不倫・浮気の慰謝料請求の流れ

最終更新日: 2022年07月12日

はじめに

配偶者の一方が不倫をした場合、配偶者及びその不倫相手に慰謝料を請求することができます。今回は、不倫慰謝料請求の方法についてご説明します。

内容証明郵便で慰謝料請求書を送る

内容証明郵便での請求

慰謝料請求をする場合、通常は浮気相手の自宅宛てに、内容証明郵便という方法で、請求の根拠(不倫の事実)、請求内容(慰謝料額)を記載した書面を発送します。

内容証明郵便というのは、郵便局がこの内容の書面を確かに相手方に発送されたということを証明してくれる郵便方法です。

慰謝料請求書を浮気相手に送るためには、浮気相手の住所、氏名が分かっていなければなりません。氏名が間違っていると「宛所訪ね当たらず」などの理由で返送され、浮気相手に書面が届きません。

慰謝料請求書には、不貞行為の時期、不貞行為の回数や不貞行為の期間、不貞行為の場所、不貞行為の内容を具体的に特定した形で記載し、その不貞行為によって発生した精神的苦痛に対する慰謝料額を記載します。

時効が間近のときは、まずは内容証明郵便を出しましょう。

内容証明郵便には時効を中断する役割もあります。

裁判外の請求による時効の中断と呼ばれるもので、内容証明郵便で慰謝料請求書を送っていれば、浮気相手にその時期に請求を行ったことの証拠となります。

ただし、内容証明郵便を発送しても6か月以内に訴訟提起をする必要があることには注意が必要です。また、内容証明郵便が届かない場合もありますので、時効直前の場合は気を付けましょう。

不倫裁判(訴訟)の流れ(訴訟提起から判決まで)

訴訟提起

不倫慰謝料を請求する側は、証拠をそろえて訴状を作成し、裁判所にこれらの書類を提出します。すると、裁判所がこれらの書類を受領し、訴訟が係属することになります。

訴訟を提起する側のことを「原告」と言います。原告側の証拠書類は、甲号証といい、甲第1号証、甲第2号証など、それぞれの証拠に番号を付けて提出します。

証拠書類には、証拠説明書をつけます。証拠説明書には、証拠の標目や作成者、作成日時、その証拠はどのような事実を立証するのか(立証趣旨)などを記載します。

不貞行為があったという事実は原告が立証する必要があり、不貞相手に書いてもらった誓約書や、話し合いを録音したもの、探偵の調査報告書やLINEの履歴などが、甲号証として提出されることが多いです。

第1回裁判期日の指定

訴状や甲号証に不備がない場合、裁判所より連絡があり、第1回目の裁判期日が決まります。通常は、訴状が受理されてから1か月ほど後の日で調整されます。

そして、裁判所より被告となる相手方に訴状や甲号証、第1回期日の呼び出し状が発送されます。

訴状を受領した場合の対応

被告は、訴状が自宅に届いて始めて、自分が裁判の被告となっていることを知ります。被告で訴状を受領した場合、まず何をすべきでしょうか。

被告は、第1回期日までに、裁判所に答弁書を提出しなければなりません。答弁書を提出しないと相手方の請求金額をそのまま認容する判決が出る可能性があり、そうすると、その判決をもとに原告が被告の財産の差押をすることができるようになります。

ですから、もし、訴状が届いたら無視せず、必ず答弁書を期限までに提出しましょう。

答弁書の提出期限が間近の場合には、答弁書は簡潔な内容にとどめ、第2回裁判期日までに詳細は反論書面を提出することも許されます。

また、被告も証拠がある場合、乙号証として、証拠書類を提出します。被告からは、原告夫婦の婚姻生活が破綻していた事実などを主張すること多いです。

被告もしっかりと反論を記載した書面とそれを裏付ける証拠を出す必要があります。

第1回口頭弁論期日の開催

第1回の裁判の日を、「第1回口頭弁論期日」と言います。ここでは、訴状と答弁書の陳述、甲号証、乙号証の提出が行われます。

陳述とは、訴状など主張書面に記載したとおりのことを裁判で主張することです。

通常は、裁判官が「原告は訴状を陳述しますか?」と聞いてくるので、原告は「はい、陳述します。」と回答すれば、訴状に記載されていることを主張したことになります。

被告は、第1回裁判期日に限り、答弁書を提出していれば、出廷しなくても、裁判に出席し、答弁書に記載のある事実を裁判の場で陳述した扱いとなります。これを擬制陳述と言います。

その後の裁判の進行

訴訟は、その後、原告と被告とで主張書面や証拠書類(甲号証・乙号証)などを提出しながら進みます。裁判は通常、月に1回程度の割合で開催されます。

弁護士に依頼すれば、これらの作業は弁護士が行い、基本的には当事者は裁判所に出廷する必要はありません。

和解の話し合い

主張と証拠が出揃った時点で、裁判所より、和解の提案が行われることがほとんどです。

そして、原告、被告の間で和解内容について折り合いがつけば、裁判上の和解が成立し、裁判は終了します。

その際に作成される和解調書には、判決と同じ効力があり、もし、分割払いの支払いが滞れば、和解調書に基づき、強制執行をすることができるようになり、被告の財産を差押することも可能です。

原告にとって和解するメリットとして、被告から慰謝料の支払いを受けられる可能性が高まることが挙げられます。

判決が出ても被告が支払わない場合には、被告の財産を調査し、強制執行をする必要がありますが、和解する場合は被告も支払いに納得の上で和解しますので、このように被告が支払ってこない可能性が低くなるのです。

また、判決内容は慰謝料の支払いだけですが、和解の場合は口外禁止や接触禁止などそれ以外の条件も被告に課すことができます。

他方、被告にとってのメリットとしては、判決の場合は一括払いとなりますが、和解の場合は、交渉次第で、分割払いや支払金額の調整が可能な点が挙げられます。

証人尋問

和解が成立しない場合には、証人尋問に進みます。テレビのドラマなどでよくある法廷での風景は、この証人尋問の場面が多いです。

証人尋問は、証人が出廷し、質問に答えるという形で進みます。
主尋問、反対尋問、補充尋問などそれぞれの立場から、双方の代理人、裁判官が証人に質問します。

この証人尋問の後、再度、裁判所から和解の打診があることも多いです。その際には、証人尋問を含めた証拠調べを踏まえ、判決となった場合の見通しを伝えられ、和解を促されます。

判決

すべての審理を終えたところで、ようやく判決となります。裁判所が原告側の不貞行為があったという主張を認めてくれるのかどうか、結果がようやく判決という形で分かることになります。

判決期日には当事者、代理人は出廷する必要はなく、後日、裁判所から指定している送達場所に判決書が郵送されてきます。

不倫訴訟(裁判)の期間

事実関係に大きな争いはなく、いくらの慰謝料を支払うべきかという点が主たる争点のケースでは2回、3回の裁判期日、提訴後2か月ほどの期間で和解成立となることが多くあります。

このようなケースはそもそも訴訟ではなく交渉段階で和解となるべきケースですが、どうしても一方が納得ができず訴訟となってしまったものです。

訴訟では裁判官が仲裁者として間に入りますので、このように交渉段階では和解にならなかったケースでも和解が成立しやすくなります。

他方、事実関係に争いがあるケースでは、提訴後半年以内の期間で和解成立となるケースがほとんどです。他方、証人尋問、判決まで進むケースでは1年から1年半ほどの期間を要します。

判決後の控訴

不貞慰謝料請求の第1審裁判の判決内容に不服がある場合には、原告も被告も両方とも控訴することができます。

控訴は、判決書を受け取った日の翌日から2週間以内に第1審の裁判所に控訴状を提出してする必要があります。

そして、控訴した日の翌日から50日以内に第1審判決の取消し、変更を求める理由を具体的に論じた控訴理由書を裁判所に提出することになります。

控訴審は、全く白紙の状態で改めて審理するものではなく、あくまで第1審の審理内容を踏まえて行われます。そのため、大半のケースが第1回口頭弁論期日に結審となります。

最後に

以上、不倫・浮気の慰謝料請求の流れについてご説明しました。

裁判は弁護士に依頼せず、ご自身で行うことも法律上は可能です。

しかし、どのような事実の主張、証拠の提出が必要、有効なのかの判断は、ご自身では困難ですから、最適な結果を得るためには不倫案件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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