大麻事件で逮捕された場合の釈放までの期間を解説

最終更新日: 2022年05月24日

大麻事件で逮捕された場合の釈放までの期間を解説

  • 大麻所持で逮捕されたらいつ釈放されるのか
  • 大麻所持で逮捕されたら弁護士は何をしてくれるのか
  • 大麻所持で逮捕されたら家族として頼れる弁護士の見極め方を知りたい

自分自身や家族が大麻所持で逮捕されてしまったら、そのまま有罪判決を待つしかないのか、釈放されるようなことは今後あるのだろうか、と逮捕後にどうなってしまうのか不安を感じている人もいることでしょう。

また、逮捕された被疑者の家族も、被疑者のために頼れる弁護士がいてくれれば心強いのにと、弁護士の見極め方を知りたいと望んでいる人もいるでしょう。

そこで今回は、数多くの薬物事件を解決に導いてきた実績のある弁護士が、大麻を所持していたら必ず逮捕されるのか・逮捕されたらいつ釈放されるのか、逮捕された場合に弁護士は何をしてくれるのか・本人や家族が頼れる弁護士を見極めるときののポイントなどについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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大麻事件での逮捕や逮捕期間を知る前に必要な知識

大麻の所持での逮捕・逮捕期間を知る前に必要な知識として、以下の2つについて解説します。

  • 大麻の所持は原則逮捕?
  • 大麻所持に適用される法律

1つずつ解説します。

大麻の所持は原則逮捕?

1つ目は、大麻の所持は原則逮捕なのか?についてです。

ここで、大麻取締法違反の罪について、逮捕関係の統計を確認しておきましょう。

令和2年版犯罪白書(令和元年の統計。以下「犯罪白書」という)によれば、大麻取締法違反の罪の「逮捕関係」は、総数6,237人、逮捕されない者が2,288人、警察等で逮捕後釈放が44人、警察等で逮捕・身柄付送致が3,905人、検察庁で逮捕が0人、身柄率(逮捕された割合)が62.6%となっています。

上記の数字から、逮捕されないまたは逮捕後釈放となる割合は36.8%(2,332人)と計算できます。

算出した数字から考えると、原則逮捕とまではいえないでしょう。しかし、薬物犯罪は密行性が高いため、捜査の初期段階ではわからないことが多いです。そのため、罪証隠滅や関係者との口裏合わせをさせないために、逮捕に至るケースは決して少なくありません。

逮捕されないケースとしては、相当の嫌疑があっても逃亡や罪証隠滅のおそれがない場合や逆に嫌疑はあるものの証拠が弱い場合です。逮捕は、捜査をする上で身柄を確保しておく必要のあるときに行われます。

大麻所持に適用される法律

2つ目は、大麻所持に適用される法律についてです。

大麻所持に適用される法律は、大麻取締法という法律です。大麻取締法の第24条の2には、大麻を所持した者は「5年以下の懲役に処する」と規定しています。

所持とは、大麻を管理し実力支配に置くことをいいます。たとえば、大麻を家や車に保管したり、カバンに入れて携帯していた場合です。

 大麻事件での逮捕から釈放されるまでの期間は?逮捕から釈放までの流れも解説

大麻所持での逮捕から釈放されるまでの期間はどのくらいなのでしょうか。その期間について、逮捕から釈放されるまでの流れと合わせて解説します。

逮捕から釈放されるまでの流れは以下です。

  1. 逮捕
  2. 連行・取調べ
  3. 留置施設での勾留
  4. 10日間の勾留期間延長も可能
  5. 起訴・不起訴の処分

1つずつ解説します。

逮捕

1つ目は、逮捕です。逮捕には、現行犯逮捕・後日逮捕(通常逮捕)・緊急逮捕の3種類があります。

【現行犯逮捕】
現行犯逮捕とは、逮捕状なくして現行犯人を逮捕することをいいます。現行犯人とは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」を意味します。

たとえば、職務質問を受けた人が尿を任意提出し、その尿から陽性反応が出て、大麻所持の疑いが出たとします。そうすると大麻所持の疑いで捜索が実施され、大麻が発見されたことにより、その人を逮捕する、という事案が該当します。

【後日逮捕(通常逮捕)】
後日逮捕(通常逮捕)とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、検察官・検察事務官または司法警察職員が裁判官のあらかじめ発する逮捕状により被疑者を逮捕することをいいます。

たとえば、親が子どもの隠していた大麻を警察に持参した場合、子に大麻所持の嫌疑があるとして子に対する通常逮捕状が発付され、この逮捕状により子を後日逮捕する、という事案が該当します。

【緊急逮捕】
緊急逮捕とは、検察官・検察事務官または司法警察員が、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに」、その理由を告げて被疑者を逮捕することをいいます。

たとえば、A氏が遊び仲間のB氏に大麻を見せた後、大麻をカバンに入れてその場を立ち去ったということがあったとします。

B氏は警察に連絡し、A氏の年齢・身長・体形・服装・大麻が入っているカバンの色や形状などを告げます。そして直ちに駆けつけた警察官が付近にいたA氏に対し、大麻所持の罪の嫌疑が充分であること、および急速を要する状況があることを告げてA氏を逮捕する、という事案が該当します。

緊急逮捕した後は直ちに逮捕状の発布を求める必要があります。

連行・取調べ

2つ目は、連行・取調べです。

まず、司法警察員は、逮捕した被疑者に対して「直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え」ます。そして留置の必要があると判断した場合は、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に書類および証拠物とともに被疑者を検察庁に連行して、検察官に送致する手続きをとります。

次に検察官は、司法警察員から送致された被疑者を受け取ると、「弁解の機会を与え」、留置の必要があると判断した場合は、被疑者を受け取ったときから24時間以内、かつ最初に被疑者が身体を拘束されたときから72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留を請求します。

被疑者は、逮捕された後、司法警察職員や検察官から取調べを受けます。

留置施設での勾留

3つ目は、留置施設での勾留です。

裁判官は、検察官の勾留請求を受け、被疑者に対し勾留質問を行って、その当否を審査します。被疑者に罪を犯した疑いがあり、住居不定や罪証隠滅・逃亡のおそれがある場合、捜査上で身柄の拘束が必要だと判断したときは、10日間の拘束を認める勾留決定をします。

被疑者勾留の場所は、警察署に設置された留置施設に留置されるのが原則化しています。

10日間の勾留期間延長も可能

4つ目は、10日間の勾留期間延長です。勾留期間は最長10日間の延長が可能となっています。

検察官は、事件の複雑・困難、証拠収集の遅延・困難、期間満了時における起訴不起訴決定の困難など、やむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留期間の延長を裁判官に請求します。裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留期間の延長を決定できます。

大麻所持の罪についても10日間の勾留期間延長が可能であり、勾留請求の日から最長20日間の勾留となる場合があります。逮捕による最大72時間の拘束時間を合わせると、身柄拘束期間は最長で23日間となります。

起訴・不起訴の処分

5つ目は、起訴・不起訴の処分です。

検察官は、原則として10日間の勾留期間内あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、起訴・不起訴を判断しなければなりません。

検察官は、受理した大麻所持事件の被疑事実について、的確な証拠に基づき有罪判決が得られる見込みが高い場合は、原則として起訴することになります。

一方で、検察官は起訴しない場合には被疑事実について、「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、それぞれ不起訴の処分をします。

大麻事件での逮捕期間中に弁護士ができること

大麻所持での逮捕期間中に弁護士ができることについて解説します。

被疑者は、逮捕された場合、警察署の留置施設といった場所に留置され、その逮捕中は家族とも面会できず、外部との連絡もできなくなります。

しかし、弁護士は被疑者の逮捕中も被疑者と自由に面会することができ、着替え・書籍・現金などを差し入れることができます。

弁護士は依頼があると早期に被疑者と面会し、大麻所持の事実関係を確認した上、身体の拘束が続く場合の手続きを説明します。そして、今後の法的手続きの予定・家族からの伝言を伝えるとともに、被疑者から家族への伝言などを仲介します。

さらに、弁護士は被疑者に対し、その時点で可能であれば起訴・不起訴や判決の見通しを伝えるとともに、取調べを受けるにあたってのアドバイスをします。

そして、弁護士は逮捕後の早期釈放に向けて、また起訴後の執行猶予・無罪を勝ち取るため、以下のような弁護活動を行います。

【司法警察員に対する働きかけ】
弁護士は、司法警察員に面談を申し入れ、被疑者が事実関係を素直に認めている・定まった住居がある・罪証隠滅や逃亡のおそれがない旨を訴えて、被疑者を釈放するよう働きかけます。

【検察官に対する働きかけ】
弁護士は、被疑者が勾留請求される前に検察官に面談を申し入れ、被疑者の「捜査機関から出頭要請があれば、必ず出頭する」旨の誓約書、身元引受人の「釈放された場合には、被疑者を監督し、捜査機関からの出頭要請に応じて被疑者を出頭させる」旨の身元引受書、弁護士の主張を記載した意見書を提出し、勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留請求をしないように働きかけます。

【裁判官に対する働きかけ】
検察官から勾留請求がなされた場合には、担当裁判官に面談を申し入れ、誓約書、身元引受書および意見書を提出し、勾留の理由や必要性がないことを訴えて、勾留決定をしないように働きかけます。

【勾留決定や勾留期間延長決定に対する準抗告(不服申立て)】
弁護士は、勾留決定がなされた場合には、その取消を求めて準抗告を申し立てます。この申立てにより、勾留が取り消されると即時、釈放となります。

【職場や学校に対する対応】
大麻所持のような事件は報道される可能性があります。その場合には、氏名が明らかにされてしまうことは避けられません。

一方で報道されなかった場合、警察が逮捕を職場や学校に知らせることは原則的にありません。しかし、職場や学校に知られないようにすることは、身柄拘束が長引けば長引くほど難しい対応になります。そのため、経験を積んでいる専門の弁護士に依頼することで、弁護士が責任をもって職場や学校に対する対応をします。

最も理想なのは、逮捕を職場や学校に知られずにスムーズに社会復帰できることです。そのためには、弁護士が早期の身柄釈放に動いてくれることがポイントになります。

大麻事件による逮捕期間中は家族から弁護士への相談がおすすめ

大麻所持による逮捕期間中は、家族から弁護士への相談がおすすめです。

被疑者が逮捕に引き続き勾留となれば、身体拘束が長くなるため解雇や退学の危険が高まります。しかし、勾留に至る前の段階で被疑者が釈放されることになれば、その不利益は最小限にとどめることができます。

そのためには、勾留をしなくても捜査に支障がないことを検察官や裁判官に理解される必要があります。検察官や裁判官に働きかけて、勾留の理由や必要性がないことを理解させられるのは、大麻事件の対応に慣れた専門の弁護士が強いといえます。

まず家族の方が、被疑者の逮捕直後の段階で弁護士に相談することが重要です。そして弁護士から、勾留不要の旨を訴えてもらいます。それが理解されれば、早期の釈放が実現することができます。また、勾留に至らない措置を講じてもらうことも可能になります。

また、弁護士は公判廷での弁護活動を通じて、事実関係に争いがなければ執行猶予付判決が得られるように情状立証に力を入れます。大麻を所持していないとして事実関係を争い、冤罪を主張する場合には無罪判決を目指してくれるでしょう。

大麻事件での逮捕期間中の家族に託す弁護士依頼 頼れる弁護士の見極め方

大麻所持での逮捕期間中で家族に弁護士依頼を託すときの頼れる弁護士の見極め方は、以下の3つです。

  • 依頼したら即日で弁護活動を開始してくれる
  • 不安になったらいつでも連絡できる
  • 不起訴を諦めず一緒に闘ってくれる

1つずつ解説します。

依頼をしたら即日で弁護活動を開始してくれる

頼れる弁護士の見極め方の1つ目は、依頼したら即日で弁護活動を開始してくれることです。

逮捕されている場合、最短での釈放を目指すためには初動をいち早くする必要があります。家族が依頼すれば、即日で弁護活動を開始し、被疑者の釈放に向けて手を尽くしてくれる弁護士こそ、頼れる弁護士といえます。

不安になったらいつでも連絡できる

頼れる弁護士の見極め方の2つ目は、不安になったらいつでも連絡できることです。

被疑者の家族を含めた多くの方は、法律の資格も知識もないため、逮捕中の被疑者に対する対応には困難を伴い不安な気持ちにもなることでしょう。不安になった場合に、弁護士直通の携帯電話を教えてくれる、いつでも連絡できる、家族の不安を受け止めてくれる、といった弁護士が頼りになるといえます。

不起訴を諦めず一緒に闘ってくれる

頼れる弁護士の見極め方の3つ目は、不起訴を諦めず一緒に闘ってくれる、についてです。

令和2年版犯罪白書によれば、大麻取締法違反の罪については、起訴率50.6%、不起訴率49.4%(うち起訴猶予率35.7%)となっています。

この不起訴率をふまえると、逮捕後の厳しい時間制限の中で早めに手を打つことが求められます。被疑者やその家族の心情に思いを馳せ、親身になって不起訴を諦めずに一緒に闘ってくれる弁護士こそ、頼れる弁護士なのです。

まとめ

今回は、数多くの薬物事件を解決に導いてきた実績のある弁護士が、大麻を所持していたら必ず逮捕されるのか・逮捕されたらいつ釈放されるのか・逮捕された場合弁護士は何をしてくれるのか・本人や家族として頼れる弁護士の見極め方のポイントなどについて解説しました。

逮捕を免れたり、逮捕後の早い段階で釈放されたり、不起訴処分で終わるためには弁護士の力添えが欠かせません。逮捕された被疑者はもちろん、その家族の方でも、今後のことに少しでも不安を感じているのであれば一度専門の弁護士に相談してください。

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