不倫に関する法律を専門弁護士が徹底解説!キスで罰せられる?

最終更新日: 2023年07月03日

キスも不倫?不倫は法律で罰せられるのか専門弁護士が解説!不倫をしたのに法律で罰せられないの?
食事に行くだけでも不倫ではないの?
不倫相手に法律違反を問えないの?

夫婦によって異性との交流について許容範囲は異なるでしょうし、不倫をされた配偶者としては不倫相手に何らかの罰を与えたいと思うのは当然でしょう。

今回は法律上の不倫の境界線や、不倫相手に対する責任追及の方法などについて、不倫問題専門の弁護士がご説明します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫は法律で罰せられる?

不倫は法律で罰せられる?不倫をされた配偶者は被害者ですし、多大な精神的苦痛を被りますので不倫は犯罪、罰せられるべきと考える方は多いようです。

しかし、結論としては、現在の日本では不倫は犯罪ではありません。

日本でも戦前は、不倫は姦通罪(かんつうざい)として犯罪でしたが、戦後直ぐに姦通罪は廃止されました。

もっとも、現在でも不倫を犯罪としている国はありますので、犯罪に比肩すべきルール違反であると考えることは自然なのかもしれません。

不倫の責任を問う法律とは?

不倫の責任を問う法律について不倫は犯罪ではありませんが、法律違反、違法行為ではあります。民法には、以下の条文があります。

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(第709条)。

他人の権利又は法律上保護される利益とは、不倫をされた配偶者の婚姻共同生活の平穏を維持する権利、利益をいいます。

不倫はこのような権利、利益を侵害するものですから、違法とされています。民法上は、不倫のことを不貞行為といいます。

もっとも、そのような権利、利益を侵害する行為には故意又は過失が必要です。つまり、既婚者とは知らなかった場合には違法行為にはなりません。

また、故意がなくても過失があれば違法行為になるのですが、既婚者と疑う余地がなかった、あるいは既婚者と疑ったことから必要な調査をしたうえで独身と信じていた場合には、過失もないということになります。

不倫はどこからが法律違反?

不倫はどこからが法律違反?不倫とは婚姻共同生活の平穏を維持する権利、利益を侵害する行為です。これは抽象的な表現ですから、果たしてどのような行為が法律違反になるのか疑問に思われるでしょう。

まず、異性との性交渉が不倫に該当することについて異論はないかと思います。以下では、性交渉以外にも法律違反になるのかについて見ていきましょう。

  • 性交渉がない場合
  • 性風俗店の利用
  • 同性との性交渉

性交渉がない場合

慰謝料請求をしますと、ラブホテルには行ったけれども性交渉はしなかったという反論が相手からなされることがよくあります。

しかし、ラブホテルに行った場合、性交渉がなされたと推定されますし、仮に本当に性交渉がなかったとしてもそのような場所に滞在すること自体が婚姻共同生活の平穏を侵害するものとして法律違反といえます。

また、挿入行為はしていないものの、お互いの体を触り合うなどの性行類似行為や、キスをした場合も法律違反となります。

一方、LINEでメッセージのやり取りをしているだけの場合や、食事をしただけの場合には、原則として法律違反にはなりません。この程度では損害賠償義務を負わせるほどに婚姻共同生活の平穏を侵害しているとは評価されないのです。

もっとも、例外的ですが、「好き」などのメッセージの内容だけで婚姻共同生活を侵害するものとして法律違反を認めた判例があります。

性風俗店の利用

性風俗店の利用は、原則として法律違反となる不倫ではありません。

もっとも、性風俗店の女性スタッフと親しくなり、LINEなどで個人的にやり取りをするような親密な関係になった場合には、たとえ金銭のやり取りがあったとしても法律違反となる不倫と評価される可能性があります。

同性との性交渉

不倫とは、婚姻共同生活の平穏を侵害する行為でした。たとえ、不倫相手が同性であったとしても、同性であれば性交渉をしても構わないと配偶者が許容していたという事情がない限り、婚姻共同生活の平穏が害されることに変わりはありませんので法律違反となります。

近時の判例も、同性との性的関係について法律違反となることを認めています(令和3年2月16日東京地裁判決)。

不倫の慰謝料の相場とは?

不倫の慰謝料金額は法律では決まっていない!どのような行為が法律違反になるのかについてご説明しました。そして、法律違反となった場合には、先ほどご紹介した民法709条にあるとおり、不倫をされた配偶者に対して損害賠償をする義務を負います

この損害賠償の内容としてメインとなるのが慰謝料です。精神的苦痛に対する損害賠償を慰謝料というわけですが、精神的苦痛の程度はケースによって異なるので、法律には明確に幾らとは定められていません。また、その計算方法も定められていません。

ではどのようにして慰謝料金額が決まるのかといいますと、蓄積された過去の判例から導かれる大まかな相場を踏まえて決定されます。

具体的には、不倫で離婚する場合には200万円が基準となり、離婚しない場合には100万円が基準となります。

この基準金額から、婚姻期間や不倫期間の長さ、不倫相手の反省の有無など様々な要素を考慮して慰謝料が増減することとなります。

不倫の法的責任を問うために必要な証拠とは?

不倫の法律違反を問うために必要な証拠は?不倫相手に法律違反の責任を問うためには、不倫の事実に関する証拠と不倫相手に関する証拠が必要となります。以下それぞれについてご説明します。

  • 不倫に関する証拠
  • 不倫相手に関する証拠

不倫に関する証拠

性交渉をしている場面の証拠があれば最も直接的な証拠です。このような証拠が得られるのは、配偶者が携帯電話などに性交渉の様子を撮影した動画や写真を保存している場合などです。このような直接証拠が得られる場合もしばしばあります。

次に強力な証拠は、ラブホテルへの出入りや不倫相手の自宅へ宿泊したことのわかる動画や写真です。性行為はなかったという反論が出たとしても、性交渉があったことが推定されます。

これらの強力な証拠以外にも、配偶者が不倫の内容について自白した自供書やその録音、性交渉のわかるLINEのやり取りによっても不倫を立証することは可能です。

不倫相手に関する証拠

不倫の証拠があったとしても、それだけでは不倫相手に慰謝料請求はできません。

不倫相手に慰謝料請求をするためには、不倫相手の氏名と、住所又は勤務先の情報が必要です。これらがわからなければ内容証明を送ることも、裁判所から訴状を送ることもできません。

したがって、LINEやSNSの連絡先しか分からない場合には責任追及ができません。

一方、不倫相手の氏名や住所がわからない場合も、携帯電話番号がわかる場合には、弁護士に依頼をすれば弁護士会照会という調査方法によって相手の氏名及び住所を特定できる可能性が高いです。

不倫の法的責任を問えないケースとは?

不倫の責任を法律上問えないケース性交渉に限らず、性行類似行為やキスなども法律違反になることは先ほどご説明しました。

ここではこのような行為があるにも関わらず法律違反とはならず、責任を問うことができないケースについてご説明します。

問えないケース
  1. 故意、過失がない場合
  2. 夫婦関係が破綻していた場合
  3. 消滅時効が成立している場合
  4. 結婚していない場合
  5. 配偶者から既に慰謝料を受け取っている場合

故意、過失がない場合

関係をもった相手が既婚者とは知らなかった、独身と信じていた場合には故意がなく、法律違反とはなりません。

もっとも、過失がある場合には法律違反となります。過失がある場合とは、既婚者と疑うべき事情があったのに、特に調査もせずに漫然と独身と信じていた場合をいいます。

例えば、出会い系サイトで知り合った相手と1、2回会っただけであれば相手の素性について知らなくてもやむを得ませんので、故意も過失もないと判断される可能性は高いでしょう。

夫婦関係が破綻していた場合

法律違反となる不倫とは、配偶者の婚姻共同生活の平穏を維持する権利、利益を侵害する行為をいうことは、ここまでに繰り返しご説明したとおりです。

例えば、2年や3年の間別居しており、夫婦間で全くの没交渉だった場合、このような夫婦は法的に破綻しており、既に婚姻共同生活の平穏は失われています。

したがって、不倫を始めた時点で既に夫婦関係が破綻していた場合には法律違反とはなりません。

ただし、注意点としては、単に夫婦関係が険悪だったくらいでは法的に破綻とは評価されません。法的に破綻といえる場合は一般的な感覚とは異なり、相当破綻の程度が重いのです。

消滅時効が成立している場合

不倫相手に対する損害賠償請求権は、不倫の事実及び不倫相手を知ってから3年間、不倫のときから20年を経過することで消滅時効が完成します(民法第724条)。

このように消滅時効が完成してしまいますと、法律違反であることに変わりはないのですが、損害賠償請求はできなくなってしまいます。

もし時効が差し迫っており裁判を起こす時間的猶予がないときは、まずは内容証明郵便を送って損害賠償請求をします。これによってその時から6か月間は消滅時効の完成は猶予されます(民法第150条1項)。

そして、この6か月間の間に、裁判を起こせば消滅時効の完成を阻止できます(民法第147条1項1号)。

結婚していない場合

法律違反となるのは原則として夫婦である場合、つまり入籍している場合です。そのため、交際相手が浮気をした場合には、浮気相手に慰謝料を請求することはできません。

もっとも、入籍していない場合でも婚約している場合や内縁関係の場合には、浮気は法律違反となり慰謝料を請求できる可能性があります。

配偶者から既に慰謝料を受け取っている場合

不倫は配偶者と不倫相手が共犯として行うものです。そのため、配偶者と不倫相手は連帯責任として、不倫をされた配偶者に慰謝料を支払う義務を負います。

「連帯責任として」ですから、例えば、妥当な慰謝料が100万円のケースでは、夫婦間で100万円の慰謝料の支払いが既になされたのであれば、不倫をされた配偶者は更に不倫相手に慰謝料を請求することはできないのです。

このように不倫当事者の一方から十分な慰謝料を既に受け取っている場合には、更に法律違反の責任を問うことはできません。

不倫について法律事務所から内容証明が届いたらどうする?

不倫について法律事務所から内容証明が届いたらさて、最後に法律違反となる不倫をして訴えられたときの対処法をご説明します。

予め相手の配偶者から訴えると予告を受けている場合もあれば、何の前触れもなくある日突然、自宅に弁護士から内容証明が届くこともあります。

いずれの場合も、弁護士から書面を送られてくることなど初めての方がほとんどでしょうから、恐怖を覚えるものと思います。しかも大抵の場合、慰謝料300万円を請求するなどと到底支払えないような高額な請求金額が記載されていますので、一層の不安を覚えます。

また、弁護士からの書面には速やかにその弁護士に連絡をするようにと記載されていることがあります。何を言われるのか、不必要なことを言ってしまわないかと不安を覚えることでしょう。

そこで、不倫について法律事務所から内容証明が届いたときは、まずは、弁護士に電話で無料相談をしましょう。そして、今後はどのように対応していくべきなのか適切な助言をもらいましょう。

まとめ

まとめ以上、不倫に関する法律についてご説明しました。

訴えられたけれども法律違反になるのか知りたい方や、不倫相手に法律違反の責任を追及したいといった悩みをお持ちの方は、まずは不倫問題専門の弁護士にご相談いただき最善の方針を立てて解決していきましょう。

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