情報漏洩が発覚したときに企業が取るべき行動

2025年11月27日

情報漏洩が発覚したときに企業が取るべき行動

情報セキュリティ対策をしっかり行っていても、「情報漏洩のリスク」を完全にゼロにすることはできません。
特に、社内不正や外部からの巧妙なサイバー攻撃によって情報漏洩が発覚した場合、企業は法的な義務・社会的責任・損害賠償リスクという3つの重大な課題に直面します。

この記事では、情報漏洩が発覚した際に企業が取るべき緊急対応の流れと、専門家へ相談する重要性についてわかりやすく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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情報漏洩発覚時の「初動対応」フロー

情報漏洩の疑いが生じた、または発覚した直後には、被害拡大を防ぐための迅速な初動対応が欠かせません。

緊急遮断と証拠保全(被害拡大の防止)

ネットワークからの隔離

漏洩の原因となったサーバー・端末・ネットワークを即座に切り離し、これ以上の被害拡大を防ぎます。

証拠の保全

原因究明や法的責任の判断に必要となるログ・アクセス履歴などのデジタル証拠を確実に保全します。
※不用意なシャットダウンや操作は、証拠消失の原因になるため厳禁です。

初動報告

事態の概要(いつ・どこで・何が起きたか)を速やかに経営層に報告し、「インシデント対応本部」を設置します。

法的義務と専門家への緊急相談

初動対応と並行して、以下の専門家に相談することが重要です。

弁護士(法律相談)

損害賠償リスクの有無、個人情報保護委員会への報告義務、刑事責任の可能性などを確認します。
早期に法律相談を受けることで、後の対応方針を誤らずに済みます。

フォレンジック専門業者

漏洩の原因・侵入経路・漏洩情報の範囲などを技術的に調査し、事実関係を正確に把握します。

警察(サイバー犯罪窓口)

サイバー攻撃や社内不正が疑われる場合には速やかに通報・相談します。

事実究明後の「対外対応」と責任履行

事実関係が判明したら、企業は監督機関と被害者への対応を進める必要があります。

監督機関への報告(法令遵守)

個人情報保護法では、一定の個人データの漏洩等またはその発生のおそれがある事態が生じた場合に個人情報保護委員会への報告が義務付けられています。

速報報告

発覚から3〜5日以内に、現時点で把握している事実を報告

確報報告

原則30日以内に、詳細な原因・被害範囲・再発防止策を報告

被害者への通知

被害拡大防止のためにもインシデント発覚後、速やかに取引先や個人情報の本人に通知する必要があります。ただし、発覚当初の段階では被害範囲が明らかではなく、無用な混乱を招く恐れもあります。

そのため、調査によってある程度の事実関係がわかった段階で通知する、事実関係が分かり次第、段階的に通知・公表するなど事案に応じて適切な対応を検討する必要があります。

情報漏洩がもたらす法的責任と対処法

民事責任:損害賠償リスク

企業が安全管理義務を怠ったと判断されると、被害者から損害賠償を請求されることがあります。
過去の裁判例では、

  • 一般情報(氏名・住所など)の漏洩:1人あたり数千円
  • 機微情報(健康・金融など)の漏洩:1人あたり数万円

といった水準が多く、件数が多い場合は総額が数千万円規模に達することもあります。

刑事責任:社内不正への対処

不正アクセス禁止法や刑法(窃盗・背任など)に違反した場合、企業や関与した従業員が刑事責任を問われる可能性があります。

従業員による社内不正が原因だった場合には、

  • 関与者への懲戒処分
  • 刑事告訴の検討
  • アクセス権限やシステム運用ルールの見直し

など、組織的・技術的な再発防止策を講じる必要があります。

まとめ:平時からの体制構築と専門家活用

情報漏洩は一度起きると、企業の信頼や存続に大きな影響を与えます。
重要なのは、迅速な初動対応専門家を巻き込んだ的確な判断です。

平時からインシデント対応計画を整備し、弁護士やセキュリティ専門業者との連携体制を築いておくことで、被害を最小限に抑えられます。
もし法的な判断に迷う場合は、情報処理安全確保支援士などの専門家のいる法律事務所などの相談窓口を積極的に活用しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q:情報漏洩が疑われた時点で警察に通報すべきですか?

→ 事件性(不正アクセスや内部不正など)が高い場合は、早期に通報した方がよいです。サイバー攻撃の場合には犯人特定は期待できませんが、警察の協力でデータの復元ができる場合があります。また、通報していなければ、事後対応が不十分であると関係者から追及される恐れもあります。

 Q:情報漏洩を公表しなかった場合、違法になりますか?

→ 個人情報保護法上、一定条件を満たす漏洩は報告義務と本人通知義務が課されています。
違反すると行政指導や企業名の公表を受けるリスクがあります。

Q:社内での誤送信も「情報漏洩」に当たりますか?

→ はい。誤送信によって顧客情報が外部に流出した場合も情報漏洩に該当します。
発覚時には同様に初動対応・報告・通知を行いましょう。

Q:損害賠償請求を防ぐにはどうすればいいですか?

→ 迅速な対応と誠実な説明が重要です。
また、避けることのできない事態であったことを示すための証拠保全、被害拡大防止のために適切な事後対応をとったことも重要となります。

Q:無料で相談できる専門窓口はありますか?

→ 各地の弁護士会、情報セキュリティ関連の公的相談窓口(IPAなど)では無料相談が可能です。インシデントが発生した後ですと直ぐに相談や依頼ができるとは限らないため、平時から相談先を確保しておくことも重要です。

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