再婚したら養育費はどうなる?免除や減額になるケースについて解説

最終更新日: 2024年09月13日

再婚したら養育費はどうなる?免除や減額になるケースについて解説

再婚は人生の大きな転機ですが、同時に養育費に関する疑問も生じます。再婚によって養育費が免除や減額になるケースはあるのでしょうか?

この記事では、再婚によって養育費がどのように変化するのか、具体的なケースを交えて解説します。

そもそも養育費とは?

まずは、養育費の基本的な知識をおさえましょう。

養育費とは、離婚によって親と子が離れて暮らすことになった場合、子どもを養育する親に対して、もう一方の親が支払うお金のことです。子どもが健やかに成長するために必要な衣食住、教育費などをまかなうための費用です。

養育費を支払う側の義務

親は、子どもが社会的に自立するまでの間、衣食住の提供や教育、医療など、生活全般にわたって扶養する義務があります。

たとえ経済的に苦しい状況であっても、養育費の支払いを免れることはできません。養育費は、原則として子どもが成人するまで支払う必要があります。

養育費を受け取る側の権利

子どもを監護する親は、もう一方の親に対して養育費を請求する権利があります。

受け取った養育費は、子どもの福祉のために自由に使うことができます。子どもが安心して成長できるよう、養育費は将来にわたって安定的に受給することが重要です。

再婚したら養育費はどうなるのか?

離婚を話し合うときに、親権の帰属や財産分与、慰謝料、面会交流とともに、子どもの養育費をどうするかも大切な決定事項です。

養育費とは、子どもが成人して自立するまでの子育てに要する費用です。こちらでは、離婚後に養育費を受け取る側・支払う側が再婚した場合、養育費がどうなるのかを解説します。

養育費の支払い義務はなくならない

離婚後、養育費を受け取る側・支払う側が再婚した場合、養育費を減額・免除しなければならない、という法律の規定はありません。

法律では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と明記されています(民法第877条第1項)。

未成年の子どもに対する法律上の扶養義務がある限り、再婚後も当然に養育費を支払い続ける必要があります。

状況によっては減額等のケースも

一度、養育費について取り決めをしたからといって、全く変更できないわけではありません。「事情の変更」により減額等が認められる可能性もあります。

再婚後に事情が変更した例としては、支払義務者が未成年の子どもと養子縁組をした、新しく子どもが誕生した、扶養家族の増減等が該当します。

ただし、養育費を支払う側は事情の変更があったと勝手に判断し、一方的に養育費の減額や不払いを行ってはいけません。養育費の減額や免除を希望するのであれば、受け取る側との協議や、法定された手続きを進める必要があります。

再婚して養育費の免除や減額が認められるケース

養育費を受け取る側・支払う側が単に再婚しただけでは、養育費の減額や免除は認められません。

しかし、受け取る側・支払う側に事情の変化があれば、減額や免除が可能な場合もあります。

支払う側(通常父)が再婚した場合

生活費の変化

支払う側が再婚し、再婚相手との間に子どもができた、再婚相手の連れ子と養子縁組をした等、扶養家族が増えた場合、養育費の減額等が認められる可能性があります。

なぜなら、新たに誕生した子どもも、養子縁組で養子となった子どもも、しっかり扶養する義務があるからです。

ただし、再婚相手の連れ子と養子縁組をしていない場合は、扶養義務は発生しないので、養育費の減額は困難です。

収入減少

これは再婚に限らずですが、失業、病気、怪我などにより、収入が大幅に減少し、生活が困難になった場合も、養育費の減額が認められる可能性があります。

受け取る側(通常母)が再婚した場合

養子縁組

養育費の支払いを受ける側の親が再婚した後、再婚相手と子どもが養子縁組をすれば、養育費の免除が認められる可能性があります

なぜなら、養親となった再婚相手が子どもに対し第一次的な扶養義務を負うからです。その結果、実親(養育費を支払う親)は第二次的な扶養義務者となります。

ただし、養親となった再婚相手が病気やケガ等で働けないという状態では、免除や減額は認められない場合があるでしょう。

また、「再婚しても、これまで通り養育費を支払い続ける」という内容で合意していたときは、養子縁組をしても原則として合意は維持されます。

収入増加

再婚相手との収入を合わせると、生活水準が大幅に向上する場合、養育費の額が減額される可能性があります。

ただし、再婚相手の収入が少ない場合は、養育費の額が減額されない場合もあります。

養育費減額の相場

再婚による養育費の減額額は、ケースによって大きく異なるため、明確な「相場」というものは存在しません。

一般的な養育費の算定表は、裁判所のサイトで公開されているので、あくまで目安ではありますが、一定の参考にはなります。

例として、離婚時と再婚時で世帯員等の変更があった場合を算定してみると以下のようになります。

離婚時

支払う側の夫が給与所得者(年収800万円)で、受け取る側の妻がパート従業員(年収150万円)・子ども1人(8歳)の場合、算定表を用いると養育費は、約8万4,000円となります。

再婚(4年後、支払う側が再婚し、子どもが1人できた)

支払う側の夫が給与所得者(年収900万円)で、受け取る側の妻がパート従業員(年収200万円)・子ども1人(12歳)の場合、算定表を用いると養育費は約6万7,000円となります。 こちらの事例では離婚時よりも1万7,000円の減額が可能となります。

養育費の減額方法

養育費を受け取る側・支払う側に事情の変更があった場合に、養育費の減額・免除を求めるためには、再び協議や調停等が必要となります

こちらでは、協議(話し合い)・調停・審判と3つのステップに分けて解説します。

協議(話し合い)

まずは養育費を受け取る側・支払う側が直接、減額や免除を話し合います。養育費を支払う側は減額したい理由をしっかりと説明し、受け取る側の理解を求めましょう。

養育費の減額または免除内容の合意ができたときは、変更内容が明記された「養育費変更の合意書」を作成します。合意書は2通作成し双方が署名・押印したうえで、1通ずつそれぞれが大切に保管します。

調停

養育費を受け取る側・支払う側の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「養育費(減額等)調停」の申立てを行いましょう。

この調停は、相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、「養育費(減額等)調停」の申立てを行わなければいけません。

申し立てるときは、次の書類を提出します。

・申立書原本と写し:各1通

・送達場所の届出書:1通

・事情説明書:1通

・進行に関する照会回答書:1通

・未成年者の戸籍謄本:1通(本籍地の市区町村役場で取得、1通450円)

・申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給料明細、確定申告書等の写し

・収入印紙:子ども一人につき1200円

・郵便切手:子ども一人につき100円2枚、84円10枚、10円20枚

・非開示の希望に関する申出書:必要があれば

家庭裁判所から選出された調停委員(2名)が夫婦の間に入り、養育費の支払金額を維持するか、減額(または免除)するか、互いの主張を聴きます。

そのうえで、養育費に関するアドバイスや、双方が妥協できそうな提案を行う等、合意のための調整を図ります。夫婦双方が合意し話し合いがまとまったときは、家庭裁判所が調停調書を作成します。

審判

養育費の減額や免除に関する調停が不成立となった場合は、自動的に養育費(減額等)審判に移行します

審判に移行するために、当事者が特別な手続きをする必要はありません。

審判では裁判官が調停委員の意見を踏まえ、当事者の主張や資料等、一切の事情を考慮したうえで、決定を下します。審判の決定について審判書が作成されます。

まとめ

再婚をされた場合の養育費は、個々のケースによって判断が異なります。経済状況の変化や子どもの状況など、様々な要因が考慮されます。

減額を検討する際は、専門家にご相談の上、適切な手続きを進めることが重要です。

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