養育費はいつまで支払うのか?方法・終わるタイミング・短くする方法も解説
最終更新日: 2023年11月29日
- 養育費を支払う側になるが、いつまで払えばいいのか気になる
- 元配偶者と養育費について相談しているが費用の目安を知りたい
- 元配偶者にいい人ができたようだ、それでも養育費を支払うのか?
養育費とは、子どもが成人して自立した生活を行えるまで、子育てにかける費用を指します。
養育費は離婚時に、親権(身上監護権)を持たない親が支払います。
養育費を支払う方の親からすれば、どれくらいの期間にわたり支払い続ければよいのか、不安に感じるかもしれません。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費を支払う期間、支払方法、支払期間を短くする方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 養育費は離婚時の取り決めによっては、子どもが成人した後も支払う必要がある
- 主に養育費を受け取る側で状況の変化があれば、支払いを短くできる可能性がある
- 養育費の金額を決める場合は、養育費・婚姻費用算定表を参考にする
養育費はいつまで支払うのか
養育費を支払う方の親は、元配偶者のもとにいった我が子の健やかな成長を祈っているでしょう。しかしながら、養育費を支払う親にも生活があります。
こちらでは、「養育費とは?」「養育費をいつまで支払えばよいのか?」について解説しましょう。
養育費とは
養育費とは、子どもが成人して自立できるまでの子育てに必要な費用を指します。
離婚するときは親権者の指定や財産分与、離婚の慰謝料、子どもとの面会交流の他、養育費をどうするかも大切な協議内容です。
たとえ配偶者とは離婚しても、子どもと法的な親子関係は継続します。
法律では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と明記されており、たとえ離れて暮らしていても、親である以上、子どもを世話する義務があるのです(民法第877条第1項)。
養育費の範囲は主に「衣食住の費用」「教育費」「医療費」「その他」があります。
養育費 | 内容 |
衣食住の費用 | 衣服代、食費、家賃等 |
教育費 | 学校への入学金、授業料、教材費、塾代、習い事の費用、留学費用等 |
医療費 | 入院費、通院治療費、薬剤費等 |
その他 | お小遣い、交通費等 |
支払う期間
養育費の支払期間は、「子どもが一律〇〇歳になるまで」と法定されていません。
民法改正で成人が18歳になったので、支払期間はその年齢までと考える人が多いことでしょう。
しかし、実務上は20歳まで養育費を支払う必要があるとされています。
また、子どもが20歳を過ぎても大学等に在学している場合、経済的に自立しているとはいえず、養育費が必要になるケースもあります。
夫婦が共に子どもの大学進学・卒業を希望するなら、たとえば「養育費の期限を22歳になった後の3月31日までにする。」と取り決めても構いません。
養育費の支払い方法
養育費の支払い方法は協議のとき、夫婦間で自由に取り決めて構いません。支払方法としては「定期払い」「一括払い」が考えられます。
こちらでは、それぞれの支払方法について解説します。
定期払い
養育費は毎月定額で支払われるのが基本です。家庭裁判所で養育費に関する調停・審判を行うときも、裁判所は毎月定期に養育費を支払っていく形で認めるケースがほとんどです。
定期払いならば、受け取る側の養育費の使いすぎを抑制できます。また、必要に応じて追加請求も行いやすいです。
支払う側は毎月養育費を支払うので、高額な費用負担となるわけではありません。
その反面、支払う側の養育費の不払いや滞納のリスクが想定されます。不払い等に対し強制執行は可能ですが、手続きに手間取る可能性もあります。
一括払い
夫婦で同意すれば、全ての養育費を一括で支払う方法も可能です。
一括払いならば、受け取る側は養育費の不払い・滞納のリスクを避けられます。しかし、養育費を子どもが成人する前に使い切ってしまうおそれもあります。そのときに、追加請求が難しくなる点はデメリットです。
支払う側は毎月の支払いに関する手間や精神的負担がなくなり、万一、支払いが滞ったときに強制執行をされるリスクもありません。
その反面、支払う側は多額の現金が必要です。ケースによっては、養育費が1,000万円以上になるかもしれません。
いつまでかかる?養育費の支払いが終わるタイミング
養育費の支払が終了するのは、原則として子どもが20歳に達したときです。ただし、夫婦で取り決めた内容によって、支払いが終了するタイミングは変わってきます。
支払期間が満了した場合
夫婦で取り決めた支払期間が満了すれば、原則として支払いが終わります。
たとえば、子どもが高校卒業と同時に就職するケースを想定した場合は満18歳の3月まで、4年制大学への進学を想定したならば卒業する満22歳3月までで終了です。
ただし、上記の例示のように高校または大学の一般的な卒業年齢を踏まえ、具体的に「子どもが〇〇歳になるまで支払う」と決めておいた方がよいでしょう。
なぜなら、子どもが留年や浪人をした場合、想定よりも卒業までに時間がかかり、その分の養育費も必要になるからです。
余計にかかる養育費をめぐって、支払う側・受け取る側との間でトラブルが発生する可能性もあります。
合意した金額の全ての支払いが完了している
夫婦で具体的に支払うべき養育費の総額を決めていた場合は、原則として全額を払い終えた時点で終了です。
ただし、子どもが病気や障害を負ってしまい、当初合意した養育費だけでは足りないという事態も想定されます。
この場合は、支払う側・受け取る側とが養育費の追加を話し合いましょう。
話し合いで決められないならば、家庭裁判所に「養育費等の変更の調停・審判」を申立て、解決を図ります。
養育費の支払い期間を短くする方法
支払う側は、状況の変化によって支払期間を短くできる場合があります。
たとえば次のようなケースがあげられます。
- 支払期間は子どもの大学進学を想定し決めたが、予想に反し、高校卒業後すぐに就職した
- 養育費を受け取る側が再婚し、子どもと再婚相手とが養子縁組をした
- 受け取る側が高い収入を得られるようになり、経済的に余裕ができた
- 支払う側の収入が低下し、養育費の支払いが困難になった
このようなケースでは、支払期間を短期化する他、支払の減額や免除についても、受け取る側と話し合ってみましょう。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に「養育費等の変更の調停・審判」を申立て、支払期間の短期化や、減額や免除をしてもらえるよう、裁判所で自分の意見等を述べます。
養育費の決め方
養育費は支払う側・受け取る側、何より子どもの事情をよく考慮し、慎重に検討しましょう。
こちらでは、養育費を決めるときに参考とするべき資料や、養育費の計算方法を解説します。
相場を参考にする
ひとり親世帯の養育費の平均がどれくらいかは、厚生労働省が公表しています。
2021年における養育費の毎月の平均額は次の通りです。
- 母子家庭:50,485円
- 父子家庭:26,992円
子どもが何人いるかで養育費(1世帯平均月額)の状況も下表のように変わってきます。
子どもの数 | 母子家庭 | 父子家庭 |
1人 | 40,468円 | 22,857円 |
2人 | 57,954円 | 28,777円 |
3人 | 87,300円 | 37,161円 |
4人 | 70,503円 | - |
5人 | 54,191円 | - |
ただし、あくまで養育費の平均であり、各家庭の事情に沿った養育費を決める必要があります。
養育費算定表で計算する
養育費の算定には、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を利用しましょう。
養育費を支払う側・受け取る側の年収や職業(自営業か給与所得者か)、子どもの数や年齢によって算出が可能です。
たとえば、支払う側の夫が給与所得者(年収700万円)で、受け取る側の妻がアルバイト店員(年収200万円)の場合、算定表を用いると養育費は次の通りです。
- 子どもが1人の場合(5歳):毎月約70,000円
- 子どもが2人の場合(10歳・15歳):毎月約109,000円
ただし、子どもが病気がちであったり、障がいがあったりする場合は、更に養育費の上乗せが必要となるでしょう。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費の支払期間や支払方法、養育費の計算方法等について詳しく解説しました。
養育費を支払う側・受け取る側で主張が対立し、話し合いがまとまらない場合もあるでしょう。しかし、養育費に関する取り決めが難航すると、一番困るのはお子さんです。
お子さんのために、互いに歩み寄る努力を行いましょう。
養育費の話し合いで揉めているときは、速やかに弁護士へ相談し、的確なアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。