送骨供養サービスについて

最終更新日: 2023年11月17日

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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送骨供養サービスとは

近時、遺骨(焼骨)を郵送すると、お寺が納骨、供養をしてくれる送骨供養サービスが広がりを見せています。

菩提寺が遠方のためなかなか遺骨(焼骨)を持参できないという方や、高齢のため遠方へ移動することが困難という方、墓じまいをした後に改葬先に遺骨(焼骨)を郵送したいという方などに利用されているようです。

また、新型コロナウィルス感染症の流行、緊急事態宣言のために遠方の菩提寺まで遺骨(焼骨)を持っていくことができないという理由で利用する方も増えたようです。

多くのお寺は、宗旨宗派不問、管理費・年会費・永代供養料込みで2、3万円ほど安価な料金で送骨供養サービスを提供しています。

多くの配送業者がありますが、法律、約款の関係上、現在、遺骨(焼骨)の配送ができるのは日本郵便のみです。ですから、遺骨(焼骨)はゆうパックで送ることになります。

最近は、遺骨(焼骨)を安全に送るための送骨キットを販売している業者もあります。

送骨供養サービスの内容でお寺が留意したいこと

全国を対象とした送骨供養サービスを始めるために納骨堂の経営許可申請をしたところ、行政から経営不許可処分を出されたことから、同処分の取り消しを求めて寺院が提訴した判例があります(高松高裁H26.3.20)。

この事案で裁判所は、宗旨宗派不問としていること、殊更に安価であることや簡易な手続きを強調していることなどを捉えて、寺院の送骨供養サービスが商業主義的との印象があると指摘しました。

また、受入可能数を明示せず当該地域及び当該寺院と何ら縁のない遺骨を無制限に募っているとみられかねない事情などを指摘し、当該地域の風俗習慣等に照らして地域住民の宗教的感情に適合しないとの行政の判断は不合理とはいえないとして、経営不許可処分を適法と判断しました。

このように送骨供養サービスを実施するときには、過度に商業主義的印象を与えず、地域の宗教的感情にも配慮したサービス内容、宣伝方法とすることが無用なトラブルを回避するために留意したいところです。

送骨供養サービスの手続きでお寺が留意したいこと

法律上、墓地管理者は、改葬許可証や火葬許可証を受理した後でなければ、遺骨(焼骨)を墳墓に埋蔵、納骨堂に収蔵してはならないことになっています(墓地埋葬法第14条)。

送骨供養サービスは、インターネットや電話での受付で行われます。住職が面談しないことから、住職と申込者との関係は希薄で、申込者がどのような方であるのか、よく把握することは困難です。

そのため送られてきた荷物を開けてみると大事な改葬許可証や火葬許可証が入っておらず、申込者に電話をしてもなかなか繋がらないという事態が考えられます。

そのような事態になるとお寺は送られてきた遺骨(焼骨)を納骨することができません。また最悪の場合、送り主の住所が適当に記載されており、送られてきた遺骨(焼骨)を返送することもできないという事態になりかねません。

このような事態を防ぐために、慎重な手続をとるべきです。

具体的には、各種書類と遺骨(焼骨)を一緒に送ってもらうのではなく、まずは各種書類を送ってもらい(あるいはデータをメールしてもらい)、不備がないことを確認してから遺骨(焼骨)を送ってもらうようにするべきです。

また、そのような段階的な手続をとりながらもそれを無視して遺骨(焼骨)を送ってこられてしまう可能性がありますので、受付の時点で、もしそのようなことがあった場合には、一定期間経過後に所有権放棄とみなし、廃棄処分することを警告することも検討すべきでしょう。

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