暴行罪は逃走しても後日逮捕されないのか?弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月12日
暴行罪は逃走しても後日逮捕されないのでしょうか? 疑問に思われる方もおられるかもしれません。弁護士が解説します。
暴行事件は一般人による現行犯逮捕、被害届提出が通常の流れ
暴行事件が起きた場合、被害者や周囲の人が加害者を取り押さえることが多いです。
法律上、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」とされています(刑事訴訟法第213条)。
そのため、被害者や目撃者などの一般人が加害者を取り押さえる行為も現行犯逮捕ということになります(私人逮捕ともいいます。)。
そして、私人逮捕をした一般人は、現場に臨場した警察官に加害者を引き渡し(引致といいます。)、警察署で被害届を出します。
これが暴行事件で加害者が検挙される通常の流れでしょう。
暴行罪で、どのような後日逮捕があるのか
- 後日、被害届が出ることもあるのか?
- 暴行罪は現行犯以外は捕まらないのか? 後日逮捕はあるか?
- 暴行事件で何年か後から逮捕されることはあるか?後日逮捕までの期間
後日、被害届が出ることもあるのか?
加害者が被害者に暴行を加えた場合に、その時は警察に通報されなかった、あるいは警察に通報はされたものの、その時は被害届が出なかったというケースもあります。
事件当時は被害者は暴力行為を不問に付そうと考えていたが、後日やはり怒りが収まらずに被害届を出すケース、当日は被害届を作成する時間がなかったが、後日警察署を訪れ、被害届が出されるケースなどがあります。
暴行罪は現行犯以外は捕まらないのか? 後日逮捕はあるか?
先ほどご説明しましたとおり、暴行事件は現行犯逮捕が通常です。
もっとも、その場を逃亡した、立ち去った加害者が、後日逮捕されるケースもあります。
被害者が加害者と面識のある場合には犯人を特定することは容易です。また、面識がないケースであっても、犯行現場やその付近の防犯カメラから犯人が特定されるケースも非常に多くあります。
令和元年の統計によれば、暴行罪の検挙率は84.4%です。刑法犯全体の検挙率が39.3%ですから、暴行罪の検挙率は非常に高いといえます。
暴行事件で何年か後から逮捕されることはあるか?後日逮捕までの期間
では、後日逮捕されるときはどれくらいの期間で警察は来るのでしょうか。逆に言えば、どれくらいの期間、警察が来なければ、後日逮捕は無いと考えて良いのでしょうか。
このような弁護士へのご相談は非常によくあります。
法律上は、暴行罪の時効は3年ですから、3年を経過していれば後日逮捕は無いと明確に言えますが、それ未満の期間については明確には言えません。
犯人特定が容易な場合には2,3日で警察が来ることがあります。他方、犯人特定に時間を要したり、警察が他の事件で忙しい場合などには2,3か月後や半年後に警察が来る場合もあります。
このように後日逮捕までの期間は様々ですから、一概にどれくらいの期間警察が来なければ大丈夫とは言えません。
もっとも、警察も速やかに捜査をする義務がありますので、1年ほど待って警察が来なければ後日逮捕は無いと考えて良いでしょう。
暴行罪の後日逮捕が心配な場合は自首をお勧めします
このように後日逮捕されるかどうかは明確ではありません。今日、明日にも警察が来るかもしれないと不安を抱えて生活することは非常に辛いものがあります。
後日逮捕が心配な方には自首することをお勧めします。
自首をしたところ被害届が出ていなかったという場合、簡単に事情聴取をされますが、事件化はせずに終わりということになります。
他方、被害届が出ていた場合、自首をすることで逮捕を回避できる可能性が高まります。
なぜなら、逮捕は逃亡や罪証隠滅を防ぐために行われますが、自ら警察に出頭して犯行を認めている被疑者が逃亡や罪証隠滅をする可能性は低いだろうと警察は考えるからです。
弁護士が一緒に同行し、今後事件を担当する旨を伝えれば、一層、逮捕される可能性は低くなりますので、自首をする際は弁護士と一緒にすることをお勧めします。
このように被害届が出ていた場合も出ていなかった場合も自首をするデメリットは基本的にありません。
確かに、被害届が出ていた場合でかつ、警察が犯人を特定できていなかった場合には、自首をしたことによって犯人が特定されてしまうことになります。
ですが、警察が犯人を特定できているかどうかは知る術がありませんし、後日逮捕を恐れて不安な日々を送ること、犯人が特定されており後日逮捕されるリスクを考えると、警察が犯人を特定できていない可能性に賭けることは合理的な選択とは言えないでしょう。
暴行罪で後日逮捕された場合の流れ、釈放手続き
暴行罪で後日逮捕されたときは、逮捕から48時間以内に警察から検察庁へ事件が送致されます。
そして、検察官が10日間の勾留が必要と判断したときは、そこから24時間以内に裁判官に勾留請求がなされます。
勾留の要件、勾留の必要性があると裁判官が判断したときは、勾留決定がなされて10日間、被疑者は留置所に勾留されることとなります。
そして、10日間では捜査を終えられなかった場合には、最大で10日間、勾留期間が延長され、通常は勾留の最終日に被疑者に対する起訴処分、不起訴処分を検察官が判断することとなります。
このように、後日逮捕をされると最大23日間もの長期間、被疑者は留置所に勾留されることとなりますが、弁護士の活動によって早期に釈放ができるケースが多くあります。
具体的には、弁護士が説得に必要な書類を整えて、検察官、裁判官に対して勾留の要件も必要性もないことを説明して被疑者の釈放を求めます。
傷害罪とは異なり暴行罪は比較的軽微な犯罪ですから勾留を回避できる可能性は十分あります。
一方、暴行罪で勾留されやすいケースは家庭内暴力のケースや恋人間の暴力のケースです。
このようなケースの場合、釈放後に被疑者が被害者に接触を図り、被害届を取り下げるよう迫ったり、自身に有利な供述をするよう被害者に迫ったりする可能性が懸念されるからです。
まとめ
以上、暴行罪の後日逮捕についてご説明しました。
暴行罪の高い検挙率を踏まえますと、後日、検挙される可能性は高いといえます。
後日逮捕、勾留による不利益を考えますと、先ほどもご説明しましたとおり、自首をすることが最善の選択といえます。
そして、自首をした後は、弁護士を通じて被害者と示談をすれば、前科の有無にもよりますが、不起訴処分となる可能性は高くなります。
また、暴行事件は、早期に被害者と示談が成立すれば微罪処分となる可能性もあります。
暴行罪、傷害罪の被疑者となり、自首、被害者との示談交渉を考えている方は刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。