情報セキュリティの基本を徹底解説:企業を守る「三要素」と「マネジメント」の必要性

2025年11月14日

情報セキュリティの基本を徹底解説:企業を守る「三要素」と「マネジメント」の必要性

デジタル化が進むいま、企業にとっての「情報」は、資金や設備と並ぶ中核資産です。
情報セキュリティはもはやIT部門だけのテーマではなく、経営そのもののリスク管理として取り組むべき領域になりました。

本コラムでは、まず「守るべき対象=情報資産」を整理し、次に情報セキュリティの三要素(CIA)をわかりやすく解説。最後に、日々変化する脅威に対応するためのマネジメント(運用の仕組み)の考え方を示します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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守るべき対象:「情報資産」とは何か

情報資産とは、企業が事業を進めるために保有・利用する情報そのものと、それを扱う仕組み・設備を含む広い概念です。

情報資産の例

具体的な内容

データ

顧客情報、従業員情報、技術情報(特許、ノウハウ)、財務データ、契約書など

システム

サーバー、ネットワーク機器、業務用ソフトウェア、ウェブサイト、クラウドサービスなど

媒体・設備

記録媒体(PC、USBメモリ)、オフィスビル、データセンター、紙の文書など

これらを漏えい改ざん利用不能の状態から守ることが、情報セキュリティの目的です。

情報セキュリティの三要素(C-I-A)

情報セキュリティの目標を達成するために、必ず維持・確保しなければならない三つの基本原則があります。これらは「情報セキュリティの三要素」または「C-I-A(シー・アイ・エー)」と呼ばれます。

機密性(Confidentiality)

情報にアクセスすることを許可された者だけが、その情報を利用・閲覧できる状態を保つことです。

対策の例

アクセス権限の設定、認証(ID/パスワード、二要素認証)、データの暗号化、物理的な入退室管理。

完全性(Integrity)

情報が正確で、改ざん・破壊されていない状態を保つことです。情報が最新であり、信頼できる状態であることを保証します。

対策の例

データバックアップ、改ざん検知システム(ログ監視)、システム操作履歴の記録。

可用性(Availability)

情報にアクセスすることを許可された者が、必要なときにいつでも情報やシステムを利用できる状態を保つことです。

対策の例

冗長化(二重化)によるシステムダウン防止、BCP(事業継続計画)の策定、定期的なメンテナンス。

企業は、この三要素すべてをバランス良く維持することが、サイバーセキュリティの基本となります。

セキュリティ対策の基本ステップ

情報資産を守るための具体的な対策は多岐にわたりますが、基本となるステップは以下の通りです。

リスクの特定と評価

自社が保有する情報資産を特定し、どのような脅威(マルウェア、内部不正、災害など)に、どれくらいの可能性で晒されているかを分析します。

防御策の導入

リスク評価に基づき、技術的対策(ファイアウォール、セキュリティソフト、二要素認証など)と物理的対策(入退室管理)を導入します。

規程・ルールの整備

情報セキュリティポリシー、情報管理規程、テレワーク時のセキュリティルールなど、組織全体で遵守すべきルールを定めます。

教育と訓練

従業員に対して定期的なセキュリティ研修を実施し、ルールの周知徹底、意識向上を図ります。

監視と改善

セキュリティログを監視し、定期的な監査や脆弱性診断を通じて、対策が有効に機能しているかをチェックし、継続的に改善します。

組織で回す|「情報セキュリティマネジメント」とは

情報セキュリティは、一度対策を講じれば終わりではありません。脅威は日々進化するため、継続的な管理体制が必要です。これが情報セキュリティマネジメント(ISM)の考え方です。

情報セキュリティマネジメントとは、組織の経営戦略に基づき、情報セキュリティを確保・維持・改善するための体制や仕組みを組織的に構築し、運用していくことです。

情報セキュリティマネジメントのメリット

統一的な基準

組織全体で統一されたセキュリティレベルを維持できます。

リスク低減

計画的かつ継続的な改善により、潜在的なリスクを未然に防ぎます。

信用の獲得

ISO 27001などの国際規格に基づいたマネジメントを行うことで、顧客や取引先からの信頼獲得に寄与します。

FAQ(よくあるご質問)

Q:情報セキュリティとサイバーセキュリティの違いは何ですか?

A. 情報セキュリティは「情報資産全体」を守る概念。サイバーセキュリティはネットワークやシステムに対する攻撃から守る対策で、情報セキュリティの一部に位置づけられます。

Q:三要素の中で、企業にとって最も重要な要素は何ですか?

A. 事業により優先は異なります。個人情報を扱う企業では機密性が鍵になりやすく、24時間稼働のサービスでは可用性の比重が高くなります。結局はバランスが最重要です。

Q:中小企業でも情報セキュリティマネジメントは必要ですか?

A. 必要です。大規模な認証が難しくても、責任者の明確化・ルール化・教育・監査の基本サイクルは、規模を問わず効果があります。

まとめ:情報セキュリティは企業成長の土台

情報セキュリティの基本は、守るべき情報資産を明確にし、「機密性・完全性・可用性」の三要素を確保することです。そして、そのレベルを維持・向上させるためには、情報セキュリティマネジメントの考え方に基づき、組織的に取り組む必要があります。

技術対策(ファイアウォール等)と組織対策(規程・教育)を両輪で回し「書いてある」ではなく「運用できている」状態を証跡で示せるようにする。

それが、企業の信頼と成長を支える最強の土台になります。

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