フィッシング詐欺被害に遭ったらどうする?警察・弁護士の対応と被害回復への道

2025年11月10日

フィッシング詐欺被害に遭ったらどうする?警察・弁護士の対応と被害回復への道

フィッシング詐欺は年々巧妙化しており、誰でも被害者になる可能性があります。銀行や通販サイトを装ったメールやSMSにだまされ、個人情報や口座情報を入力してしまう。そんな事例は後を絶ちません。

しかし、万が一被害に遭っても、最初の行動次第で被害を最小限に抑えることができます。

本記事では、フィッシング詐欺に気づいた直後に取るべき行動と、警察・金融機関・弁護士と連携して被害を回復するための具体的な手順を、実務的かつわかりやすく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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緊急対応:被害拡大を止める“初動対応”がすべて

フィッシング詐欺に気づいた直後の行動が、被害額と回復の可能性を大きく左右します。

まずは「これ以上の被害を防ぐ」こと、そして「後から証明できる証拠を残す」ことが最優先です。

金融機関・サービスへの即時連絡と停止手続き

もしも偽サイトに口座番号やカード情報を入力してしまったら、1分1秒でも早く、金融機関やサービス事業者に連絡を。不正利用を防ぐための緊急停止手続きを行いましょう。

入力した情報

取るべき緊急対応

法的・実務的ポイント

銀行口座/ネットバンキング情報

すぐに銀行へ連絡し、口座を一時停止。不正送金の有無を確認する。

被害の拡大を防ぎ、法律に基づく補償対象とするための初動となる。

クレジットカード情報

カード会社に連絡し、カードの利用停止・再発行を依頼する。

カード会社の補償制度(通常届出から60日以内)で救済を受けられる可能性がある。

各種ID・

パスワード

対象サービスのパスワードを即座に変更する。同じパスワードを使い回ししているサービスも含めて実施する。

SNSや通販サイトの乗っ取り被害(二次被害)を防止。

デジタル証拠を確実に保全する

警察や弁護士が動くためには、「証拠の確保」が不可欠です。以下のような情報を削除せずに保存しておきましょう。

フィッシングメールやSMS

削除せず保存し、送信元アドレスや本文を確認できるように。

フィッシングサイトのURL・スクリーンショット

アクセス履歴を含め、日時やページ内容を保存。

銀行やカードの明細書

不正利用の痕跡がわかる資料を印刷・データ保存。

時系列の記録

「いつ・どこで・何を入力したか」「いつ被害に気づいたか」を詳細にメモ。

 

これらの情報は、後に警察の捜査や弁護士の交渉で重要な証拠となります。

警察の役割:犯人特定と捜査による刑事対応

フィッシング詐欺は、刑法に該当する刑事事件です。
  警察は、犯人の検挙・処罰を目的に捜査を進めます。

警察への相談・被害届提出の流れ

相談先

最寄りの警察署、または都道府県警察の「サイバー犯罪相談窓口」。緊急でない場合は警察相談専用電話「#9110」も利用可能です。

被害届の提出

正式な捜査を求めるには被害届の提出が必要です。受理されると、警察が金融機関などに照会し、捜査が本格化します。

刑事告訴の検討

犯人の処罰を強く希望する場合は刑事告訴も可能。ただし告訴状には法的形式があるため、弁護士に依頼して作成するのが安全です。

警察と弁護士の役割の違いと連携の重要性

警察の目的は「犯人の検挙・処罰」であり、被害金の回復は直接行えません
  実際にお金を取り戻すには、次の項で紹介するような民事手続きが必要です。
  警察が収集した情報をもとに、弁護士が被害回復を進めることで、より確実な結果につながります。

弁護士の役割:被害金を取り戻すための民事対応

フィッシング詐欺被害からの回復を目指す上で、弁護士のサポートは欠かせません。
  弁護士は民事の専門家として、被害金回収や金融機関との交渉を代理します。

弁護士が行う主な法的手続き

被害が発生した場合、金融機関やクレジットカード会社に補償制度の適用を求め、被害回復についての交渉を行います。なお、フィッシング詐欺の加害者は足がつかないように身元を隠ぺいして詐欺行為に及んでいますので加害者の特定は非常に困難です。

弁護士に早期相談すべき理由

被害回復のための補償制度には時間制限があることが通常です。
弁護士に早めに相談すれば、必要書類の整備・申請代理・警察対応のサポートなどをワンストップで受けられ、被害回復のチャンスを逃しません。

まとめ:スピードと専門家連携が被害回復の鍵

フィッシング詐欺は、スピードが命です。
  発覚後すぐに対応すれば、不正送金を止められる可能性も高まります。
  次の3つの原則を意識しましょう。

スピード対応

まずは金融機関やクレジットカード会社への連絡と証拠保全。

刑事と民事の両輪対応

警察には犯人検挙を、弁護士には被害回復を依頼。

法的手続きの徹底

各種の補償制度などを正しく活用。

被害に気づいた時点で、警察や弁護士に早急に相談することが、失われた資産を取り戻す第一歩です。

相談窓口一覧

消費者ホットライン(188)

消費生活全般のトラブル相談

フィッシング対策協議会

偽サイトやメールの情報提供窓口

よくある質問(FAQ)|弁護士が解説

Q:フィッシング詐欺に気づいたら、まずどこに連絡すべきですか?

 A. まずは「金融機関」または「カード会社」です。口座やカードの停止を最優先に行いましょう。そのうえで、警察への相談と弁護士への連絡を同時並行で進めると、被害拡大を防ぎつつ法的対応がスムーズに進みます。

Q:被害届を出せばお金は戻ってくるのですか?

A. 被害届は「刑事手続き」であり、直接返金を受けられるわけではありません。ただし、警察の捜査により口座が凍結された場合、金融機関の補償制度に基づいて一部または全額が返還されることもあります。弁護士がこの申請を代理できます。

Q:詐欺メールを削除してしまいました。もう対応できませんか?

A. メールがなくても、銀行の明細やアクセス履歴など他の証拠が残っていれば対応可能な場合があります。ただし、証拠の少なさは不利になるため、今後は削除せず保存し、スクリーンショットなどで記録を残すようにしましょう。

Q:弁護士に依頼するタイミングはいつがよいですか?

A. 「金融機関に連絡した直後」が最も理想的です。被害届の作成や申請書類の整備は法律知識が必要なため、早期に弁護士を関与させることで、手続き漏れや期限切れを防げます。

Q:被害金が少額でも弁護士に相談してよいですか?

A. もちろんです。ただし、弁護士費用との兼ね合いで費用倒れになるケースもありますので、正式に依頼するかどうかは弁護士費用の見積を確認してから決めましょう。

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