不倫の慰謝料の相場はいくら?金額に影響する要素・しない要素も解説

最終更新日: 2024年01月31日

不倫の慰謝料を相場以上や相場以下にする方法を弁護士が解説!不倫相手に幾ら慰謝料を請求できるの?
慰謝料って幾ら払わないといけないの?
相場以上に減額したり、相場以上に支払わせる方法はないの?

不倫の慰謝料問題に関わった方はこのような疑問をもつのではないでしょうか。

不倫の慰謝料は計算式があって明確に算出できるものではないため、このような疑問は尽きません。また受けた精神的苦痛の割に相場が低いと感じる方は多いですし、相場といっても一般的には大金の数十万円を支出することに抵抗感がある方も多いところです。

そこで今回は不倫問題を数百件扱ってきた専門弁護士が不倫の慰謝料相場についての考え方や相場以上の結果を目指す具体的な戦術についてご説明します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫の慰謝料の相場の基本的な考え方

不倫の慰謝料とは、配偶者の不倫によって被った精神的苦痛に対する損害賠償金です。精神的苦痛をどのようにしてお金で換算するのでしょうか?

自分の辛い気持ちについて、「これは100万円くらいかな?」などと考えることは無理ではないでしょうか。

また、自分であればその苦痛の程度を自覚できますが、他人である裁判官は内面を覗くことはできませんので、一層、精神的苦痛がどれくらいなのか判断することは難しく、それをお金に換算することはほとんど不可能でしょう。

そのため、他人の裁判官でも目に見える客観的な証拠で、精神的苦痛の度合いを推し量り、過去の判例との比較から慰謝料金額を判断せざるを得ないのです。

不倫の慰謝料は、不倫の結果として夫婦が離婚した場合は200万円、離婚しない場合は100万円が基本となります。そのうえで、以下ご説明する慰謝料を増減させる要素を考慮して慰謝料金額が決まっていきます。

不倫の慰謝料の相場に影響する要素

以下では慰謝料を増減させる要素、またどれくらい増減するのかについてご説明します。

ただし、このどれくらい増減するのかについては、先ほどの200万円と100万円のように弁護士や裁判官に明確な共通認識がありません。そのため、以下の説明は、人によっては多少異なる見解がありうることはご了承ください。

なお、例えば、婚姻期間が長いから20万円増額され、不倫期間が長いから追加で20万円増額され、合計40万円増額されるという考え方ではありません。全ての要素を考慮した結果いくら増減という判断になることにも注意が必要です。

婚姻期間の長短

婚姻期間が数か月から1年など短い場合には、慰謝料金額を減額する方向に考慮されます。例えば、離婚しても場合なら100万円ほどになるでしょう。

婚姻期間が20年以上など長い場合には、離婚したときは慰謝料が増額し、300万円近くになることがありますが、離婚しないときには大きくは考慮されないようです。

これら以外の場合、つまり婚姻期間が2年や5年など非常に短いとも非常に長いともいえない場合には、慰謝料金額にはあまり考慮されないようです。

不倫期間の長短

不倫期間が1週間から1か月など短い場合には、慰謝料金額を減額する方向に考慮されます。例えば、離婚しない場合なら50万から80万円ほどになるでしょう。

不倫期間が10年など長い場合には、慰謝料金額を増額する方向に考慮されます。例えば、離婚しない場合でも200万円ほどになることがあります。

これら以外の場合、つまり不倫期間が1年や2年など非常に短いとも非常に長いともいえない場合には、慰謝料金額にはあまり考慮されないようです。

従前の夫婦関係が悪かった

元々夫婦仲が悪かった場合には、不倫があっても精神的苦痛は大きくないと判断され、慰謝料金額を減額する方向に考慮されます。

例えば、何年もほとんど口を聞いていない家庭内別居の状態にあった場合で、不倫期間が1年ほどで、離婚はしない場合には、慰謝料は50万から80万円ほどになるでしょう。

他方、よく夫婦喧嘩をしていたという程度であれば、いずれの夫婦も大小の喧嘩があるのは自然なことですから、慰謝料金額にはほとんど影響しないでしょう。

なお、既に2年、3年も別居している場合などには法的に夫婦関係・婚姻関係は破綻していると評価される可能性があり、その場合には慰謝料はゼロとなります。

妊娠と出産

夫の不倫相手が妊娠をした場合、出産をしなければ慰謝料にはあまり影響はしませんが、出産した場合には慰謝料を増額する方向に考慮されます。

不倫相手が出産した場合、夫の子として戸籍に乗ることになりますし、養育費を支払うなど不倫相手との関係がずっと続くことになりますので、自ずから妻の精神的苦痛は大きくなります。

この場合、200万円から300万円の慰謝料が認められる可能性があります。

不倫の認否

慰謝料請求をしたところ、証拠はないと考えて不倫相手が不倫を否定してくることがあります。

この場合、訴訟を提起することになりますが、訴訟で不倫の明確な証拠を提出した場合、不倫を否定していた点は50万円ほど慰謝料を増額する方向に考慮される可能性があります。

不倫の継続

不倫の慰謝料を請求されているにもかかわらず、不倫関係を解消しないケースがあります。このような不倫相手の態度は慰謝料を増額する方向に考慮されます。

夫婦が離婚しない場合であっても200万円の慰謝料が認められることがあり、不倫関係の継続は慰謝料を相当増額させる要素といえます。

不倫の慰謝料の相場に実はあまり影響しない要素

インターネット上の情報などで慰謝料に影響を与える要素として説明されているものの中には、実際の裁判ではあまり影響しないものがあります。

以下ではそのような要素についてご説明します。

不倫相手の経済力

不倫相手に経済力があることが慰謝料を増額させる要素として説明されることがあります。過去の判例の中にそのような不倫相手の経済力について触れているものがあったからかと思います。

しかし、そのようなケースは例外的で、原則は、不倫相手の経済力と慰謝料金額は関係がありません。不倫相手がお金持ちだと精神的苦痛が大きくなるという関係にはないからです。

子の有無

不倫をされた配偶者に子がいる場合、慰謝料を増額される要素として説明されることが多いです。

この点については確かに増額させる要素にはなり得ますが、子がいれば常に増額される、大幅に増額されるというわけではありません。

例えば、不倫によって父親の不在が多くなった、あるいは夫婦関係が悪くなったことによって子供の心身に影響が生じたような場合には、それによって精神的苦痛も増大します。

このような場合には増額要素として考慮されますが、10万から30万円ほどの増額にとどまるでしょう。

このように単に子がいるというだけでは不十分で、子がいることによって精神的苦痛をどのように大きくなったのかを主張、立証する必要があります。

不倫の回数や頻度

不倫の回数や頻度についても増額要素として説明されることが多くあります。確かに、例えば、毎日や週に5回会っていたなど非常に回数が多い、頻度が高い場合には増額要素として考慮されるでしょう。

しかし、例えば、週に1回、2回くらいの頻度で会っていた、1年の間に50回会ったということであれば、とりわけ頻度が高いともいえませんので、増額要素にはなりません。

要するに、回数だけをカウントしても増額要素にはならず、性交渉を含めた不倫の関係性が濃いこと、それによって夫婦関係に与える影響が大きかったことを主張、立証する必要があります。

反対に、年に2、3回会うだけの関係だったという場合には、不倫の関係性が薄く、夫婦関係に与える影響は小さいといえますので、減額要素となります。

うつ病の診断書

不倫の慰謝料請求でよく提出される証拠にうつ病の診断書があります。ただ、一度受診しただけでもうつ病の診断書は比較的容易に発行してもらえることから、診断書を出しただけでは慰謝料はほとんど増額されません。

一度受診しただけでなく通院を継続していれば本当にうつ病になったことの証明になりますので、診断書だけではなく通院を継続していることの証拠を提出しましょう。
これによって10万円から30万円ほど増額される可能性があります。

不倫の慰謝料の相場がわかる判例

不倫の慰謝料を上下させる要素についてご説明してきましたが、ここでは実際の判例を踏まえ、どのようなケースでどれくらいの慰謝料が相場になっているのかについて見てみましょう。

婚姻期間が短い判例

慰謝料 100万円
離婚の有無 離婚調停をして係争中
婚姻期間 7か月
不貞期間 3か月
子の有無 有り
その他 里帰り出産中の不倫。夫婦関係は破綻していると聞かされていた。
コメント 不倫で夫婦関係は破綻しましたが婚姻期間も不倫期間も短期のため100万円にとどまっています。

(東京地判H20.12.26 平成20(ワ)1288)

肉体関係の回数が少ない判例

慰謝料 50万円
離婚の有無 無し
婚姻期間 2年半
不貞期間 2年
子の有無 有り
その他 肉体関係は3回のみ
コメント 不倫期間は婚姻期間に匹敵する長さですが、その間に肉体関係はわずか3回だけであったため50万円と低額になりました。

 

(東京地判H20.10.3 平成19(ワ)33259)

不倫を止めなかった判例

慰謝料 250万円
離婚の有無 離婚調停係属中
婚姻期間 6年
不貞期間 1年
子の有無 有り
その他 訴訟になっても不倫関係を継続
コメント 不倫を継続している点を重く見て250万円と高額になりました。

(東京地判H21.7.23 平成21(ワ)2022)

不倫期間が長い判例

慰謝料 300万円
離婚の有無 離婚予定
婚姻期間 21年
不貞期間 8年
子の有無 有り
その他 特になし
コメント 婚姻期間も不倫期間も長く、夫婦関係を破綻させたことから300万円と高額になりました。

(東京地判H22.7.6 平成21(ワ)36748)

不倫の慰謝料を相場よりも増減させる方法

訴訟では、裁判官の心証をもとに慰謝料金額が決まりますので、相場どおりの慰謝料金額となります。

一方、訴訟になる前の交渉段階では、うまく交渉することによって相場以上の慰謝料を支払ってもらうことができたり、相場以下に支払う慰謝料を下げることができたりします。

そのような相場以上に上げる、相場以下に下げる戦術の一部をご紹介します。

求償権の放棄

まずは、慰謝料減額の戦術としてもっとも正攻法である求償権の放棄です。

まず簡単に求償権についてご説明します。

法律上、不倫の慰謝料は不倫当事者が連帯責任として支払うことになっています。そのため、例えば、不倫相手が慰謝料100万円を支払った場合、そのうちの半分の50万円を交際相手(不倫をした配偶者)に請求することができます。

この慰謝料を支払った後に交際相手に請求できる権利を求償権といいます。

特に不倫をされた配偶者が離婚はせず、かつ夫婦で家計が一緒の場合には、このような求償権を行使されては、不倫相手に100万円を支払ってもらっても、家計から50万円が出ていくことになります。

そこで、不倫をされた配偶者としては求償権を行使するな、求償権を放棄しろと不倫相手に求めることが多くあります。

そのように求められた不倫相手としては、求償権は行使しない代わりに、支払う慰謝料は100万円の半分の50万円にしてもらいたいと交渉をすることになります。

これが慰謝料減額の最も簡単な戦術です。

交際相手の協力

もう一つ、慰謝料減額の戦術をご紹介します。それは不倫をしていた相手、交際相手に金銭的協力を求めるものです。

例えば、慰謝料請求をしてきている配偶者が求償権を放棄しなくて良いと言っている場合に、支払うことになる慰謝料の半分や全額について交際相手に金銭的負担を求めるものです。

このような協力をしてくれるかどうかは交際相手にかかっていますので、協力しないと言われればそれまでですが、協力を得られるケースも多くありますので打診してみると良いでしょう。

訴訟を回避したい

次に慰謝料を相場以上に増額する戦術です。

慰謝料の請求を受けた不倫相手の中にはどうしても訴訟は避けたいという方がいます。そのほとんどの理由は、訴訟になれば、裁判所から書類が送られてきて、一緒に住む親や夫に不倫がばれてしまうことの懸念です。

そのため、不倫相手に配偶者がいる場合や実家に住んでいる場合には、相場以上の慰謝料金額を提示し、その金額以下であれば訴訟にするというプレッシャーをかけていくことで相場以上に増額できるケースがあります。

訴訟をする場合は通常弁護士に依頼をしますので、ご自身で訴訟をすると伝えてもあまりプレッシャーになりません。この戦術をとる場合には弁護士に依頼をして、弁護士から相手に伝えることが必要です。

絶対にやってはいけないこと

相場以上の慰謝料金額を提示し、その金額を支払わないのであれば家族や会社に不倫をばらすと脅すことは絶対にやってはいけません。このようなことをしてしまい警察に逮捕されたケースもあります。

弁護士に依頼せずにご自身で不倫の慰謝料を請求する場合に、ついやってしまいがちなことですが、これだけは絶対にしてはいけません。

交渉で不倫の慰謝料を相場以上に上げた事例と下げた事例

以上ご説明しました戦術を利用した具体的な事例をいくつかご紹介します。

慰謝料600万円の支払いを受けた事例

夫は趣味を通じて知り合った女性との約6年間もの期間、不倫をしていました。ある日夫から不倫を告白され、離婚を求められるとともに、夫は自宅を出ていき別居となりました。

不倫相手にも配偶者と子どもがあり、双方が不倫をするダブル不倫の事例でした。慰謝料相場は150万円から200万円ほどと考えられましたが、依頼者の強い希望で請求金額としては600万円を設定することとなりました。

夫に不倫を知られることを懸念した不倫相手は訴訟になることは絶対に避けたいようで、早期解決を求めていました。慰謝料が高額過ぎるのではないかと疑問はもっていましたが、最終的には誠意を示したいということで、600万円全額を一括で支払うことで話し合い・和解が成立しました。

慰謝料の支払いをゼロにした事例

会社の上司と不倫をしていたところ、その奥さんによって不倫の事実が発覚してしまい、弁護士から慰謝料300万円を請求する内容証明郵便が届きました。

慰謝料の相場は100万円と考えられました。求償権を放棄することで40万、50万円に減額することはできると見込まれました。もっとも、依頼者は20代前半の女性であり預貯金もほとんどなく、一方、不倫相手の上司は40代で経済力のある方でした。

そこで、弁護士から不倫相手に相談をしたところ、奥さんにばれないように支払うことになる慰謝料の全額と、さらに弁護士費用まで工面してくれることになりました。

その結果、依頼者は一切の経済的負担なく奥さんとの和解をすることができました。

まとめ

以上、不倫の慰謝料の相場について解説しました。

不倫の慰謝料問題は請求する側も請求された側も対応によって慰謝料金額は大きく異なってきます。

不倫問題にお悩みの方は、是非、専門弁護士・法律事務所に一度、ご相談ください。

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