暴行罪の示談は「いつまでに」すべき?逮捕・前科を避けるための期限とポイント

2025年11月11日

暴行罪の示談は「いつまでに」すべき?逮捕・前科を避けるための期限とポイント

「暴行事件を起こしてしまった。示談は、一体いつまでにやれば間に合うのだろうか?」

今、このページをご覧になっている方は、逮捕や前科がつくことを避けたいと強く願っていらっしゃることでしょう。

暴行罪の示談に法的な「期限」は定められていません。しかし、今後の人生に関わる逮捕や起訴を回避するためには、「実質的なタイムリミット」が存在します

その期限とは、検察官によって起訴されるまでの間です。通常、逮捕・勾留された場合、この期間は最大で23日間しか与えられません。この短い期間に示談を成立させられるかどうかが、事件の行方を大きく左右します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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暴行罪の示談に法的な期限はないが、「実質的なタイムリミット」が存在する

暴行事件の示談は、あくまで被害者の方との民事上の和解手続きであり、法律で「いつまで」という期限は定められていません。

しかし、刑事処分を回避・軽減するという目的を達成するためには、3つの「実質的な期限」があります。

フェーズ1:警察から連絡が来る前

  • 目標: 事件が立件される前、または警察が本格的な捜査に乗り出す前に示談を成立させる。
  • 重要性: この段階で被害届の提出を回避できれば、事件そのものが刑事事件化しない可能性が極めて高くなります。弁護士にご依頼いただき、迅速に被害者の方と接触することが最善です。

フェーズ2:逮捕・勾留され「起訴」されるまで(最大23日間)

  • 目標: 検察官が起訴するかどうかを判断する前に示談を成立させる。
  • 重要性: 検察官は示談が成立している事実を重く見て、「被害者の方との間で解決済みである」と判断しやすくなります。これにより、「不起訴処分」となる可能性が飛躍的に高まり、前科がつくことを避けられます。逮捕・勾留期間は最大23日のため、この期間が示談交渉の最も重要なタイムリミットとなります。

フェーズ3:起訴後、裁判が終わるまで

  • 目標: 裁判所による判決が確定する前に示談を成立させる。
  • 重要性: 仮に起訴されてしまった後でも、示談の成立は罰金刑や、執行猶予付き判決など、より軽い処分を得るための情状証拠となります。ただし、この段階では前科を避けることはできません。

 

実質的な期限は、起訴されるまでの最大23日間です。この期限を過ぎると、前科を避するという最大の目的達成が極めて難しくなります。

加害者にとって示談が重要である3つの理由

暴行事件において、示談交渉は刑事手続を有利に進めるために、加害者にとって最重要事項です。

理由1: 不起訴処分による「前科回避」の可能性

示談が成立し、被害者の方が「加害者を許す」という意思を示す示談書(または宥恕(ゆうじょ)文言を含む合意書)を作成できれば、検察官は「あえて刑事罰を科す必要がない」と判断しやすくなります。

これにより、不起訴処分となり、前科がつくことを回避できます

理由2: 逮捕・勾留からの「早期釈放」の可能性

警察に逮捕された場合、最長23日間も身柄が拘束される可能性があります。

示談交渉が進んでいることや示談成立の見込みがあることは、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断され、早期の釈放に繋がる重要な要素となります。

理由3: 被害者の方との「直接交渉によるリスク」の回避

暴行事件の被害者の方は、加害者に対して強い怒りや恐怖心を抱いていることが一般的です。加害者ご自身が示談を持ちかけても、感情的な対立から交渉がこじれ、示談金が高騰したり、交渉自体を拒否されたりするリスクがあります。

弁護士が代理人となることで、冷静かつ専門的な交渉が可能となり、適切な金額で早期解決を目指せます。

暴行事件における「示談金」の相場と内訳

示談を迅速かつ適正に進めるためには、「示談金」の相場を把握することが不可欠です。適切な金額で交渉することが、早期解決の鍵となります。

示談金は、主に以下の3つの要素で構成されます。

慰謝料

被害者の方が受けた精神的苦痛に対して支払われる費用です。

暴行事件の場合、被害の程度に応じて10万円から50万円程度が一つの目安とされますが、怪我の有無や事件の悪質性により大きく変動します。

治療費・休業補償

被害者の方が怪我をされた場合の治療にかかった費用や、怪我によって仕事を休まざるを得なかった場合の収入の補償です。

これは実費を全額補償します。

その他実費

病院への交通費や、破損した物品の修理費などが発生します。

示談交渉を弁護士に依頼した場合の具体的な流れ

示談交渉において弁護士が介入することは、成功への近道です。特にタイムリミットが迫っている場合、その効果は絶大です。

情報収集

弁護士はご依頼を受けると直ちに警察や検察に連絡を取り、事件の状況や被害者の方の連絡先などの情報を確認します。

この初期対応のスピードが命運を分けます。

被害者の方への接触・交渉の開始

加害者ご自身からの連絡を拒否する被害者の方も多いため、弁護士が代理人として示談の意思を丁寧に伝えます。

被害者の方の心情に配慮し、適切な示談金の提示と、示談に応じてもらうための説得を行います。

示談書の作成と署名・捺印

示談金額や支払い方法、刑事処分を求めない意思(宥恕文言)などを盛り込んだ正式な示談書を作成します。

これは、後に裁判になった際、加害者にとって最も強力な証拠となります。

警察・検察への報告

示談成立後、弁護士は示談書を添えて、直ちに警察または検察に報告します。

これにより、検察官が不起訴処分を決定するための重要な材料となります。

【もし間に合わなかったら】起訴された後の暴行罪の処分

実質的な期限である「起訴されるまで」に示談が間に合わなかった場合、検察官は起訴の判断を下すことになります。

起訴された場合、以下のいずれかの処分が下されます。

処分の種類

内容

前科

自由の制限

略式起訴(罰金刑)

裁判は開かれず、罰金を支払って終了。最も多いケース。

つく

身体拘束はされず、社会生活は維持できる。

公判請求(正式裁判)

裁判が開かれ、拘禁刑が求刑される。

つく

有罪判決により刑務所に収容される可能性がある。

示談が成立していれば、罰金刑(略式起訴)で済む可能性が高いですが、示談がない場合は、より重い処分である公判請求(正式裁判)となるリスクが高まります。

まとめ:早い段階で弁護士にご相談ください

暴行罪の示談は、「いつまでに」という法的な期限はありませんが、「前科をつけない」という目的を達成するための実質的なタイムリミットは、起訴されるまでの最大23日間です。

時間経過とともに、示談交渉は難しくなり、刑事処分は重くなる可能性が高まります。

手遅れになる前に弁護士に相談し、最も有利な状態で示談交渉を開始することが、前科回避への最善の道です。

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