暴行罪で逮捕されたら?流れや刑罰を解説

2025年10月27日

暴行罪で逮捕されたら?流れや刑罰を解説

「ついカッとなって手を出してしまった」「トラブルの拍子に相手を押してしまった」——そんなときに成立し得るのが暴行罪です。

暴行事件は逮捕や起訴につながる可能性があり、放置してしまうと前科がつくおそれもあります。

この記事では、暴行罪の定義や刑罰、逮捕後の流れ、前科を避けるための対応、そして弁護士に依頼するメリットについて分かりやすく解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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暴行罪とは?

暴行罪は刑法208条に規定されており、相手の身体に不当に力を加える行為全般が対象になります。殴る・蹴るといった典型的な暴力はもちろん、物を投げつける、体を強く押すなどの行為も「暴行」とみなされる可能性があります。

特徴的なのは「怪我をさせていなくても成立する」点です。仮に怪我を負わせた場合は「傷害罪」に切り替わり、処罰がより重くなります。

暴行罪の刑罰は?

暴行罪は、相手に怪我を負わせていない場合でも成立する犯罪です。刑法208条に規定されており、「2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」が法定刑とされています。

ここでいう「拘留」とは、1日以上30日未満の期間、刑務所などに収容される刑罰で、懲役や禁錮に比べて軽い身柄拘束の処分です。また「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭を納める軽い財産刑を指します。

ただし、同じ暴行でも被害の内容や状況によって処分の重さは変わります。初犯で被害が軽く、被害者と示談が成立している場合には、罰金刑や不起訴となることもあります。一方で、行為が悪質だったり、被害者に大きな精神的負担を与えたりした場合には、執行猶予付き判決や実刑が言い渡される可能性も否定できません。

さらに、暴行の結果として相手に怪我をさせた場合は「傷害罪」となり、刑罰は一段と重くなります。傷害罪の法定刑は刑法204条に定められており、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。状況次第では、初犯でも実刑判決に至る可能性があります。

したがって、暴行罪は「怪我がないから軽い」とは限らず、事件の内容や被害者の意向によっては思いのほか重い処罰が科される点に注意が必要です。

暴行罪で逮捕された後の流れ

暴行事件で逮捕されると、その後は刑事手続きに沿って進んでいきます。大まかな流れは以下のとおりです。

逮捕から送検まで

逮捕されると、まず警察署の留置場に収容され、取調べを受けます。警察は逮捕後48時間以内に、事件と身柄を検察官に送致しなければなりません。これを「送検」といいます。

勾留請求と裁判所の判断

送検を受けた検察官は、被疑者を釈放するか、それとも勾留を請求するかを24時間以内に判断します。勾留請求がなされると、裁判所で「勾留質問」が行われ、裁判官が勾留の必要性を審査します。逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、10日間の勾留が決定します。

勾留延長の可能性

事件の内容によっては、10日間で捜査が終わらないこともあります。その場合、検察官が延長を請求し、裁判所が認めれば、さらに最長10日間の勾留延長が可能です。つまり、勾留から最長20日間身柄を拘束される可能性があります。

起訴・不起訴の判断

勾留期間が満了するまでに、検察官は事件を起訴するか、不起訴にするかを決めます。暴行罪は比較的軽い罪であり、被害者との示談が成立していれば不起訴処分となることもあります。逆に示談ができていない場合や悪質な態様が認められる場合は、起訴され裁判にかけられる可能性が高まります。

起訴後の手続き

起訴されると被疑者は「被告人」となり、原則として勾留は続きます。ただし、弁護士が保釈を請求し、裁判所に認められれば保釈金を納めて釈放されることもあります。裁判では、罰金刑や執行猶予付き判決で釈放されるケースもあれば、実刑判決で刑務所に服役する場合もあります。

暴行罪で前科を付けないためには

暴行事件を起こしてしまうと、暴行罪や場合によっては傷害罪に問われ、裁判になれば前科がつく可能性があります。しかし、適切な対応を早期に取ることで、不起訴処分となり前科を避けられるケースも少なくありません。特に重要となるのは、次の2点です。

すぐに弁護士へ相談すること

逮捕前・逮捕後を問わず、早い段階で弁護士に相談することが不可欠です。

弁護士は事案の内容に応じて最善の対応策を助言し、示談交渉や自首の是非などを具体的に判断してくれます。もし身柄拘束を受けている場合には、弁護人として選任することで、接見に来てもらったり、釈放に向けた活動をしてもらえたりします。

自分ひとりで動ける範囲は限られているため、専門家の力を借りることが前科を避けるための第一歩です。

できるだけ早く被害者と示談を成立させること

暴行罪は被害者の意向が検察官による起訴・不起訴の判断に大きな影響を与える犯罪です。示談が成立すれば、検察官が不起訴とする可能性が高まります。

被害届提出前に示談できれば、被害届が出されずに事件化を防げることもあります。被害届提出後であっても、起訴前に示談が成立し、被害者から被害届の取下げや処罰を望まない旨の嘆願書を得られれば、不起訴処分となる可能性が大きく高まります。

ただし、示談交渉は時間がかかるものです。身柄拘束された場合は最長で23日程度しか捜査期間がなく、その間に結論が出てしまいます。したがって、事件直後から迅速に示談交渉を始めることが極めて重要です。

弁護士に相談するメリット

暴行事件を起こしてしまった場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが非常に重要です。弁護士に依頼することで、以下のような具体的なメリットが得られます。

示談交渉を安全かつ円滑に進められる

被害者が知人や同僚などの場合、当事者同士で直接やり取りをしてしまうケースもあります。しかし、感情的な対立から話し合いがこじれ、かえって解決が遠のいてしまうことも少なくありません。

弁護士が代理人として間に入れば、被害者との交渉がスムーズに進み、逮捕や起訴を避けられる可能性も高まります。示談が成立すれば、不起訴処分につながることも多く、早期解決に直結します。

職場や学校への影響を最小限にできる

暴行事件が職場や学校に知られてしまうと、解雇や退学といった重い処分を受けるリスクがあります。弁護士が介入することで、処分が過剰にならないよう適切に対応を求めることが可能です。

また、本人が説明しても信用してもらえない場面でも、弁護士が法的根拠に基づいて説明することで、主張が正しく受け止められる可能性が高まります。

勾留回避や早期釈放に向けた活動

逮捕された場合、弁護士は勾留の必要がないことを意見書などで主張し、身柄解放に向けて働きかけます。これにより、長期間の身柄拘束を避けられる可能性があります。

裁判に備えた防御活動

起訴され裁判に進んだ場合でも、弁護士が付いていれば、情状を有利にするための証拠や反省文の準備など、処分を軽くするための具体的な活動が可能です。

よくある質問(FAQ)

Q:暴行罪で逮捕されたら必ず起訴されますか?

いいえ。被害者との示談や宥恕(処罰を望まない意思)があれば不起訴となる可能性もあります。

Q:暴行罪と傷害罪の違いは?

暴行罪は相手に怪我がない場合に成立し、怪我をさせた場合は傷害罪となります。傷害罪の方が重い処罰の対象です。

Q:示談金の相場はどのくらいですか?

被害の程度や状況によりますが、数万円〜数十万円程度が一般的です。長期の治療が必要な場合や仕事に支障が出た場合は高額になることもあります。

Q:前科が付くと就職に影響しますか?

公務員や資格職では不利になることがあります。不起訴処分や起訴猶予を得て前科を避けることが重要です。

Q:家族が逮捕された場合すぐに会えますか?

逮捕直後は原則として家族の面会はできません。弁護士であればすぐに接見可能です。

まとめ

暴行罪は怪我がなくても成立する犯罪であり、勾留後は最長20日間勾留される可能性があります。

しかし、被害者との示談や弁護士による弁護活動によって、不起訴や罰金刑で済み、前科を避けられる場合もあります。

重要なのは「早期の対応」と「弁護士への相談」です。事件後の行動次第で結果は大きく変わるため、できるだけ早く専門家に相談することを強くおすすめします。

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