慰謝料や財産分与に税金はかかるのか?

慰謝料や財産分与に税金はかかるのか?

2019年09月18日

1 はじめに

不貞行為があった場合、加害者から被害者に対して数十万円から数百万円の慰謝料が支払われます。

また、離婚する際には、慰謝料のほか、財産分与として預貯金や不動産などが分与されます。

このように、慰謝料や財産分与によって比較的大きな金額が動くことになりますので、その際に税金がかかるのかどうかは重大な関心事です。

そこで、今回は、慰謝料や財産分与と税金の関係についてご説明いたします。

2 慰謝料と税金

⑴ 慰謝料を受け取った場合、所得税はかかるのか?

不法行為に基づく損害が生じた場合に、被害者が加害者から受領する賠償金は、損害を補填するものです。
つまり、不法行為によってマイナスになっていた状態がゼロに戻るだけですから資産の増加はなく、所得は発生しないと考えることになります。

よって、賠償金を受け取ったとしても課税問題は発生しません。

このことは、不貞行為によって精神的苦痛という損害を受けた場合も同じです。
不貞行為を行った配偶者や不貞相手から慰謝料を受領しても、精神的苦痛というマイナス状態が補填されただけですので、所得税の課税はありません(所得税法第9条)。

⑵ 支払った慰謝料は必要経費として計上できないか?

慰謝料を支払う側からすれば、結構な金額の支出になりますので、それを確定申告などで必要経費として計上できないかと考えるかもしれませんが、不貞行為は事業の業務と関連性はありませんので、支払った慰謝料は、解決金、和解金、示談金といった名目に関わらず、必要経費として計上することはできません。

3 財産分与と税金

⑴ 財産分与する場合、譲渡所得税はかかるのか?

ア 現金又は預貯金等の金銭債権の分与
金銭又は預貯金等の金銭債権は、譲渡所得税の課税される資産には該当しません。
そのため、これらの財産分与については、譲渡所得税はかかりません。

所得税法基本通達33-1
譲渡所得の基因となる資産とは、法第33条第2項各号に規定する資産及び金銭債権以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。

イ 現金又は預貯金等の金銭債権以外の財産分与
前記ア以外の財産分与は、「資産の譲渡」(所得税法第33条1項)に該当します。
そのため、財産分与時の時価と取得費の差額について、譲渡所得税が課税されます。
例えば、不動産や有価証券、ゴルフ会員権などの譲渡は課税対象となります。

ただし、不動産については、以下のような特例を利用することによって、大幅な節税が可能です。

◇居住用不動産の配偶者への贈与の特例(相続税法第21条の6)
以下の要件を満たす場合には、離婚前に、居住用不動産を配偶者に贈与することで、基礎控除110万円に加えて2000万円まで贈与税の配偶者控除を受けることができます。
本特例の適用を受ける場合には、贈与税申告の際に所定の書類を提出する必要がありますのでご注意ください。

①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
②配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
*1「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋で国内にあるものをいいます。
*2配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

◇居住用不動産の譲渡所得税の特別控除の特例(租税特別措置法第35条)
 居住用不動産の配偶者への贈与の特例については要件を満たさない場合も、離婚後に、配偶者に居住用不動産を譲渡して、3000万円までの譲渡所得税の特別控除を受けることができます。

本特例の要件の概要は以下のとおりです。
詳細な要件は、国税庁のHPにてご確認ください(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。

①居住の用に供している不動産の譲渡であること
②親族等への譲渡ではないこと
③前年又は前々年内に本特例や居住用資産の買替えの特例等を受けていないこと

⑵ 財産分与を受ける者も非課税

財産分与において、財産の分与を受ける者は、原則として、課税されません。
もっとも、当該夫婦の財産分与として過当と評価される場合には、過当な部分については贈与税が課税されることになります。

なお、財産分与の際に、相続財産など特有財産の贈与を受けた場合には、贈与税の対象となるので注意が必要です。
前記の居住用不動産の配偶者への贈与の特例などを利用して節税を考えましょう。

相続税法基本通達9-8
「婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産(民法第768条((財産分与))、第771条((協議上の離婚の規定の準用))及び第749条((離婚の規定の準用))参照)については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。
ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する。

4 最後に

以上、慰謝料、財産分与の課税問題について概説しました。

慰謝料については、非課税であることが明確ですから、特段気を付ける点はありませんが、財産分与については、分与する財産の種類や金額、また特有財産か共有財産かによって課税問題が発生します。

財産が多い場合には税金の金額も相当な額になりますので、課税問題も見越して財産分与の内容、方法を協議する必要がありますので、弁護士や税理士に相談することをお勧めします。

この記事を書いたのは

代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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