには、勾留決定がなされないようにすることが極めて重要となります。

加えて,検察官の勾留請求から10日後が勾留満期日ですが,検察官はさらに10日間の勾留延長を裁判所に請求することができます。

合計23日間もの身柄拘束がなされる可能性があり,結果として仕事や学校等社会生活上の甚大な影響が生じえます。

身柄解放へ向けた弁護活動

痴漢については,冤罪のケースもあります。

他方で,逮捕されたことでパニックになり,現に痴漢行為をしていたにもかかわらず,冤罪であると警察官,検察官に対して話をする被疑者の方もおられます。

弁護士としては,被疑者の方にお会いした段階で,事件当時の状況を被疑者の方から詳細に聴き取り,その弁解が合理的なものであるかどうかを慎重に判断します。

もちろん,弁護士は,検察官ではなく被疑者の方の弁護人ですから,被疑者の弁解が真実であることを前提にお聞きします。

他方で,勾留される場合には上述のように多大な不利益がありますから,弁護士からも積極的に質問をしながら,弁解内容が裁判になった場合にも通用するのかどうかを見極めなければ,被疑者の方の利益になりません。

被害者の方の立ち位置,被害者の方に声をかけられた時の状況,被害者の方以外に目撃者がいるかどうか等詳しくお話をお聞きする必要があります。

詳細に聴き取りをした上で,冤罪であるとの主張を維持する弁護方針であれば,否認したまま勾留請求却下を求めます。

近時は,否認したままであっても,充実した説得を行うことで,勾留請求を却下させる例が増えています。

しかしながら,罪を認めている場合の方が検察官の勾留請求が裁判所において却下される割合がかなり高いことは,実際の現状です。

いずれにしても,勾留をさせないことが痴漢事件において,もっとも重要なポイントの一つといえるでしょう。

そのために弁護士が行う活動は,被疑者の方とよく話合って方針を決めること,検察官に対して勾留請求をしないように働きかけること,裁判官に対して,勾留を却下するように働きかけること,勾留決定がなされた場合には,その決定に対する不服申立(準抗告)を行うことです。

準抗告も棄却された場合には,示談を早期に行うことで,身柄の解放を目指します。

身柄解放された後

前科前歴がない場合,痴漢事件の見通しとしては,罰金刑となる可能性が高いです。
罰金刑も前科であることには変わりがありません。

痴漢行為については,犯行の態様によっては強制わいせつ罪となりことがあります。

強制わいせつ罪の場合は,罰金刑がないため,不起訴処分とならずに起訴された場合には,正式な裁判(公判)を受けることになります。

不起訴処分には,嫌疑不十分の不起訴処分,起訴猶予の不起訴処分等検察内部での種類がありますが,いずれにしても前科がつかない処分と考えてよいです。

前科をつけず不起訴処分とするには,被害者の方と示談をすることが重要です。
前科前歴がない場合であれば,被害者の方と示談が成立すれば,まず不起訴処分となると考えてよいです。

示談交渉は,ほとんどすべての場合,弁護士と被害者の方とで話し合いを行います。
被害者の方が被疑者の同席を求めるケースは稀です。

示談をすることは,被害者の方にとっても,被疑者との間で様々な約束をすることや,示談金を速やかに受け取ることができる等のメリットがあります。

そして、示談が成立した場合には,弁護士から,担当刑事又は検察官に対して,示談が成立したことを連絡します。

否認している場合について,否認したままで勾留請求を却下できれば,検察官は,身柄を拘束することで自白をせまる取調べができなくなるので,不起処分を獲得する可能性が高まります。

認めている場合,否認している場合のどちらについても目指す目標は検察官による不起訴処分ですから,そのために弁護士は力を尽くします。

前科前歴がある場合

前科前歴が多数ある場合には,示談が成立した場合であっても不起訴処分とならない可能性があります。

このような場合であっても,示談が成立していれば,量刑が軽くなることが見込めるため,示談はすべきでしょう。

痴漢等性犯罪を繰り返す被疑者の方には,医療機関での専門的治療が再犯防止の上で重要となってきます。

再犯防止のために努力していることは,量刑の判断の上でも重要ですから,示談に加えて,専門的治療を開始することが望ましいといえます。

治療を開始するためにも,勾留されないように弁護活動を行うことが求められます。

当事務所では,性犯罪に関する医療機関をご紹介することも可能ですので,ご相談ください。

逮捕されていない場合(在宅事件)

逮捕されていない場合も,刑事事件として捜査を受けている場合,略式起訴であれ,正式な裁判であれ,前科がつく可能性があります。

認めている場合であれば示談,否認している場合であれば,捜査機関に冤罪であることを効果的に伝えていくために,弁護士にご相談ください。

最後に

以上、痴漢事件の起訴されるまでの弁護活動についてご説明いたしました。

逮捕されずに在宅事件として捜査が進む場合には次にするべきことは示談交渉ですが、被害者への謝罪は速やかに行うべきですから、事件発生後できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

また逮捕されているケースでは、一日でも早く釈放してもらうためには、逮捕後できるだけ早く弁護士に相談しましょう

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