現金のみの置き引きをした場合に問われる罪は?流れ・すべきことを解説

最終更新日: 2023年09月13日

現金のみの置き引きをした場合に問われる罪は?流れ・すべきことを解説

  • 現金を置き引きしただけで、大きな罪になるのだろうか
  • 置き引きをして逮捕されてしまったら、いきなり法廷で裁かれるのだろうか
  • 弁護士に弁護を依頼すれば、どのようなメリットがあるのだろう

置き引きとは、他人が少し目を離したすきや、他人の忘れ物・落とし物等を持ち去り、自分の物とする犯罪です。置き引きの対象が何であろうと、重い罪に問われる可能性があります。この犯罪を行ってしまった場合、まずは弁護士に相談し、今後の対応を検討した方がよいでしょう。

そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、現金を置き引きした場合の罪、逮捕される前・逮捕された後に期待される弁護士の活動等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 現金を置き引きすれば「遺失物等横領罪」または「窃盗罪」に問われるおそれがある
  • 弁護士は被害者との示談交渉等を行う
  • 逮捕される前から弁護士に相談し対応策をとれば、逮捕を回避できる可能性もある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

現金のみの置き引きでも罪に問われるのか

貴金属・宝石、骨董品や現金だけではなく、バッグや傘のような日常的によく使用する物であっても、無断で他人の物を持ち去れば置き引きという犯罪行為です。

置き引きで有罪となれば、次のような犯罪に問われ刑罰を受ける可能性があります。

  • 遺失物等横領罪:他人の忘れ物を持ち去る犯罪、有罪となれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料に処される(刑法第254条)
  • 窃盗罪:他人の目を盗んで物を窃取する犯罪、有罪となれば10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される(刑法第235条)

特に窃盗罪で有罪が確定すると、最長10年の懲役刑が言い渡されるおそれもあります。

出典:刑法|e-GOV法令検索|法務省

現金のみの置き引きで逮捕された後に起きること

現金のみの置き引きであっても警察官が犯行を目撃したら、犯人を取り押さえ現行犯で逮捕します。 被害者が被害届を提出すれば、警察は捜査を開始する可能性があり、監視カメラ等の映像から犯人を特定し、後日逮捕されるケースも想定されます。

置き引きの被疑者として逮捕された場合、次のような流れで手続きが進められます。

  1. 取り調べ:警察署で警察官から置き引きした経緯を質問される。
  2. 送検(身柄送検):警察は被疑者を48時間以内に、関係書類・証拠物と共に検察官へ送る。
  3. 勾留:最長20日間にわたり、留置施設・拘置所へ引き続き拘束される。ただし、検察官が送検されてから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に行った勾留請求を、裁判所が認めなかった場合は解放される。
  4. 起訴・不起訴:検察官が最終的に起訴(被疑者を刑事裁判にかける)か、不起訴(刑事裁判にかけないか)を決める。

なお、起訴されてしまった場合、99%の確率で裁判所から有罪判決が言い渡されています。

現金のみでも置き引きをしたらすべきこと

置き引きをして有罪となり、遺失物等横領罪・窃盗罪のいずれで裁かれるとしても、最悪の場合、懲役刑に処される可能性があります。

懲役刑になれば、受刑者として刑事施設に収容され、強制的に労働へ従事しなければいけません。自分や家族に深刻な事態が及ぶ可能性もあります。

そのため、逮捕されたとしても不起訴や減刑を目指し、自分・家族への影響を最低限に抑える対策が必要です。

弁護士への相談

置き引きで逮捕されそうだ、または自首をしたいというとき、弁護士にまず相談しましょう。

刑事事件に詳しい弁護士ならば自首の手順、取り調べのときの返答のコツ等をいろいろ教えます。

なるべく早く弁護士(私選弁護人)に弁護を依頼しておいた方が、たとえ逮捕されても、すぐに弁護士を呼べます。

もしも弁護士へ依頼する前に逮捕されてしまったら、家族から弁護士に依頼してもらいましょう。

逮捕直後でも弁護士との面会は認められており、早い段階で今後の話し合いができるので安心です。

示談交渉

被害者が判明している場合、弁護士は示談交渉を進めます。

被害者は自分の現金を盗んだ犯人と会いたくないかもしれません。しかし、弁護士との交渉には応じてもらえる可能性があります。

弁護士はまず加害者が謝罪している旨を告げ、示談の条件や示談金額を提示するでしょう。

被害者が示談の内容に納得したら、合意書を取り交わし、加害者は示談金額の支払い、被害者は被害届の取り下げ等を進めます。

被害弁償

被害弁償とは被害回復の方法です。置き引きの場合は、盗んだ現金と同額、または盗んだ物に相当する額の金銭を支払えば、被害弁償を果たしたといえます。

しかし、盗んだ現金や物を返せば、置き引きの罪が消えるわけではありません。

被害弁償をするだけでは被害者が示談に納得しない場合もありますし、置き引きを常習的に行っている犯人なら、検察官から起訴されてしまう可能性が高いです。

被害者との示談を成立させるには、被害と同額の弁償を行うだけではなく、加害者の誠心誠意の謝罪と、謝罪の意を上乗せした示談金額が必要となるでしょう。

現金のみの置き引きに対して弁護士が行う支援内容

置き引きした本人が逮捕されそうな場合、早めに弁護士へ相談・弁護を依頼していれば、迅速に弁護者は不起訴や減刑の活動を進めていきます。 期待される弁護士のサポートは主に次の通りです。

逮捕回避

置き引きした本人が自首をすれば、捜査機関は「逮捕の必要性はない」と判断し、逮捕回避も期待できます。

逮捕が必要なのは、被疑者の逃亡や、罪証隠滅をするおそれがあると判断されたケースです(刑事訴訟規則第143条の3)。

ただし、逮捕されなくても罪が免責されたわけではありません。本人は在宅のまま、刑事手続きが進められます(在宅捜査)。

なお、置き引きした本人が弁護士同伴で自首したならば、弁護士が置き引きの経緯を説明します。

出典:刑事訴訟規則 | 裁判所

前科防止

弁護士は示談成立を目指して、被害者側と交渉をします。示談成立後、合意書に「被害者は加害者を許す」等の文言があれば、すでに被害者と和解したと検察官へアピールできます。

検察官はたとえ置き引きした本人が訴訟要件を満たしていたとしても、

  • 本人が真摯に置き引き行為を反省し、捜査に協力していた
  • 軽微な犯罪といえる
  • すでに被害者と和解が成立している

という事情を考慮し、前科がつかない起訴猶予(不起訴)にする可能性が高いです。

周りに知られずに解決

本人が在宅捜査となった場合、弁護士は本人の家族や近所の人達に置き引きの事実を知られず、示談交渉等を進められます。

本人の希望により、弁護士は可能な限りメール等のやり取りで進捗状況の報告、話し合いを進めます。

もちろん家族が誰もいない間に、直接弁護士が自宅へうかがい、今後の対応の確認、新たな取り決め等を話し合っても構いません。

誰にも知られず、穏便に問題解決を図れる可能性があります。

まとめ

今回は多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、たとえ現金だけを置き引きしても重い罪になる可能性がある点、不起訴や減刑を目指す方法、弁護士を立てる有効性等について詳しく解説しました。

可能な限り早めに置き引きした事実を弁護士に相談し、的確な対応をとれば、不起訴処分を得られる場合がある他、家族や近所に知られず解決できる可能性もあります。

しかし、よい結果へつなげるには、まず置き引きした本人が真摯に反省し、被害者への謝罪、示談を成立させる他、捜査への全面的な協力が必要です。

置き引きを深く後悔したなら、弁護士に相談し穏便な解決を図ってみてはいかがでしょうか。

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