盗撮事件は罰金刑になりやすい?罰金の可能性や相場について弁護士が詳しく解説!
最終更新日: 2023年07月08日
盗撮事件を起こしてしまった場合、今後、自分がどのような処分を受けるのか不安になることでしょう。
たとえば、起訴されるのか、前科はついてしまうのか、報道されてしまうのか、被害者とどのように示談すればよいのか、被害者への慰謝料と罰金はどれくらい必要なのか・・・など不安や疑問は尽きないでしょう。
今回は、盗撮事件を多数手がける弁護士が、盗撮事件における罰金刑について詳しく解説していきます。
盗撮で罰金刑が科される可能性
そもそも、盗撮事件には、どのような刑罰が予定されているのでしょうか。
- 盗撮行為について規制する法令と罰則
- 罰金刑の可能性はある?
盗撮行為について規制する法令と罰則
どのような刑罰が予定されているのか把握するためには、盗撮行為がどのような法律で規制されているかを把握する必要があります。
盗撮行為を規制する法律・条令は、以下の4つです。
都道府県の迷惑防止条例
主として盗撮行為を取り締まっているのは、各都道府県の迷惑防止条例です。
たとえば、大阪府の迷惑防止条例(大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)は、以下の「行為をしてはならない」と、規定しています。
第6条1項1号
「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること」また、第6条2項は、
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。」と規定し、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること」を規制します。
このように盗撮行為は、迷惑防止条例にて規制されていますが、各都道府県によって、規制の範囲が微妙に異なりますので、注意が必要です。
軽犯罪法
仮に、各都道府県の迷惑防止条例に該当しない場合、軽犯罪法における取り締まりの対象か否か、検討をする必要があります。
軽犯罪法第1条23号は、以下のとおり規定しています。
「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」
住居侵入・建造物侵入
盗撮などの目的で商業施設などに侵入した場合には、建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性もあります。
実務上、盗撮事件の場合、盗撮自体だけでなく建造物侵入罪も同時に立件されることもあれば、盗撮のみが立件されることもあり、事案によって、立件される内容・範囲はまちまちです。
児童ポルノ禁止法
児童ポルノ禁止法(正式名称は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)においても、規制がなされています。
具体的には、第2条・第7条で、18歳に満たない者の写真や電磁的記録を所持、保管、提供、製造を規制しています。
つまり、盗撮の被害者が18歳未満の場合には、児童ポルノ「製造」の罪に該当する可能性があります。
罰金刑の可能性はある?
盗撮行為を規制する法律・条令を確認しましたが、「罰金刑」は設定されているのでしょうか。
まず、各都道府県の迷惑防止条例ですが、大阪府を例にあげると、盗撮行為について100万円以下の罰金が設定されています。また、常習でない場合には1年以下の懲役刑も設定されています。
また、軽犯罪法については、「罰金」ではなく、「科料」の定めがあります。
科料も刑法上の罰ではありますが、1000円以上1万円未満と比較的少額の金銭納付を命じられることを言います。
住居侵入罪の法定刑は、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」であり、罰金刑が設定されています。
児童ポルノ製造については、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が定められており、やはり罰金刑が設定されています。
このように、盗撮行為については、基本的には罰金刑の可能性があります。
盗撮で罰金刑になる確率は?
では、どのくらいの割合で、盗撮が罰金刑として処分されるのでしょうか。
- そもそも罰金刑は「前科」なのか
- 懲役刑の可能性はないのか
- 不起訴の可能性はないのか
- 罰金刑の確率は?
そもそも罰金刑は「前科」なのか
まず、大前提として、罰金刑は受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つとされています。
罰金刑は原則として1万円以上であり、上限は、各犯罪や各法律によって定められています。
そして、罰金刑も「刑罰」の一つですので、受刑者には前科として記録が残ります。
懲役刑の可能性はないのか
上記のとおり、盗撮行為によって成立し得る各犯罪には、懲役刑が設定されています。
したがって、一般論として、懲役刑が科される可能性はあります。
もっとも、初犯の場合や、結果が重大とまではいえない場合、行為態様が悪質とまでは言えないような場合には、罰金刑が選択される可能性が非常に高いです。
不起訴の可能性はないのか
他方で、罰金刑ではなく、不起訴になる可能性もあるでしょう。
つまり、初犯で反省が顕著な場合、示談が成立しており被害回復が実現している場合などには、不起訴処分(多くの場合は、起訴猶予による不起訴)になることも十分にあり得ます。
罰金刑の確率は?
このように、盗撮事件では不起訴処分となる可能性も十分にあります。
また、もちろん、同種前科の有無や行為態様、示談の有無などの事情によっても異なりますが、起訴(略式起訴を含む)された場合にも、罰金刑が選択される可能性が高いでしょう。
実際、このコラムを監修した弁護士が担当した事件では、起訴(略式起訴を含む)された事件の大半が罰金刑であり、懲役刑が選択された事件は全体の10%以下です。
盗撮の罰金刑の相場はどれくらい?
では、罰金刑が科されるとして、一体いくらくらいの金額が想定されるのでしょうか。
- 罰金と示談金や慰謝料は同じなのか?
- 慰謝料の相場はどれくらい?
- 参考にできる成功事例や過去事例の知識が豊富
罰金と示談金や慰謝料は同じなのか?
さきほども見たとおり、罰金は、受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つであり、刑法上の罰です。
これに対して、慰謝料は盗撮被害者が受けた精神的損害を「慰謝」するための金員であり、主として被害回復に充てられるものです。
示談金も同様で、被害者の精神的苦痛を考慮しながら、示談のために支払われる金員であり、被害回復の意義を持っているといえます。
慰謝料の相場はどれくらい?
では、盗撮事件における慰謝料の相場はどれくらいでしょう。
近年、性犯罪について厳罰化する傾向があることに鑑み、示談金や慰謝料額もやや高額化しているように感じます。
とはいえ、行為態様にもよりますので一概には言えませんが、20万円から50万円程度が、慰謝料として一般的な金額ではないでしょうか。
ただし、たとえば被害者が未成年の場合や、盗撮映像が流出してしまった場合などには、精神的苦痛が増大している可能性が高く、それに伴い慰謝料や示談金額も増額することがあり得るでしょう。
慰謝料や示談金を支払う意義は?
上記のとおり、慰謝料や示談金も数十万円にものぼることがあり、決して小さな金額とはいえません。
しかし、性犯罪において被害者の意向が重要視されていることもあり、示談が成立することは、加害者の処分にとって極めて重要な意味を持ちます。
つまり、示談が成立すれば不起訴となる可能性が高まり、また、何らかの処分を受ける場合でも、有利な事情として考慮されることとなるのです。
罰金刑の相場は?
仮に、罰金刑が科される場合、どのくらいの金額を言い渡されることが多いのでしょうか。
この点についても、前科の有無や被害感情の程度、行為態様など、様々な事情から決定されるものであり、一概には言えませんが、30万円から50万円程度が選択されることが多いようです。
罰金の支払方法は?
罰金はどうやって支払うのでしょうか。
まず、罰金は分割で支払うことはできません。
仮に、罰金が支払えない場合には、労役場に留置され、日当換算して罰金相当を支払い終えるまでの期間、労役場で労務につくこととなります(刑法18条)
盗撮で罰金刑を受けた場合に想定されること
最後に、盗撮事件で罰金刑を科された場合に想定されることを確認しましょう。
1 略式起訴であれば社会復帰しやすい
まず、盗撮事件においては、正式な裁判(公判請求)ではなく、略式起訴によって罰金刑が科されることが多いでしょう。
略式起訴の場合、裁判所への出廷などなしに、罰金刑が確定しますので、時間的にも速やかに終了します。
また、公開の法廷で裁判されるわけではありませんから、第三者に犯行や氏名が知られるおそれもありません。
したがって、略式起訴の場合、公判請求に比して、社会復帰は容易といえます(そもそも、職場などに犯行が発覚していないこともあり、全く影響がないと言える場合すらあります)。
2 報道の可能性
公判請求される事件は、結果が重大であるとか、行為態様が悪質であるといった事情を含む場合が多いため、報道の可能性が高まります。
略式起訴の場合、加害者の職業など社会的な関心の高さにもよりますが、基本的には報道の可能性は低いでしょう。
まとめ
今回は、「罰金刑」に注目して、盗撮事件についての検討を加えました。
盗撮をしてしまい、自身が不起訴を目指すことができるのか、罰金刑で済むのか、懲役刑の可能性もあるのか等、気になるという方は、一度弁護士に相談してみてください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。