不倫したのに財産分与が必要?減額や放棄はできる?

最終更新日: 2024年01月27日

不倫したのに財産分与が必要?減額や放棄はできる?

慰謝料とは別に財産分与はしてもらえるの?
不倫をしたのに財産分与をしないといけないの?
不倫をした配偶者に財産分与を放棄させられない?

配偶者と離婚することになった場合、慰謝料や財産分与、養育費の取り決めなどをします。不倫が原因で離婚することになれば、離婚原因をつくった配偶者に対しては一銭も支払いたくないと思う方もおられるでしょう。

そこで今回は、不倫が原因で離婚するときの財産分与について、不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫をしても財産分与?

不倫をした配偶者に対しても財産分与をする必要があるのでしょうか。財産分与という制度の基礎から紐解いてご説明します。

財産分与とは?

離婚をする際には、配偶者に対して財産の分与を請求することができます(民法第768条)。これを財産分与といいます。財産分与には以下の3つの側面があります。

清算的財産分与

清算的財産分与とは、婚姻時から別居時(又は離婚時)までに築かれた夫婦の財産を分配して清算するものです。

これが財産分与の主たる内容となります。この後、慰謝料的財産分与と扶養的財産分与についてもご説明しますが、これらは財産分与の際に必ず行われるものではなく、原則は、清算的財産分与のみが行われます。つまり、原則は、財産分与=清算的財産分与ということです。

慰謝料的財産分与

一方の配偶者に離婚原因がある場合に、その離婚原因によって被った精神的苦痛に対する慰謝料の意味合いで通常よりも財産分与の金額を多くすることがあります。これを慰謝料的財産分与といいます。

扶養的財産分与

3つ目は、扶養的財産分与です。例えば、一方が家事育児に専念していた場合、離婚後に直ちに経済的に自立することは容易ではありません。

そのため、離婚後の経済的自立を支援するために通常よりも財産分与の金額を多くすることがあり、これを扶養的財産分与といいます。

不倫の慰謝料とは別途に財産分与も?

不倫の慰謝料は民法第709条の不法行為を理由に認められるものであり、離婚しない場合にも配偶者に対して請求できるものです。

そのため、不倫の慰謝料と財産分与は法律上の根拠も異なるもので、不倫の慰謝料が支払われれば財産分与は請求できないという関係にはありません。そして、不倫をした配偶者であっても財産分与を請求する権利があります。

先ほど慰謝料的財産分与についてご説明しましたが、これは不倫の慰謝料とは関係がなく、不倫の慰謝料が支払われても慰謝料的財産分与がなされることがありますし、慰謝料的財産分与がなされれば不倫の慰謝料が請求できなくなるという関係にはありません。

不倫相手からの慰謝料も財産分与?

財産分与では別居時(又は離婚時)における夫婦の財産を原則として半分にしてそれぞれに分配します。

そうしますと、不倫相手から不倫の慰謝料を支払ってもらった場合、それも離婚時の財産分与の対象になり、不倫をした配偶者に分配することになるのでしょうか。

財産分与の対象となるのは夫婦の共有財産です。離婚時にある財産は夫婦が協力して築いた共有財産と推定されるのですが、婚姻前からある財産や相続、贈与によって得た財産は共有財産ではなく一方の特有財産(固有財産)であり、財産分与の対象とはなりません。

そして、不倫相手から支払ってもらう慰謝料は夫婦が協力して築いた財産ではありませんので、不倫をされた配偶者の特有財産(固有財産)となります。

よって、不倫相手からの慰謝料は財産分与の対象とはなりません。

ただし、不倫相手から支払ってもらった金銭と共有財産の金銭が混ざり合ってしまい、区別がつかなくなったときには、事実上、慰謝料も財産分与の対象とされてしまう可能性はあります。

別居後の収入も財産分与?

不倫をした配偶者と別居に至ることがありますが、別居後に得た収入や財産は財産分与の対象となるのでしょうか。

ここまでに財産分与は別居時における夫婦の財産を分配するものとご説明しましたとおり、別居後に得た収入や財産は財産分与の対象とはなりません。

なぜなら、財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分配するものですから、別居した場合にはそのような夫婦の協力関係は失われ、その後に得た収入や財産は夫婦が協力して築いた財産とはいえなくなるからです。

2年の期限に要注意!

財産分与は離婚時に行うことも、離婚成立後に行うこともできます。離婚の際はとにかく早く離婚を成立させることだけを考え、財産分与などお金のことは特に決めなかったという夫婦もしばしばおられます。

このような場合も離婚後に改めて財産分与を請求することができるのですが、離婚時から2年を経過すると財産分与の請求ができなくなりますので要注意です(民法第768条2項)。

不倫の慰謝料よりも財産分与が大きくなる!?

先ほどご説明しましたとおり、不倫をした配偶者も財産分与を受ける権利があります。このことから不倫をされた配偶者にとって納得のいかない結論になることがあります。以下このような場合について見てみましょう。

お金持ちと結婚したら不倫し放題!?

財産分与は夫婦で築いた財産を清算する制度ですから、離婚原因が不倫にある場合であってもそうでない場合と同様に財産分与が行われます。つまり、不倫をした配偶者も財産分与を受けることができるのです。

このため、不倫をしたにも関わらず、不倫をした配偶者が不倫をされた配偶者に対して支払う慰謝料よりも、不倫をされた配偶者から支払ってもらう財産分与金額が大きくなることがあるのです。

不倫をした配偶者が支払う慰謝料の金額は高い場合でも500万円です。例えば、不倫をされた配偶者がお金持ちで資産が10億円あった場合、原則として5億円が財産分与として不倫をした配偶者に分配されます。そうすると、不倫をされた配偶者は、不倫をした配偶者に対して差し引き4億9500万円を支払うことになるのです。

不倫の慰謝料と財産分与が制度として関係がないことからこのような結論になることはやむを得ないのですが、お金持ちと結婚をしたら不倫し放題ではないかと不満を持つ方もおられようです。

結婚前に婚前契約を

このようなアンバランスとも思える結論を避けるための方法として婚前契約があります。

婚前契約とは入籍前にカップルの間で交わす契約です。様々な内容を定めることができ、例えば、不倫をして離婚する場合には財産分与は行わないと定めることや、そもそも、夫婦の共有財産は認めず全てそれぞれの特有財産(固有財産)であると定めることもできます。

このような婚前契約を交わしておけば、先ほどのようなアンバランスな結論を回避することができます。

婚前契約は入籍前にしか交わすことができませんが、入籍後であっても夫婦間契約として同様の契約を交わす余地はあります。もっとも夫婦間契約は法的効力が否定される場合もありますので、詳しい弁護士に相談の上で、作成するようにしましょう。

不倫した配偶者に財産分与を放棄してもらうには?

このように婚前契約や夫婦間契約を交わしていない場合、不倫した配偶者に財産分与を放棄してもらう方法はあるのでしょうか。

繰り返しになりますが、不倫をした配偶者であっても財産分与を受ける権利があります。そして、その権利を強制的に奪う法律はありません。そうしますと、交渉によってその権利を放棄する合意を取り付ける他に方法はありません。

そのように財産分与を受ける権利を放棄させる交渉の一つとしては、有責配偶者であることを交渉材料とした交渉があります。

不倫をして離婚原因をつくった配偶者は有責配偶者と言われ、有責配偶者からの離婚の請求は認められないこととなっています。そのため、不倫をされた配偶者が同意しない限り、有責配偶者は離婚することができないのです。

この点を交渉材料として、離婚して欲しいのであれば財産分与を受ける権利を放棄するよう交渉することがありますし、放棄までは了承されずとも、財産分与の割合を5割ではなく2割などに下げることで了承を得られる場合があります。

不倫した配偶者との財産分与に贈与税はかかるの?

離婚時の慰謝料も200万円など高額になることが多いですが、財産分与は更に高額となることが多くあります。このように多額の財産を受け取った場合、心配になるのは税金です。

安心してください。財産分与には贈与税はかかりません。贈与を受けたものではなく夫婦の財産を清算したに過ぎないからです。

もっとも、財産分与が多すぎる場合には多い分について贈与税が課される可能性がありますし、贈与税や相続税を回避することを目的に偽装離婚をした場合にも課税されます。

不倫した配偶者との財産分与の流れ

最後に、不倫した配偶者と離婚する場合の具体的な財産分与の流れについて確認しておきましょう。

離婚時の財産分与の流れ

離婚時に財産分与を行う場合には、慰謝料や親権、養育費などと合わせて財産分与についても処理されます。

まずは夫婦間で話し合いによって解決を図りますが、協議によってまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをします。

この離婚調停で合意に達すれば調停が成立して離婚となりますが、離婚調停でも合意ができなかったときは、次は離婚訴訟を提起します。

離婚訴訟では合意に達することがないときは、裁判所が判決によって離婚の可否を始め財産分与の内容も決定します。

離婚後の財産分与の流れ

離婚時に財産分与をしなかったときも、離婚時から2年間は財産分与の請求ができます。

この場合もまずは当事者間で話し合いを行いますが、協議によってまとまらないときは、家庭裁判所に財産分与調停の申立てをします。

この財産分与調停で合意に達すれば調停が成立し財産分与がなされますが、合意ができなかったときは裁判所が審判を出して財産分与の内容を決定します。

まとめ

以上、配偶者が不倫をした場合の財産分与について解説しました。

不倫をした配偶者に財産分与をしたくない、不倫をしたけれども財産分与は請求したい、いずれの場合も最善の解決をするためには、不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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